【レポート】

第39回静岡自治研集会
第9分科会 SDGs×生活×自治研

 1976年に静岡県沼津市の職場自治研をきっかけに始まった「ごみの分別収集」から間も無く50年が経とうとしている。今では全国津々浦々で行われている分別収集や、その後の再利用(リユース)・再資源化(リサイクル)などに発展しているが、海洋プラスチック廃棄物問題など、一国にとどまらない問題が明らかになるなど、ごみの課題は複雑化、グローバル化している。
 この度、自治研全国集会が静岡の地で開催されることに寄せて、足下の自治体での家庭系ごみ問題について、現状と課題をレポートする。



ごみの課題は今
―― 家庭系ごみ分別収集の「それから」 ――

山形県本部/酒田市職員労働組合・調査自治研部 佐藤 茂雄

1. はじめに

 山形県酒田市では、家庭系のごみについて、委託業者による収集運搬と酒田地区広域行政組合で運営する焼却施設等での処分を行っている。高度成長期以前は各戸収集であったものを、1970年代に袋詰めステーション方式として可燃物と不燃物に分別収集、1990年代に入りごみ袋の指定と分別の細分化を行っている。現在は、各戸に配布のごみルール酒田カレンダーで、4種類の袋と紙類資源、廃食用油、水銀を含むごみの7分別で指定曜日・期日の排出と、粗大ごみ・多量ごみは有料処理を呼びかけている。また、小型家電や古着のイベント時の回収なども行われている。
 2020年、家庭系のごみ搬出量は25,009トンとなっている。
※ 酒田地区広域行政組合
 酒田地区広域行政組合は、衛生部門と消防部門を北庄内1市2町で運営する事務組合である。その衛生部門の前身である酒田地区クリーン組合は、1962年11月に設立。当時の酒田市、八幡町、松山町、平田町(以上、現 酒田市)、立川町、余目町(以上、現 庄内町)、遊佐町で構成。し尿処理施設、ごみ処理施設、最終処分場の設置、管理運営等を担う広域行政組合。2008年に酒田地区消防組合(現 消防部門)と統合し新設された。酒田市でごみ処理等を担当する市民部環境衛生課が同じ庁舎にある。

2. 家庭系ごみの分別と処理量の推移

(1) ごみ収集・分別方法の経過と現在
 家庭系のごみの収集や分別は、市民の生活の変化や環境負荷の低減など、時代の要請とともに変化してきている。ごみ減量や資源化に関連した動向と、分別の現状は次のとおりである。
・酒田市の指定ごみ袋制度以降の主な動向
 1994年 指定ごみ袋方式実施(可燃ごみと不燃ごみ)
 1996年 買い物袋モテモテ運動
 1998年 ごみ4分別化(可燃物、資源物(新:ペットボトル)、埋立、紙資源)
     ごみ出しカレンダー発行開始(図1
 2002年 新焼却炉の運転開始に合わせプラスチック類の可燃ごみ化
     ペットボトルの独立分別収集開始(5分別化)
 2003年 収集運搬を民間委託
 2005年 1市3町の自治体合併(組合参加団体)
 2007年 廃食用油の回収及びバイオディーゼル燃料化開始
 2008年 酒田地区広域行政組合に新設統合(衛生部門と消防部門)
     市内スーパーでレジ袋有料化開始
 2020年 容器包装リサイクル法により、全国でレジ袋の有料化開始
 2022年 プラスチック資源循環促進法により、事業者のプラスチック製品削減義務化

図1 ごみルール酒田カレンダーの例
ごみの排出の大まかなルールと、回収曜日等の年間予定が記されたカレンダーが、各家庭に配布される。

 筆者宅では、キッチンのカレンダーにはって活用中。

 下の図は、10月を拡大したもの。月曜日と木曜日がもやすごみの日。

 ・分別の状況と概ねの収集頻度
  「もやすごみ袋」    週2回 紙くず・木くず・衣類・生ごみ・プラスチック・ビニール
  「埋立ごみ袋」     月1回 ガラス類・陶器類
  「資源物袋」      月2回 空き缶・空きびん・金属類
  「ペットボトル専用袋」 月2回 ペットボトル(飲料・醤油のみ対象)(キャップはもやすごみ)
  「紙資源」       月2回 新聞・雑誌・段ボール・紙パック(汚れたものはもやすごみ)
  「廃食用油」      週2回 ペットボトルに入れて「もやすごみ」と同じ日に回収
  「水銀を含むごみ」   3、4ヶ月に1回 一般の透明な袋に蛍光管や電池などを入れる
  「粗大ごみ・多量ごみ」 回収申込または持ち込み 粗大は1辺20cm以上

