【自主レポート】

自治体の緊急雇用対策事業に対する対応について

北海道本部/ワークシェアリング調査・研究会

1. はじめに

 自治労北海道本部は、下記の情勢に基づき、自治体の緊急雇用対策事業に対する対応を、2002年1月以降積極的に行ってきました。このレポートは、その取り組みの内容及び今後の緊急雇用対策事業に対する指標についてまとめたものです。

(1) 経済と雇用をめぐる危機的状況をふまえ、連合と日経連は1999年の「雇用安定宣言」をさらに発展させた「『雇用に関する社会合意』推進宣言」を2001年10月18日に確認しました。
   そして、ワークシェアリングについて、2002春闘方針において「雇用と賃金と労働時間の適正配分により、中長期的に良質な雇用を創出していく」ことと定義し、政労使の社会的合意に基づく所定労働時間の短縮と均等待遇原則の確立などの課題について積極的に検討を進めるとしました。
(2) 上述の連合の方針を受け、連合北海道においても、検討がなされ、2002年度北海道予算・政策に関する要請書の中で、北海道に対して、「ワークシェアリングの実施道職員の時間外労働の縮減、有給休暇、育児・介護休暇等各種休暇の完全取得に必要な人員確保や、厳しい雇用情勢の改善に向けた公的機関による雇用創出、さらには現在論議されているワークシェアリングの推進を図るため、道自らワークシェアリングによる雇用創出に取り組むこと」を申し入れしました。
   さらに、道内各自治体に対しても、口頭で申し入れを行いました。
(3) 道内自治体においては、北海道が、①新規高校卒業者等の就職を取り巻く環境と雇用の変化があり、特に、高校卒業者の就職内定率が低水準であること、②新規高校卒業者は、就業経験を持つ者との競争をしなければならないこと、③高校卒業者が対象であった職域に大学卒業者が進出してきていること等を理由に、「北海道スタートワーキング・サポート事業」として、①対象者、年齢が2002年4月1日現在18歳以上20歳未満、道内高等学校等を卒業したもの、学校卒業後雇用されたことのないもの、②採用予定数、150名、③身分、非常勤職員、④任用期間、1年以内、⑤報酬、114,000円、⑥勤務時間、週30時間等の内容で実施することを公表しました。
   そして、この事業の財源として、職員の時間外勤務手当の5%を確保するとしていました。
   以降、道内31自治体において、緊急雇用対策事業が実施されていきました。
(4) 道本部としては、①現在の不況の深化と失業率・就職内定率の悪化という情勢認識と、②行政を担う労働組合としての使命という立場、さらに、③これまで要求してきた超勤縮減に対する取り組みの強化という側面から、ワークシェアリングの重要性を認識し、春闘討論集会で、連合北海道の状況を踏まえ、自治体におけるワークシェアリングのあり方について、今後、調査・研究に取り組みます。という方針を提起してきました。
   今後の取り組みとして、欧州と比べた日本の条件の違いや整理すべき課題(労働時間短縮に伴う賃金の扱い等)などの問題が存在しており、道本部としても今後、あらゆる角度から検討していくことが必要と考え、上記の方針に基づき、「ワークシェアリング対策委員会」「ワークシェアリング調査・研究会」を設置しました。

