【レポート】 |
第39回静岡自治研集会 第3分科会 高齢者に優しい各自治体・地域の取り組み |
都市部では、少子高齢化、核家族化による独居老人の孤独死が問題視されています。地方においても高齢化や核家族化は進み、独居で住んでおられる方が増えつつあります。 |
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1. はじめに 隠岐諸島は島根半島の北方、日本海に浮かぶ4つの島と他の小島からなる諸島です。隠岐の島町は4つの島の中でも最も大きな島である島後(どうご)に位置し、総面積は242平方キロメートル、人口は年々減少しており、現在は約13,000人の町です。 かつて隠岐郡西郷町・布施村・五箇村・都万村の4ケ町村で構成されていましたが、2004年に町村合併し、現在の隠岐の島町になりました。 隠岐島は、自然、文化・歴史が多く残されており、2013年9月9日には『世界ジオパーク』に認定されました。 また、日韓をめぐる領有問題となっている竹島が属する町でも知られています。 人口は合併後に17,000人余りいましたが、減少傾向にあり、現在では13,666人となっています(2021年4月1日現在)。 隠岐の島町においても、例外なく高齢化が進んでおり、高齢化率約41%と、島根県内の高齢化率の平均を上回っています。 結果、独居老人宅の増加・地域のつながりが希薄となってきています。 こうした現状を踏まえ、隠岐の島町職員組合では10年以上前から地域ボランティア活動として、独り暮らしのお年寄りが気持よく新年を迎えられるよう年末に訪問し、窓ふきを行い、島の郷土料理「隠岐そば」をお配りしています。 2. 年末ボランティア活動の歴史 ボランティア活動は、"さわやか小さな親切隊"と題し、町村合併以前の旧西郷町職員組合時代の2001年から活動をスタートし、2004年の町村合併後も引き続き隠岐の島町職員組合として活動を続け、現在に至っています。また、2006年からは隠岐地区労働者福祉協議会との合同開催で他産別の労組の方々も参加し、100人以上がこの地域ボランティア活動に参加しています。 当初は年末ということでつきたての餅を配布していましたが、2006年からは組合壮年部活動で収穫したそばを使い、窓ふき前日に隠岐そばを作り、年越しそばとして配布しています。 昨年末は新型コロナウイルス感染症対策のため、そば作りを行いませんでしたが、感染症が落ち着けば今後も活動を続けていきます。 3. 年末ボランティア活動の内容 ボランティア活動は、"さわやか小さな親切隊"として独り暮らしのお年寄りの家に訪問し、窓ガラスをきれいにし、隠岐そばをお配りする事です。昨年末の活動は参加人数104人で、50戸のお宅を訪問しました。 参加者は、隠岐の島町職員組合を中心に自治労の他単組であるJP労組や電力総連、農団労等、島内の様々な事業所など、普段顔を揃える事のない面々が集まります。 訪問先は、居宅介護支援事業所の協力を得て、介護認定を受けている独り暮らしのお年寄りの希望を伺い、決定していきます。 訪問先が決定したら、窓ふき隊の班編成を行います。 当日、参加者全員が集まり、出陣式を行います。その後、班の準備が整ったら、各々家に向かいます。 訪問するお年寄りには耳の遠い方がおられるので、「こんにちは~、さわやか小さな親切隊です。窓ふきに来ました。」と、住んでおられる方を探すところから始まります。時間がかかる場合もありますが、必ずお話をしてから窓ふきを始めます。 訪問する家は、古い家が多くガラスもレトロ風で触るだけで割れそうなガラスもあり気を使います。また、年末ということもあり、水も冷たく時には雪が降ることもあるので、正直言って寒いです。 しかし、お爺さん・お婆さんたちの姿を見ると、そうも言っていられません。 家の外側、内側とまんべんなく窓ふきをしていきます。 数人で作業するため、一軒あたり30分ほどの作業です。 窓拭きも終わり隠岐そばを渡すと、とても喜んでくれました。隠岐そばならではの、特製のさば出汁付きです。 「良いお年を迎えて下さいね」とお渡しします。 すると「これを食べなさい」と、我々にお菓子や飲み物をいただいたり、お互いに温かい気持ちになることができました。 4. 年末ボランティア活動を振り返って このボランティア活動は“さわやか小さな親切隊”と題し、今年で20年目になる隠岐の島町職員組合の自治研活動です。参加者は毎年100人を超えており、多くの皆様のご協力により、活力ある地域づくりに取り組めています。 参加者が集まらないと、このボランティアは成り立ちません。 さわやか小さな親切隊は、ボランティアである上に身体的に辛い内容ですが、毎年これだけご参加いただけるのは、参加者の皆様の心の中に、地域のため、地域に住む人のため"小さな親切"がしたいという気持ちが奥底にあるからだと思います。 この活動により、一人暮らしのお年寄りのお手伝いができるだけでなく、我々も気持ちの良い活動ができる。活力ある地域づくりができる。 こんな素晴らしい活動を続けていけるよう、今後も取り組んでいきたいです。 5. その他(当日の写真)
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