【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第2分科会 まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~ |
極度の少子高齢化と大都市集中を背景に、小規模自治体では人口減少に歯止めがかからず、誰にも管理されない空家が増え、社会問題となっている。喫緊の課題となっている「空家対策」に道南各市町はどのように取り組んでいるか調査するとともに、八雲町における特徴的な空家改修事例を通じて、空家対策について考察する。 |
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1. はじめに 道本部自治研推進委員会は、第37年次自治研全道集会において取り組むテーマとして、①地域公共交通を考える、②空家対策を考える、③地域おこし協力隊の実態把握とその後、の3つを選定した。これを受け、筆者は空家対策を選び、レポートを作成することとした。全道の状況については、道本部自治研推進委員会がレポートを作成することから、本稿では道南の各市町の取り組み状況について整理しつつ、筆者の地元である八雲町における空家改修の事例を取り上げ、空家対策の課題などについて考察する。 2. 道南各市町の状況 2018年3月末現在における道南(渡島・檜山管内)の各市町の空家対策の状況を、国土交通省や各市町のホームページから情報収集し、取りまとめたものが表1である。
渡島・檜山管内18市町のうち空家対策(注1)に取り組んでいる市町は6市町であり、いずれも空家の除却や改修に対する補助金の交付が施策の主となっている。国土交通省は、市町村が実施する除却補助に対して5分の2、改修補助に対して2分の1を補助する事業(空家対策総合支援事業)を実施しており、要件を、①空家対策特別措置法に基づく「空家等対策計画」を策定していること、②空家対策特別措置法に基づく「協議会」を設置するなど地域の民間事業者等との連携体制があること、としている。このため、補助事業を実施している6市町全てにおいて空家等対策計画の策定が行われている。 3. 空家改修の事例 空家改修に関する事例の調査は、2つの事業者に対するインタビューによって行った。
空家をグループホームに転用することとなったきっかけは、「空家ありき」でも「グループホームありき」でもなく、ほぼ同時期だった。偶然、職員の親類から空家になることが確定した家屋を提供する話があり、法人がグループホーム用の建物を探していた折だったため、グループホームに改修することになった。 空家を活用するメリットを尋ねたところ、イニシャルコストを抑制でき、その分を人件費に回すことができることだという答えだった。介護の分野は離職率が高いため、定着してもらうため人にコストを掛けたいと考えており、空家活用のメリットとして感じているという。 逆に、苦労したことを尋ねると、居抜きだったため家財の処分が案外大変で、長年住み続けた終の棲家は膨大な物であふれているという。それでもメリットが上回っているため、今後も空家を活用することを考えており、所有者の子から親が住んでいる家を引き取ってほしいという依頼を受けているという。 最後に、国や自治体が行っている空家対策に対する意見を伺ったところ、八雲町は子育て支援として若者を対象に空家改修補助金を出しているが、所有者や相続人に経済的余裕が無い場合に放置され、空家になる傾向にあるので、子育て世帯だけに限定せず、補助の対象者を増やした方が良いのではないかということだった。さらに、公的施策に対する意見ではないが、と前置きしたうえで、空家活用の課題として、①所有権移転や相続手続きがスムーズに進まないこと、②家財が膨大に蓄積されていること、③空家となり放置された期間が長い状態だと建物が傷んで使えない、という3点があるが、いずれも所有者が亡くなる前から動き出しておくことで解決できるので、そこがポイントになるということだった。 |
(2) 空家を改修してイベントスペースに転用した事例
空家の改修を始めたきっかけは、A氏が司法書士を本業としており、空家が多いことが気になったためという。また、この空家(市街地から約10km離れた場所)を選んだ理由を尋ねたところ、自宅の隣だったこと、所有者が知り合いだったこととのことだった。なお、改修にあたって所有権は移転しておらず、賃貸という形をとっている。 以前の用途は店舗兼住居だったが、所有者が高齢となり10年ほど空家となっていた。これをYTがほぼ人力で天井・壁・床を抜いて、危険な箇所や重要な箇所のみ知り合いの大工に依頼して改修した。特に設計図等はなく、その時々で参加者の発案で自由に作業を進めており、現在も休日などに集まって作業をしているという。 国や自治体が行っている空家対策に対する意見を伺ったところ、空家バンクがうまくいっておらず、売りたい人と買いたい人の情報がマッチングしていないのではないかと思う。ほかには、特定空家になったら取り壊す補助金を出すということをやっているが、それは空家にすることや放置することを助長することに繋がると思う。むしろ建築基準法などの規制緩和が必要ではないかと思うと話してくれた。 最後に、今後について尋ねたところ、イベントはそれ自体が目的ではなく、この場所でどれだけ人が集まるかを調べるための社会実験または試行が目的で、イベントを打った結果をもって、この場所で商売をしてくれる人を探しているという。持続させるためには利益が必要。ここで店を開いて収入を得て、空家の所有者にも家賃が入り、改修をした私たちにも収益があれば、私たちは次の空家でまた改修に取り組むことができる、とのことだった。 |
4. まとめ 空家は、害虫や小動物の住み家となり不衛生であったり、強風で建具や部材が散乱し近隣に危害が及んだり、景観を害したり、数が増えると市街地の空洞化を招く。しかし、見方を変えると地域の資源と捉えることもできる。空家対策に積極的に取り組むことは、単に危険空家の除去というだけではなく、人口減少対策、まちの活性化につながる可能性を秘めていることを2つの事例は強く示唆している。
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(注1)空家バンクは北海道も取り組んでおり、道内全ての市町村を網羅していることから、空家バンクの取り組みだけを行っている市町については除外した。 |