2. 第1回調査・研究会の開催内容について

(1) 議題としては、「雇用創出と働き方の変革をめざしたワークシェアリングとは何か」と題して北海道生産性本部から理事・事務局長の諸橋祐一氏を講師として招き、次の内容で講演をいただきました。
  ① ワークシェアリングの定義
  ② どのような形態があるのか?
  ③ 導入に向けた課題は何か
  ④ 政府が果たす役割は何か
  ⑤ 雇用拡大と働き方の見直しへの期待
(2) 次に今後の委員会の進め方について、論議し、次のとおり決定しました。
  ① ワークシェアリング対策委員会については、当面する「緊急雇用対策事業に対する対応方針等」の方針決定作業を行う。
  ② ワークシェアリング全体の対応については、新たにワークシェアリング調査・研究会を設置し、年度ごとの目標に沿いながら作業を進める。中間的には、2002年9月開催の道本部自治研集会および10月開催の自治労自治研集会へのレポート提出、最終的には、2004年度の定期大会(2003年9月開催)に報告書を提出する。
  ③ ワークシェアリング調査・研究会には、(緊急雇用対策・自治体版ワークシェアリング調査・研究班)と(諸外国における制度調査・研究班)のワーキンググループを設置する。
  ④ 年度ごとの目標
    <2002年度(2002年9月まで)の目標>
    (ア)自治体版ワークシェアリングの調査・検討、(イ)日本におけるワークシェアリングの調査・研究、(ウ)自治体におけるワークシェアリングの調査・研究、(エ)連合の考え方に対する学習、(オ)緊急雇用対策事業の課題と解決すべき事項、(カ)諸外国の現状と日本における課題の学習、(キ)自治研レポートの作成
    <2003年度以降の目標>
    (ア)連合・連合官公部門連絡会の検討状況を見ながら上記②③の深化をはかる、(イ)2004年度定期大会での報告書の提出

3. 第2回調査・研究会の開催内容について

(1) 第2回調査・研究会については、連合北海道との共同開催として学習会を実施し、連合本部労働総合局長龍井葉二氏を招き「ワークシェアリングをめぐる現状と労働組合の課題」、についての講演を受けました。内容は次のとおりです。
(2) ワークシェアリングの政労使合意に関する見解として、①この合意により、政労使はそれぞれの役割と責任を果たしていかなければならない、②ワークシェアリングについては、まだ議論の緒についたばかりであり、連合の求める均等待遇のルール化についても明示されておらず、今後の検討の中で真に働く側にとっての選択肢の拡大となる条件整備を求めていく、③緊急対応型のワークシェアリングについては、労働時間短縮による雇用維持を選択肢の一つとし、収入について時間あたり賃金の引き下げを伴わないことを前提に、政府の財政的支援の具体策についても、早急に実現されるよう努力していく、④緊急対応型のワークシェアリングは、当面する雇用対策の一つの手段であり、現下の危機的な雇用情勢の中で、雇用創出をはじめ、政府は包括的かつ緊急的な雇用対策を早急に講ずるとともに、景気回復と雇用・生活優先の政策転換を行っていくべきである、⑤各地域や産業レベルでも雇用の維持・創出に向けた合意の取り組みが進み、そうした流れの中で、中央段階の政労使合意がさらに進むことが望ましい。

4. 他県の状況視察の内容について

 ワークシェアリングの書籍や新聞報道等による情報をもとに、道本部の検討する緊急雇用対策事業の対応方針づくりに参考になると思われる県本部・単組の協力を得て次のとおり調査を実施しました。

(1) A県本部
  ① A県本部
    緊急雇用対策事業は存在していないし、動きもない状況にある。なぜならば、町村職では財源とならないので効果がないと思われるからである。ただし、下記の県職の取り組みについての波及が市町村職に及ばないように取り組みをした。
    財政逼迫を理由にD単組で5%カットされていたが、今回の県職の取り組みによって賃金合理化は、2単組で実施されている。また、他に4単組で提案を受けている状況にある。その大きな理由は、地域では、民間より突出した賃金となっていることと、近県では賃金合理化が多いこと、そして、大企業が少ないにもかかわらず、そこで大規模なリストラが行われたことである。
    今後は、事業の見直しが必要ではないか。また、マイナス勧告が出れば、その分を雇用創出の財源にできないか検討すべきではないか。
    県職で55歳昇給停止が決着したので、他への波及が心配である。
    北海道発で、民間の事業支援・雇用創出の自治体の補助制度等の取り組みを期待する。
  ② E単組
    これまで賃金カットはなかった。県内の大企業でリストラや賃金カットがあった。
    当初提案では、(ア)民間の雇用創出支援に10億円、(イ)体制強化に10億円、(ウ)財政建て直しに13億円という内容であった。
    そこで、導入にあたっての留意点を、(ア)雇用の名のもとの財政再建はだめ、(イ)不安定雇用の創出はだめ、(ウ)職員の前倒し採用を行い、6年後に戻す(定数条例の時限立法で対処)、(エ)財政再建に使うなら、その理由と責任を明確にさせる、(オ)全部を雇用対策に使用すること、と定めて取り組みを進めた。
    これに対して、財政の建て直しが問題となり、協議の結果、財政再建には、人件費の削減分を使わないこと、役職により削減率に差を付ける事を確認するとともに、当初3年で前倒し採用して、後半3年で退職不補充等で元の定数に戻すことで、決着した。
    民間の雇用創出については、正規職員の採用に補助金を一人30万円支出する。体制強化については、教職員については、30人学級への対応に使用する。ただし、半分の財源を希望する自治体に協力金として支出させることとなっている。
    また、もう一点問題となったのは、単組に提示のない段階で文書が出回った事に対して問題視した。

