【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第2分科会 まちの元気を語るかよ ~町ん中と山ん中の活性化~

 浜中町は、北海道東部の太平洋に面しており、漁業と酪農が盛んな自然豊かな町です。中でも霧多布湿原は、3,168haの広さをもつ雄大な湿原で、中央部が1922年に国の天然記念物に指定、さらに1993年にはラムサール条約登録湿地に認定され、国際的、学術的にも注目を集めております。湿原を中心とした観光産業は町としても重要な位置を占め、町職として地域の貢献、交流を目的とした町内イベントへの参加をめざしています。



「浜中うまいもん市」へ町職としての協力・参加


北海道本部/浜中町役場職員組合・自治体調査部

1. 浜中町の観光産業

 浜中町は、国の天然記念物に指定されている霧多布泥炭形成植物群落(霧多布湿原)など学術的に貴重な資源を有する厚岸道立自然公園や、奇岩絶壁をみせる断崖・霧多布岬などの海岸線の景勝地をはじめ、牧歌的な風景の酪農地帯やトウキョウトガリネズミなどの貴重な動植物、冷涼な気候により低地でも見られる高山植物など豊富な観光資源に恵まれています。
 こうした豊かな自然景観の鑑賞や、希少な動植物の生態系の研究などを目的に、毎年多くの観光客や研究者が浜中町を訪れています。
 一時は、全国的な景気の低迷から観光客の入り込み数が減少しましたが、近年では、観光地としての北海道人気の高まりや、釧根地域における外国人観光客の誘客強化への取り組みなどによる効果から、観光客の入り込み増が期待されています。
 今後は、町の基幹産業である、漁業・酪農業から生産される海産物や、乳製品を生かした質の高いサービスの提供を、各産業団体や生産者との連携を図りながら進めていく必要があります。
 また、滞在型観光を推し進めるためには、ガイド等の人材育成や、農山漁村の地域特性を活かした「体験」、「食」の充実が必要ですが、少子高齢化が進むなか飲食店や宿泊施設の減少が予想されており、改善が求められるところであります。
 浜中町では、食や自然の魅力を伝える「浜中うまいもん市」・「きりたっぷ岬まつり」、浜中町出身の漫画家モンキー・パンチさんの作品である「ルパン三世」を活用した「ルパン三世フェスティバル」等のイベントが開催され、最も重要な観光商品としてさらなる発展が期待されており、観光客の要求に見合う高品質で魅力あるサービスの提供をめざしています。

【年度別観光客入り込み数の推移】
年 度2004200520062007200820092010
入込数391,295368,873345,737339,142302,664350,798333,440
年 度2011201220132014201520162017
入込数265,948282,786331,188345,172435,165380,640431,466

2. 「浜中うまいもん市」について

(1) 「浜中うまいもん市」の概要
 浜中町観光協会が主催する「浜中うまいもん市」は、1972年から2006年まで34回にわたって続いた「霧多布湿原えぞかんぞうまつり」を引き継ぐかたちで2007年より名称と開催場所を変更して開催されており、合わせると2017年の開催で45回目を数える歴史あるイベントとして定着し、町内外に広く知られています。
 毎年7月に開催され、霧多布湿原に咲くエゾカンゾウ、ヒオウギアヤメ、ワタスゲ等の植物が見所を迎え、イベント会場や付近の木道から湿原の花々を見渡すことができ、観光客からも高い評価を受けています。
 イベントの内容は、ゆで揚げたばかりの花咲カニや、ホッキ貝・カキの網焼き、トキシラズのステーキなど浜中町の味覚を味わいながら、カキのつかみ取りや自然散策、乗馬体験など、浜中町の自然を満喫しながら体験観光ができるものとなっています。

【浜中うまいもん市来場者数の推移】
(開催日の合計、単位:人)
年 度20132014201520162017
入込数3,0004,5006,5006,5006,700

(2) 「浜中うまいもん市」の課題
 イベント会場は、以前は湿原内に設置していましたが、会場のスペースの問題や自然保護の関係から、数年前より道道を挟んで向かい側の特設会場で開催しています。
 しかし、この場所は普段空地で雑草も伸び放題となっていて、整地や草刈などの整備をしないとイベント会場として使えないという課題がありました。

3. 職員組合のかかわり

(1) これまでの経過
 浜中町職は、過去にイベントへの参加など町づくりの取り組みを行ってきましたが、公務員へのバッシングが強まる中、組合員個人として地域活動へ参加していても、組合組織としての活動は停滞していました。
 その中で、2009年度にまとめた、町職の組織財政検討委員会の答申で「地域社会参加活動について地域貢献活動の実施を検討」として地域に貢献できる運動を模索してきました。
 特に2011年の東日本大震災へのボランティア派遣を契機に具体的な活動の検討を行いました。

(2) 「浜中うまいもん市」への協力
 浜中町職では、2011年より、「地域産業への貢献」「若手組合員の育成」「組合員間の交流」を目的として、観光イベント「浜中うまいもん市」への作業協力を浜中町観光協会へ申し出ました。
 町職として担当する作業は、イベント開催1週間前の会場の草刈り奉仕作業となっており、毎年20人前後の組合員が作業に従事しています。目標としている地域産業への貢献とまではいきませんが、若手から中堅までの職員が同じ作業を一緒に行うことが、組合員同士の交流につながり、仲間意識を育む取り組みであると考えています。
 また、会場の草刈り作業は、組合活動としては目立たず、地味な肉体労働と映るかもしれませんが、浜中を訪れた観光客の皆さんに、気持ちよくイベント会場を利用していただきたいというホスピタリティの精神は、行政職員としての場面でも、相手の気持ちを思いやる気持ちや、気配りができるようになるための注意力など、少しずつですが職員の意識の高揚につながると思われます。

4. 今後の展望

 今後は、町職としてイベント当日の手伝いなど新たな取り組みを増やすことや、他の町内イベントへの参加も視野に入れ、町の観光産業を応援する組織の一つとして、少しずつステップアップしながら継続的な協力をめざしていきたいと考えています。
 今、組合の抱えている課題として、組合員の組合離れが挙げられます。賃上げなど組合活動の効果が上がらない状況では、集会や学習会などは、面倒でどうでも良いと感じられてしまいます。その中で、地域活動や社会貢献活動といった、割と軽い気持ちで参加できる活動は、組合運動の視野を広げ、地域に運動を理解してもらい、結果的に自分たちや地域の人たちの幸せに繋がるものと思います。