1. はじめに
私が所属しているピースワークつくみは、①高齢者福祉、②子育て支援及び③労働者支援を目的として、2005年10月に約20人の有志により活動を開始しました。
その中でも特に重視しているのが、子育て支援であります。全国的に少子高齢化が進んでいますが、津久見市も例外ではなく、同じような状況であります。
その課題は、直ぐには解決できるものではなく、地域の活力が少しずつ失われつつある状況ではありますが、そのような中でも、元気な子どもが地域にいることで、地域に活力が生まれ、また、親子、祖父母を交えた3世代交流を行うことで、高齢者の活力にもつながると考えています。
2. 具体的な取り組み
(1) 3世代料理教室
3世代料理教室では、マグロの漁業基地として有名な保戸島で、島の婦人部の方から、郷土料理の「ひじき飯」などの作り方を教わり、郷土に伝わる料理の数々を3世代で学ぶことによって、その味の伝承につながりました。また、四浦海岸での海辺の生き物の観察や網代海岸での1億年前の地層見学など、津久見市にある豊かな自然や貴重な地質資源に触れるなど、日常生活では味わえない体験をするとともに津久見の良さを改めて知る良いきっかけにもなりました。
子ども達が地域の魅力を知り、自分たちが住む地域に誇りを持つことは、大変重要だと考えます。
(2) 稲作体験学習による地域活性化
津久見市では、従来から温暖な気候を生かしたミカンなどの柑橘栽培が盛んです。その多くが、津久見特有の山地斜面の段々畑で栽培されており、リアス式海岸の景色と合わせて、大変美しいものであります。しかし、ミカン栽培については、農業戸数の減少や農業者の高齢化など若者の農業離れが進んでおり、地域の主要な産業も多くの課題を抱えております。
私も、子どものころは、家の畑でミカンを栽培していたため、その手伝いをしていました。また、収穫の際には親戚が集まるなど、何かしら賑やかだったことを覚えています。
その時はミカンの収穫だけでなく、近くの池でオタマジャクシを捕まえて、カエルに育てるなど、自然に触れる機会も多かったように思います。昔はそういった家庭も多かったのではないかと思いますが、最近では少なくなったように思いますし、地域の活力の減退にもなっているのではないかと思います。
また、津久見市には平地が少なく、市内にあった田んぼを宅地等に利用したことなどにより、現在では稲作はほとんど行われていません。そのため、子どもだけでなく、保護者世代も食の中心である米の収穫体験をしたことがない人が増えていると思われます。
そこで、実際に、田植えから稲刈りまでを体験することで、自分たちが普段から口にしているお米ができるまでを知ることができるとともに、何かしらの生きる力を育む取り組みができないかということで8年前から「稲作体験活動」を開始しました。
前述のように市内にはほとんど田んぼがないため、佐伯市直川で田を所有している会員の知人の田を借りて行っています。また、私たちスタッフも稲作の経験がない者が多いため、田植えに必要な、水路掃除や草刈り、田おこし、うわしろかき、肥料・除草剤の散布など、現地の方に指導をいただきながら準備などを行います。
稲作体験活動は、6月に田植えやイモ植えをし、10月に稲刈り、そして12月頃にはそのできた米での餅つきを一連の流れとして行っています。
毎年、市内の小学校の児童や園児等を対象に募集をしていますが、保護者も含めて毎年50人程度が参加してもらっています。
まず、田植えについてですが、田植え機を使わずに、手で苗を植えこんでいきます。田んぼに入ったことがない子どもが多いため、直ぐには田んぼに入っていけなかったり、未知の世界に入っていくような戸惑いの表情を見せる子が多くいます。また、田んぼに足を踏み入れると、独特の感触に大きな声を上げたり、動けなくなる子どももいたりと愛らしい光景が目に入ってきます。
|
|
|
<田植えをする子ども達> |
最初は子どもだけで、田植えを行います。スタッフの指示のもと、苗を植えますが、泥に足をとられて上手く動けずに転倒して泥まみれになったり、作業をしていると、カエルを発見しては、そちらに気をとられてなかなか作業はスムーズに進みません。しかし、それが田植えの醍醐味でもあり、貴重な体験でもあります。
そして、進捗状況を見ながら、途中からは保護者の方も参加して、子ども達と協力しながら作業を行い、時間をかけてやっと田植えが終了します。
田植えが終了すると近くの川で遊んで泥を洗い流し、その後は、地域の婦人会の方に作っていただいたカレーをいただくなど、地域の方との交流も行います。
|
|
|
<作業を手伝う様子> |
|
<田植え終了後の集合写真> |
稲刈りでは、自分たちが植えた苗が黄金色に変化し、たわわに実った光景に驚きます。
そこから、黄金色に実った稲を普段は手にすることのない鎌を片手に、ドキドキしながら、手で稲を刈っていきますが、鎌は扱い方を間違えるとケガをするなど注意を促しながら作業を行います。
そうして収穫をした稲は、おいしく食べられるよう、現地の方に乾燥などをしていただきます。
12月には、出来たお米で餅つき大会を行います。重たい杵に悪戦苦闘しながらも、ぺったぺったとお餅をつきます。また、ついたお餅に、あんこを入れる作業も子どもたちが行います。そうしてやっと、自分たちが植えたお米がお餅に変わりますが、つきたてのお餅は、大変柔らかく、また、自分たちの手で作ったお餅の味は格別です。
こうして、1年を通じての田植えから餅つきまでの一連の作業が終わります。 |