【代表レポート】
失業の時代に応える職業訓練──
緊急離転職者委託訓練の実施状況と課題 |
自治労/全国職業訓練協議会
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はじめに
6月の完全失業率は5.4パーセントで前月と同水準、完全失業者数は前年同月より30万人増え368万人となり15ヵ月連続して前年を上回るという状況で、雇用・失業情勢の改善の兆しは、一向に見られない。こうしたなかで政府は、昨年9月に新たな「雇用の安定確保と新産業創出を目指し」て「総合雇用対策」を策定し、10月には「改革先行プログラム」により施策を具体化した。職業訓練の分野においては、「民間教育訓練機関、大学・大学院、事業主、NPO法人等あらゆる教育訓練資源の活用を通じて、委託訓練を実施するとともに、ハローワークの機能強化や公共職業能力開発資源の機動的運営を図り、中高年ホワイトカラー離職者等に対する効果的なかつ多様な職業能力開発を強化する」としている。
全国214の都道府県立職業訓練校(技術専門校)で働く自治労組合員で組織された県職共闘の職能組織である全国職訓協は、第28回地方自治研究全国集会において公共職業訓練の地方分権が必要とされていることと政府の進める「緊急雇用対策」としての職業訓練が再就職に結びつかないことを指摘したところである。本自治研においてもその後の緊急離転職者委託訓練の実施状況と現場での取り組みについて報告する。
1. 緊急離転職者委託訓練の実施状況
「離職者訓練も学級崩壊、再就職への力に疑問」(2001年9月3日、朝日新聞)、「課題多い委託職業訓練、適性と講義内容のズレ、短い受講期間」(2001年10月30日、読売新聞)と報道されているように、全国職訓協の指摘がマスコミでも取り上げられた主に民間教育訓練機関等に委託した緊急離転職者訓練の都道府県での実施状況は、別表1・別表2のとおりである。
政府は2001年度において、IT訓練を中心に46万人の離転職者訓練を計画し、42万人の実績があったとしている。そのうち都道府県では、7万人の離転職者訓練を実施しており、主に6ヵ月から2年の訓練期間で施設内において実施している職業訓練が3万人、民間教育訓練機関等への委託訓練が4万人であった。委託訓練は、1ヵ月以下の短期間訓練が6割を占め、訓練修了者の就職率は全体で8.9%であり、一番高い6ヵ月以上の訓練で28.6%にしか過ぎない。施設内訓練の就職率60~80%に比べると委託訓練の就職率の悪さは、全く改善されていない。
2002年度においても政府は、中高年ホワイトカラー離職者等に対する委託訓練を20万人(うち都道府県では7万人)、IT訓練を20万人(うち都道府県では5,300人)を計画している。しかし、1ヵ月以下の短期間訓練が5割を占めており、訓練科目もOA事務、介護、造園等が中心となっている。
これらの緊急離転職者委託訓練を実施している職業訓練校(技術専門校)の現場からは、短期間の職業訓練では実施結果が就職に結びつかない、資格を取得しても経験者を優先して採用する、中高年者の就職は年齢の壁が大きい、委託訓練のため入校から就職までの一貫した指導ができない、などの多くの問題点が指摘されている。そこで全国職訓協では、2003年度政府予算要求中央行動において実施した厚生労働省交渉において、緊急離転職者委託訓練が効果的な職業訓練となるよう計画数と訓練内容の見直しを改めて要求したところである。
厚生労働省からは、「離転職者の委託訓練について数を上げることから就職率を上げていくために、能力開発支援アドバイザーを全国の職業安定所に700人配置し、委託訓練受講者に対する就職指導を行う巡回就職支援指導員を各県に配置した。訓練コース設定のプロセスから管理し、未充足求人分野にコースを設定するなど各県とも相談している。受講指示の方法や就職相談の修了前の実施についても、職業安定所との連携も含め改善するよう要請している」との回答を受けた。
各都道府県においても就職率の改善に取り組んではいるが、6ヵ月訓練を中心とした短期の施設内離転職者訓練の年間定員が9年度から13年度の5年間で1,762名も減少しているように、財政状況等を理由に委託訓練を拡大する方向にある。そこで全国職訓協は、地域において訓練ニーズを掘り起こし、安易な委託訓練の拡大を止め再就職に結びつく離転職者訓練を実施することを都道府県当局に求めている。また、連合の政策・制度要求にもある都道府県と国、地域の労使団体等が連携して、再就職に結びつく適切な公共職業訓練を実施するために一体となって取り組む枠組みを創ることを厚生労働省に要求しているところである。