(2) B県本部
  ① F単組
   ア 「特採職員」の創設の概要は
     雇用対策として当局が、人件費予算の中で工面した。よって、増員の形で行われた。また、地域の雇用創出を自治体が担うことを目的とした。対象をどうするかが問題となったが、就職浪人を当初採用した。
     他にいろいろなパート職員がおり、雇用形態の違ったパート職員と考えた。
   イ この制度による弊害はなかったか
     職員の1/3を臨時職員にしてもいいという、前首長の発言があったが、パート職員が増えて、正規職員は減っていない。
   ウ 職員の生活水準に変化はなかったか
     職員数は、微増となっている。現業は若干減員となっている。生活の変化はないと考えられる。
   エ 非常勤職員の組み合わせにより、残業のない働き方を実現できるとあったが本当にできたのか
     できていない。残業の削減は正規職員の増員がなければ難しいと考えられる。
   オ 「地域の雇用を守るため」という理由は達成されたのか
     自治体で若干増やしても、それほどの効果ではないのでは。
   カ 同じ仕事で採用形態による処遇の違いは存在しなかったのか
     時間単価と月給制が併合するがそれはそれという考えであった。長期間採用のパートもおり、あまり問題視していなかった。ただ、同じ内容で形態が違うことに対する論議はあった、しかし、結論が出なかったと認識している。
   キ 若い世代の「職業訓練」につながったのか
     特採ではなっていたと考えている。2~3名であるが自治体職員となっている。新規採用者よりは仕事になじんでおり、役立っていると考える。
  ② B県本部
    緊急雇用対策事業として提案されているのは、県内でG単組1ヵ所である。現在交渉中である。その結果を待って、県本部としては対処していきたい。
    内容は、現実に時間外を減らすことを前提としている。よって、職員は歓迎している。7月1日から試行を予定している。現在の時間外の多い部署、少ない部署をきちんと把握して、超勤の縮減を行い、その上で、準職員を採用する。
    他に波及することは、考えられる。
    合併を見据えて、人員を増やさないための方策ではないか。

