1. はじめに
常陸大宮市は、茨城県北部に位置し、市の面積は、東西約20.8km、南北約26.4kmにおよぶ348.45km2で、茨城県のおよそ5.7%にあたります。現在、2004年10月の最終合併によって、県内では常陸太田市に次いで2番目の規模となりました。
なお町村合併は大宮町、山方町、美和村、緒川村、御前山村の5自治体で、広大な土地には地域の特色が楽しめます。
土地利用の状況をみると、農用地が約17%、森林原野面積が約60%を占めていて、市の北部はとりわけ緑豊かな自然環境となっています。
常陸大宮市は、茨城県の北西部、県都水戸から約20kmの八溝山地及び阿武隈山地の南端と関東平野周縁台地北端の境界部に位置し、東に久慈川、南に那珂川、中央部に緒川、玉川が流れ、市の約6割を山林が占めています。
市の東部にはJR水郡線と国道118号が通り、中央部には国道293号、西部には国道123号が通っており、水戸市、日立市、宇都宮市、郡山市間の交通の要衝となっております。
緑豊かな自然の中、ネギ・シイタケなどの特産品の産地化や、県北工業振興の拠点である水戸北部中核工業団地など、農林業と工業の、調和ある発展をめざしています。
また歴史も古く、市内には、由緒ある神社仏閣がたくさんあります。
2. 常陸大宮市の汚水処理概要について
国の進めている、汚水処理事業の根幹となる都道府県構想に基づき、常陸大宮市では市街地の公共下水道、農村部の農業集落排水、それ以外の合併浄化槽推進地区で事業を展開しています。
その中で、公共下水事業は生活環境の改善、公共用水域の水質の保全のために、1973年に単独公共下水として計画されましたが、1974年「那珂久慈流域下水道事業」が認可を受け本市も該当流域の最上流に位置付けられました。
この上位計画に基づき、「大宮町流域関連公共下水道」として、1990年2月に認可を得て着手し現在まで整備を進めています。
公共下水道事業の今後の整備につきましては、住民の方々から1日でも早い整備を求められていますが、多くの費用がかかるため計画に基づき毎年約20haの整備を行っており、2019年度から2023年度までの整備箇所につきましては、抽ヶ台町、下町、宇留野、上村田、石沢地区を整備する予定です。
また、農業集落排水は1995年度に高渡地区(旧大宮町)、長倉地区(旧御前山村)の供用開始から2010年度で912haの整備を完了し、維持管理を行いながら未接続世帯への接続推進を行っています。
いずれの事業も、多大な費用を投じて整備されたものですが、普及率が低い値を示しており、今後広く普及率向上への啓発活動が必要な状況です。
それには、普段下水道に関心のない方にも知っていただく機会として、全国でも珍しい当市のみで5種類ものマンホール蓋デザインを所有していることと、供用から30年を経過したマンホール蓋デザインの新規製作を行い、さらなるたくさんの蓋のPRと啓発活動を行い、普及率向上を図ることにしました。
◎常陸大宮市概要 |
面積(km2) |
348.45 |
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可住面積(km2) |
132.57 |
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人口 |
39,267 |
(男性19,392人 女性19,875人) |
世帯数 |
15,643 |
(※2020年度国勢調査結果) |
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◎公共下水道概要 |
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◎農業集落排水概要 |
処理区域内人口 |
11,593 |
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7,060 |
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処理区域内面積(km2) |
4.73 |
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9.12 |
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普及率(%) |
28.72 |
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17.49 |
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有収率(%) |
93.54 |
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103.50 |
