【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

 山形県唯一の離島である飛島は、1963年に鳥海国定公園に指定されており、豊かな自然環境と特色ある動植物に恵まれている。狭い地域のなかで、極めて特色ある自然資源を有しており、それらがそのまますぐれた観光資源となっている。一方、年々島民と観光客の減少が続いており、観光面をはじめとした離島振興という喫緊の課題がある。それらを踏まえたうえで、飛島の現状と離島振興における課題についてレポートする。



飛島の現状と離島振興における課題
―― 持続可能な離島へ ――

山形県本部/酒田市職員労働組合・調査自治研究部 五十嵐友樹

1. はじめに

(1) 飛島参考データ
 飛島は、酒田港から北西方向に約39km、遊佐町吹浦港から約30km、秋田県象潟小砂川から約29kmの日本海上に、カンカン帽子を伏せたように浮かぶ山形県唯一の有人離島であり、周囲10.2km、面積2.75km2の小さい島である。
 周囲には御積島(おしゃくしま)や鳥帽子群島などの島々や岩礁が点在しているが、飛島本島以外はいずれも無人島である。
 飛島は、山形県の最北に位置するにもかかわらず、年平均気温は12.7度と山形県のなかでは最も高く、積雪も10cmに達することはまれ。これは、日本海を北上し島のまわりを流れる対馬暖流によるもの、島の標高が低いためその影響が著しく表れている。
 1950年に市町村合併により「飽海郡飛島村」が「酒田市飛島」と更正された。
 島内人口は2022年3月31日現在で174人(112世帯)であり、統計上一番人口が多かった1940年の1,788人から10%までに減っている。飛島の漁獲物の多くは酒田港等の本土の港に水揚げされる。また、島内には小中学校があるが、高校通学者は島を離れて通学が必要となるなどの事情から、ほとんどの飛島住民は本土にも家を持っている。島には老夫婦が、本土には若夫婦が居住する構造の核家族化している。
 酒田市のなかでも飛島における高齢化傾向は著しい。対照的に、14歳以下の年少人口は激減している。2022年3月31日現在の飛島の平均年齢は66.9歳で、2016年4月から小学校が、2019年4月から中学校が休校している。

(2) 飛島の観光
 飛島は、1963年に鳥海国定公園に指定されており、豊かな自然環境と特色ある動植物に恵まれている。狭い地域のなかで、極めて特色ある自然資源を有しており、それらがそのまますぐれた観光資源となっている。全国的に離島ブームに沸いた1970年頃から1975年頃にかけて、ピーク時には、年間3万人近くの観光客が訪れていたが、年々その数は減少し、近年では1万2千人程度で推移している。
 市直営の定期船「とびしま」(現在の船は2010年就航 253t、230人定員)が唯一の公共交通機関であり、島南部の勝浦港と本土酒田港との間を75分で結んでいる。この定期航路は、島民の生活航路であると同時に、観光航路としての性格も持っており、通常期は1日1往復、観光シーズンには2~3往復の運航となっている。通常期の発着時刻では、飛島での滞在時間が短く、日帰り観光客の受け入れが難しい状況となっている一方、旅館や民宿での昼食提供や、とびしま未来協議会が開設した「しまかへ」などにより改善が図られ、島の活気につながっている。島内の散策には公共交通がなく、無料の観光用自転車を貸し出している。
 また、2016年9月9日、秋田県と山形県の環鳥海エリアの3市1町で構成する鳥海山・飛島ジオパークが日本ジオパークネットワークへ加盟認定され、今後ジオパークの視点からの観光振興や地域振興が期待されている。

