【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

 大野市シルバー人材センターは、地域の高齢者が長年培った知識・経験・技能を生かして就業することにより、豊かで積極的な高齢期の生活と社会参加による生きがいを促進するとともに、地域に活力を生み出し、地域社会の福祉と活性化に寄与することを目的として、就業を希望する高齢者(会員)に、働く場を提供しています。特に、私たち大野市シルバー人材センターの取り組んでいる、農業の六次産業化事業は「女性が『生涯現役』で誇りをもって働ける機会を提供としている」と高い評価を得てきました。今回このような取り組みが評価され、女性のチャレンジ支援賞を受賞しました。



「女性会員を中心とした六次産業化に対する取り組み」を支援
―― 女性が「生涯現役」で誇りをもって
働ける機会(事業)を提供する ――

福井県本部/大野市シルバー人材センター職員労働組合

1. 大野市シルバー人材センターの成り立ちと特徴

 大野市シルバー人材センターは1988年5月に設立されました。
 奥越地域は繊維産業が盛んだったこともあり、元来女性が外で働くことは当然の風潮がありました。
 そのような風土もあり、センターにとっては設立当初から女性会員も多く、女性が入会することに対する抵抗は少なかったように思います。
 「与えられる仕事を待つだけではなく、自らも事業を起こすことが、センターの発展につながる」という当時の理事長の方針もあり、独自事業には積極的に取り組んできました。
 33年が経過した今、そのことは輝かしい現実となり、この度の受賞につながっています。事業を中止したり、中止していたものを再開したり等の紆余曲折を繰り返しながら、現在では17の様々な独自事業を実施しており、2020年度実績では、「独自事業全国1位」を達成しました。

2. 販売~生産~流通

(1) 女性活躍のきっかけになった「ねんりんの里」の誕生と支店増設
 2002年に市の補助事業を活用し、空き店舗を改装して、会員が気軽に集まることができる憩いの場として「野菜の直売所 ねんりんの里」を開設しました。当初は女性会員によるボランティアでの店番をスタートしましたが、2010年には有償化し、女性店長を中心とした会員主導による運営が本格化しました。その後支店を増やし、現在ではそれぞれの女性店長の下、女性当番が活躍しています。
 「ねんりんの里」では、レジを導入せず独自の方法で運営を工夫しました。この工夫により後期高齢女性でも気軽に当番ができ、女性活躍事業の先鋒となりました。

(2) 農産物の集荷事業「ふるさと畑」に着手
 2009年には県の補助事業を活用し、運搬手段のない会員の農作物を集荷し販売する事業を開始しました。「市場にも出回らず自家消費もされない野菜」を集荷することは無駄がなくなる一方、女性生産者も自分の作った野菜が消費される喜びを味わうことができ、生きがい創出につながりました。80歳以上の女性が野菜出荷を目的に一度に20人余り入会し、まさに、経験を生かした『人生100年・生涯現役』を実現しています。
 この取り組みが地産地消の更なる拡大と本格的な六次産業化の一歩となりました。

3. 食品加工と六次産業化

(1) 大野の伝統的な食文化の伝承
 集まってきた野菜は販売だけではさばききれず、新たな食品加工の事業に着手しました。
 廃校になった小学校の給食室を大野市より有償借用し、集出荷された地場野菜を使用し、地元"おおのの手作りの味"を追求した「みそ」「梅干し」「漬物」「おはぎ」等に加工する事業や、大野の特産品を使用し「新しい味を」追求した商品を開発するための第2の加工場を開設するなど、積極的に事業を展開しています。地元の女性が培った味を後世に伝えることは、大野の伝統的な食文化の継承にも繋がっています。

(2) 独自事業のイノベーションと六次産業化
 独立していた、「生産」、「食品加工」、「流通・販売」のそれぞれの事業をグループ化し、六次産業化を促進させました。グループ化を進める中では反発や種々の問題も発生しましたが、合同定例会のたびに「この事業は広く地域に貢献していること。大野市になくてはならない事業だ。」ということを伝え続けました。そして事業が連携することにより、それぞれの強みを生かした事業展開を行うことが、「会員のやりがいと事業の拡大」につながりました。
 ねんりんグループへの組織改編により、本格的に六次産業化を推進していきました。

4. 事業拡大と世代間交流

(1) お休み処「ねんりん茶屋のーそん」と「まごころ弁当事業」
 「大野らしいおもてなし」をコンセプトにお休み処をオープンさせました。中心となる女性会員と共に地元産食材を中心としたオリジナルメニューを考案し、市民や観光客に提供したところ大変好評を博しています。メニューをレシピ化したことにより、今まで働いたことがない専業主婦の方でも気軽に取り組めるので、女性の活躍場所の確保に大きく貢献しました。
 また、国の補助金を活用し、「市内の高齢者や働く人たちを弁当で支える事業」を開始しました。食材は、ねんりん店舗の野菜が中心で「体に優しい家庭の味」が好まれています。
 「会員が育てた野菜を会員が調理し、会員が届ける」六次産業化の賜物です。

(2) 高校購買での昼食販売事業
 市内にある2校の高校より依頼を受け、地元食材を使用したメニューを取り揃え、昼食販売にも取り組んでいます。生徒さんの喜びの声が励みになり、調理に携わる会員の元気の源になっています。

5. 女性活躍の集大成

(1) 「ココ・のーそん」道の駅への出店
 「地域の課題、地域から求められていること」に対し、皆で真剣に取り組み全力で応える。そしてチャレンジを続けることが大野市シルバーの独自事業の発展につながってきました。
 そして、六次産業化のさらなる拡大と女性活躍の場を増やすことを目的に2021年4月、大野市に開駅した道の駅にテイクアウト店「ココ・のーそん」を出店しました。
 今までの事業で女性会員が培ってきたノウハウを生かし、知恵を集結し、「手作りの大野の味」を楽しんでいただくお店です。
 ここで働く女性会員は、他の事業の想いを受け止め、時には先輩会員に叱咤激励されながらも、生き生きと頑張っています。とても輝いています。

6. 女性のチャレンジ支援賞を受賞

 このような取り組みが評価され、「令和3年度内閣府女性のチャレンジ支援賞」を受賞しました。

(1) 丸川大臣と受賞者との意見交換会に参加
 丸川珠代内閣府特命担当大臣(男女共同参画※当時)から、「シルバー人材センターは受け身のイメージがありましたが、自らで活躍の場・事業を作り出されていることは素晴らしいです。多様な広がりのある六次産業化、アイデアを皆さんで持ち寄り、より多くの方々が関わっていただける場となることを心から願っています」と。嬉しい言葉をいただきました。

(2) 石山大野市長を表敬訪問
 石山志保大野市長は「大野市SCの取り組みが、大野市に元気を与えてくださっている。とても感謝しています。」と、受賞を一緒に喜んでいただきました。

(3) シルボンヌ全国大会IN TOKYO 2021での事例発表
 シルバー人材センターの女性会員が活躍している事例として、「女性の活躍が地域を変える」と題し六次産業化の取り組みを紹介しました。
 参加者から、地域の特性を生かし、地域に密着した素晴らしい取り組みとの声をいただきました。

7. 最後に

 高齢者の活躍が地域を元気にする。自分たちの活動を改めて振り返った時に、シルバー人材センター事業そのものが、持続可能な地域づくりをめざすSDGs達成に向けた取り組みとなっていることに気づきました。
 これからは、より強い意志を持ち地域社会の中で求められている役割を果たしていきたいです。
 「チャレンジに限りはありません!!