【レポート】

第39回静岡自治研集会
第1分科会 自治研入門 来たれ、地域の新たな主役

 「自治研」とは……地方自治研究の略で労働組合が主体的に地方行政や自治研政策、自らの仕事のあり方について研究し、実践していくこと。
 ひょんなことからスタートした私たちの自治研活動。右も左も分からないまま、「まずは実践」と取り組んできました。「自治研って何?」と疑問を持ちながら、実践してきた活動も、しばらく活動が途絶え、また新型コロナウィルス感染症の蔓延により、再開できない状況が続きました。
 しかし、いよいよ2022年、新たな気持ちで再開することとなりました。地域への貢献も加えて取り組みます。



「楽しむ自治研、再開中


石川県本部/七尾市職員労働組合・自治研対策部

1. 「自治研活動の始まり」

 2010年4月に石川県本部で開催された学習会で自治研活動の強化が提案されました。そこに七尾市職労の自治研対策部長が参加していたところから私たちの自治研活動が始まりました。「自治研活動を活発に」と言われたものの何をどうしたらいいのか? 悩んでいても始まらないとのことで、メンバーを募集。総勢8人のメンバーが集まりました。「自治研活動って??」と疑問を持ちながらの意見交換を繰り返しながら、「職場や七尾市に関するフリートークの中から実際に職場に導入できるもの、市民のためにできることなど、近い将来実現可能な試みをリストアップし、実践する」という目標を設定し、様々な意見の中から活動方針を決め「自分たちのまちをもっと知る」、「まちをもっと良くしよう」を合言葉に動き始めました。
 1年目は「石川県自治研集会」や「愛知自治研集会(第33回地方自治研究全国集会)」に参加し、全国の組合員の活動報告を聞き、大きな刺激を受けた後、「第1回レクリエーション大会」を企画し、開催しました。当市は、2004年5月に4つの自治体が合併により、庁舎の分散化、職員数の増大、コミュニケーション機会の減少など職場環境の悪化が懸念されていました。そこで、「組合員全員が参加できる場の創出」が大切だと考え、競技種目にも工夫を凝らし、レクリエーション大会を開催したところ、予想を超える250人の参加を得て、成功裏に終えることができました。

2. 「自治研活動の軌跡」

 2年目以降、私たちは1年目に決めた活動方針に従ってどのような取り組みをすればよいのかなど、自治研メンバーで語り合いました。どうすれば多くの方に参加してもらえるのか、地域に関心をより持ってもらえるのか、など。取り組み自体がカタすぎてもダメ、柔らかすぎると「遊び」にしか思ってもらえない、、、苦闘は続きました。
 しかし、私たちは考え過ぎず、決めました。背伸びしすぎず、「やりたいことをやろう」と。それ以降、活動方針に従い、取り組みを行う中で、自分たちも地域を知るきっかけになるとともに、参加者にも楽しんでもらえるような企画を立てました。これまで行った取り組みをご紹介します。

(1) メンバーの業務内容を知る発表会の開催

発表会の様子
【開催日】2011年3月~6月
 自分たちの担当業務や課題などを発表し、それに対するメンバー間の意見交換をしました。同じ職場にいながら、多種多様な業務内容に驚きました。
 情報の共有や公共サービスの向上を図るため、自治研ワーキンググループとして活動できるものがあると認識しました。

(2) 日本五大山城 七尾城跡ハイキングウォーキング

七尾城跡本丸付近で
解説を聞くメンバー
【開催回数】1回(2011)
 七尾市の代表的な歴史遺産である七尾城を知るため、車ではなく、大手道から本丸をめざして登りました。
 七尾城山の麓にある「七尾城史資料館」で事前学習をした後に、本丸まで40分かけて山を登り、上杉謙信も苦しんだ難攻不落の堅固なつくりに一同仰天。地域の歴史や文化を知ることの大切さを改めて認識しました。

(3) 組合員レクリエーション大会

紅白玉入れの様子
【開催回数】3回(2011~2013)
 組合員同士の交流を目的に開催をし、部単位で3つのグループに分け、グループ対抗戦として数々の競技を行いました。順位が出るとなると、みんな真剣そのもの。終了後は、グループごとに懇親会をするなど、親睦が深まりました。
 2回目以降は、競技種目を工夫し、組合員だけではなく、家族も参加しやすくするなど、競技を通して親睦が一層深まりました。
 開催時期によって、参加者数も変わるため、時期を変えての開催の必要性と、継続開催の必要性を実感しました。

