【代表レポート】
1. 北陸の小京都 越前大野
大野市は、福井県の東部に位置し人口約4万人で、北方と東方を1,000メートルを越える大起伏で石川県南部に続く加越山地、西方を数百メートルの中起伏の越前中央山地、南方を越美山地に囲まれた盆地で標高170から232メートル、面積約540平方キロメートルあります。気候は、夏は高温多雨、冬は寒冷多雪と内陸盆地方特有の気象で、年間を通じて降水量は比較的多く、清らかな水に恵まれた地域となっています。また、盆地内には、東から九頭竜川、真名川、清滝川、赤根川が南から北に併流しており、北端で九頭竜川にすべて合流しています。これらの川は、長い年月の間に山や谷をけずり、土や砂を運んで扇状地や河岸段丘を形成し、流域は古代から多くの人々が住みやすい場所となっていました。 2. 平成大野屋事業の始まり 平成に入ってから、当市では、市街地を中心に歴史と文化を生かしたまちづくりの整備を始めました。400年近い歴史と伝統を守ってきた朝市の立つ七間通りや20以上の寺院が並ぶ寺町通りなどを石畳舗装にし、また観光客向けの無料休憩所を周りのまちなみ景観に合わせて整備するなどして、城下町の風情を向上させ回遊性の高い「まちなか観光」を確立することにより、観光客の入り込み数の増加を図ってきました。 3. 全国の大野氏活用事業 この事業は、全国の大野さんに2泊3日という行程で大野市に来ていただき、当市の観光名所や特産品の紹介、市民との交流を通して、当市の理解とイメージアップを図り、それぞれの地元に帰っていただいたら、大野をPRしてもらおうとする目的で実施されました。また、この頃、福井県出身の作家、大島昌宏氏が書き下ろした幕末の大野藩を舞台にした長編歴史小説「そろばん武士道」も出版されたことにより、本事業は、大野の史実も生かしながら進められることになります。 4. 平成大野屋事業の概要 平成9年度からは、「全国の大野氏活用事業」を一層発展させるため、事業名を「平成大野屋事業(以下、大野屋事業)」に変更し、支店主を取りまとめる「平成大野屋本店(以下、本店)」を市役所内に設置しました。本店の組織には、市長を本店主とし、市内のまちづくり活動グループの代表8名と市の職員2名の計10名を番頭に、市担当課職員を手代という形で構成し、大野屋事業の推進を図りました。(平成14年度7月1日現在の本店は、本店主に市長、副本店主に助役、総務部長、産業経済部長、番頭に公募で集まった市民10名、手代に市商工観光課職員で構成されています。) |
市民で構成されている番頭会では、本店発足以来、月に1、2度のペースで「番頭会寄り合い」という会合を持ちながら、全国の支店主との交流事業やまちなかを活性化するためのイベントの企画、当市の情報発信に係る手法などを議論し、その運営に取り組んでいます。 発足当初の平成9年度は、平成大野屋の基盤作りを中心に事業を展開しました。特に支店主は、それぞれ違った職種に就かれており、また県外ということもあり、絶えず情報交換をし大野の新しい情報を提供することが必要なため、ホームページ・電子メールの開設、年4回「平成大野屋本店かわら版」を発行することで、常に本店と支店との距離が遠くならないようにしました。これにより、市外から第三者の観点で大野を見つめてくれるため、私たち市民では気がつかない大野の良い所、悪い所を支店主から指摘され、自分達のまちを見つめ直すきっかけとなっています。 また、幕末に活躍した「大野丸」をモチーフにした平成大野屋の商標を作り、看板や名刺などに利用し、大野屋事業のPRを行っています。特に、名刺は、商標以外に当市の情報や大野屋事業などが掲載されているため、番頭や支店主が地元の会合などの場で使用することにより、当市の宣伝にかなり効果をあげています。
その1つとして、平成大野屋まつり1998を支店主参加のもとに2日間かけて開催しました。このまつりでは、支店主が調達してきた特産品の販売や支店主の地元観光ポスターなどの展示、支店主に関するクイズなどを通して、市民が支店主と交流しながら自分たちの「我がまち意識」を高めました。大野市民がいかに恵まれた環境のまちに住んでいるかをさまざまな面で支店主(市外・県外の第三者)から指摘されることで、今まで感じたことのない自分のまちの良さを考える場の提供となりました。 2つめに、市内各業種のお店の協力を得て「協賛店制度」が導入されました。この事業は、本店から支店主に配布された「手形(テレフォンカードのようなもの)」を支店主が各地元で配布し、その手形を持って当市に観光に訪れた方々がそれぞれの協賛店に訪れることで、その店独自のおもてなしを受けることができる制度です。現在、協賛店制度への加入店は61店です。近年、当市では、郊外に大きな店が立地し中心市街地の活性化が叫ばれています。また、冒頭でも述べています七間朝市を中心とした歴史的なまちなみをゆっくり散策しながら買い物をしていただく「まちなか観光」が当市の目玉の1つとなっており、この点から、大野屋事業を通じて「協賛店制度」を導入したことは、市街地の再生とともに商店街の市民一人ひとりが自分たちも楽しめる空間の創出やまちづくりへの意識を持ち、大野の魅力形成に寄与しているものと考えています。 以上のようなことは、すべて番頭会で企画され、本店が協力して実施されています。つまり、大野屋事業という枠組みの中で、市民がまちづくりを行っている訳です。 5. ソフト事業から第三セクター(株)平成大野屋の設立へ
大野屋事業が市民や支店主を主体として進められる中、さらに当市の活性化を図ろうとする市民の機運が高まり、経済活動部門を新たに独立させた「株式会社 平成大野屋(以下、(株)大野屋)」が平成11年6月に設立されました。この会社は、市と公募による市民や法人、支店主(131名)の出資による資本金3,000万円の第三セクターの会社です。 6. まちなか観光拠点施設「平成大野屋」
(株)大野屋が設立された約4ヵ月後、昭和初期に織物検査場として使われ、平成10年に国の登録文化財に登録された木造瓦葺二階建ての建物をまちなか観光拠点施設「平成大野屋洋館(以下、洋館)」として市が整備しました。また、平成12年度には、洋館の後ろに建設されていた蔵を「平蔵」として、洋館と平蔵にあるスペースを「中庭」として市が順次整備しました。 7. 幅広い交流のネットワークを目指して このように、平成大野屋の始まりは市民からの提案でした。その提案に当市の歴史と文化を取り込んで実施された交流事業が、多くの市民を巻きこんで盛り上がり、そして第三セクターの会社の設立と施設の整備へと結びついています。この結果が評価され、平成13年度には、総務省で地域づくり総務大臣表彰を受賞することができました。 お問い合わせ 〇株式会社 平成大野屋 |