1. ひた健康運動リーダー(住民ボランティア)の概略
(1) 概 略
ひた健康体育大学及び大学院の卒業生、養成講座卒業生の会。住民の健康長寿を目標に、地域での介護予防教室の企画・運営を行い、保健師とともに活動している。
2. ひた健康運動リーダー(住民ボランティア)の養成目的と経過
(1) 養成目的
高齢化率が全国を大きく上回っている状況の中、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で日常生活を営むことができるよう、介護予防がさらに重視されることに伴い、地域における介護予防の推進、住民が住民を支える仕組みづくり(地区組織)が必要であると考え、地域で暮らす住民を対象に「運動」を通して介護予防・健康づくりを推進する運動ボランティアを養成。多くの住民が地域で介護予防できることをめざし活動支援を行っている。
(2) 養成の経過
2005年 ひた健康体育大学、大学院(1期生)講座修了者51人
2006年 ひた健康体育大学、大学院(2期生)講座修了者35人
第1期、第2期のリーダー登録者67人により「ひた健康運動リーダーの会」を発足。
2007年 ひた健康体育大学、大学院(3期生)講座修了者24人
2012年 ひた健康運動リーダー養成講座(4期生)講座修了者20人
2016年 ひた健康運動リーダー養成講座(5期生)講座修了者9人
2017年 ひた健康運動リーダー養成講座(6期生)講座受講生20人
2018年 ひた健康運動リーダー養成講座(7期生)講座受講生9人
2020年 ひた健康運動リーダー養成講座(8期生)講座受講生10人
2022年 ひた健康運動リーダー養成講座(9期生)養成予定
(3) ひた健康運動リーダー養成講座の内容
<ひた健康運動リーダー養成講座>
① 回数:全7回(養成講座修了者には修了証交付)
2~3回 地域での活動実践に参加し実習
② 内容:高齢者の健康づくりについての講話
・日田市の健康課題
・高齢者の健康づくりリーダーとしての役割
・高齢者の栄養
・歯の健康について
・運動実技(運動実技テストあり)
③ 講師:健康運動指導士、健康運動実践指導士、栄養士、歯科衛生士
<運動実技研修>
① 回数:全3~4回
② 内容:運動実技の定着
③ 講師:健康運動実践指導士
3. ひた健康運動リーダー(住民ボランティア)の活動
(1) 会員数
67人(2022年7月1日現在)
(2) 活動内容と活動実績
主に運動を通して、地域の介護予防を推進している。活動は、各会員が地域の実情に応じて行っている。
① ひた健康運動リーダー研修会の開催と参加
<2021年度研修会>
・回数:6回(コロナ感染対策により3回中止)
・内容:栄養講話、歯の健康、フレイル予防、運動実技
・参加人数:延べ106人
<2021年度フォローアップ研修会>
・回数:3回
・内容:運動実技研修
・参加人数:延べ46人
<2021年度役員会および班会議>
・回数:10回
② 地区での介護予防教室の企画・実施
・会員が立ち上げたミニデイやサロン ・ふるさとまつりなどの地域でのイベント
・民生委員、自治会、老人会との協働 ・地区担当保健師との協働実施
<2021年度実績>
・回数:348回
・延人数:4,122人
③ 地域介護予防活動支援事業(生きがいサロン事業)利用者への運動指導の実施
<2021年度実績>
・回数:156回
・人数:1,100人
4. 災害時・新型コロナウイルス流行下での活動
(1) 災害時のひた健康運動リーダーの活動
2017年7月九州北部豪雨災害においては、長期化した避難先での高齢者のフレイルが心配された。避難所生活が長期化する中、「自分たちにできることはないか」と被災地区の運動リーダーから声があがり、避難所へ出向き避難者と共に運動を行った。また、2020年7月の豪雨災害時では『健康体操』の動画を作成した。避難所には保健師、管理栄養士が巡回し、健康チェックを行うとともに、作成した動画を定期的に流し、運動の動機づけを行った。
(2) 新型コロナ流行下でのひた健康運動リーダーの活動
