【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

 自分のミッション、やりたいことがそこにありました。地域の人とのつながり、それを活かした旅行会社「旅のわツアー」の起業から見た、地域おこし協力隊の活動への取り組みと、支援の在り方についての一つの考え方、そして、そこから自分や自治体の「次に活かす」希望を報告します。



地域おこし協力隊の活動から、
目標、夢の実現に向かって
―― 旅のわツアーを次に活かす ――

秋田県本部/後藤 正勝・佐藤  剛

1. 秋田県湯沢市

 湯沢市(ゆざわし)は、人口4.3万人秋田県南部に位置する市であり2005年に湯沢市・雄勝町・稲川町・皆瀬村が合併し、新しい湯沢市が発足しました。「世界三大美女」の一人に数えられている小野小町の生誕の地として伝えられる秋田美人の里として知られています。
 また、湯沢は温泉地が点在する出湯の宝庫として知られ、小安峡大墳湯や川原毛地獄など地熱エネルギーが地表にあらわれる雄大な自然が見どころで、観光スポットとしても特に人気があります。豊かな自然に囲まれる一方で、冬には厳しい環境となりますが、その雪深さがもたらす清らかな水はブランドとして確立される農作物や物産品を生み出します。三関セリやサクランボをはじめ、黒毛和牛の三梨牛や皆瀬牛も絶品です。現在では日本三銘うどんの一つと称され、350年の歴史がある秋田を代表する名産品「稲庭うどん」は、良質な小麦粉、塩、澄んだ水のみで丹念につくられ、この上なく上品と昔から食通の皆様の評価も高く全国的にも有名です。

2. 湯沢市の地域おこし協力隊

 湯沢市は、地域おこし協力隊を2013年4月から委嘱を開始。地域資源をコーディネートし、地域の方々とともに地域創生に向けて活動できる人材を募集しました。現在は、1人が小安峡温泉地域のとことん山キャンプ場などのアウトドアコンテンツを生かしたエリアデザインを行っています。

3. 旅のわツアーについて

(1) 旅のわツアーの立ち上げ
① 齋藤さんの経歴
 旅のわツアーの代表、齋藤あゆみさんは、秋田県にかほ市出身で、高校卒業後、北海道の大学に進学し、在学中、海外のボランティアやスタディツアーに参加。1年間オーストラリアへ渡航し、バックパッカーやボランティアなどを経験。その後、大阪、東京で働いていました。
 2019年4月より秋田県湯沢市の地域おこし協力隊として委嘱され、湯沢市地域おこし協力隊として活動しながら、2020年2月より地域限定旅行事業者として旅のわツアーを設立。3年の任期が終了した現在、旅や観光を通して地域経済活性化につながるプロジェクト、イベントやツアーの企画運営に取り組んでいます。

② 旅のわツアーの立ち上げ
 「人は人との出会いで変わり、成長する。」「人と人が繋がることによって新しい価値が生まれる。」そんな人が繋がり冒険のような新しい世界を体験し、思い出に残るような旅を共に創りたい……という思いから、旅のわツアーを起業しました。旅のわツアーで繋がっていただいた方々と共に楽しみ学び合い、お互い理解しあえる「和」ができ、そんな人間関係の「輪」が、旅を通して拡がっていって欲しいという思いが「旅のわツアー」に込められています。

4. 地域おこし協力隊の活動について

(1) 湯沢市での地域おこし協力隊活動について
① 湯沢市を選んだわけ
 一番には、自分のやりたいことと、湯沢市の地域おこし協力隊のミッションや雇用形態(委嘱)が合っていたことが挙げられます。自治体職員という雇用だと、任用期間中はその地域で生活し活動はできても、起業してそこに根差すといったところまではできなかったと考えます。また、協力隊自体が目的だと、3年の任期で終わり、となっていたと思います。
② 湯沢市で起業できたわけ
 ちょうどコロナの時期に重なってしまいましたが、だからこそ、人と人をつなぐ手段として旅行が欲された時期ではなかったでしょうか。また、旅行業界は大手が多く、国内外で多くの観光客を動かすツアーはなかなかできなかったと思いますが、旅のわツアーは、企画から実施までニーズを汲み取り柔軟に対応することによって、自分の色を出せるところが強みでした。
 さらに、地元の人や事業者とのつながりが多く、その分いろんな人の個性が感じられるようなイベント等を企画したことで、そこからまた人のつながりが生まれているという好循環を創出することができたと感じています。
③ 市の支援で助かったこと
 地域おこしは、行政と地域の協力関係が不可欠と考えます。
 湯沢市では、1年目からイベントなどを通じて自分と地域の人がつながりをつくってくれました。
 また、委嘱とはいえ初めは行政の仕事も行いました。職場での仕事を通じ、行政の仕組みを知ることができ、自分の意見を出す場がありました。その中で、何かやる際は色々な仕組みを知るということが大事であることを知りました。

(2) 今後の地域おこし協力隊活動について
① 地域おこし協力隊は持続可能な活動か
 地方自治体が地域おこし協力隊をどう活用するかによって変わってくると考えますし、地域おこし協力隊と地域住民がお互いにとってプラスになっていかなければ、継続して活動することは難しいのではないでしょうか。
 さらに、地域おこし協力隊がやりたいことと、地域住民が求めていることを同時に達成できる「マッチングが重要」と考えます。
② 今後の地域おこし協力隊に求めること
 地域の求めていることと、自分の求めていることとのマッチングがないと協力隊に応募しない、または続かないと考えます。
 観光と移住は違うので、自分のやりたいこととのマッチングやその地域での生活を見通すことが地域おこし協力隊には必要ですし、地域に来てくれた協力隊を仕事と生活の両面で支援していく、弾力的なメニューが行政には必要かと思います。

(3) 今後の自身の活動について
① 湯沢市との共生
 湯沢市の人たちは、人があたたかく、稲庭うどんや川連漆器といった伝統があり、同じ何かをつくるにしてもそれぞれの経営者の色がでています。個性があるということは、その個々人の、人のつながりを通じて学ぶことがたくさんあると考えます。
 湯沢には、秋田県内の人でも知らない魅力があります。それを、イベントやツーリズムを通じて広く伝えていきたいと思っています。また、地域の方が地域外の方と交流することで新たな気づきもありますので、それをフィードバックして、次に活かすということを続けたいと思います。