【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第2分科会 まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~

 中津市と玖珠町で申請した「やばけい遊覧―大地に描いた山水絵巻の道をゆく―」が2017年度に日本遺産に認定された。「やばけい」という地域を活性化させるため、両市町の住民が同じ目線で話し合いをはじめた。



地域活性化のために
―― 日本遺産が自治体を越える ――

大分県本部/玖珠町職員労働組合 野口 典良

1. 日本遺産とは

 「日本遺産 (Japan Heritage)」は、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーとして文化庁が認定したものである。
 我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るために、その歴史的経緯や、地域の風土に根ざした世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し、これらの活用を図る中で、情報発信や人材育成・伝承、環境整備などの取り組みを効果的に進めていく。
 中津市と玖珠町で申請した「やばけい遊覧―大地に描いた山水絵巻の道をゆく―」は、2017年度の認定を受けた。(別紙資料 出典 大分県教育庁文化課パンフレット抜粋)

2. 地域とは

 日本遺産の取り組みをするようになって、中津市の職員が玖珠町との行政区域の境のことを「目に見えない境界線」と表現した時、自分の中の世界の狭さを感じた。
 自分が自治体の職員となる前は、地域といえば文化圏や地質的に同じ特徴のある土地を指す言葉等で、「風土」に近い使い方をしていたような気がする。それが、いつのまにか自分の中で行政区域内やその区域内の一定の地区を指す言葉になってしまった。つまり、地域という言葉が自分のいる目に見えない行政区域の境界線から出なくなっていた。
 しかし、その境界線は地域の文化や歴史にとって何の意味もなさないのではないかと思う。今回中津市と共に認定された日本遺産は改めてそのことを教えてくれたような気がする。
 玖珠町の文化的影響を見ると、筑後川流域の最上流部ということから、そこからの影響が強くうかがえ、戦国期には東西南北に抜ける街道がある交通の要衝地として大友氏が重要視する土地となった。明治期には、日本遺産のストーリーの骨格となる中津玖珠道路(現在の県道28号線)が開通し、文化の交流はもちろん、人や物も大きく動き出すことになる。当たり前のことではあるが、このような他の地域の影響があって玖珠町が出来上がっている。
 今回認定を受けた日本遺産は、この中でも明治以降結びつきが強くなり、大正から昭和初期にかけて耶馬溪を中心に観光面で協力してきたストーリーが基になっている。ここでいう地域は、「やばけい」を中心につながった地域をいう。

3. 地域活性化とは

 地域活性化という言葉の意味も活性化させるための方法もわかっているわけではないので、的外れな話になるかもしれない。
 JTB総合研究所によると、「地方創生とは、各地域がそれぞれの特徴を活かし、自律的かつ持続的で魅力ある社会を作り出すこと。(中略)地方において安定した雇用を創出し、それにより地方への人流を促し、合わせて若年世代への支援を強めることで人口減少に歯止めをかけ成長力を確保しようとしている。」とあり、この別称・類語が地域活性化であるとしている。
 地域の魅力を引出して活かすことが、地域活性化の手段の一つであるならば、日本遺産はその一つだろう。
 日本遺産によってこれまで中津市と玖珠町それぞれで発信していた「やばけい」の情報(魅力)が一つにつながるだけでも、その意味は大きいと思う。
 そして、その地域の人たちが目に見えない境界線を越えて、同じ目線で話し合うことが一番の意味を持つと思う。違う考え方の人が集まり、同じ目線で話し合うことでどのような化学反応が起こるか。うまく反応が起これば地域が活性化する一助となるだろう。

4. 市町を越えて

 この化学反応を起こすため、現在両市町の住民同士が「やばけい」の未来について話し合いを重ねている。
 「やばけい」みらいスタートアップ会議と称し、合計3回開催される。第1回はお互いを知る、「やばけい」を知ると題し3月に中津市で、第2回はこれからを語り合うと題し6月に玖珠町で開催された。3回目は未来に向けて動き出すと題し8月に耶馬溪(中津市)で行う予定になっている。
 1回目、2回目ともに官民合わせた住民が100人程参加し、お互いの市町からみた「やばけい」の魅力を語り合っている。玖珠町で行われた2回目は、中津市・玖珠町ほぼ同数の参加があった。アンケートには前向きな意見が多く、自分の知らなかった「やばけい」の魅力を発見することができている。また、市町を越えて話ができたことでお互いをもっと知ろう、もっと話そうという意識も出てきている。そして、具体的に何をするのか、何ができるかという期待ややる気が芽生えた人もいる。
 おそらく市町を越えた住民がこれほどまで多く集まって熱く語り合ったことはなかっただろう。この熱量で迎える第3回で未来に向けて何が動き出すのか。この話し合いで生まれたアイデアが実現し、やばけいで繋がった地域が元気になることを望む。

5. 未来へ

 日本遺産の取り組みだけで地域が活性化するわけではないと思うが、地域を活性化させる一つの手段だと思う。自治体を越えた取り組みであるため思うようにいかないところがある。しかし、中津市と玖珠町の住民は「やばけい」を中心に盛り上がるため、一歩ずつ進みはじめた。あとは、未来に向けて動き出すことができるような、未来へつなげることができるような人材(リーダー)が必要だ。