(3) C県本部
  ① 連合C
   ア C合意の概略
    a 公的機関が「ワークシェアリングを実施する」と宣言し、労働側も協力して取り組む例はC県が初めて。「日本で初の政労使協調によるワークシェアリング」(C県・C県経営者協会・連合C)と評価されている。
    b 発端は、99年6月「C県雇用対策三者会議」設置発表。98年緊急雇用対策事業費2,971億円の補正予算。しかし99年4月の有効求人倍率は過去最低を記録。
    c 99年12月「C型ワークシェアリングについての合意」(C合意-オランダの「ワッセナー合意」にちなんで。7項目の合意)
      …第1項目で「労使が雇用の維持・確保を何よりも最優先するという共通認識に立って、適切な賃金水準とそれを支える評価システムを確立すること」を掲げておりこれが、「賃下げとしてのワークシェアリングへの歯止めを意識した内容」と評価されている。
   イ 「緊急避難型」の内容と民間の取り組み状況
     連合としては、緊急避難措置であれ、賃下げは労働契約の不利益変更であることから、「労働協約を職場で守らせる運動」を重視し、そのための資料を配付している。この問題点がどうカバーされるかは、現在の段階では「待ちの状況」。
   ウ 政労使のそれぞれの思惑は出ていないか
     経営者サイドでは、各企業への研修会などで「合意」内容を伝える努力をしており、県内の地区ごとで労使協議の場を作らせてきている。
  ② C県本部
    「緊急雇用対策事業に関する」事例は、県庁以外での事例はない。そのためこの問題に対する方針は特にない模様。
  ③ H単組
   ア 事業の概要…キャリアアップ・プログラム。18歳以上29歳以下の者。採用数(初年度100名、2年度150名)。基本は1年だが、希望者は再任用も可。身分は非常勤嘱託員。週4日・30時間勤務。財源は超勤予算の5%削減分。賃金は月額15万5000円(年収186万)。
   イ 主な経緯…この制度は、労使協議なしに一方的に発表されたもの。組合は、「雇用拡大は正規職員で」「必要な超勤予算の確保」「正規職員から非常勤への『置き換え』をしないこと」を要求している。
    a 2年目以降の制度存続も当局が決めたこと。組合は説明を受ける程度。組合員からは、余り問題だとする声は上がっていない。組合も今のところ静観している状況。
    b 人員削減の計画(H20までに1,050人、7~8%の削減)があり、組合としてはこの問題が中心。
    c 次年度以降どうするかは、当局も「これだけ注目されている以上やめられない」というのが本音(建前は毎年度決定となっているが)。
   ウ 現在の状況
    a 以前から職員削減の計画があるため、正職員の削減、臨職の削減もあるが、今回の事業による直接の影響とは言えない。
    b 超勤は若干だが減少の傾向はあるが、サービス残業が増えているかどうかは判明できていない。もともと行革による「超勤をつけることを自粛する傾向が拡がっていた」。
    c 採用者は、当局アンケートでは「役に立っている」が約9割だが、採用者へのアンケートでは「立場のあいまいさ」「1年限りであることの不安」「仕事にやる気が発揮できない」などの声が出ている。
    d 組合のアンケート調査では、採用者の16%が「超勤している」と答えている。しかし超勤縮減のための雇用であるので、超勤手当は出ていない。

5. 北海道内自治体の緊急雇用対策事業の調査内容について

 北海道においては、前述のとおり31自治体で緊急雇用対策事業が実施されました。このことに対して、道本部は、次のような点に留意して取り組みを進めてきました。
(1) 職員数の少ない自治体に対しては、なじまない制度であること。
(2) 現行の臨時・嘱託等職員の削減を伴うものではないこと。また、臨時・嘱託等職員の賃金・労働条件の引き下げを伴うものでないこと。
(3) サービス残業の増大につながらないこと。
(4) 真の超勤縮減とそれに伴う予算の削減による施策とすること。また、年次有給休暇等の完全取得等により、労働時間短縮に直接結びつく施策であること。
(5) 正規職員による採用であること。ただし、業務の特殊性等により、やむを得ず非常勤職員での採用となった場合は、正規職員の賃金・労働条件との均等待遇を確保すること。

 これらの取り組みの状況の把握と問題点の把握のために調査を行いました。概括的な調査結果については、下記のとおりです。

(1) 実態に関する調査
  ① 採用年数または月数 …… すべて1年以内の短期雇用
  ② 採用形態 …… すべて非常勤・臨時職員での採用
  ③ 財源 …… 時間外・管理職手当・特別職の報酬カット等
  ④ 賃金 …… 月給制は少なく、日給制がほとんど

