【自主レポート】

都市と農業をつなぐ「福井市版デカップリング制度」

福井県本部/自治労福井市職員労働組合 内藤 継吾・中川 英男

1. はじめに

 BSE問題への対応やあまりにも低い食糧自給率の中、安全な食品に対する消費者ニーズの高まりや農業が環境に賦課を与えることに対して強い疑問が投げかけられている今、自治体行政が何をしていくのか、何を目標としていくのか、自治体職員として真剣に考えていかなくてはならないときである。食料・農業・農村基本法の成立に伴い様々な施策の見直しの中、基本としている「水田での持続型農業が可能か」と問われると、これまでの近代農業が進めてきた集約農業とか機械化農業、または資材多投入型農業ともいわれる農業への痛烈な見直しを迫ることになる。各自治体の農政の基本的なスタンスとして、機械化による経営の効率化や省力化を目標とした化学合成資材の使用促進など資源循環型社会システムづくりを目標とするこれからの農業からは、かけ離れていく現状を憂慮するところである。ただ、農業の持続性の喪失、農産物の安全性への問題、環境への負荷増大などこれまでの農業施策の変換が迫られている中、ひとつの糸口として提案実施されている福井市の環境保全型稲作への直接支払を紹介したい。

2. 手をかけた農業は、消えていくのか

 今、どこの自治体も環境を施策の中に取り上げてきているところであるが、本市もご多分に漏れず、1998年から環境保全型農業推進事業として、3ヵ年JAへの委託事業を実施してきたところである。しかし、なかなか農業者が環境保全型農業を実施していく流れを作り上げていくことは容易ではないのが現状である。JA福井市での減農薬・無化学肥料の栽培実績を見てみると現状がよく見えてくる。1998年には、35ヘクタールの作付けで2,231.5俵集荷をしているが、1999年には、27.5ヘクタール作付けで1,864.5俵、2000年には、25.9ヘクタール作付けで1,726.0俵になっており、消費者が求めている安全で安心な米のニーズを前にしても生産量は一向に上向いていないのが現状である。本市農業の現状は、95%以上が兼業農家であり、農業収入にそれほどの強い関心を持っている人は、多くはなくなってきている。しかし、米の福井県産コシヒカリの自主流通米価格が1996年産米の20,305円から2000年産米では16,494円まで落ち込んでおり、減農薬・無化学肥料栽培米へ出している追加払い金も1996年には、5,000円を出していたのが、2000年産米には、2,500円の追加払いしかないのが現状で、落胆しきりである。米作りは、収益性や経済的な面だけでなく、環境を守り、国土を保全する大切な役割を担っていると声たかだかに叫んだところで収益性を失った産業としての米作りは、立ち居かなくなってきている。今こそ、環境への負荷軽減に対して問題意識を持ち、行政が積極的に取り組んでいかなくてはならないのに、農家は、環境への対応をする気力も失わせているのが現状である。
 このような中で、有機農業の担い手の多くは、農業所得の向上だけを目標にしているのではないと言い切り、自分の健康的な生活や自分の作った農産品を守り、育ててくれる消費者に対して安心、安全な食料を提供することにより、人と人との信頼関係と農業を通しての共生関係を作り上げていきたいと希求しているようである。
 環境保全型農業に対しての直接補償制度の制定への重要な動機付けになったのは、有機農業者たちとの意見交換会での一言もあった。「わたしたち有機栽培農家は、安全で安心できる農産品を作り、アトピー症状などの食品の影響を受けての健康被害にあってきている人たちから自分たちの作っている農産物を守る代わりに価格が少しぐらい高くてもあなたの農業を支え、大切な安全な米や野菜を買い続けるといっている。しかし、行政は有機・無農薬栽培農業に対してあまりにも無関心ではないか。行政は、これから有機栽培を支援していく考えがあるのか。」の問いかけがあった。また、本市が、1999年6月には、ISO14001取得があり、1999年を環境元年と位置付けて市政全般に環境への配慮を基本に置く、施策転換を必要としていたのである。2000年度の予算作成の中で、農業の環境保全機能を活かした施策として、もっと実効性があるものを作り上げることが始まったのである。

