【レポート】 |
第39回静岡自治研集会 特別分科会 今、必要とされる公共サービスと自治 |
2021年から全国で始まった新型コロナワクチン接種予約について、県の大規模接種、市の集団接種においても原則としてネット予約であること、コールセンターに電話してもつながりにくい等の問題が生じ、ネットに不慣れな高齢者層のワクチン接種予約ができない事態が生じていました。本レポートでは、ネットに不慣れな層でも、スムーズにワクチン接種予約を行えるよう地域に密着した公共サービスについて提言します。 |
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1. はじめに
福山市では、ものづくり産業を中心とした経済成長に伴う急激な人口増加に対応しつつ、市民生活や福祉の向上・充実を図るため、公民館やコミュニティセンター・館、ふれあいプラザなどの地域交流施設を整備し、今日の地域社会をつくりあげてきました。現在、市内79箇所の公民館・交流館、13箇所のコミュニティセンター・館が社会教育・生涯学習・人権啓発を基底として地域住民とともに地域活動の拠点としての役割を果たしています。 2. 公民館・交流館、コミュニティセンター・館における取り組み
ワクチン接種サポートを公民館、交流館、コミュニティセンター・館で実施したい旨を当局へ提案し、協議を重ねるなか、市民サービス向上につながる取り組みであることから、実施することにつながりました。実施に向けては、ワクチン接種予約の開始時期から時間的猶予がほぼない中、市民への周知文書、事務のマニュアル等を整理し、2021年6月10日より「コロナワクチン接種WEB予約の支援」を開始しました。開始初日、市内の各公民館、交流館、コミュニティセンター・館で多くの市民が申請に来館し、計524件の申請をサポートしました。市民からは「コールセンターに何度電話をかけてもつながらず、困っていた」、「スマホの字が小さく、操作できない」、「アドレスが分からず、結局自分だけでは申請できない」などの課題を抱えた高齢者を支援することで、多くの感謝の声をいただくことができました。中には一人暮らしで頼れる人がおらず、電話がつながらない中、支援によって予約ができたことに安心して涙ながらに喜ばれた方もいました。しかしその反面、ワクチン予約分が予約開始日でほぼ埋まってしまったこともあり、予約ができなかった人も一定数いました。また、「市の予約システムが分かりにくい」、「集団接種の枠が少なすぎる」などの苦情を受けることもありました。
これらをふまえ、福山市としてワクチンの3回目接種に向けては、ワクチン供給が不安定であることや接種の予約が取りにくい課題に対し、供給計画の早期提示と安定供給を国・県に要望し、ワクチン供給量や対象者数に応じた十分な接種体制(個別接種・集団接種)の確保、接種券の小まめな発送、コールセンターの回線確保や引き続き公民館、交流館、コミュニティセンター・館におけるWEB予約支援をしていく方針を掲げました。3回目の接種予約については、一度経験していることでもあり、ワクチン接種予約支援を始めた当初と比べ、トラブル等も特になく、スムーズに予約支援を進めることができました。 3. 今後に向けて
公民館、交流館、コミュニティセンター・館は、地域におけるまちづくりや社会教育、生涯学習や人権啓発の拠点であることのみならず、地域に最も近い存在として、そして「地域に必要とされる施設」として、自分たちで何ができるか、どのようにすればよいのかを日々の仕事や組合活動を通じて議論し、実践を重ねてきました。 |