(2) 現在の状況について
  ① 現在の正規・臨時・嘱託職員の削減が行われませんでしたか …… ほとんどない
  ② 職員の勤務時間の縮減につながっていますか …… 縮減につながっていない
  ③ 現実の雇用創出につながっていますか …… つながっているといないが半々
  ④ 職員のサービス残業の増加になっていませんか …… 変化はみられない
  ⑤ 所得の減少に対する職員の不満はありませんか …… 変化なし
  ⑥ 正規職員の生活に変化はありませんか …… 変化なし
  ⑦ 正規職員の年休消化はどうなっていますか …… 変化なし
  ⑧ 採用者に本当に役立ちましたか …… 新たな不安定雇用の創出になっているが一部役立っていると思われる
  ⑨ 現行の嘱託・臨時職員との格差は生じていませんか …… 一部生じているがおおむね生じていない
  ⑩ 仕事の内容に変化はありませんか …… この事業による変化はまだ把握されていない

6. 今後の緊急雇用対策事業に対する考え方について

(1) 2002年1月段階での指標
  ① 正規職員による採用であること。ただし、業務の特殊性等により、やむを得ず非常勤職員での採用となった場合は、正規職員の賃金・労働条件との均等待遇を確保すること。
    (理由)現在でも多くの自治体において、欠員を抱えている。また、行政について責任を持って担うためには、正規職員である必要性がある。また、真の業務分担という観点からも正規職員であることが望ましい。さらに、臨時的雇用であれば、一過性のものとなり、真の雇用の創出とはなり得ず、本来のワークシェアリングの考え方に反することとなる。ただし、業務の特殊性等により、やむを得ず非常勤職員での採用となる場合も想定されるが、その場合は、正規職員の賃金・労働条件との均等待遇を確保することが必要である。
  ② 職員数の少ない自治体に対しては、なじまない制度であること。
    (理由)例えば、北海道のように、職員の超勤縮減を原資として行うとしても、職員数の少ない自治体では、課を横断する業務を行うのでなければ、採用ができないこととなるため、その実効性が疑わしい。
  ③ 現行の臨時・嘱託等職員の削減を伴うものではないこと。また、臨時・嘱託等職員の賃金・労働条件の引き下げを伴うものでないこと。
    (理由)前述のとおり、北海道においては、ワークシェアリングの一方で、臨時職員の削減を当局が考えており、逆に雇用の削減となることも想定される。また、現在採用されている臨時・嘱託等職員の賃金・労働条件の引き下げに伴うことは、制度の本来の趣旨に反する。
  ④ サービス残業の増大につながらないこと。
    (理由)単に雇用の創出を目論むことにより、実際には職員の業務量の縮減につながらずに、予算がないことを理由にサービス残業が増大することが懸念される。
  ⑤ 真の超勤縮減とそれに伴う予算の削減による施策とすること。また、年次有給休暇等の完全取得等により、労働時間短縮に直接結びつく施策であること。
    (理由)超勤縮減・年次有給休暇等の完全取得等は、職員の健康管理の面から長年に亘っての組合の要求事項であり、その実現を図ることは必要と考える。しかし、安易にワークシェアリング・雇用創出というネーミングにつられた施策となった場合、逆に職員の健康管理に問題が生じたり、行政の停滞を招くおそれがある。

(2) 付加すべき指標
  ① 時間外手当の削減でも労働条件の変更に当たるので、労使協議制の徹底が必要
    (理由)時間外手当の削減が多くの単組で提案されている。これは、明らかに労働条件に関する事項である。しかし、一部の単組で労使協議が行われていない。よって、労使間において、労働条件の変更に関する事項であることを確認し、労使協議制の徹底を行う。
  ② 組合員に対する周知等の徹底が必要
    (理由)労働条件の変更であるから、当然組合員に対する周知、意見交換等が必要である。組合員も納得した上での実施が最低限必要である。
  ③ 不安定雇用の拡大は認めない
    (理由)本来のワークシェアリングとは、正規職員での採用を基本とすべきである。また、緊急雇用対策事業と銘打つ以上は、当然に長期の採用が必要である。臨時・嘱託等の形態であれば、新たな不安定雇用者の創出であり、真の雇用対策とはなり得ない。
  ④ 財源の使用の明確化、当局負担の明確化
    (理由)職員の人件費を事業費に充てるのであれば、当然に使用目的の明確化と特定が必要である。また、時間外手当の削減を財源とするのであれば、サービス残業の削減が必要である。さらに、職員に犠牲を強いるのではなく、当局が財源に対して責任を持つことが重要である。
  ⑤ 長期的展望に立った取り組みを構築させること
    (理由)一時的な事業であれば、本来の目的を完遂することは、不可能である。よって、きちんと、中長期的な展望を持った取り組みとさせることが必要である。