(4) ぴっかぴっかのななおプロジェクト

街なかを巡りながらのごみ拾い
【開催回数】2回(2012、2013)
 第1回は、5月3・4・5日に七尾市街地で催される、国指定重要無形民俗文化財の「青柏祭」(青い柏の葉に神饌を供えたことから命名。高さ12m、車輪の直径2m、重さ20トンの「でか山」と呼ばれる曳山3台が曳き回されます。
 この祭礼には多くの観光客が訪れるため、祭礼の前に、市内中心部の清掃活動を実施しました。
 第2回は、「青柏祭」終了後の街なかの清掃活動を輪島市職14人の仲間と共に実施。単なるごみ拾いではなく、『清掃中』と称してゲーム感覚で行いました。
 チーム対抗として3つのミッション(①「前田利家とまつ像or長谷川等伯像」を撮影せよ②七尾のおすすめスポットを撮影せよ③解体中のでか山を撮影せよ)をクリアし、さらにはごみをも拾ってくるというものです。
 写真の撮り方・笑顔・美化活動(ごみの量)・タイムの総合点で順位を決定しました。
 ⇒市街地の街並み、祭り、人とのふれあい等パンフレットでは伝わらない魅力を実感。

(5) 金沢城リレーマラソン

特設ステージで七尾市をPR
【実施回数】4回(2013~2015、2018)
 職員の健康親睦と七尾のPRを目的に参加。駅伝形式の仮装パフォーマンスが有名な大会で、Tシャツ表に「THE EVENT OF NANAO」と表記し、背中には月ごとの七尾のイベントを貼り沿道の皆さんにPR。さらに、応援団に「とうはくん」、「能登カッキー」のゆるキャラや「ブリの被り物」を被ったランナーが花を添え、大いに七尾をPRできました。
 また、「能登国立国1300年」を迎えた節目の年には「パフォーマンス賞」を受賞しました。

(6) 白米千枚田 結婚式&稲刈り&BBQ in輪島
【開催回数】1回(2013)
 世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」でも象徴的な景観として知られる輪島市の「白米 千枚田」での稲刈りと、そこで行われる伝統結婚式にスタッフとして参加。日本海を眼前に稲刈りと花嫁道中のお手伝い。稲刈りという貴重な体験と併せ、輪島市の歴史文化に触れたことは、大変貴重であり、終了後、地酒と鮑を肴に輪島市職との懇親会は盛り上がりました。

(7) 青柏祭でか山 人形見ツアー
【開催回数】2回(2014、2016)
 青柏祭(国重要無形民俗文化財)に先立って開催される「人形見」の魅力を体感し、観光資源としての有効性を確認しました。3年間の自治研活動を通して、でか山の組立・解体・人形見など本祭以外の魅力を実感。地域の歴史と文化を知り、七尾の営業マンとしてこれからしっかりと発信します

(8) 崎山半島里山里海巡り
【開催回数】1回(2014)

「さきやまっぷ」の見開きページ
 世界農業遺産「能登の里山里海」に象徴される「里山里海」が、今に息づく崎山地区の様々な地域資源を巡るミニツアーを実施しました。
 私たちにとっては何気ない農漁村ですが、旅行雑誌関係者がこの地域を訪れた際、ここに住む人たちの努力や将来への意気込みに惚れたというほど、隠れた資源が多い地域です。私たちは、(株)鹿渡島定置さんの定置網体験や湯川町の「鉄砲ぐり」調査などを通して、地域の方々と交流しました。
 将来的には、旅行商品となるようなミニ体験コースになればと思い、手作りの観光マップ「さきやまっぷ」を作りましたが、これが、崎山地域づくり協議会が作成した地域パンフレット『崎山の歳時記』や案内地図などにも見事採用されました。

3. 取り組みの一時中断

 順調に取り組みを進めてきた私たちでしたが、これまで一緒に取り組んできたメンバーが多忙な部署へ配属となったり、結婚や出産など家庭の事情などにより活動できる時間が減少するなど、自治研活動をこれまでのように進めることができなくなりました。
 これがしばらく続き、そろそろ再開しようかと相談し始めた矢先、今度は、新型コロナウィルス感染症が全国的に蔓延するなど、再開をさらに先延ばしにせざるを得なくなりました。
 一方では、その間にも、駅前再開発ビルへの市健康福祉部門の転居や新しい職員の入庁、保育士など専門職職員の行政部門への転籍など、職員同士の交流が必要な状況が発生し続け、これまで以上に自治研活動の必要性が求められてきました。
 そして、2021年秋、自治研対策部の役員同士で「新型コロナウィルス感染症が落ち着いたら、必ず再開しよう」と決意しました。

4. これからの取り組み

 2022年度に入り、再び新型コロナウィルス感染症が蔓延しましたが、自治研活動は進めるという決意は変わりませんでした。
 これからは、「地域課題の解決への取り組み」と「職員同士のコミュニケーション」を目的に取り組むこととしました。
 職員間の交流事業は今後の感染状況を見ながらということで保留にしていますが、地域課題の解決への取り組みとして、まずは、深刻化する公共交通の維持を目的とした取り組みは、すぐにでも始めようということになりました。
 人口減少が進む七尾市では、農村部を中心に「高齢者向け乗り合いタクシー」や「デマンド型タクシー」が導入されるなど、公共交通の維持は大変大きな課題になっています。
 そこで、まずは、マイカーでの通勤をできるだけ控え、二酸化炭素削減などSDGsにも貢献する機会を作ろうということで、公共交通の通勤利用に対する補助制度を設けて実施しました。