2. 酒田市職員労働組合 調査自治研究部会としての取り組み

(1) 離島振興に関する課題研究のための飛島現地調査
 離島振興に取り組む前に、離島の課題は何かがおぼろげであり、現地を見てみないことにはわからないとの議論があったことから、部会として飛島現地におもむき、今の課題は何か、現状はどうなっているかを調査することとした。
 本来は1泊2日の予定で、現地の組合員からの聞き取りや、複数の島民へのインタビュー等を行うこととしていたが、天候悪化により、やむなく日帰りでの現地調査となった。
◎日時 2022年6月11日
◎調査員(研究員)五十嵐友樹・佐藤茂雄・庄司雄介・小林慶太
◎内容 離島への公共交通の状況調査、コミュニティ振興会会長インタビュー、島内施設・史跡調査
① 飛島までの公共交通機関の状況調査(往復移動時)
 離島である飛島地区への移動は、一般の公共交通機関として市が運営する定期航路を利用する。
 定期航路は、一年のほとんどを1日1往復の運行である。観光ハイシーズンに2往復や、臨時ダイヤを組む場合がある。食料品をはじめ生活必需品、車両など、島民や観光客に欠かせない物資の輸送も担っている。
 飛島側の港の状況から、喫水線以下の深さに制限があり、乗船人数との兼ね合いから、湖沼での利用が多い双胴船が選ばれている。冬季間の出向率は低く、さらに北海道知床沖での事故を受けて、厳しい出欠判断が影響を及ぼしている。
② コミュニティ振興会会長インタビュー
 飛島は、勝浦・中村・法木の三つの地区自治会がある。三地区を合わせ一つのコミュニティ振興会が運営されている。
 このコミュニティ振興会会長の本間さんにインタビューを行った。(以下、インタビューメモ)
 ・1年に2回、島民や元島民がお盆などに集まり賑わっていたが、墓自体を本土に移転するうちも出てきている。島内は、在島実数では100人くらいと見ている。
 ・自分は、Uターン者や移住者などの若い人と、旧来からの島民との繋ぎ役として活動している。50~60代が少ないので、繋ぎ役の人材が欲しい。高齢者の一人世帯が多く、自分の生活で精一杯の状況。島民としての担い手、動いてくれる人がいればと思う。
 ・移住者の状況 空き家を自分の住処として自分で直して住んでいる。
 ・定期船の運賃も高いため、移住のネックになっているのでないか。
 ・島西側のメイン道路である農面農道の草刈りを、自分達だけではできなくなってきている。
 ・移住者がやっていける仕事がないと……漁師も農家も高齢者が多い。
 ・特産物(飛島ならでは、飛島にしかないもの)を作る必要がある。旅館、民宿も減って宿泊施設も必要な状況。いろいろ組み合わせて、グループで生業として生活していけるように。
 ・北海道知床の事故以来、定期船の出航率が低くなって動きが悪い。マイナス要素をプラスにしていけないものか。定期船は生活の支えである。運賃がかかるイメージ。高い。
 ・島民相手の商売が難しくなっている。外貨(観光)で稼がないといけない。
 ・観光業はコロナの影響はモロに受けている。
 ・お祭りができなくなってきている。宮司一人で、各地区の祭りを対応している状況。
 ・(無医村であるが、)看護師さんががんばってくれている。介護の問題もある。
 ・作物は、いろいろなものがいけるのではないかと思う。挑戦してくれる人が欲しい。
 ・島内で共同でやることの難しさを痛感。
 ・市職員への期待
 自分は、消防団も担っていることから、消防職員の配置を希望して、配属になっている。いないと大変だ。助かった。木造住宅が密集していることから、火災が一度起きれば大変な事態になる。消防団幹部の担い手がおらず、自分も長くやった。先頭に立つ人がいれば……(職員が)2年交代でいてくれるのがありがたい。消火(延焼防止)用の広場設置は良かった。
 ・(定期船が出ない荒天時に本土へ移動は?)
 自分の船で渡っている。
 ・最後に(飛島の良いところは?)
 ゆっくりできることだ。
③ 島内施設・史跡調査
 勝浦地区 定期船発着の主要港である飛島港、リニューアルした「しまかへ(カフェ)」や売店が入るマリンプラザ、海水浴場、上水道浄水場、発電所、漁協、郵便局、診療所、宿泊施設など集中している。
 上水道浄水場では、当該上下水道職場の研究員から高度浄水処理施設と料金と原価について、概略説明を受ける。

 中村地区 休校中の飛島小中学校、一千年前の人跡テキ穴、集落、漁港、市の総合出先機関であるとびしま総合センターが所在。鳥海山の眺望点や巨木の森を起点に遊歩道がある。

 法木地区 好漁場のある漁港、集落。中村地区から一山越え、八幡崎展望台や渚の鐘他能面農道沿線・島内部の観光施設に近い。

 農面農道沿線 平家の落人伝説「源氏盛 平家盛」、飛島灯台、ヘリポート、山グラウンド、蕨山遺跡、ごどいも畑がある。

 なお、時間の関係上、漂着ごみの問題をかかえる西側の海沿い遊歩道は未調査となった。
④ まとめに代えて
 本来であれば一泊二日の行程で、移住者インタビューや在島組合員との懇談、ワーケーション調査(釣り体験)など、そのほか各種調査を予定していたが、残念ながら翌日から悪天候で回復見込みなく、日帰りとなってしまった。再訪しなければという思いを参加者全員で強くしたところである。
 コミュニティ振興会会長インタビューでは、交通の便が良くならないと観光も移住も難しいということ、また、飛島ならではの特産物の必要性を強く感じていることが窺われた。
 居住人口が減っている中、フルセットの行政サービス・暮らしの実現は難しい。本土と島の二拠点生活で「いいとこどり」を模索する時期に来ているのかもしれない。


飛島水道の説明を酒田市水道労働組合員でもある小林研究員から聞く

コミュニティ振興会会長へのインタビューの様子

(2) 今後の取り組み
 1日のみの現地調査とはいえ、様々な課題が見つかったことから、今後の取り組みも方向性が見えてきている。
 今後も、飛島に関わる現状を知ることがまずは大切であり、組合員自身もより多くが飛島について知ることが離島振興の課題の改善の一助にもなると考える。例えば、
① 飛島の特産品関係における、県の事業について調査。
② 飛島の現地組合員との交流も含め、要望されている現地ボランティア活動に、飛島に行ったことのない組合員を中心に参加。
③ 引き続き、飛島の現地調査を行う。
等の当面の取り組みを通して、引き続き、喫緊の課題である離島振興について研究を進めていきたい。

3. まとめ

 離島振興という非常に大きな課題に対して、どのように取り組んでいくのか、どう研究していくのか、難しい議論になりがちではあるが、百聞は一見に如かずであり、実際に現地を見て島民に聞き、今、この島に何が求められているのか、人口減少時代のなかで、地域コミュニティの維持のため、どのような取り組みを進めるべきなのかは、離島を持っている地域にとっては同様の課題であると思われる。
 それぞれの地域の特性を活かし、離島振興、活性化につなげていくことは、住民自治の実践であり、現在の日本における一極集中型の社会とは違い、地方自治が確立される社会につながると言える。引き続き、取り組みを通し、地域に根ざした運動を継続していくことが重要だと考える。