【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体

 浜頓別町では過去に財政難を理由とした賃金独自削減や、行財政改革による各種手数料引き上げや補助金の削減などが行われてきました。地方財政の確立は地方自治体にとって重要な課題であり、財政分析から将来的な財政の見通しを分析することで、自治体財政の安定的な運営について考えます。



財政分析から見る地方財政について


北海道本部/浜頓別町職員労働組合 小原

1. はじめに

 人口減少や地方交付税の減少など、自治体財政を取り巻く環境はめまぐるしく変化しております。浜頓別町においては、過去に財政難を理由とした人件費削減や新規採用抑制などの合理化が実施されてきました。まちづくりを考える上で財政状況は切っても切り離せない課題であり、安定した行政サービスを提供するため財源の確保が重要であります。今回、自治研のテーマとして財政分析から地方財政を考えます。

2. 地方税収推移について

 自治体の自主財源の中で、地方税収入の確保が大きな課題となっております。浜頓別町は年々人口減少の傾向にあり1970年代には7,130人(国勢調査より)いたのが、現在(2018年4月1日時点)では3,641人とピーク時の約半数となっております。人口減少が進む中で浜頓別町の個人住民税の推移は以下の通りです。

(単位:千円)
年 度納税義務者数税 収一人当たり税収
2016年度1,956人210,242千円107.5千円
2015年度1,962人229,567千円117.0千円
2014年度1,999人219,170千円109.6千円
2013年度2,006人182,561千円 91.0千円
2012年度2,029人209,608千円103.3千円

 過去5年間を見ると人口減少に伴い納税義務者数は減少しているものの一人当たりの個人住民税の税収については大幅な変化は見られません。浜頓別町は酪農業と漁業の第一次産業が中心であり、第一次産業の好不調が税収に影響を受けております。漁業はここ数年ホタテの単価が安定していましたが2014年12月の爆弾低気圧による大しけでほたて漁場への深刻な被害があり、2015年の漁獲高減少により2016年度の税収に影響したため納税義務者1人当たり約1万円の減となっております。酪農業も法人化による生産性向上や乳価の安定により所得が保たれています。個人住民税については、第一次産業がカギを握っているため、行政としては生産性の向上に繋がる政策を展開していくことが求められます。
 その他の税については……
 固定資産税~3年に1度、評価替えがあり、土地の価格は減少傾向。家屋についても新築住宅は年に数件しかないため税収は伸びていない。
 法人町民税~法人数の大幅な変化は無いものの、企業の経営状況によって大きく影響を受ける。
 たばこ税~たばこの値上がりや分煙化の影響は受けるが大きな変化は見られない。
 といった状況です。

3. 地方交付税の推移について

 大半の地方自治体は収入の多くが地方交付税で賄われております。当町の2018年度当初予算のベースから見ても45%を占めております。
 過去10年では2012年度の20.9億円をピークに年々減少傾向にあり、2017年度決算見込みでは24.4億円となっております。普通交付税については算定項目が様々ありますが、当町の減少の理由については公債費の償還が終了したことにより交付税措置分が減っていることも原因としてありますが、地域経済・雇用対策費が5年間で2億円ほど減少しているのも大きく影響しています。これは2012年度から歳出特別枠として措置されてあくまでも臨時的措置であることから今後も縮小の傾向になります。また、国は地方創生と名を借りたトップランナー方式の導入により、学校給食や庁舎の案内・窓口等を民間委託している地方公共団体には交付税を手厚くする措置がされ、交付税改革を推し進めようとしております。本来、地方交付税はどの地域にいても一定の行政サービスを提供するための財源保障であり、これ以上の交付税削減は自治体の行政サービスの提供に大きな影響を与えるため、必要な額を交付するよう国等への働きかけが必要であります。

4. 一般会計における歳入歳出の推移

(単位:億円)

5. 臨時財政特例債による措置

 国は2001年から臨時財政特例債という起債を措置しております。本来なら地方交付税として交付されるべき金額の一部を地方が臨時財政対策債(借金)をすることにより補填し、その元利償還金相当額を後年度の普通交付税の基準財政需要額に算入するという仕組みになっています。
 当初は3ヶ年の時限的な措置でしたが現在に至るまで制度は続き、財源不足を補うため地方は臨時財政対策債を発行せざるを得ない状況となっています。
 国は2001年から臨時財政特例債という起債を措置しております。本来なら地方交付税として交付されるべき金額の一部を地方が臨時財政対策債(借金)をすることにより補填し、その元利償還金相当額を後年度の普通交付税の基準財政需要額に算入するという仕組みになっています。

臨時財政対策債の発行額
(単位:千円)

6. 地方債の推移

 公営住宅などの建物や道路、大型車両の購入など大規模な事業については補助金を除いても多額の費用が必要となりますが、財源の確保が厳しい時には起債を借入しなければなりません。当町では過疎債や辺地債といった起債が可能であり、地方交付税の措置率についても有利となっております。しかし、交付税措置されるといっても起債の全額が措置される訳ではないですし、措置の年限も数十年にわたるため、自治体は借入と償還を繰り返すこととなります。先ほども触れたとおり地方交付税が減少する中で自主財源も限られ、大規模事業を実施するには起債に頼るしか無くなります。長期的な目線で見ると起債は抑制しなければならないですが、将来的には各種施設の老朽化対策が自治体財政を圧迫することが予想されます。

7. 基金積立問題について

 2017年、財務省では各地方で積み立てている基金について指摘しており、国からは地方交付税を受けながらその反面基金に積み立てているというのは財政に余裕があると見られ、基金を多額に積み立てている自治体に対して地方交付税を削減すべきだという議論もされており、地方はこれまでの積立は行政改革等による歳出削減により捻出した積立であって、今後の不測の事態に備えるための基金を交付税の削減要因にすべきではないと反発をしています。当町ではこれまで財政調整基金などは積み立てる一方でしたが、2017年度については取り崩しをしており、今後、地方交付税の減少傾向が続くと基金を取り崩さなければ財政運営が厳しくなることが予想されます。

基金の推移
(単位:億円)

8. 老朽化対策

 当町の老朽化施設の主なもので、公営住宅については50年以上経過している建物もあり、建築から40年以上経過しているのが国保病院、福祉センター等、30年以上の建物で浜頓別小学校等があります。特に国保病院については住民の命と健康を守る施設であるため早急な対応が求められており、現在の病院を維持するにしても多額の改修費用がかかるため、建替えの方向で検討がされていますが、仮に建替えとなると数十億の費用がかかるため、補助金や起債等の財源確保が課題となり、将来的な町の状況も踏まえて慎重に議論をしていかなければなりません。

9. 今後の自治体財政は……

 当町の将来的な予想をすると、人口は22年後の2040年には2,608人までに減少する見込みであり(浜頓別町人口ビジョンより)、あわせて生産年齢人口も減少していくこととなります。そうなると当然に税収や地方交付税も減少し、財政運営は困難となります。また、現存する施設の維持補修が町の財政を圧迫し、起債の発行が増えると実質公債費比率が増加する可能性があります。そうなると過去にあったように行政改革で各種事業の見直しをかけていかなければならなくなり、人件費削減や各種手数料の見直しもしていかなければならない可能性が出てきます。今後は中長期的な財政分析により将来の展望に向けた地方財政の確立が重要となっていきます。