(1) 通勤などでの公共交通利用促進
【開催日】2022年7月11~15日
 近年の公共交通利用者は、新型コロナウィルスや人口減少などにより、利用者が大きく減少しており、2022年度の改正は、運行本数の大幅減や複数路線の統合など、利用者にとって「改悪」と言わざるを得ない内容となってしまいました。このままでは、いずれマイナスがマイナスを生み、利用しにくい公共交通が増えるとともに、最後は廃線や廃止につながるのではないか、という強い危機感を持ちました。そうなってからでは遅い という思いで、取り組みを行うこととしました。
 この取り組みに共感し、協力してくれた組合員は9人でした。思いとしては、二桁人数 をめざしていたので、悔しさはもちろんありますが、まずは、この取り組みを組合員に紹介できたこと、お願いできたことが、自治研活動再開のホイッスルであり、そこに大きな意義があるものだと考えています。
 また、アンケートでは以下のような意見があり、次の段階に向け、とても参考になりました。
① いつもはずるずる仕事をしてしまうが、電車時間に間に合うように、仕事を切り上げて帰ったので、いつもより早く帰宅できた。
② 公共交通を守るため、このような取り組みを継続してほしい。
③ 出勤時間帯における便が少ないため、利用が限定される。
④ 必ず移動の必要性が生じる利用者(小学生、中学生、高校生、高齢者)が利用する路線を最優先にして公共交通を維持していけばどうか。

 この取り組みは、継続的に、そして周りの企業も巻き込みながら行う必要があります。また、通勤のみならず、日々の生活の中で、公共交通機関をこれまで以上に利用できるよう、その利用目的も広げていかなければなりません。
 時間はかかるとは思いますが、私たちがしっかりと成果を挙げることが次のステップへの大きな原動力になるはずですし、それがいずれは地域全体の大きな波になるはず と率直に安易な将来像を頭に浮かべながら、楽しく、でも真剣に着実に取り組んでいければと思っています。

(2) 公共交通を利用した市内巡り
【開催日】未定
 七尾市は、能登観光の宿泊拠点であり、かつ見どころの多い地域でもあります。近年では、新たな観光交流施設が整備され、また、民間団体による地域イベントなどが開催されるなど、アフターコロナに向けた取り組みが積極的に行われ、多くの観光客が楽しんでいます。
 しかし、私たち地元に住む者は、普段住んでいる街のどこにその魅力があるのかについては、意外と分からないものです。
 そこで、観光客が魅力があると思う市内の名所やイベントなどを知り、私たちも積極的にPRしていかなければなりません。そのためには、観光客になりきって周遊することが大切です。そうすれば、公共交通の利便性までも体感できると考えています。
 現時点では、秋と冬に実施したいと考えていますが、新型コロナウィルスの感染状況もよろしくないため、詳細はまだ決めていませんが、やはり観光客が最も多く訪れる和倉温泉を中心として周遊し、自治研としての周遊コースを市内各地、そして、それをつないだコースづくりにもつなげていければと考えています。

5. 組合員、そして公務員として

 私たちの活動は、本来の自治研活動というよりは、むしろ、レクレーション的な要素を前面に押し出した取り組みです。人員削減のため、業務量が増大し、余裕の無くなっている職場環境の中で、活動を通じて顔を合わせ、会話を交わすことが出来る仲間づくり、それが私たちにとって、まず大切なことではないでしょうか。地域のコミュニティの低下が叫ばれていますが、それは地域だけではなく、職場でも同様で人間関係が希薄になっている現実があります。その中で孤立せずにいつでも相談できる仲間作りの機会の創出は職場環境の改善、ひいては市民サービスの向上に繋がるものと信じています。
 以前の全国自治研集会でもこれからの公務員がめざすべき方向性が示されていました。
① 地域への職員の溶け込み
② これからの組合のあり方
が論点となっていました。日常業務に加え、地域では一市民としての役割もあり、また、都会と地方、国・県・市町村では状況は異なり、田舎に行けば行くほど、公務員が地域に果たしている役割が相対的に大きく、その点では大きな格差が存在します。
 地域に貢献することで、住民の不満だけでなく、ニーズを知り、そして、それに対応することで市民の皆さんから信頼を得ることができます。何でもかんでも地域の役を公務員がするのは、いささか問題があると思いますし、むしろ内側から組織を活性化する役割を担うことができる立場であると言えるのではないでしょうか。
 そのような意味でも、これまで同様、私たちは、自治体職員、職員労働組合員として、また一市民として、自治研活動を積極的に進めていきます。

6. 最後に

 数年後には、北陸新幹線が福井県敦賀市まで延伸します。能登観光の始発点であり、北陸新幹線の終着駅だった金沢駅が、中間駅に変わります。
 七尾市、さらには能登全域に多くのお客様にお越しいただくには、これまで以上に地域の魅力に磨きを掛けなければなりません。
 併せて、人口減少が著しい今日だからこそ、「人が輝くまち」、「人が活躍するまち」、そして「住みよいまち」にしていかなければなりません。
 私たちは、組合員、市職員としてはもちろん、自治研メンバーとしても七尾市の魅力づくりとその発信に積極的に携わっていきたいと思います。