【レポート】

第39回静岡自治研集会
第1分科会 自治研入門 来たれ、地域の新たな主役

 組合員アンケートをもとに、自治研活動でのテーマを決定した。候補となったテーマから、組合員の利益などを考慮し「男性の育休取得率を上げるには」を2021年度からの自治研活動のテーマとして選定し、活動を行ってきた。より実効性のある提言をめざし、2021年度を調査、2022年度を分析、提言作成の年と位置づけた。途中経過ではあるが、現状について報告する。



男性の育児参加とワークライフバランスの推進
―― 男性の育休取得率を上げるには ――

島根県本部/出雲市職員連合労働組合 吾郷 友基

1. 組合員が抱える課題とテーマの選定

(1) 組合員アンケート
 2020年にすべての組合員を対象として実施した組合員アンケートの中で、自治研活動で取り上げて欲しいテーマを聞いたところ、20%を超える回答があったものは健康・保険、医療・介護・福祉、社会保障、子育て、防災(危機管理)の5項目だった(複数回答可)。

(2) 課題の洗い出し
 組合員アンケートで特に多かった5項目について、自治研推進部で具体的な課題の洗い出しを行った。ブレインストーミングの手法を用いて多くの課題を出したのち、自治研活動のテーマの候補として、以下の4項目にまとめた。
 ①市役所における、不審者やテロに対する訓練について、②男性の育休取得率を上げるには、③市内の介護について、世帯状況、同居率等の現状分析、④県内の子育て支援制度の調査、分析

(3) テーマの選定
 4つのテーマについて、それぞれ、重要性、組合員の利益、地域貢献、実現性を評価した。
 出席した5人の部員がそれぞれ、項目ごとにテーマを順位付けし、もっとも高いものから順に3点、2点、1点、0点を投じた。点数の合計を評価点とした。

重要度 組合員の利益 地域貢献 実現性 合 計
11 27
11 15 15 47
18
12 28

 以上のことから、自治研推進部で取り組むべきテーマとして、②男性の育休取得率を上げるには を選定した。

2. 男性の育休取得についての現状

(1) 現状調査
 男性の育休取得率を上げるには、まず育休取得率などの現状を調査し、分析をする必要がある。調査すべき項目について、部内で検討した。
① 男性の育休取得率について
 出雲市職員における男性の育休取得率について、現状を確認する。また、比較のため、県内他市町村の状況や、他産別についても状況を調査する必要がある。

② 制度について
 現在の育休制度について、整理を行う。また、現行制度の理解度について調査の必要があるのではないかと考える。また、他産別の制度との違いも分析したい。
③ 青年層へのアンケート調査
 これから育休取得の対象者となる世代に対し、アンケート調査をすると良いのではないか。また、女性からの意見についても調査したい。

(2) 出雲市の現状
① 男性の育休取得率
 出雲市の育児休業等の取得率は、次のとおりとなっている。

 ※ 2020年3月策定 出雲市特定事業主行動計画から抜粋
男性の配偶者出産休暇の取得率
2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
配偶者が出産した者で休暇を取得する権利がある者 22 23 28 34 23
うち休暇を取得した者 20 12 19 33 20
休暇を取得した者の平均取得日数 2.2 2.4 2.3 2.3
取得率 90.9% 52.2% 67.9% 97.1% 87.0%

男性の育児参加休暇取得率
2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
配偶者が出産した者で休暇を取得する権利がある者 22 23 28 34 23
うち休暇を取得した者 11
休暇を取得した者の(平均)取得日数 2.5 3.3 2.4 2.4 1.6
取得率 31.8% 13.0% 17.9% 32.4% 34.8%

男性の育児休業取得率
2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
配偶者が出産した者で休業を取得する権利がある者 22 23 28 34 23
うち休業を取得した者
休暇を取得した者の(平均)取得日数 1月 2週
取得率 0.0% 4.3% 0.0% 2.9% 0.0%

② 男性の育休取得率等の分析
 配偶者の出産休暇の取得率は高くなっているが、男性の育児参加休暇取得率は多くても3割程度にとどまっている。また、育児休業を取得している男性職員はほとんどいない現状である。
 特に、男性の育児参加休暇は、妻が産前6週から産後8週の間に取得できる有給休暇であるにもかかわらず取得率が低いため、こちらについても今後原因の分析が必要であると考える。