7. あとがき

(1) 今年度の取り組みの意義
   今年度については、自治体の緊急雇用対策事業に対する組合員の負担を最小限にくい止めることを目的に取り組み、問題点を把握できたことは、一定の成果であると考えます。しかし、ワークシェアリングに対する具体的な検討に入ることができませんでしたので、さらに、来年度以降の取り組みにつながる調査・研究をめざしていかなければなりません。

(2) 次年度以降の取り組みの視点
   日本におけるワークシェアリングの課題については、次の4点が考えられますが、来年度以降は、これらの視点をもとに、調査・研究を進めて行きたいと考えています。
  ① ヨーロッパ各国におけるワークシェアリングの概要と比較
  ② 自治体版ワークシェアリングの課題
  ③ 日本におけるワークシェアリングの問題点と可能性(政労使での痛み分けは可能か)
  ④ 働き方・生き方(ライフスタイル)の変更が可能か
   特に次の3点についての重点的な調査・研究が必要と考えています。
   【検討の具体的視点】
  ② 自治体版ワークシェアリングの課題(公務職場での実施の可能性)
   ア 職場段階における実施の方法
     たとえば、時間外勤務手当の削減と年休の完全取得、サービス残業の解消による経費を職員給与の10%と考えた場合、10人に1人のワークシェアリングが可能と考えられる。しかし、たとえば、建設課に10名の職員が在職していれば、それを11名でワークシェアリングすることは可能であるが、総務課と建設課を合わせて10名在職しているから、11名とすることは、事業量の正当な見直しがなされなければ、不可能なものであり、そのことを考慮すれば、全職場に一律的に人数合わせ的な導入はきわめて難しいと考えられる。
   イ それでは、どのような職場に可能なのか
     課あるいは、部単位で10名以上の職員の在職している職場で、同一職種が10名以上在職している職場でのワークシェアリングは可能であると考えられる。よって、きわめて職員数の少ない自治体・部局等でのワークシェアリングの導入は、単に職場の混乱をもたらすことになるのではないかと考えられる。
  ③ 日本におけるワークシェアリングの問題点と可能性(政労使での痛み分けは可能か)
    ワークシェアリングに関する政労使合意(2002年3月29日)

・ワークシェアリングは、雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行うもの。
・ワークシェアリングの形態は、雇用の維持のための「緊急対応型」と「多様就業型」。
・緊急対応型の実施に際して、経営者は雇用の維持に努め、労働者は、所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の取り扱いについて柔軟に対応するよう努める。
・多様就業型の推進に関して、政府、日経連、連合は、働き方やライフスタイル見直しにつながる重要な契機となるとの認識し、環境づくりに積極的に取り組む。
・個々の労使は、働き方に見合った公正な処遇、賃金・人事制度の検討・見直し等多様な働き方の環境整備に努める。

   <これに対する課題>
   ・労働者の収入の取り扱いについて柔軟に対応することは記載されているが、使用者側の対応について記載がない。
   ・政府としての対応方針・負担に対する具体的記載がない。
   ・細部にわたっての政労使それぞれの思惑が一致しているとは思われない。その整合性について検討が必要と考えられる。
  ④ 働き方・生き方(ライフスタイル)の変更が可能か
   ・男女が共に働き続けられる労働環境の整備
   ・家庭を持たない男女の増加
   ・仕事社会からの変革(生活と労働の調和)等、に対して検討を進めて行きます。