 そのほか、食品発泡トレイや牛乳紙パックはスーパー店頭で回収も行われている。

図2 酒田市・遊佐町・庄内町指定 ごみ袋

(2) ごみの排出量の推移と傾向
図3 ごみ排出量と各種指標の比較
 家庭系のごみの収集や分別は、市民の生活の変化や環境負荷の低減など、時代の要請とともに変化してきている。ごみ減量や資源化に関連した動向と、分別の現状は次のとおりである。
 平成の市町合併前後では、2003年に32,676トンを記録して以降、現在まで減少の傾向が続いている。
 ごみの資源化や減量の効果とも言えるが、2000年から2004年以降の人口統計も減少の一途を辿っていることから、一人当たりの排出量は大きく変わっていないのではないかと推察される。
 そこで、人口や世帯当たりの処理量でトレンドを作成し、比較したのが図3である。
 総量と人口、世帯あたりが相似しているが、人口あたりでは大きな変化が見られない。
 世帯当たりでの減少傾向は、山形県は三世代同居率が高いと言われる中、世帯分離が進み核家族化や独居化により、世帯数は増加の傾向があるため、1家庭の構成人数減少による排出量の減少傾向にあるのではないかと推察される。
 続いて、前年比の増減率を比較してみたのが図4である。
 横軸中心が増減0%で上が増加、下が減少の傾向になる。
 人口は一定の減少傾向、世帯数は一定の増加傾向であるが、ごみの処理量は2007年以降マイナス側で推移するものの2012年と2014年にプラス傾向がある。2012年は東日本大震災の災害廃棄物の受け入れをしているが、2014年の増加はよくわかっていない。

図4 各種指標の前年増減率の推移

3. ごみの排出に係る課題

(1) ごみ発生の場面
 酒田市のごみの分別では、ビニール・プラスチックは「もやすごみ」となっている。環境負荷やマイクロプラスチック問題などを考慮すれば、石油由来で生物分解が困難、自然界に残存してしまうビニール・プラスチック製品の使用そのものを減らすことが効果的と言えるが、廃棄が容易であると使用を控えるというインセンティブが働きにくいのではないか。
 また、燃やしてしまうことで、CO2排出量の増加に寄与してしまう。

(2) ごみを集積・収集する場面
図5 とある自治会ごみステーションでのごみ出しの様子(自治会館脇にステーションを配置)

① 人間関係
 ごみの集積は、自治会や、自治会内の組単位等の集積所:ステーション方式が基本となっている。地域によっては、歴史的経過から自治会単位ではなく、通りに面する家庭単位であったり、自治会内での一定のルール化で集積場所を自宅前の輪番で行っていたりするところもある。
 筆者も経験があるが、ここに「自治会に加入しない問題」が絡んでくる。ごみ集積場所の維持管理を住民団体である自治会が行っていても、「加入しないし、ごみは出さない」といったやりとりがなされ、住民自治と個人の自由の間で、ごみ問題に発展する。
 また、地域外の市民が車両横付けで通勤経路のステーションに置いていく、ごみ出しルールを無視して自分の都合で排出する、分別しない混合状態で出すなど、モラル面での課題も見受けられる。
② 動物関係
 カラスやタヌキなど動物による集積ごみの散乱や、人との接触による事故、糞害も発生している。集積場所へのごみの所在時間を短くする、網をかけるなど取り組まれているが、①のルール無視と相まって、解決に至っていない。

(3) ごみ減量の難しさ
 2.(2)ごみの排出量の推移と傾向で見たとおり、総量は減少しているものの、一人当たりに換算・推定すると減少傾向とは言い難い状況が続いている。一方で、食品関係では一定期間の衛生管理の観点から廃棄や販売時点で包装せざるを得ないといった場面もあるのは確かである。事業系での食品ロスが話題になるが、家庭でも賞味・消費期限による廃棄が一定程度の量があるのは否めない。
 また、いわゆるレジ袋は2020年に全国で有料化がスタート、浸透し、マイバッグも珍しくなくなったし、筆者も袋なしで受け取ることが多い。これらにより、更なる生活様式の変化をさせることの難しさが、壁としてあるのでないか。
 生もの関係は肥料化、それ以外は簡易包装の徹底や再資源化、フリーマーケットに代表されるリユースの徹底、ペットボトル・空びん、自宅で飲料・食料を手作りなど対策が挙げられるが、自宅の冷蔵庫がわりにスーパーやコンビニを利用という「便利さの代償」があることを、筆者も含め自覚し反省しなければならない。

4. まとめに代えて

 以上、大まかな地域の現状と、身近に感じる課題をリポートしてみた。分別収集から間も無く半世紀になろうとしているが、画期的な解決法策を見出すことは困難と見られる。「ごみと資源は紙一重」、地道な日々の営みの中で、持続可能な「ごみとの付き合い方」が必要である。