【自主レポート】

障害者福祉について思うこと

三重県本部/自治労阿山町職員労働組合 五百田佳子

 町村に老人福祉・身体障害者福祉の権限委譲が行われて早10年目。何もわからないまま、県の行ってきたことをただただ手探りで真似てがんばってきました。専門的な知識もなく、勉強をしながらの9年間だったように思います。当時のことを考えると、特に老人福祉、いえ高齢者福祉についてはわが町でもさまざまな資源(特養、デイサービスセンター、在宅介護支援センター、訪問看護ステーションなどなど)が増え、住民の意識も以前に比べると大きく変化し、利用者や家族がサービスを選択できるようになったことは、大きな進歩であり以前からの夢でしたので、「やっと世間並みに追いついたかなー」というのが正直なところです。一昨年に始まった介護保険制度も、利用者とサービス事業者等との契約ということで当初は戸惑いもありましたが、2年を経過した今、何とかですが住民にも定着しつつある状況であり嬉しい限りです。
 ただ、以前と変わったところは、在宅福祉の充実を目的としていた介護保険が開始されたにもかかわらず、施設入所の待機者がどんどん増えているということです。これは利用者や家族の意識の変化によるものと思われますが、その中には介護保険が「保険」であることからの権利意識によるところも大きく、また核家族化等による家族介護意識の希薄化が原因のひとつであるとも考えられます。
 当町ではもう既に高齢化率が25%におよぶ勢いで高齢者が増えており、一層高齢者福祉に力を入れていかなければならない状況が続くと思われますが、今後は地元=各地域でいかにお年寄りを支えていくかが問題になると思います。それは決して行政が「お膳立て」するばかりではなく、NPOやボランティアといった活動により生まれてくるべきものであって欲しいと願って止みません。
 ところで、本題の「障害者福祉は」というと、身体障害者福祉に引き続き知的障害者福祉や精神障害者福祉など徐々に県から権限委譲されてきていますが、町村ではどうしても対象者が少ないために事例もなく、ニーズの把握も困難な状況です。

町内の手帳所持者数(本年4月現在)
・身体障害者手帳      411名
・療育手帳         46名
・精神障害者保健福祉手帳  13名

① 住民に身近な市町村で、福祉施策を行うことはとても大事なことであり意義のあることとは思いますが、人数の面からみると高齢者が全人口のおよそ25%であるのに対し、障害者は5%ほどにしか過ぎず、ハード面においてもソフト面においてもなかなか前進をみられないのが現状かと思われます。また、専門的な知識を持った職員が少なく(保健師を除けば多少の経験があるくらいで皆無かも知れません。)、本当にその人のために役に立っているのかどうかということが問題になると思います。知識のない上に経験もない状態で、今後ますます複雑化する問題に本当に対応できるかが心配です。
  特に本年4月から事務が一部委譲された精神障害者の問題については、保健師であっても一人ひとり障害も違い悩みも違う対象者にどうやって関わっていくのが良いのか、なかなか答えが見つからず日々悩みながらの業務となっています。
  限られた職員配置の中で、専門性を問うのは極めて難しいことです。特に人口の少ない町村になればなるほど、さまざまな仕事をこなす必要があるのですから。こんな状況で、障害者施策をいかに進めるかがこれからの大きな課題といえます。
② また、障害者問題を取り巻く状況の中で大きく変革しようとしているのが、15年度から始まる支援費支給制度です。現時点の情報では障害区分の認定やケアマネジメント、支払……などなど、すべての事務を市町村が行うこととなっていますが、小さな町村が大きな市と同じように障害者に対する支援費の支給制度というものをすすめることが本当にできるのでしょうか。