3. 環境保全型農法への直接補償制度の仕組み

(1) 環境保全型デカップリングのしくみ
   水田農業経営確立対策に生産調整面積として実績算入できるものがあり、その中に「二化学合成資材を使用しない栽培方法」によって栽培されたもの(以下「特別調整水稲カウント二型」という。)というものがある。この特別調整水稲カウント二型の対象水田に対して助成することを、環境保全型農業に対してのデカップリング制度の糸口にすることを目標として、2000年度から助成を開始している。

(2) 環境保全型稲作といっても労働収益性は低い
   農林水産省統計情報部が公表した1997年の環境保全型農業(稲作農家)と慣行農法との経営収支などの概要での数字に着目したのである。この調査での環境保全型農業とは、「農薬または化学肥料の使用を、地域の慣行農法に比べて50%以上節減することにより、環境への負荷の軽減を図っている農業」としているものである。

環境保全型(稲作)の経営収支等の概要

(単位 金額:円、対比:%)
区          分
環境保全型
農業(稲作)①
(参     考)
慣行農法②
対比①/②×100
経営収支
(10a当たり)
粗    収    益
154,698
144,430
107.1
経    営    費
91,073
89,548
101.7
所         得
63,625
54,882
115.9
分析指標
所  得  率 (%)
41.1
38.0
※ 3.1
労働1時間当たり所得
1,661
1,759
94.4
生産概況
10aあたり収量(kg)
457
530
86.2
60kg当たり販売価格
20,938
16,258
128.8
10a当たり労働時間(時間)
38.3
31.2
122.8

 注:※ の数値は、環境保全型農業と慣行農法との差(ポイント)である。

   この調査の結果によれば粗収益、所得ともに環境保全型による栽培が慣行農法によるものより上回っているが、労働1時間当たり所得では慣行農法に比較して環境保全型栽培が低くなっており、この部分に対して補填するものとして制度化したものである。この調査の減収率は、13%であるとしているが、福井県での無農薬・無化学栽培での減収率は、16%であることから、これによって補正計算すると10アール当たりの所得格差は、1時間の労働所得慣行農法1,759円-環境保全型農法1,661円=1時間当たりの格差98円、環境保全型の10アール当たりの労働時間38.3時間を掛けると3753.4円となり、減収率の格差を16/13で掛けると4,619円となり、これを全額カバーする5,000円を助成することにしたものである。また、この調査内容の中には、10アール当たり所得として、無農薬・無化学肥料栽培93,373円で最も多く、次いで無農薬栽培の80,335円、無化学肥料栽培の72,055円、減農薬または減化学肥料栽培の49,227円の順になっており、労働1時間当たりの所得は、無農薬・無化学肥料栽培の1,953円、無農薬栽培の1,523円、減農薬または減化学肥料栽培の1,398円になっている。労働時間は、割り戻せば無農薬・無化学肥料栽培48時間、無農薬栽培53時間、減農薬栽培35時間となり、収益性を考えれば、補償する根拠は何もないということになってしまう。
   しかし、よくよく考えてみると所得の中に、産直をしている農家の販売コストをすべて調査把握しているとは、考えられない。この調査の中でも、米の販売先は、「農協」が46.3%で最も高く、次いで「消費者グループ、個別業者」34.4%、「生協等消費者団体」が5.8%になっている。しかし、収益性が高いとなっている無農薬・無化学肥料栽培、無農薬栽培、無化学肥料栽培では「消費者グループ、個別消費者」への販売がそれぞれ55.8%、43.8%でもっとも高くなっている。この調査の中で、販売コスト中の宅配の送料など目に見える費用は、もちろん算出しているようだがその直販している労働コストも含めすべてを分析しているまでは至っていないようである。
   この福井市版デカップリング制度では、販売コストを無農薬・無化学肥料栽培の所得93,373円に対しても通常、流通業界が農産品に掛けている流通マージン16%は、控除されるべきものであると推計している。控除後の労働1時間当たりの所得は、1,668円になり、福井市版デカップリング制度の1時間当たりの所得格差1,661円に相当することになる。環境保全型農法の維持、発展を考え、これからどのような補償をしていくかは、いろいろな取り組みがなされていくことになると思うが、基本的な考えとして環境保全型農法は、資材費の低減はあるようだが、個々の農家は労働時間の大幅な増加に直面しているのであり、その労働収益性の格差を補償していかなくては、これからなかなか取り組んでもらえないのが現状である。

