1. はじめに
ラグビーワールドカップは、「夏季オリンピック」「FIFAワールドカップ」に次ぐ世界3大スポーツイベントの一つとされる。9回目の開催となる2019年の日本大会は、アジアでは初の開催であり、テレビ視聴者は世界で40億人以上といわれ、世界中からの注目度が大変高い大会である。
豊田市では、豊田スタジアムを試合会場として愛知県と共に立候補し、2015年3月に開催決定を受けた。そして、2017年11月には対戦カードの試合日程が発表され、地元日本代表や世界ランキング1位のニュージーランド代表の試合を始め、計4試合の豊田スタジアム開催が決定した。今後さらなる盛り上がりが期待される中、ラグビーワールドカップ愛知・豊田開催に向けた準備及び機運醸成の取り組みについて紹介する。
2. 機運醸成活動について
(1) 開催及び対戦カードの決定
2015年3月2日にラグビーワールドカップ2019の開催都市として愛知県・豊田市が決定後、8月には官民一体となって愛知・豊田開催を支援する「ラグビーワールドカップ2019愛知・豊田開催支援委員会(以下「支援委員会」)」が発足した。本支援委員会の組織には、連合愛知豊田地域協議会(豊田地協)も加わり、開催に向けた活動の継続支援を実施している。
2017年11月には各対戦カードの試合会場と日程が発表となり、豊田スタジアムでは日本代表を始め、ニュージーランドや南アフリカ、ウェールズといった好カードが組まれる結果となった。
(2) 開催決定後(2016、17年度)の機運醸成活動
① 2016年度の活動
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↑日本代表のユニフォームでドレスアップした
ナナちゃん人形 |
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↑ラグビーボールをイメージした五平餅 |
これまで豊田市が実施した活動のうち、主なものを紹介したい。
まず始めに、2016年6月に行われた日本代表対スコットランド代表の試合において、名古屋駅前のナナちゃん人形の装飾を実施し、イベント開催をPRした。豊田市駅から豊田スタジアムへと伸びるスタジアムアベニューでは、シティドレッシング(都市装飾)、案内ボランティアの試行実施を行った。取り組みの結果、来場者数24,113人と日本代表戦として最多を記録することができた。
次に、同年7月に行われた南アフリカ・チーターズ対トヨタ自動車ヴェルブリッツの国際親善マッチではエディ・ジョーンズ氏(元日本代表ヘッドコーチ)によるトークショーやチーターズの選手と小学校の日本文化体験交流を行った。
また、12月には大会1,000日前イベントとしてカウントダウンボード、モニュメントのお披露目式を実施した。出店にはショコラ、五平餅など豊田オリジナルのラグビーグルメの出店があった。
その他、とよた産業フェスタや豊田マラソン大会等へのPRブースの出展、タグラグビー指導者養成講座、地元キャッチフレーズ「TRY FOR ALL」の作成、大会3年前PRプロモーション等を実施した。
② 2017年度の活動
8月の第49回豊田おいでんまつりでは、トヨタ自動車ヴェルブリッツOB選手や豊田ラグビースクールの子どもたちと一緒にパレードを実施し、大会公式サポーターズクラブの加入依頼やトップリーグの開幕のPRなどを実施した。
8月には豊田市役所南庁舎2階に「ラグビーPRコーナー」を設置した。PRコーナーには出場国の代表ジャージや大会をPRする展示を行い、大会へのムードを高めていく。
また、豊田スタジアムで開催されたラグビートップリーグの開幕戦では、愛知県内全域での広報活動を展開し、トップリーグ史上最多の27,871人の入場者数を記録した。徐々に愛知県内におけるラグビーへの関心の高まりを感じた。
9月1日から豊田市ホームページ内に「豊田市ラグビーワールドカップ2019」を開設した。注目イベントの告知や活動報告、地元のラグビー関連情報、開催に向けた最新の情報を掲載している。また、ページ全体に選手のプレー写真等を使用し、ラグビーの躍動感がイメージできるデザインとした。詳しくは、下記QRコードから確認してほしい。
11月は「愛知・豊田ラグビーフェスタ2017」を開催し、オーストラリアのメルボルン・レベルズを招へいした。小中学生との交流事業や練習の一般公開、トヨタ自動車ヴェルブリッツの国際親善マッチを行った。
2017年度のその他の取り組みは、豊田スタジアム及び市内各所でシティドレッシングを開始、ラッピングバスの運行、トヨタ自動車ヴェルブリッツ主催のタグラグビー教室の開催などを行った。
3. 豊田市職員労働組合連合会の取り組み
(1) 地協メーデーに合わせてPR
豊田市職員労働組合連合会では、2017年5月に行われた豊田地協メーデーに合わせてPRブースを出展し、組合員や役員による啓発活動を行った。ブースはラグビーVR体験、ミニラグビーボール・ストラックアウト、写真撮影用フォトパネル展示の3つを出店した。
このうち、VR体験ではVR(バーチャルリアリティ)映像を映し出す専用ゴーグルによる、ラグビーの仮想空間を参加者に体験してもらった。
2018年も連合愛知豊田地協メーデーと同日・同会場でラグビーワールドカップ500日前イベントを実施する予定である。豊田市職員労働組合連合会も2017年度と同様の活動を行う予定で、大会に向けた機運を盛り上げていきたい。
4. ラグビーワールドカップがもたらすもの
(1) 大会の効果について
① 経済効果
2019年の日本大会は全国12都市19自治体で開催され、多くのチームキャンプ地が全国に展開される。2019年を待つことなく、競技場の改修や周辺インフラの整備が発生し、親善試合やPR活動による海外からの選手団、観光客の訪問が期待されている。これらのことは地域経済の活性化に貢献し、地方創生へとつながることである。
また、参加20か国から選手団、スタッフ、メディアと世界中の観戦者が多数訪問し、観光需要が高まることも予想されている。来日観戦者は30万~40万人いるとされ、その平均滞在日数は前回大会では平均14日とされている。
2015年のイングランド大会では3,256億円~3,996億円の経済効果があったと報告されている。2019年の日本大会についても、民間シンクタンクが投資額の公表数字から総額4,200億円の直接・関節・雇用創出を含めた経済効果があると試算している。そのうち、愛知県全体では113億円の経済波及効果があると言われており、大きな経済効果が期待される。
② 潜在効果
大会期間中を中心に、開催地及びキャンプ地では国際交流事業が実施されると予測される。また、大会ボランティアなどの国際交流機会が発生する。これらのことは、地域の国際化の推進となると考えられる。また、市民のラグビーを中心としたスポーツへの関心の高まり、そしてスポーツを通じた健康意識の増進もあると考えられる。
また、大会開催の実績と経験は地域及び行政の財産として蓄積され、今後行われるその他の大会の開催へと繋がることだろう。さらに、大会開催で得られる地域の一体感や愛着心の高まりは地域力の向上へと繋がるはずだ。
(2) 最後に
豊田市は、先述したラグビーワールドカップ2019の大会成功のみで終わることなく、大会を契機におもてなしの向上や市民が生涯活躍する社会の実現など、レガシー(財産)を残すことをめざしている。
そして、豊田市職員労働組合連合会としても、ラグビーワールドカップという世界的なスポーツイベントを担当課と共に盛り上げ、大会の成功へとつなげたいと考える。また、開催を通して組合員の交流を深め、組織力の強化につなげていきたい。 |