<サービスの流れ>
これまでの措置制度
支援費支給制度

① 本人が市町村へ申請する。
② 市町村が事業者へ措置依頼する。

③ 事業者が受託すれば市町村が措置決定する。
④ サービスを受ける。

① 本人が市町村へ申請する。
② 市町村は障害程度等の認定を行い、受給者証を発行する。
③ 指定事業者へ本人が受給者証を提示し契約する。
④ サービスを受ける。

 この中で特に問題となるのが、障害程度区分の認定だと思います。介護保険の場合も同じことですが、市町村によって、または調査員によって認定内容が違うことがあってはならないのですが、これを一体どうやって解決するべきなのでしょう。本制度での認定は介護保険とは全く別の項目により行われる予定となっていますが、介護保険開始時と同じく認定の混乱を招く恐れが十分にあることを懸念せざるを得ません。また、介護保険の認定調査をもう少し見直すことにより一本化できれば、これまでの方法に準じて認定ができることとなるのではないかと思います。今のところ、いくつかの項目を点数評価し、その合計点数に応じて区分を決定することになっていますが、それを判断する職員の質(または保健師、看護師などの資格)によっても認定結果が変わる可能性もあることは否めず、ましてこの時期にまだ詳細が示されていないことについては、担当者として不安を感じるしかないのです。
 支援費支給制度は本年10月ごろから申請の受付業務が開始されます。目前に制度の開始時期がせまっているにもかかわらず、もし職員の資質が問題となるならば、私たちはいかにこれに立ち向かい、経験を積んでいけばよいのでしょうか……。
 もうひとつの問題は、サービスの充実だと思います。この制度は障害をもつ人々が自らサービスを選択し利用できるようと制定されたはずです。これまで使っていたサービスが縮小されたり、希望にかなわなかったりするようでは何にもなりません。
 障害者が社会に出る場や就労の機会の少ない現状からも、デイサービスセンターや授産施設などが必要であり、また生活の場としてのグループホームの整備も重要な課題であるといえます。町内にも年老いた父母と知的障害者の子であるとか、母と子など、将来的には生活する場を確保しなければならないであろう家庭も何軒か見受けられます。もしものとき、即「施設」ではなく、やはり住み慣れた地域で一生生活できることを本人や家族が望むならば、それをかなえることが大切であり私たちは努力すべきだと思います。
 これらのことは、伊賀地区の5ヵ町村が3月に策定した伊賀地区町村障害者保健福祉計画にも目標があげられていることから、当町においても実現に向けて早急に取り組んでいかなければなりません。

当町のめざす地域像
  『障害のある人が地域で自立して生活できる町』取り組み方針として
① グループホームの整備 
② 知的障害者授産施設の整備 
③ 積極的に社会参加ができる環境整備 
④ 就労機会の確保 
⑤ 相談・支援体制の充実

 ところが今、伊賀地域では市町村の合併問題が大きく取り上げられています。もし将来にわたり合併するとなれば、職員の専門性などは必然的に備えられるうえ、さまざまな施策が実行可能となりますが、反対に規模が大きくなればなるほど住民との距離が遠くなっていくと考えられます。現在の当町くらいの規模ですと、名前を聞くだけで「どこどこの誰」など職員も住民もお互いがわかり、安心して相談できるのではないかと思われます。これは小さな町であるが故のメリットであり、もし合併することとなってもこの点は残しておかなければならないところです。

 最後に、障害者施策を考える上で重要なこととして感じるのは、町職員がもっと「バリアフリー」という言葉の持つ意味を深く理解し、あわせて「ノーマライゼーション」の理念をどんな仕事についていても活かしていくことだと思います。それはハード面においてもソフト面においても同じであり、福祉や保健に携わるものだけが関係するのではなく、行政が行うすべての事業において職員一人ひとりが真剣に受け止めなければ、当町が住みやすい町になっていくはずがありません。
 私たちの住む町が、障害のある人もお年よりも、小さな子どもであっても、すべての人が大事にされる町になるように、また誰もが住みやすいと感じる町になるように町職員として努力していくことが必要であると痛感し、今後とも障害者福祉に積極的に取り組んでいくつもりです。