(3) 有機認証制度ができて、有機栽培がなくならないために
    2000年4月1日から有機認証制度がスタートしているが、国に代わって登録認定機関が有機農家を検査する制度である。農家にとって、特に関心のある認証費用については、いろいろあるようであるが、各機関の認証料金を比較してみると最高で40万円台から3万円台というばらつきがでているが、標準的な金額は、1農家当たり30,000~50,000が標準になっている。ただ、この制度では、農家がグループを作って申請することもできるので、その場合、料金はさらに割安になるようである。認証料の目安として農水省が示したものに、農家10戸のグループが申請した場合、農家1戸当たり2万円台との試算をしている。この制度ができて、すでに2年目に入っており、認証機関も旅費・宿泊料を節減するため現地の検査員体制を揃えつつあり、検査料はいくらか低下しているようであるが、この制度が、環境保全型農業を志向していた農家への影響は、計り知れないものがあった。1つには、経費の負担が収量減を伴う中、多くの労働コストを抱えているのにもかかわらず、3年間の証拠書類を整備すること等相当煩雑になっているのである。しかも、3年前の油粕や魚粉の中に、化学合成資材が入っていないかを調べるため、販売店や製造業者からの証明の提出が求められており、農家にとっては、経費面や煩雑な書類の整備も含め、認証を受けるためのハードルは相当高く見えたようである。しかも、認証機関からの旅費等が負担となるため、離島などの農家の方が、重い負担を抱え込むことになっている。福井においても同じような部分があり、2000年に認証を受けた農家は、1件だけになってしまった。このような中、認証申請の支障要因を実施農家に聞き取りしたところ、行政の明確な支援姿勢があれば、申請に意欲が持てる農家は、まだまだいるとの答えもあり、有機認証農家を支えるための新たな補償体制を考えていくことになった。その時、福井市では、無農薬・無化学肥料栽培に対して直接補償をしているとの報道を受けての多くの問い合わせがあり、この認証制度の全国からのいろいろな意見を聞くことができた。その中には、有機認証制度のスタートが、認証を受けなくても無農薬・無化学栽培を続けている農家にとって、有機農産物を目標に集まっている生産組織からの離脱の動機になっており、行政の支援が不可欠との意見を数多く聞いた。その中には、農家が有機認証を受けることを断念することで環境保全型農業からの決別につながっている事例もあると全国からの問い合わせで聞くことになり、有機認証の助成の必要性を実感したのである。それからは、どのような内容にするかで、意見は分かれたが、最終的には、国の経営分析調査結果環境保全型農家の平均稲作面積139.8アールを補償の基本面積として、平均的認定手数料として、4万円程度を前提に補償額を算出すると10アール当たり3,000円の単価が生まれてきたのである。無農薬・無化学肥料で10アール当たりで、有機認証を受ければ、2000年度から10アール当たり8,000円助成までできるようになったのである。この助成額を求めていったのは、お隣の韓国が、親環境農業育成法の施行で、直接支払制度を実現しており、ソウル市民の水を供給する漢江上流域では、無農薬栽培を実践する農家に10アール当たり5,240円の直接支払いが実現しており、どうしてもこの補償額は、超えなくては、労働収益性からのバランスもとれないとの主張もあったからである。

4. 環境を守る農業への直接補償は、都市住民も分かるはず

(1) 環境を守るためには、農業が必要と言えるために
   新たな農業基本法では、食料の安定供給の確保、多面的機能の十分な発揮、農業の自然循環機能、そのすべての基盤である農村の振興が、これからの基本として打ち出されているが、自由化や市場原理だけでは、農業はどうにもならないところへ追いこまれているのは、周知の事実であり、どのような支援体制が実現できるか自治体職員の創意性にかかっている。納税者に対してのアカウンタビリティとしては、安全な食料の確保と水田域の環境保全で、水田という人間が作り出した不思議な自然環境を見直す動きとを絡めて、環境保全型農業への参加を呼びかける必要があるのである。