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自己資本構成比率(%) |
57.50 |
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81.78 |
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3. 既存のデザインマンホールについて
市の花が「バラ」であることから、市で誕生したバラの花の品種「ミス大宮」をデザインしています。
この品種は本市に所在しつながりが深い、農林水産省放射線育種場「ガンマーフィールド」でガンマー線(放射線の一種)によるバラの品種改良で生まれた5種類のうち、1988年3月に種苗登録したもので、気品高く情熱ある美しい花は町のシンボルとして描かれています。
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既存マンホールデザイン |
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旧大宮町 マンホールデザイン |
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旧山方町マンホールデザイン |
上方の小さな円内に常陸大宮市の市章、中央に町の鳥「うぐいす」、上部左右に町の木「ゆず」、下部左右に町の花「山ゆり」が町のシンボルとして描かれています。
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旧美和村マンホールデザイン |
中央の円内に常陸大宮市の市章、上方に村の鳥「やまどり」、右に村の花「やまぶき」、左に村の木「杉」が村のシンボルとして描かれています。
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旧緒川村マンホールデザイン |
中央の大きな円内に村の花「つつじ」、円内左に村の鳥「やまどり」、円の外周に村の木「桜」が村のシンボルとして描かれています。
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旧御前山村マンホールデザイン |
茨城百景のひとつ関東の嵐山と呼ばれている「御前山」を背景に「那珂川大橋」と「那珂川を泳ぐアユ」が描かれています。
4. 新デザインマンホールのご紹介
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ひたまるとばら |
美しく咲き誇るたくさんの「ばら」と市マスコットキャラクターの「ひたまる」が喜び溢れ、親しみやすく多くの人に愛されるようイメージしています。
市内を流れる久慈川と那珂川の二つの清流に、夢や希望をのせて虹色の川となり、ひたまるが虹色の川から大空へ羽ばたく瞬間の水しぶきや潤いのなか、みんなを明るい未来へと導いてくれる様子を描いています。
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清流とあゆ |
市内に流れる久慈川と那珂川の二つの清流と流域の竹林を望むことができ、国内でも類を見ないほど広大で良質な「竹」と、市の特産品である「あゆ」は国内有数の漁獲量を誇り、市民からも愛されています。
また、八溝山地の南方に位置する市内の山々は、丘陵地で気持ちよく登山を楽しみながら自然を満喫でき、緑あふれる自然豊かな里山と清流と竹、あゆが飛び跳ねる水しぶきと潤いを描いています。
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星降る里山 |
市内にはたくさんの星空観察スポットがあり、特に花立自然公園には「美スター」という天文台があるなど、星降る自然豊かな里山の中で美しい星空が楽しめ、市民の優しい心と希望に満ちた明るい未来を築きあげるシンボルとして市の木となっている「さくら」を描いています。
星空の眺めるひたまるのまわりを飛ぶ丸い光は「ホタル」を描いています。ホタルは市内の各地で見ることができ、豊富できれいな水で豊かな自然のなかで生息し、多くの人から愛されています。
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未来を泳ぐ |
市の魚でもあり、常陸大宮特産の「あゆ」は、清流の女王とも呼ばれるほど姿も美しく輝いて見えます。
夢や希望、無限の可能性のある宇宙を背景に、あゆとともに動物たちが集い未来を切り開いていくさま、また「吉兆を呼ぶ縁起の良い魚」としても知られているあゆが光をまとい、明るい未来へと導いてくれるさまを描いています。
次の世代、未来の子どもたちに、輝きのある世界でのびのびと気持ちよく泳ぐように生きてほしいという願いが込められています。
