【レポート】

第39回静岡自治研集会
第1分科会 自治研入門 来たれ、地域の新たな主役

 安来市は人口減少、高齢化などの影響を受け地域の活力が年々低下し、厳しい状況に直面しています。人口減少が著しい中山間地だけでなく、街部においても活動の継続や盛り上がりの面で「昔に比べ寂しくなった」という声もよく耳にします。地域の課題は山積し影響も次第に顕著になっていっているにもかかわらず活力は低下していく中で、我々青年層の行政職員は、行政の業務だけでなく地域貢献活動や諸課題の解決に向けた取り組みの担い手としての期待や果たすべき役割も大きいと感じています。
 安来市職員労働組合では、32歳までの若手職員で構成されるユース部を組織し、若手職員間の交流や上部組織の諸活動の一翼を担い組合全体の組織力の向上に寄与しています。
 若手職員が抱えている若手ならではの悩みや若手だから見えてくる課題を共有しながら、市民サービスの提供者としての役割を果たすことはもちろんのこと、同世代の仲間と支え合いながら楽しく地域貢献に取り組んでいます。



安来市職員労働組合ユース部の取り組みについて


島根県本部/安来市職員労働組合 松浦 瑞樹

1. ユース部の概要

(1) 設立と現状
 安来市職労ユース部は2010年に設立されました。設立前には若者の組合離れや前身となる青年部には女性が所属していないなど、の問題があり、同世代の課題は同世代の感性で自ら解決するべく若年層の課題解決に特化し、更なる組織強化を図るべく組織再編により設立されました。
 設立10年を経過し現在の部員数は151人。平均年齢27.4歳で、市職労を構成する4団体にまたがり普段、行政一般事務だけでなく病院、福祉など様々な分野に携わる若手職員で構成されています。

(2) ユース部の理念、活動の柱
 近年の行財政改革に伴い自治体労働者一人ひとりの業務量が増大し、スキルや業務経験の乏しい青年層に顕著に現れますが、厳しい環境の中で自分の仕事は必ず終わらせるものという意識が根付いており、恒常的な長時間労働が常態化し忙しさを独りで抱え込んでしまうことで、心身を病み休職する仲間や職場を去っていく仲間が後を絶ちません。
 安来市においては分庁舎方式がとられており、同じ組織の仲間であっても日常的に顔を合わす機会が構造的に少なく、仲間同士の結びつきの強化を意識的に取り組む必要性があります。
 こういった現状を踏まえ交流の中から私たちの働き方、私たちの置かれている環境に対して、部員一人ひとりが「創造力」、「行動力」および「団結力」を発揮して自治労運動の充実をはかり、誰もが健康で安心して働き、なおかつ楽しく生活できる職場と社会の構築をめざし、庁内や上部組織の運動に参加するのはもちろんのこと、魅力あるまちづくりや安心して生活できる環境づくりに向けて地域住民や地域労働者と一体となった取り組みを進めています。

(3) 各部の活動役割
 現在は5つのグループで構成されており、各グループ担当の切り口から様々な取り組みを行っています。
① 組織グループ
 部員間の交流、地域行事・ボランティアへの参加などレクレーションを通し部員間の"つながり"を作る活動。
② 事業グループ
 新入組合員を対象とした学習会や、職種別の意見交換会、ワークショップ形式による学習会などを企画。それぞれが抱える問題を共有することで部員一人ひとりが労働組合運動の意義・目的を理解し、より有意義な活動を期待できる。部員相互の連帯意識を高めています。
③ 教宣グループ
 機関紙と教宣紙の発行で部員の趣味紹介のコーナーや活動報告などを分かりやすく楽しい読みごたえのある記事にして配布し、部員同士の理解を深め、ユース部の活動や組合に興味をもってもらえるよう、働く職場の理解や仲間づくりの一翼とします。
④ 調査グループ
 交流促進と生活実態調査の2つを柱にして活動。交流促進調査では、ユース部員の気になるお店やユース部員のことについて調査をして、教宣紙などで部員への調査報告をしています。生活実態調査では、独自要求に向けて部員の声を集めることはもちろん、職種ごとのギャップやユースならではの問題点を見出すためのアンケートなどを施し、若手の目線ならではの各職場の労働環境改善に向けた調査を行う。
⑤ 自治研グループ
 魅力あるまちづくりや安心して生活できる環境づくりに向けて、地方行政や自治研政策、サービスや自らの仕事のあり方について研究します。また、公共サービスに携わる職員組合として、地域とのつながりを尊重し、他団体と連携しながら活動します。職員のスキルアップを図る勉強会を企画したり、地域のイベントの運営手伝い。魅力あるまちづくりをめざして活動します。