   環境保全農業への直接補償制度がどのような効果を生んでいくかは、もっと幅広い地域での事例を集積する必要があるのかもしれないが、すでに実施されている福井市の直接補償制度の経過をみると、全市の水稲面積が4,950ヘクタールの中での話であるので、決して褒められるものではないが、無農薬・無化学肥料栽培の実施面積は、1999年には、32,838平方メートル、6農家、2000年46,697平方メートル、7農家、2001年には70,307平方メートルで、12農家で内、有機認証農家は、3件に増加し、これからの拡がりを期待している。
   この2年間は、個別農家への働きかけに終わってきたが、2001年6月には県関係の有機認証機関も生まれ、無(減)農薬減(無)化学肥料の認証制度も整いつつあり、来年度については、補償の枠の拡大も目標としている。また、実施農家の拡大策として、集落単位や生産集団への働きかけも進んできている。

(2) 環境保全型水田を市民の中に拡げていくには
   安全で、安心な農産物の生産者と消費者との信頼関係は、これから徐々に進展していくことになっていくと思うが、まだまだ生産者の体制も不十分なようである。環境保全型水田は、全水田面積の1%にも達していないのが、現状である。これからその普及を考えるに、市民に安全な農産物の大切さを訴えても今しばらくは、生産者と消費者の連携関係が整うまでは、なかなか早急には進んでいかないだろう。しかし、市域全域に点在する環境保全型農業を実践している農家と水田は、市民参加型の体験水田(実施事例1あり)や市内に22小学校(全校で44校)で実施しているが学校教育田での活用で急速に進展していくことが考えられる。
  ① 虫見板を使って、水田生態系の観察会
    今年度から県市事業として「田んぼの学校」推進事業を立ち上げている。この事業のコンセプトの1つとして、水田の自然循環機能の発揮を上げており、水田の水生昆虫の観察会を小学校の総合的学習時間の中で、取り組むことになっており、田んぼの水生昆虫に関心を持って頂くことを目標にしている。
    水田での水生生物の衰退は、1960年代から目につくようになり、次々と水辺の生き物が姿を消していった。この現象は、一般市民の多くが気づいているところであり、このことは、水稲栽培のために強い殺虫剤を使ったのが主な原因とされている。
    しかし、水田の再生力は不思議なもので、このところ多くの水生昆虫が蘇ってきているのである。もともと秋に水を抜いた田んぼは、直後に昆虫群生は崩壊するが、春に水を入れると急激に群集が立ち上がる。もともと川の周囲など水辺に住んでいた昆虫が、稲作が始まったことで稲作水系に移り住み、田植えや稲刈りなどのサイクルに合った生態系が長年の間につくられたのである。(清明小学校3年生の観察会)
    今年度においては、政策的に無農薬・無化学栽培実施農家がある小学校区を選定して、子どもたちとトンボの観察会や水田域の昆虫観察会を実施している。福岡の「農と自然の研究所」から虫見板を購入しての観察会は、これまで続けられてきた水質調査を出発点に観察会とは違い、子どもたちにとって、虫たちが、「人が作った自然環境の中で、生きていること」については、強い興味を引いたようである。もちろん、無農薬・無化学栽培の実践農家から「健康な稲作りが、農薬も化学肥料も必要としない。」との説明を聞き、子どもたちは、感心しきりであった。ただ、虫見板については、地域的な虫害の格差があり、福井版の作成を試みたが、予算的に対応できなかったため断念したが、いまでも、地域発信型のアグリチェクや虫見板づくりは、まだまだ諦めてはいない。
  ② 給食からでる生ごみは、資源循環の大切な教材
    ところであるが、調理くずや食べ残しを資源循環社会づくりの教材として使う方法が、今、もっとも求められている方法だとこれまで給食残渣の堆肥化事業は、いろいろと実施されてきた思う。先に紹介した学校教育田を利用した環境保全型水田の推進方法として、福井市鶉小学校の例を上げたい。
    福井市でも、来年度から行政施設からでる有機資源ごみは、すべて車輌搭載型生ごみ処理機(民間業者)で、巡回処理することを検討しているが、子どもたちの生活習慣を変えていく動きにはつながっていかないだろう。今年の取り組みとして、周辺地域の学校を選定して四年生の「総合的な学習の時間」の中で、子どもたち自身で給食残渣を微生物で、発酵ボカシ肥とする方法を取り上げた。(鶉小学校での生ごみ堆肥づくり)
    この学校の年間の給食残渣量は、500キログラム程度あるが、1日の排出量2~5キログラムである。学習内容は、19リットルの密閉容器に発酵菌と混ぜて入れてボカシ肥をつくる作業である。子どもたちは、当番制を決め、密閉容器12器を順次使い、学校田の堆肥作りを始めている。すでに、学校田でのボカシ撒きも体験している。田んぼでは、「無農薬・無化学肥料での栽培は、病気をしない健康な稲づくりを目標としており、有機物(生ごみ堆肥)が田んぼのいろいろな生き物の餌になり、それがトンボやホタルなどの餌になる。」と伝え、有機物を利用した生物循環の仕組みを教えている。