2. 東京都の委託訓練の現場から
(1) 拡大する委託訓練
東京都の公共職業訓練において委託訓練が急激に拡大したのは2001年度以降である。
1999年度から東京都でも3ヵ月・6ヵ月の緊急中高年再就職促進訓練の委託訓練が実施されたが、受け入れ規模は1999年度20名、2000年度42名と限定されたものであり、委託先は民間企業や業界団体であった。現在とは実施方法が異なり、技術専門校が直接入校選考を行っており、就職についても委託先にそのまま就職することを目指していた。就職できたのが10名未満と、結果こそ出なかったが、たとえ委託訓練であっても、受け入れた生徒については、施設内訓練の生徒と同じように、入校から就職まで一貫して関与していこうという姿勢がみられた。
2001年度からは状況が変わってくる。労働省(当時)からの要請を受け、東京都の委託訓練規模は大幅に拡大した。具体的には、30時間のパソコン操作習得コース10,800名、3ヵ月の中核人材育成コース225名、情報通信関連コース100名が、中高年向けの緊急再就職等訓練として実施された。内容のほとんどはIT関連で、受入先は民間の専門学校等となった。
2002年度には、さらに規模が増大し、30時間のパソコン操作習得コース10,000名、ITや介護・医療・環境分野を中心とした3ヵ月の委託訓練1,650人を受け入れることになっている。人や施設を増やさずに簡単に拡大できる委託訓練は拡大の一途をたどっており、「公共訓練の拡大」という都の重点施策項目の1つにまでなっている。
しかし、実施方法や件数の増加が原因で、科目開発・入校選考・入校後の生徒へのフォロー・就職支援など、それぞれの段階で問題が発生するようになった。
(2) 現場から見た問題点
① 科目開発
科目開発については、施設内訓練のように都が自ら開発する時間的・人的余裕がない。そのため、業界団体を通じて都内の専門学校に訓練計画を募集し、提案されたメニューの中から東京都が選定する方法によっている。内容だけでなく、専門学校の施設・講師数・場所・実績等も委託先決定の条件になる。訓練分野は、IT中心から、募集倍率が高く就職率のよい介護・医療分野に広がってきているが、専門学校ですでに実施している講座のダイジェスト版であることが多い。専門学校は若年者向けや資格習得のための講座が中心であるため、中高年離職者向けの訓練として適切かどうかは疑問が残る。
② 入校者の決定
入校者の決定は、ハローワークから送られてくる願書に基づき、書類選考で行われる。面接や試験は一切なく、雇用保険残日数・離職理由・年齢により優先順位がつけられ、同一ランク内では抽選している。パソコンのレベルチェック等は行っていないため、「難しすぎる」「易しすぎる」「科目を変えたい」といった訓練内容のミスマッチが多い。。
③ 就職支援
技術専門校では委託訓練科目に関わる求人情報を持っていないため、これもハローワーク頼みとなる。委託訓練の就職率は、厚生労働省は4割と言っており、東京都でも追跡調査を実施したが、施設内訓練の就職率(6~8割)には全く及ばない状況である。
東京都では、委託訓練の就職率を改善するため、2002年度中から、委託契約の内容に就職支援を含めることとし、専門学校の就職ノウハウを活用して就職に結びつける試みをはじめた。また、都庁主管部が中心となって各専門学校を訪問調査し、訓練が適切に行われているかどうかを指導することになった。
各専門学校では、インターネットで求人情報を収集できるようにしたり、カリキュラムに「職務経歴書の書き方」や「面接の受け方」等を折り込むケースが多く、一定の効果は期待できそうだ。しかし、専門学校の求人は若年者中心であるため、中高年離職者がこれを利用するためには、求人体制の充実が求められる。
④ 入校生に対する技術専門校からのフォロー
技術専門校には委託訓練担当の職業訓練指導員がおらず、求人情報も収集していないため、専門学校に任せてしまっているのが現状だ。雇用保険関係の事務が煩雑なため、専門学校とのやり取りは、それだけで終わってしまう。結局、技術専門校の担当者が委託校を訪問するのは月1回程度となり、専門学校の担当者から報告を受け、訓練を見学するのが精一杯で、受講生の苦情を聞いたり就職相談をすることは全く不可能であった。
(3) 入校から就職まで責任をもって実施する委託訓練を
雇用状況の悪化により職業訓練の需要は増大しており、既存の施設で間に合わない場合に、緊急避難的に委託訓練を実施する必要性は否定できない。しかし、国民の税金を使って訓練を行う以上、施設内訓練に準じた責任のある体制を作る必要がある。