2. ユース部の活動

 ユース部では、上部組織と連携し交渉、政治闘争、平和活動などの諸活動を行いますが、独自で要求や研修会、教宣を行っています。
 研修会は毎回自分たちで企画しテーマを設定します。「職場環境」「安来市の現状と課題」「仕事の成功×失敗」「防災」など議論やゲストを招いた講演会、ゲーム形式などの方法で知識や若手職員の課題や悩みを共有しています。
 これらの活動により当事者や担い手としての意識を高め、行政職員としてのスキルアップ、職場への定着を図るとともに、新入職員や関わりの希薄な部員に対しても馴染みやすい活動から入ることで、組合活動の入口のような役割も果たしています。

3. 地域貢献活動

 ユース部では事業グループが中心となり、地域行事やボランティア活動等を通じて地域に根ざした組織づくりに取り組んでいます。様々な活動を通して地域に貢献することはもちろんの事、自主性や積極性、協調性を喚起し、組織の団結力強化に努めることを。

(1) 月の輪まつり
 例年8月のお盆の時期に開催される月の輪まつりにおいてボランティア活動や祭りに参加し盛り上げる活動をしています。花火大会の警備を担い、観客の海への転落防止などを行います。翌日の早朝より安来港会場の片付け及び周辺の清掃作業を行いました。
 また仮装パレードに参加しています。安来市職の若手の伝統となっており、企画練習から取り組み祭りを盛り上げています。毎年、新入職員でも1チーム出場し、普段机を並べていない同期と一緒に取り組む。初の共同作業となります。

(2) ボランティア
 季節イベントである節分豆まきには、市内の子ども園へ鬼役ボランティアをしています。2017年度から開始し大好評だったため派遣施設を増やしました。鬼の嫌いな物としてイワシの頭やヒイラギもあるということを事前に鬼役に学んでもらい、鬼の迫力ある演技に泣き出す子どもが続出したものの、最後には筋書きどおりに子ども達と悪いことはしないなどの約束をしています。

(3) その他イベント運営ボランティア活動とコロナ禍の取り組み
 飯梨川の河川敷で行われる地域活性のイベント『GUNGUNSPLASH』の運営ボランティアや広瀬交流センター「ふるさとまつり」の運営ボランティアに参加し、地域に根ざした活動を継続することで地域へPR活動をしてきました。
 しかし昨今のコロナ禍の影響で2020年度にはイベント自体の開催が中止となり、地域の皆さんとの関わりの場を持つ機会が減っています。コロナ禍においても出来る地域貢献の形を模索し、2020年末市内にある『やすぎ懐古館一風亭』のボランティア大掃除の手伝いをしました。この施設は去年開館15周年を迎えたこともあり、これまでではなかなか踏み出せなかった障子紙の張替え等若手の力で施設を一新することができました。その他最近の取り組みとしては有志達により安来の町にちなんだオリジナルかるた制作など現在進行形で取り組んでいるところです。今後も地域に飛び出して活動を展開していきたいです。

4. 活動を通して感じること

 月の輪まつりでは踊り、節分では鬼として奮闘して、異業種・地域とのつながりを作ります。さらに「もっとこんな事ができるんじゃないか。」そんな思いを持つことで市職員としての質の向上にもつながっていきます。職種の垣根を越えて交流する場を企画から力を合わせる経験、少しバカをしてみることで、部員同士や地域とのつながりの深まりを感じます。

5. 課題と今後の展開

 コロナ禍でイベントや大人数での活動がしにくくなっており、組合員の気持ちが離れることを懸念しています。身近な活動・地域貢献から親しみやすい形で取り組めるユース部の活動は、普段そういったことに関心のない若手の職員にとって組合活動だけでなく地域活動や貢献に実際に関わることでその大切さに触れる入口の役割があると考えます。コロナウイルス感染症の終息が見通せない中で創意工夫し活動をしていくことが必要だと感じます。
 2020年度は女性部と共に独自要求を行い、2021春闘において一定の成果を引き出すことができました。これまでの取り組みの中で部員の意見から出た『不妊治療に関する休暇拡大』や市長による『イクボス宣言』を実現するという若者ならではの視点で課題解決という活動理念を実現する成果に繋がりました。しかし、部員間の活動への理解や活動に対する温度差があり、一部の役員への負担が集中しているなど、解決すべき課題もより浮き彫りになっていると感じます。これらは諸先輩方の世代から長年直面している容易に解決できない課題であると認識しています。しかし、当事者として関わり仲間とのつながりを深めながら楽しく、地域への貢献も果たせるというユース部のメリットや在り方を貫き通すことが一人でも多くの仲間を増やし、課題解決へ向かう道であると感じています。今後も声を聞き自分たちの感性を大事にしながら地域への貢献を続けていきたいと考えています。