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、集団を対象とした健康づくり事業の実施が難しい状況が続いた。ひた健康運動リーダーの地域での活動においても「コロナの感染が恐くて取り組みづらい」という意見も多く、リーダーの活躍の場が減少した。そこで健康運動リーダーと話し合い、住民の外出自粛が長期化する中、いつでもどこでも運動に取り組めるよう、2020年4月に地域で実践している「健康タオル体操」を地元有線テレビで放送した。また、2020年6月から日田住民に馴染みのある「日田市歌」に合わせて行える簡単な運動についての動画を作成。地元有線テレビだけでなく、SNSでも発信し運動習慣動機づけのため、普及啓発を図った。
5. 地区組織を巻き込んだ保健活動の意義
(1) 「自分の健康を維持増進したい」という思いから「家族、地域の人のために役立ちたい」という思いへの変化。そのことが地域を元気にする
ひた健康運動リーダー養成講座に参加したきっかけが「自分自身の健康づくりのため」という思いが強かった住民も、養成講座で学んだことを家族に伝えたり、友人に伝えたりしていく中で意識の変化がみられた。健康運動リーダーになってからは、リーダーが活躍する姿を見て、地域の人々のために運動を伝えていくという使命感が徐々に生まれ、活動の意義を見出し、継続につながっているものと考えられる。住民組織の育成は住民同士が互いに健康を維持増進していく能力を引き出すことにつながっている。
(2) 日々の活動から住民の主体性が生まれピンチを乗り越える
ひた健康運動リーダーとして地域介護予防活動支援事業(生きがいサロン事業)利用者への支援をしていく中で、参加前には担当者同士が早めに集合して打ち合わせをしたり、運動リーダー同士で実績報告書をまとめながら活動の反省や改善点を見出していく姿が見られる。このような主体的な活動姿勢により、災害や新型コロナ流行下で活動が難しい中でも、何か工夫して取り組めることはないか運動リーダーから声があがり、保健師と協働しての動画作成など、できる活動を見出すことができた。
(3) 身近な住民が実践しているからこそ「自分も取り組もう」と思わせる仕掛け、人から人への広まりが、継続の力となる
ひた健康運動リーダーの養成講座にあたり、自ら申し込んでくる住民もいるが、同じ地域のリーダーに声をかけられたとか、友人のリーダーに誘われて申し込んだという声を聞くことが多い。いわゆる「口コミ」が住民の気持ちを動かす効果の一つとして考えられる。身近な住民が運動に取り組んでいるから「自分も取り組めそう」と運動へのハードルが下がり取り組みやすさにつながっていくと考えられる。
6. 住民とともにつくりあげる健康づくりの展開における保健師の役割
(1) 保健師の役割
① ひた健康運動リーダーが自信をもって地域で活動できるよう、定期的に研修会を行い健康情報の発信と運動技術の定着を支援する。研修会は運動リーダーができる限り自主的に参加できるよう企画から運営まで運動リーダーが参画できるようにする。
② ひた健康運動リーダー自らが、健康を維持し人から人へと広めていくことが、地域を元気にしていくという意識づけをする。そのためには、ひた健康運動リーダーの活動を認め、地域で活動した効果を一緒に振り返る。
③ ひた健康運動リーダーが地域で活躍する場の発掘と仕掛けづくりを行う。保健師が地域に出た時は地域の情報をキャッチしひた健康運動リーダーと課題を共有し、地域に運動が定着するためにはどのような工夫ができるのか思いを共有できる場を設定する。
④ ひた健康運動リーダーが日ごろの活動の中で困っていること、気になっていることを相談しやすい関係づくりを心掛ける。
7. 終わりに
ひた健康運動リーダーの会が立ち上がって15年が経過したが、現在でも健康づくりの推進に欠かせない住民組織の一つだ。自然災害や感染症の拡大などで思うように保健事業が展開できないピンチの時に力になってくれたのが一番身近な住民組織、いわゆる住民の方々である。今後も住民組織の育成に携わる中で人をつなぎ、動かすためのスキルやスタッフの資質向上と自己啓発は必要不可欠と考える。
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