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未来を育てる |
市が掲げる「郷育立市」のように、先人たちが作り上げたこの故郷の自然や歴史、文化、数々の英知、地域の絆など、かけがえのない財産を受け継ぎ、その想いを今生きる私たちが大切に育て、次の世代、そして未来へとつないでいくさまを描いています。
常陸大宮市の自然の豊かな森のなか、明るい未来をイメージする虹が現れ、育ちはじめた新たな生命を動物たちが温かく見守りながら育てています。その様子から、故郷を愛し慈しむ「郷育」の想いを伝えています。
5. 既存マンホール蓋のカラー版製作
製作計画としては、まずいかにコストをかけずに既存のデザインを活かし、新デザインの製作を行っていくかがテーマとしてありました。
まず、既存のデザインについては、旧大宮町、旧山方町、旧美和村の蓋については元々カラーデザインが製作されていましたが、旧緒川村と旧御前山村についてはモノクロデザインしかありませんでした。
そこで、有志の職員(下水道部門職員:総務経営課、施設管理課)で考え出した結果、不要になり撤去したマンホール蓋にペンキ等で着色してしまおうというものでした。
まず、机上でできる作業としてモノクロをカラー化するために、案や意見を出し合って最終的なカラーデザインを決定した後、実際の作業として錆取りから始めましたが、素人の職員の技術ではなかなか上手くいきませんでした。そこで、再任用の職員等で技術に長けた職員にディスクグラインダーの操作を教示してもらいながら何とか錆取りを終えることができました。
次に着色の段階になりましたが、マンホールメーカーに確認したところ、マンホール蓋の着色は単純な着色ではなく、エポキシ樹脂に塗料を混合したものを溝に沿って注入するという手法であることが分かりましたが、これは職員が片手間で行うような簡単なものではなくプロの技術や専門の工具が必要となるものでした。そこで、再び有志の職員で色々案を出し合い知恵を絞って行き着いた方法が、直接油性ペンキを蓋の溝に流し込むという方法でした。
これには、一週間程度を要して試験着色を行った結果、蓋を立ててもペンキが硬化すると垂れ下がるようなことは無く、エポキシ樹脂と同程度に扱うことが分かってから、全員で取り掛かり作成しました。
有志の職員が自力で作成した分、喜びも一入です。
6. 新デザインマンホール蓋の製作
新デザインマンホール蓋の製作も、既存マンホール蓋のカラー版製作と同様で、いかにコストを掛けずに製作するかがテーマであるため、当初は職員の中でデザインを募集し、アンケートを行って採用していこうと計画していました。そこで、まずは有志の職員で絵心の長けた者にデザイン案を数点作成してもらったところ、市の大使で画家の先生にこの話をしてみてはどうかとの意見がありました。
早速、画家で常陸大宮大使の寺門由紀さんに今回の話を持ちかけたところ、快諾をいただいてデザインを作成してもらうことになりました。
寺門さんに新デザインを作成してもらう内容は、市のマスコットであるひたまるや寺門さんからみた市のイメージをマンホール蓋で表現してもらうもので3点作成していただくということ。
さらに、寺門さんの画風を生かして自由に描いてもらうものを2点作成していただくもので、主に寺門さんが描いているキャラクター「ユキネコ」を自由に描いてもらうというものでした。
次に、蓋本体の製作ですが、常陸大宮駅周辺整備事業の対象エリアで要件に合致する内容で製作と設置工事を行うことで、費用を捻出することができました。製作も含めて通常の公共事業で発注するので、価格と品質もクリアすることができました。
7. デザインマンホール完成報告会
2022年2月16日に常陸大宮市役所にて、マンホール蓋のデザインをしてくださいました常陸大宮大使である画家の寺門由紀さん、そして特別ゲストとして全国で有名なマンホール蓋愛好家である白濱公平さんを迎え、下水道デザインマンホール完成報告会を行いました。
新しいマンホール蓋については、市が進める常陸大宮市駅周辺整備事業などに伴って市内の道路や、道の駅などにも設置していく予定ですので、常陸大宮市内を観光しながら、デザインマンホール蓋を楽しんでいただきたいことをマスコミを通じて発信できました。
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マンホール蓋愛好家 白濱公平さん | 鈴木定幸 常陸大宮市長 | 常陸大宮大使
画家 寺門由紀さん |
8. 今後について
新デザインマンホール蓋を設置後に、下水道プラットホームが展開しているマンホールカードに登録申請をして、広く啓発活動を行い、普及率向上を図ることをめざしていきます。
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