【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 厚岸町における税外債権については、滞納繰越金額が2016年度末で37,845,584円(一般会計)という深刻な状況にあり、待ったなしの対策が求められています。
 この現状と課題をどう解決していくのか、税外係の視点から考えていきたいと思います。



厚岸町における税外債権の状況について
―― 税外係の視点からその課題と解決に向けた
取り組みを考える ――

北海道本部/厚岸町職員組合

1. 現状と課題について

(1) 税外債権(※1)の滞納繰越件数と金額
 厚岸町における税外債権の滞納繰越金額は、2008年度末に2千万円を超過した後も毎年増加を続け、2015年度末時点では、総額で57,218,817円という深刻な状況に陥ってしまいました。
 2016年度末は、不納欠損等により滞納繰越金額が37,845,584円に減少したものの、依然、深刻な状況が続いていることに変わりはありません。
 そのため、待ったなしの対策が求められています。

 滞 納 繰 越 件 数滞 納 繰 越 金 額
件数(件)増減(%)金額(円)増減(%)増減額(円)
2012年度137 △ 0.7227,127,1145.351,377,178
2013年度1370.0027,695,9872.10568,873
2014年度133 △ 2.9255,391,917100.0027,695,930
2015年度1383.7657,218,8173.301,826,900
2016年度133 △ 3.6237,845,584 △ 33.86 △ 19,373,233
(※一般会計分)

(2) 税外債権が抱える課題
 一つの例を挙げたいと思います。
 多くの債務を抱えている方に対して、それぞれの担当課が徴収を行い、結果、全ての債権が完納となれば何も問題はなく一件落着となりますが、何らかの事情により限られた納付資金しかない場合、未納となる債権が発生し、更にそれが複数になることがあります。
 そうこうしているうちに新年度を迎えるため、未納件数・金額が雪だるま式に増えていくといった負のスパイラルに陥り、町全体の収入が伸び悩み、未納額が累積していくことになってしまう場合もあります。
 また税外債権特有の次のような課題もあると考えられます。
・異動等によりノウハウが蓄積されず、担当職員の知識・技術力が不足しているため、どうしても債権に関する積極性や意識が低くなってしまう傾向がある。
・慢性的な人員不足のため、他の業務に追われ債権の管理・回収に手が回らない。
・調査の限界等(個人情報の壁)があるため、古い債権の処理、転出者・死亡者への対応が困難となっている。

2. 課題解決に向けた取り組み

(1) 現在行っていること
 税外債権については、担当課が徴収を担っているということは先述したとおりですが、税財政課の中に税外係(係長1人体制で徴税吏員も兼ねている)が置かれ、税外債権に関する次の業務を行っています。
・担当課が行う現年度分及び滞納繰越分の徴収支援(困難案件の対応)、担当課間の連絡調整
・税外債権と町税との重複滞納者への対応(納税係と連携し対応)
・担当課が行う債権管理の支援(不納欠損、徴収停止、滞納処分の執行停止等)
・担当課を集めた税外収入庁内対策会議(※2)を開催し、現状の把握とその対策
・担当課へ税外に関する情報提供、助言
 滞納が発生した場合の対応は、現年度分においては、担当課において督促状を発付し、その後、電話・訪問等による折衝を行っています。
 折衝の際には、相手から債務承認及び分割納付誓約書の提出を受けることで、債務があるという認識を持ってもらったうえで、履行を確認しながら回収を進めています。
 税外係は各種債権を扱っていますので、滞納状況をつぶさに把握し、重複滞納解消に向けた取り組みを進めることができます。
 現在は、滞納件数を減らすことに主眼を置き、まずは現年度分の納付をしっかりしてもらったうえで、その後は本人の意向も踏まえ、金額の少ない債権、発生年度の古い債権から優先順位を付け、担当課と連携しながら各案件の処理をしています。
 担当課との連携については、全体会議、担当者打ち合わせ、日常の打ち合わせの中で情報交換をしていくことで、それまで行われていたバラバラな対応が、不十分ではありますが、一定の方向性を付けることができました。
 この他、2012年度以降、各科目において、口座振替の利用を促進し、滞納発生の予防を図っています。
 また、転出者、居所不明者に対する実態調査、相続人に対する折衝を行い、債権管理について一定の目処をつけることもできました。

(2) 今後行おうとしていること
・担当課職員の債権に対する意識改革と債権管理の重要性を認識してもらう取り組み
・担当課職員の知識・技術レベルを向上させる取り組み
・適切な債権管理の取り組み(不納欠損、滞納処分の執行停止等、裁判手続きの利用、トリアージ手法の利用)
・担当課間の情報共有の取り組み(特に滞納が重複している方について)
・収納一元化の検討(まずは、公租・公課から)
・債権管理に関する条例等制定の検討(債権管理・処理の加速化)
 滞納が重複している方への対応にあたっては、担当課との連携・調整は必須であると考えており、これの善し悪しが結果に大きく影響するため、整理の進め方について議論を重ね、効率的・効果的な方法を模索していく努力を続けていきます。
 もう一つ、今後進めていきたいと考えているのが、「債権管理」の取り組みです。
 これまで、債権管理については各担当課で行っていますが、その内容には不十分な点もあったため、強制徴収ができない公債権と私債権については、今後も適切に処理を進めていきたいと考えています。
 また、強制徴収ができる公債権については、各種財産調査を進め、これまでなかなか踏み出すことができなかった差押等の滞納処分を必要に応じて行っていきます。
 なお、滞納が重複している方への対応は、各担当課間の連携が特に必要であるため、税外担当がその調整役をより一層強く果たしていきたいと考えています。

3. まとめ

 厚岸町における税外債権については、冒頭の表で示したとおり、多くの滞納件数・金額を抱えており、それに関連する課題も山積している状況となっています。
 これらを一つ一つ整理し、解決に向けた取り組みを前へ進め、滞納件数・金額の圧縮と解消を実現するよう、あらゆる努力を今後も続けていきます。




※1 「税外債権」
 使用料、手数料、負担金等、税以外の自治体債権をいう。
 具体的には、住宅使用料、保育所使用料、貸付金、貸地料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、水道料金、下水道使用料、病院診療費等がある。
 表中には、一般会計分のみ掲載しており、住宅使用料、保育所使用料、貸付金、貸地料等が内訳となる。
※2 「税外収入庁内対策会議」
 副町長を議長とする対策会議で、税外収入の担当課(課長、課長補佐、係長)を集め、年2回程度(6月頃、2月頃)開催。会議では、各担当課の収納状況・取り組み状況の確認、収納対策の強化等について議論。