まず入り口では、委託訓練を希望する離職者に対するキャリアカウンセリングを実施し、今後の求職活動の方向をしっかり踏まえたうえで、必要な職業訓練を紹介するなど、ハローワークと連携してミスマッチが起こらないような工夫をする必要がある。また、訓練を必要としている人、訓練を受けることが就職に結びつくような人に受講してもらうためにも、入校選考(特に面接)の実施が必要だ。
さらに、中高年離職者の就職により結びつくような科目開発を進めるためには、科目開発を専門学校任せにせず、委託元の東京都自身がきちんとした方向性を打ち出さなければならない。これまでの訓練の結果を分析し、踏み込んだ検討を行う必要がある。
就職支援については、ハローワークや専門学校と連携し、委託訓練受講生向けの求人情報の収集・提供の体制整備を行わなければならない。また、委託訓練先を巡回して、入校後の受講生に対するフォローや、就職等の指導をする体制が不可欠である。すでに26県においては、2002年1月から巡回就職支援指導員(民間会社のOB等)を各技術専門校に設置し、委託訓練先を巡回しての就職指導を開始している。
委託訓練の現場は、「丸投げ」「やりっぱなし」ではない効果的な訓練を実施できるような、委託元・委託先双方の体制の整備が必要であると考える。
3. 大阪府における緊急委託訓練
(1) 緊急委託訓練の実施計画
2001年度においては、①府立2校における施設内定員増、期間6ヵ月が2科目各10名2回合計40名を実施、②府立7校における施設内委託訓練として、訓練期間3ヵ月が3科目各20名定員3回合計120名、訓練期間2ヵ月が3科目各20名定員3回合計120名、訓練期間1ヵ月が1科目定数30名6回合計180名、1~2週間の訓練2科目各20名定員2回合計80名、総計420名を実施、③各業界・団体や民間の専門学校、訓練機関を利用したものは、訓練期間2ヵ月が2科目定員30名11回合計330名、1~2週間の訓練13科目7回定員合計520名、定員総計は5,050名、受講者総数は4,745名で、修了者総数は4,630名であった。
2002年度においては、①府立2校における施設内定員増、期間6ヵ月が2科目各10名2回合計40名を実施、②府立7校における施設内委託訓練として、訓練期間6ヵ月が2科目各20名定員2回合計40名、訓練期間2ヵ月が4科目各20名定員2~3回合計220名、訓練期間1ヵ月が1科目30名定員6回合計180名、③各業界・団体、民間の専門学校、訓練機関を利用したものは、訓練期間3ヵ月が9科目各30名定員2~3回合計660名、訓練期間2ヵ月が2科目30及び10名定員9及び4回合計310名、訓練期間1ヵ月30名定員8回合計240名、さらに、訓練期間が5日から14日と比較的短期である科目が8科目64回合計2,730名、総定員4,360名の計画である。
(2) 緊急委託訓練の現状と問題点
2001年度の緊急訓練は、総定数5,050名に対して応募者総数は、16,456名あり、応募倍率は3.26倍あり、入校率は、93.96%で、修了率は、97.58%である。就職率については、現在のところ正確な数を把握していない。というのは、大阪府の一般訓練の年間訓練定数は、1,320名であり、各科は指導員2~3名の指導員が6ヵ月~2年の訓練を実施しながら就職指導を行っているが、緊急訓練は、一般訓練の3.83倍の訓練定員を実施しており、能力開発課の職員や、各専門校では、訓練課長やテクノ総括が担当している。担当の指導員を置かないまま実施しているので、訓練生の把握が十分なされていない。特に専門学校等で実施される委託訓練は、ほとんど把握できていない。また、実施期間が、数日~3ヵ月と短期なため、受講者は、訓練を受けて就職をすると言う意識が低い。
緊急訓練は国が100%予算措置をしていると言われているが、それは、委託費用だけであり、現状の実施予算の組み方を改善しなければ責任ある実施体制を作ることはできない。大阪府のように多数の緊急訓練を実施している県には、特に、専任の指導員を配置するなど、実施体制を整備しなければならない。
2001年度では、多くの訓練コースが離職者であれば、受講資格があり、申し込み順や抽選で受講者(入校生)を決定し、面接等の選考をしていないために受講者の就職意欲や訓練受講の必要性は全く考慮されないまま訓練が実施されたので、受講生のニーズと訓練内容のミスマッチや不適応等、色々な問題が顕著化した。
2002年度の緊急離職者支援事業として実施される、施設内委託訓練には6ヵ月訓練科目も設置され、現行の一般6ヵ月訓練科目と殆ど変わらない訓練を、非常勤講師だけで実施(専門学校等に委託等)している。同じ大阪府の技術専門校で緊急訓練とは言え、常勤の指導員が係わっていない訓練を実施することは、職業訓練としての質や就職指導等に課題があると考えている。
