【レポート】

第39回静岡自治研集会
第7分科会 まちおこし ~持続可能な地域づくりの取り組み~

 人口減に歯止めがかからない津久見市は、大規模事業が相次いで計画されている。その中にあって、市民に大きな波紋を投げかけているのが新庁舎建設である。多額の負債を抱えることになり、将来にわたる財政の問題が顕在化することになると予想される。ここでは、新庁舎建設に関して、市民意見をもとに幅広い視野で分析し、課題を明らかにしていく過程を通して、その内容を吟味していくこととした。



新庁舎建設のあり方を問う
―― 市民の目線で見る新庁舎建設はどうあればよいか ――

大分県本部/津久見市議会・市民クラブ 谷本 義則・丸木 一哉

1. 基本計画について

(1) 基本計画策定の経緯
① 基本計画策定の協議を行う組織……新庁舎建設基本計画(素案初期)2020年9月 より抜粋
 ア 庁舎建設町内検討委員会(庁内検討委員会)
  委員:9人(委員長は副市長) 2016(平成28)年6月設置
 イ 庁 議
  構成員:26人(市長、副市長、教育長、課長級職員)
 ウ 庁舎建設専門家検討委員会(専門家検討委員会)
  委員:6人(外部有識者) 2016(平成28)年11月設置
 エ 庁舎建設市民委員会(市民委員会)……市議会議員傍聴可能
  委員:20人(6分野の各種団体代表者) 2017(平成29)年2月設置
 オ 市議会庁舎建設特別委員会(市議会特別委員会) 2019(令和元)年9月18日設置
  委員:13人(議長を除く全議員)
   庁舎建設に係る小委員会(14回開催 5/24時点) 2021(令和3)年4月15日設置
  委員:6人(議員から選出)

(2) 建設計画の推移
① 建設場所の決定……………2019(令和元)年9月定例会
   総合計画の変更の中に、庁舎建設の場所の決定が盛り込まれる。
② 設計業務委託決定…………2020(令和2)年2月20日
③ 基本計画の策定……………2021(令和3)年1月14日
④ 基本設計業務委託決定……2021(令和3)年3月19日
⑤ 基本設計の策定……………2022(令和4)年3月31日
⑥ 実施設計の策定予定………2022(令和4)年12月26日

2. 市議会の取り組み

(1) 庁舎建設特別委員会の設置……2019(令和元)年9月18日
(2) 小委員会の設置……2021(令和3)年4月15日

3. 市民クラブの取り組み

(1) 見解・資料の提出 
① 「新庁舎建設基本計画に係る資料」……2021(令和3)年2月 ※別紙・資料1
② 「基本計画における御坊市(和歌山県)との比較」……2021(令和3)年4月21日作成 ※別紙・資料2
③ 「庁舎建設に係る質問事項」……2021(令和3年)5月12日作成 
④ 「新庁舎建設基本計画に係る質問・意見・要望事項」……2021(令和3)年5月28日提出 ※別紙・資料3
⑤ 「新庁舎における議会棟に係る要望事項」……2021(令和3)年7月19日作成 
⑥ 「議会棟部分に係る意見及び指摘事項」提出……2022(令和4)年1月7日提出 

(2) 一般質問の取り組み
① 2020(令和2)年第4回定例会(12月議会)
 ・新庁舎建設について
 ア 建設場所は
 イ 建設費用は
 ウ 建設スケジュールは
② 2021(令和3)年第4回定例会(12月議会)
 ・事業費について
 ア 現在の総事業費の概算はいくらか
 イ 財源構成の予定はどうなっているか
 ウ 市が抱える借金は、いくらぐらいになるのか
 エ 借金の返済計画をどう考えているか
 オ 他の事業への影響をどう考えているか
③ 2022(令和4)年第1回定例会(2月議会)
 ・建設費について
 ア 建設費用は、いくらぐらいになるのか
 イ 借金の額と返済計画を、どう考えているか
 ウ 多額の借金返済に伴う、市民生活への影響をどう考えているか
 エ 建設費を減らす方法を、どう考えているか
 オ 建設資材が高くなった場合は、どう対応するのか……パネル使用①②③
 ・新庁舎周辺の整備計画について
 カ 総事業費を、どう考えているのか
 キ 整備の見通しは、どうなっているか
 ・新庁舎完成後、現庁舎はどのようにするのか

パネル①

パネル②

パネル③

(3) 取り組みの成果とこれからの課題
 人口減に歯止めがかからない津久見市は、大規模事業が相次いで計画されている。その中にあって、市民に大きな波紋を投げかけているのが新庁舎建設である。2023(令和5)年4月開校予定の新設中学校の増改築や、2024(令和6)年4月供用開始予定の市役所新庁舎建設をはじめ、2027(令和9)年稼働開始予定の新環境センター(大分市)への広域のごみ処理などである。
 建設場所においては、10箇所の候補地を挙げて、市民委員会や専門家会議で議論を重ね、現在の場所に決定した。しかし、基本計画から基本設計、実施設計へと計画が進むにつれて、次第に明らかになってくる財政状況との関連。いまだに市民の中には、なぜ港に連接するあの場所なのかを問う声も多い。さらに、建築総事業費32億3,000万円(2022年3月議会答弁)と聞くと、「そんなに借金を背負っても大丈夫か」「市民税が上がるのではないか」といった声も聞かれるようになってきた。この財源においては、「緊急防災減災事業債」が適用可能になり、7割の交付税措置が見込まれることから、有効に活用できることを願っている。
 この間、市民クラブは、分庁方式も含めて提案してきたが、あくまでも「全庁方式」の方針は変わることなく現在は実施設計段階に入っている。
 ウクライナ情勢が世界的に大きな影を落とす現在にあって、資材の高騰は避けて通れないと考える。このまま突き進めば、明日の津久見市の財政ひっ迫を招きかねないと考える。さらに市民との対話を重ね、市民サービスに影響が出ないような長期的視野に立った取り組みが必要であると考える。