5. 環境を守るには、農業が大切といえるために

 福井市が始めているデカップリング制度は、環境を守るためには農業を守ることが必要としていることにある。また、農業を守ることが、環境を守ることであると施策の整合性を考え続けている。2001年度の予算では、減(無)農薬・無(減)化学肥料への補償制度の準備をすすめている。また、有機・特別栽培米に対しての認証制度は、環境保全型農法への直接補償制度づくりが、いまにでもできる条件を与えてくれている。環境保全型農法での水稲栽培は、草取りや肥培管理等で労働時間が大きくなる。一方、慣行農法は、省力化に集中しており、一発施肥や一発除草剤でますます時間の短縮が行われており、環境保全型農法との労働時間の格差は、広がろうとしている。国は、有機認証制度の検証とともに先の調査のような環境保全型農法の経営分析を定期的に実施してほしいものである。
 また、農薬や化学肥料をやらないというだけでの環境保全型農法だけでなく、食品残渣などの未活用有機資源の利用を進めた循環圃場に対しては、生ごみ堆肥が優良な堆肥としての確認されれば、生ごみ1トン/10アールの処理堆肥散布費用として、補償する考えを今年度の予算要求で提示している。この補償内容は、都市住民にとっても農業補償を支援していく内容になる。早急に農業行政が未活用の有機資源を使った優良な堆肥づくり体制とそれを散布利用する農家は、新たな労働コストを背負うため、それを行政が補償していく体制を組む必要がある。さらに容易に都市住民が、理解できる内容としては、水源地域の水質保全のためとして、無農薬・無化学肥料栽培の補償の拡大も考えられるのである。

 少なくとも、特別調整水稲カウント二型への助成制度は、予算的にも限られており、国としても取り上げられるものと思う。全国の特別調整水稲カウント二型は、少ないながら実施されており、去年は700ヘクタール程度の実施があり、この方法が国が実施しされたとしても3,500万円程度の支出で済む。しかも、計画的米生産を拒んでいる生産調整拒否農家への強烈なけん制になるのである。福井市においても、この無農薬・無化学肥料への直接補償制度の実施圃場や今後補償対象として準備をしている特栽培農産物への補償制度は、計画的な米生産とリンクしているのである。国は、これからどのような米政策をとっていくのか分からないが、どちらかというと環境より生産量の増大に関心が強い主業的農家を守ることを考えているようであるが、生産性を上げることだけを目標にする時代ではないことを早く気づいてほしいものである。そうしないと、米政策が、新たな環境への負荷増大へとつながって行くことになる。外食産業が求めている見かけがよく安い米づくりには、効果的だと思うが、国には何も声を出さず、外食産業の何倍かの米消費を支え、静かに農業を続けている農業者に対して、きめ細かな米政策を作り出さねば、到底理解は得られず、今度も長続きしないことになるだろう。特に、農業行政すべてについていえることだが、ハード事業の採択を条件にすべての施策体制が整うとの思い込みは、早々に転換する時にきている。県や国に事業採択の陳情に来る者だけがすべての国民でも県民でもない。1日も早く黙々と環境保全型農業に取り組んでいる農業者を行政が支えていっていると自負できる行政に自己変革していきたい。