また、今年度からは、期間6ヵ月のものは、筆記試験及び面接を行い、期間の短いものは、書類審査により、受講者の選考を行うこととしたが、選考の基準は、①会社都合の離職者、②雇用保険の受給者、③45歳以上60歳未満の者、以上3つの要件を満たした者が最優先で、以下4~5のランクに分けて、ランクの上から順次受講者を決めていくことになったが、応募が多い場合は、殆どが、45歳以上の雇用保険受給者となり、若い人や雇用保険受給資格の無い人は、いつまでたっても受講できない。
(3) 緊急委託訓練の今後
緊急委託訓練等の緊急雇用対策は、2000年度の補正予算から実施されてきており、もう2年以上実施することになり、このままでは、来年度も実施することは確実である。こういう状況では、緊急対策でなく、通常の能力開発として都道府県の能力開発施設(地域密着)で実施できる体制を整備されなければならない。
そのため、地域の実情を踏まえたうえで、受講者(入校生)の年齢、スキル、訓練ニーズ、就職意欲等を明確に把握し、受講生が就職するためにはどのような技術・能力が必要なのか検討され、どの科目の訓練を受ければ良いか、受講生を交え決定されなければならない。そして、都道府県の能力開発施設で実施される訓練科目は、総合的に配置され、期間、内容、訓練対象者、訓練の仕上がり像等が、明確に示され、一般訓練を含め、柔軟に能力開発のニーズに応えられるよう、職業訓練の実施体制を整備していかなければならない。
真に職業訓練を受けなければならない人に、どのような訓練を実施し、どのような就職に結びつけるか、地域(地方)の実情にあった、求職者への情報提供、相談指導等の充実や、受講の選考方法の改善等が必要であり、関係機関の連携等の充実・強化等、雇用対策としての能力開発施策の構築が必要である。
4. 島根県での伝承建築科設立の試み
(1) 地域の特性を持った能力開発
全国的に進められた都道府県の能力開発施設の再編はとどまることなく、島根県も5施設が平成5年度には4施設となり、今また、3施設に縮小を図られようとしている。
そのような現状で島根の東部に位置する松江高等技術校の取り組みは、国際文化観光都市であり城下町松江にふさわしい伝統的技能の継承を打ち出した。それは、公共の立場で何ができるのか議論を尽くし、結論的に機械化高度CP化から建築も除外無く進み、人の手から技能そのものが低下する、あるいは忘れ去られる傾向が著しい現状を思う時、果たして城下にふさわしい古建築は守れるのか、技能は受け継がれるのかの疑問から、建築関連の能力開発を実施すべく平成12年度から準備に入ったのである。
まず、今なぜ伝統的技能なのか、何が建築における伝統技能の能力開発にふさわしいのかの議論の展開を広くすることとして、業界団体,関係者を地域的には広く、年齢的には段階を持って意見集約を行った。
その中において島根の東部においては、出雲大社を代表とする神社建築の影響を持つ建築文化、安来市の今から約700年前建立された清水寺を始めとする古刹、天守閣の大きさでは全国の城郭では2番目の大きさを誇る松江城のような城郭建築、江戸時代中期より盛んになり、尚且つ現代でも盛んな茶の湯の文化である数寄屋建築など数多くの古建築物があるが、その歴史的背景、特長的技法及び保存に関する知識、技能の実態は、現状では島根の建築関係の技能者においてはごく一部の人達を除けばまったく理解されていないのが実態であり、今後の建築関係者にはこのような技術、技能の伝承と併せて由来などの知識を継承して建築技能の向上と雇用拡大へ結べて行くことが必要との結論になった。
(2) 訓練の内容と指導者の確保
調査結果から全国の能力開発施設でなされていない事柄に挑戦することであり、その内容等参考とすべく全国調査をさらに実施したが、公的機関では高校で1校それは技能優先でないとのことであった。民間専門学校でも2校視察をしたがいずれも若年者で建築の経験の無い人達が対象であり、今少し内容等に物足りなさを感じた。
一方、方向性は打ち出せたが果たして適切な指導を頂ける人達があるのか、それも何処にどれ位の人数であるのか、指導の協力が得られるのか未知数であった。
幸いにも平成10年頃より松江城の3つの櫓の復原工事がなされ、これらの事業に地元島根の技能者が従事されたとの情報を聞き及び早速この人達とコンタクトが取れ、お会いし話を伺う機会が得られた。いずれも島根の出身で若い頃より県外にて、その技能の道を志して、数年をかけ技能取得をされ郷里に帰り今は主として島根の建築物の文化財の復原、保存工事に従事されているとのことであった、早速我々が考えるところの能力開発について説明を行い協力を打診したところ、これらの人達もこれからの自分たちの後継者については危惧されている実態が明らかになり、共通点を見出すきっかけとなって協力を約束頂き、さらには、その他古建築のそれぞれの専門家の多くの方々の指導者の紹介を頂いた。