(3) 青年部アンケート
① 2021男性の育児関係休暇に関するアンケート
 青年部では、男性の育児関係休暇に関するアンケート調査を独自に実施していた。
 結果は、下記のとおりとなった。

Q3 Q2で「あまり取得するつもりはない」又は「取得するつもりはない」を選択された方にお尋ねします。取得するつもりのない理由をご記載ください。
 ・子どもがいないため育児休業の対象ではないが、自身の性格的に取得できる気がしない。
 ・業務体制上、まとめて休むのは難しい(人員数・業務分担)。妻が育児休業取得している。
 ・担当業務の代替人員がいないため。
 ・妻が育休を取得しているため。家計が苦しいため。
 ・交際や結婚・育児をするつもりがないから
 ・収入が減るため。妻が育児休業を取得し、祖父母の協力も得られるため。
 ・周りの取得率が高くないため。
 ・取得したいが、入庁(経験者枠での中途採用)1年目であるため、職場に慣れたり、仕事を覚えることを優先させたいから。ただ、今後チャンスがあれば取得してみたい。
 ・経済的に厳しい状況に陥ることが不安なため。
 ・育児休暇を取得すると、人事評価にマイナスになりそうだから。
 ・仕事が忙しいため。
 ・収入が減るため。
 ・共働きで、妻の収入が育児で落ち込んでいる中で自分まで休業してしまうと家計的に厳しい。
 ・人員調整がフレキシブルにできる環境ではない(事業課で一人ひとりが別の事業を担当している)ため、現状では「休業」という選択は難しい。また、取得できる職場環境ができていないため難しい。


Q4でのその他の意見
◆島根県の保守的な気質
◆社会全体で育児休業は女性が取得するものという意識が根強い
◆妻が里帰り出産をする場合の、妻の実家等の家庭の都合
◆職場(上司以外)からの理解が得られるか
◆所属部署が残業が多く、同僚に気を使ってしまう
◆男女問わず育児休業を取得するには同様の課題がある


※ Q5以降は、入庁後に子どもが生まれた方を対象としている
 育児休業について、取得したい、どちらかといえば取得したい、と回答した人は36人だった。あまり取得するつもりはない、取得するつもりはない、と回答した人は14人だった。まだ分からない、と回答した人は40人だった。
 育児休業を取得するつもりのない理由については、個人の性格や価値観によるもの、業務の忙しさや人員不足、職場環境によるもの、収入が減るから、人事評価に影響するのではないかという不安が意見として挙げられた。
 育児休業を取得するうえで課題と考えるものについては、同僚の業務量が増加するため気が引ける、代替人員がいない、という意見が特に多かった。また、収入が減るため家計が不安、という意見が次いで多かった。課題はない、と回答した人は0人であった。
② アンケート結果の分析
 青年部のアンケート結果から、青年層の4割は育休を取得したいと考えているとわかる。また、育休を取得するつもりのない人も、職場環境や収入面での課題があることから、取得をためらっている様子が窺える。育休取得の意向はかなり高い状況であると判断できる。
 一方で、育休取得にあたり課題がないと考えている人はおらず、多岐にわたる課題が育休取得率の低下を招いている状況がわかる。
 実際の育休取得状況についても、取得したかったができなかった、必要ないので取得しなかったとの回答があり、その理由として、家庭環境のほか、職場環境や収入面での課題が挙げられていた。育休を取得した人は、希望していた日数どおりに育児休業を取得できていること、希望したが断られたという事例はなかったことから、育休の申請段階でハードルがある状況が窺える。

3. 今後の活動方針

(1) 現状調査
 2. 男性の育休取得についての現状 で調査すべき項目として挙げたものについて、引き続き調査を行う。

(2) 調査結果の分析と追加の調査
 調査結果を分析し、男性の育休取得を妨げる原因を見つける。必要に応じて追加の調査を行う。

(3) 提 言
 男性の育休取得率を上げるための提言を行う。
 青年部の実施したアンケートの結果から、潜在的な育休取得希望者と実際の育休取得率との間には相当の乖離があることがわかる。より詳細に分析をし、育休取得率の目標設定も行いたい。