【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第2分科会 まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~

 いしかわ森林環境税は、県民の理解と協力で森林の公益的機能が将来も維持されるよう2007年に導入され、県内に住む一定収入のある個人は年額500円を納めている。この税を基にした事業に、県民が気軽に参加できる森づくり体験活動を実施する目的で「森づくりボランティア推進事業」がある。しかし、この事業は申請者数が伸びずにいた。そこで、本事業における県民の要望を掘り起こし、申請拡大に向けた活動について報告する。



森づくりボランティア推進事業に
おける申請拡大に向けた取り組み
―― 「いしかわ森林環境税」について ――

石川県本部/石川県職員労働組合 宗田 典大

1. はじめに(いしかわ森林環境税について)

環境林整備事業
(市町・林業事業体等)

 本県には287千haの森林があり、県土の7割を占めている。戦後の荒廃林地の復旧等のため熱心に植林が進められた結果、約99千haの人工林が造成された。
 しかし、木材価格の低迷等による林業採算性の悪化や山村の過疎化などにより条件の悪い約22千haの人工林で間伐が行われず森林が荒廃し、水源のかん養や山地災害の防止といった公益的機能が低下し、私たちの安全で安心な暮らしへの影響が懸念され、抜本的な対策が求められるようになった。
 このため、森林を健全な姿で次の世代に引き継いでいくことを目的に、県民の理解と協力で森林の公益的機能が将来も維持されるよう県内に住む一定収入のある個人は年額500円を納める「いしかわ森林環境税」を2007年に導入した。

いしかわ身近な森保全事業
(市町・市町が構成する協議会)


2. ソフト事業としての「いしかわ森林環境税」

 いしかわ新進環境税には、県民の理解と県民参加の森づくりに学校、森林組合、NPO、地域住民等の組織する団体等が申請し取り組む事業を以下に示した。本報告では「①森づくりボランティア推進事業」の申請拡大に取り組んだ事例を報告する。
① 森づくりボランティア推進事業
② こども森の恵み推進事業:子ども達への森林環境教育活動の支援
③ いしかわ県民参加の森づくり推進事業:森づくり月間の10月に各地区で県民森づくり大会を実施
④ 企業の森づくり推進事業:企業が森づくりに参加する環境づくり

   
毎年10月に県民森づくり大会開催 子どもを対象にした森林環境教育 企業やボランティア団体による
森づくり活動の支援

3. 森づくりボランティア推進事業の課題と申請拡大の取り組み事例

森づくりボランティア推進事業の事業申請内容、申請基準等一覧

事業内容

県民が気軽に参加できる森づくりに関する体験活動等の実施
民(私)有林を活動地とし里山林の保全活動、森林に親しむ活動をおこなう。

補助事業者

NPO、地域住民等の組織する団体等

採択条件

・事業地は民有林であること
・事業年数は3年を上限とする。
・備品購入(チェンソー、草刈り機等)は原則初年度のみ。
・1年以上の森林整備活動実績がある団体であること

補助対象

・団体構成員の賃金及び旅費は除く
・補助金額の上限は500千円(補助率10/10)
・講師謝金、需用費、役務費、使用料、賃借料、原材料費、備品購入費



(1) 申請状況と課題の原因
 森づくりボランティア推進事業は、県民が気軽に参加できる森づくりに関する体験活動等の実施を旨として、地域住民等が組織する非営利団体等を公募対象とする事業である。
 新規申請者数は、当初から伸び悩んでおり、「いしかわ森林環境税」のPR不足、森林、林業に意識のある市民団体も数に限りがあること、「地域で取り組む森づくり活動」に向けた一般市民への森づくりに関する意識の向上にむけた取り組みが、十分にされていないことが原因と考えられる。
 そこで、担当業務にとらわれず、市井の人々との出会いから森林に関する地域の要望の掘り起こし、積極的に申請に係る支援に取り組み事業申請に導いた。
 
森づくりボランティア推進事業
申請事業者数の変化


(2) 申請拡大の取り組み事例
① 小池棚田保全委員会

事 業 地

輪島市小池町地内

事業年度

2016年度

事業目的

八王子大権現神社周辺の山林及び遊歩道の環境整備

活動内容

山林の整備や遊歩道の障害となっている樹木の伐採、落石等の除去、路面の整備

支 援 の
取り組み

いしかわ農村ボランティアに参加した際、地区住民が大切にしている八王子大権現神社周辺の歩道が荒廃した現状を聞き、森づくりボランティア推進事業申請を提案した。


八王子大権現神社(輪島市小池町)

 
山林及び遊歩道の環境整備状況

② ケロン子ども森の学校委員会

事 業 地

能登町斉和地内

事業年度

2014~2016年(3カ年)

事業目的

荒廃山林を再生し、子どもたちが森林学習できる「ケロン森の学校」をつくる。

活動内容

「ケロン森の学校」の拠点となるツリーハウス建設、及び除間伐、歩道設置、広葉樹植栽等による森林整備

支 援 の
取り組み

ツリーハウス建設に建築資材が補助対象となるよう調整を行った。
また、2017年度以降の事業継続について「こども森の恵み推進事業」に申請を指導した。


 
NOTO+(能登町広報)に
完成式典を掲載
(2015年12月表紙)
 

ツリーハウス完成(2015年度事業)

   
    ツリーハウス土台・床完成
(2014年度事業)

③ 輪島塗「集いの森」

事 業 地

輪島市山ノ上町地内ほか

事業年度

2016~2017年(継続予定)

事業目的

ウルシ等の植栽と育成による輪島漆再生と地域の活性化を目的とする。

活動内容

ウルシと木地となるケヤキ、アテ等の植栽

支 援 の
取り組み

漆の生産のために植栽方法等技術的指導、及び計画について指導を行った。 林業試験場、奥能登農林総合事務所森林部(協力)


輪島塗「集いの森」のみなさん

 
 

ウルシの植栽

 

ケヤキの植栽指導


④ 春蘭の里実行委員会

事 業 地

鳳至郡能登町宮地地内

事業年度

2011、2012、2015年度

事業目的

2015年度里山林の保全活動による水源涵養や生き物の多様性の維持を図る。

活動内容

ハンマーナイフモア及び草刈り機による草刈り、及び支障木除去による林内整備

支 援 の
取り組み

乗用ハンマーナイフモアを活用して、従来より効率的に作業を行う取り組みについて機械導入に関する支援を行った。
乗用ハンマーナイフモアの使用で効率的に作業が行えることがわかった。


 

事業地(作業後)

  事業地(作業前)
     
 
乗用ハンマーナイフモア    

4. 森づくりボランティア推進事業支援の発端となった事業

 今回の取り組みで支援のきっかけとなった事業等は次のとおりである。「いしかわ農村ボランティア」は現地引率で参加したことで地元との人々と交流が生れた。「石川県グリーンツーリズム研究会」は事業担当として取り組み研究会員の要望を聞き取ることができた。「輪島うるし塾」では地域の勉強のため受講生として参加していたが、漆職人の方との出会いから要望と課題を聞き取り事業申請に結びつけた。このように、担当業務にとらわれず、また自己研鑽の場で出会った人々から森林に関する地域の要望の掘り起こし、積極的な支援を行い事業申請に導くことができた。
 今後もこのような地域の課題解決の取り組みを続けていきたいと思っています。


 

 

いしかわ農村ボランティア
(現地引率として参加)

  石川県グリーンツーリズム研究会
(事業担当者として参加)
     
   

輪島うるし塾
(受講生として参加)