そのようなことから、訓練の内容についてもそれぞれ専門的立場の方々に県内外から8名の指導者の出席を得て詳細な指導内容を検討頂き目標を決めることができた。
細 目
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内 容
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訓練時間
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古建築総論 |
古建築の歴史と背景他 |
20
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島根の古建築 |
神魂神社、出雲大社他 |
10
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復原、修復概論 |
復原技法、修復技術 |
10
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調 査 法 |
技法、製図 |
8
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工事仕様 |
仕様詳細 |
8
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製 図 法 |
各製図法 |
30
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規 矩 術 |
軒反り、隅木技法他 |
50
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数寄屋建築概論 |
数寄屋建築の歴史 |
25
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数寄屋建築技法 |
各種技法特論 |
25
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古建築実技 |
工具製作から日御碕神社(門客人社)修了作品まで |
520
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数寄屋実技 |
中門、水屋、躙口、その他の技法 |
95
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講義、実技総時間 |
801
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さらに、内容検討に併せ受講対象者を在来軸組建築経験5年以上、又は、建築2級技能士資格取得者とし、施設の関係から定員は10名以内、県内はもとより全国募集とした。訓練期間は800時間の6ヵ月、受講者のレベルをできるだけ揃える意味から建築教養試験、及び実技試験面接を実施した。
その結果、応募者12名から県内5名県外2名を選考して高度熟練技能者を目指す訓練を実施することとし、年齢は24歳から60歳の幅をもった受講者となった。
(3) 訓練の開始と今後の課題
さすがに現場の経験とその道を極めたい意気込みには、今までの訓練科の受講者よりは比べ様の無いすばらしいものがあることの手ごたえを感じた。早朝よりの取組み姿勢、深夜に及ぶ自主的な行動は感じ入るものがあった。
しかしながら、実技においては、意気込みだけで乗り切れない現実があった。それはいかに機械に頼り手先の感覚が後退したかである。微妙な曲線とそれに伴う工具は、その人間から離れ、扱いとともに距離が開いていたので、予想外の時間をついやすこととなったが、習得意欲の高さからこれを克服でき、一定の当初目標を1人の落伍者もなくクリアできた。
今後の課題として訓練期間中は、受講者には無給の人が多かったその点を考えると訓練期間、訓練の実施方法、時期など考慮し、受講し易い環境創りをしない限り受講者の確保にはかなり難しい問題点を残したと考える。
また、中身の問題点としては、技能レベルの低下した現実をどの時点まで戻せるかをその都度把握をして調整する必要を感じた。
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