【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体 |
ふるさと納税は、様々な農産物や海産物、また、家電製品を取り揃え、各自治体が返礼競争に陥る状況となっていました。 |
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1. ふるさと納税の概要
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体(都道府県及び市区町村)に寄附を行った場合、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除されるという制度です。控除される寄附額には上限があり、寄附額から2,000円を除いた金額について、①所得税率を乗じた額、及び②住民税の基本控除分として10%を乗じた額を控除し、それで控除しきれなかった金額について、③特例控除分として住民税所得割額の2割を限度に住民税から全額控除する、という形になっています。 |
2. ふるさと納税の導入 ふるさと納税の議論は、2007年5月に菅義偉総務大臣(当時)が表明した「地方のふるさとで生まれ、進学や就職を機に都会に出て都会で納税する人に、自分を育んでくれたふるさとに自分の意志でいくらか納税できる制度があってもよいのでは」という問題意識から始まりました。この新たな納税制度を実現するために2007年6月に総務省において「ふるさと納税研究会」が立ち上げられ、そこでふるさとの概念や控除方式のあり方などが話し合われました。そして、同研究会における議論の結果2007年10月に「ふるさと納税研究会報告書」としてまとめられ、これを基に2008年からふるさと納税制度が導入されました。 |
3. ふるさと納税の推移
例えば、寄附額によっても異なりますが、豪華な家電製品や農海産物、また金券が返礼品として取り揃えられています。寄附者は、2,000円という実質負担額よりも高価な返礼品をもらえる仕組みになっています。 |
4. 米沢市の推移
これは米沢市が、ふるさと納税に積極的に取り組むようになったことや、2015年4月からNEC(後に「レノボ」に社名変更。以下同じ)で生産されたパソコンが返礼品に採用されたことが要因として考えられます。 この件数と金額の増加に伴って、一時的に寄附金を積み立てて置くための「ふるさと応援基金」の推移も2014年度から増加し、2017年度末残高は、1,197,008千円まで増加しました。 |
5. 過熱するふるさと納税
しかし、返礼品の中に、①高額なもの、②換金性の高いもの、③地元物産等とは関係のないものなどが含まれていることが問題視されるようになりました。そのため総務省は、寄附金が経済的利益の無償の供与であることを踏まえ、①返礼品(特産物)の送付が対価の提供との誤解を招きかねないような返礼品の価格・価格割合などの表示により寄附の募集をする行為を行わないこと、②換金性の高いプリペイドカードや高額又は寄附額に対し返礼割合の高い返礼品の送付を行わないこと、などを要請する通知(技術的な助言)を自治体に行いました。 しかし、過熱する返礼品合戦は沈静化せず、さらにふるさと納税を"する住民"に比べて"してくれる住民"の数が少ない自治体では、住民税が減少して住民サービスにも影響が出始めていることから、国会でも取り上げられる事態へと発展していきました。 |
6. 2017年4月1日付総務省通知とその後の動き
2017年4月1日付で総務省から出された「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」(総税市第28号)は、返礼品のガイドラインともいえる新たな通知となりました。これは、返礼品問題が国会で想定以上に取り上げられたことや、また東京都特別区などの地方交付税を受けていない自治体からも住民税の減少に早く歯止めをかけるようにとの要望が出されていたことが影響しました。 |
7. 通知の補足説明的内容
総務省は、同日付で都道府県知事に対する通知の補足説明的内容が明記された、都道府県総務部長等宛の通知「ふるさと納税に係る返礼品の送付等に関する留意事項について」(総税市第29号)を行いました。「返礼品割合を速やかに3割以下とすること」については、自治体間の返礼品競争の過熱が指摘される中心となっている、とくに返礼割合の高い自治体に対して速やかな見直しを求めるために行ったものとした上で、「返礼割合の妥当な水準を3割とする趣旨ではない」と説明しています。これは、ふるさと納税の趣旨を踏まえて謝礼状のみ送って謝意を表してきた自治体もあることから、実質3割という数字にこだわる必要はなく、返礼品の調達コストを考えて良識ある対応を促すための通知であることを示したものです。 |
8. 通知後の自治体の反応
自治体の反応は、通知前に該当する返礼品の中止を決めた自治体のほか、自治体で返礼品が同省の基準に該当するのかの検証等を行い、見直すことを表明する自治体も多く出ました。 |
9. 米沢市の対応 米沢市では、NECで生産されたパソコンを返礼品として取り扱っていました。市では、情報関連産業を中心とした東北有数の産業集積地で県内でも屈指の製造品出荷額を誇ることを挙げ、「ものづくりのまちとしての本市の特徴を踏まえ、市内において製造されたノートパソコンについても特産品として返礼品に採用してきており、地域経済の活性化と雇用の確保にも大きく影響していることから、当面はこの考え方を継続する」としていました。 |
10. さらなる総務省の指導
こうした自治体の対応を横目に、総務省は通知への対応が不十分として長野県伊那市に再検討の要請を行いました。伊那市では、3月末で一度寄附の受け付けを停止して、「お掃除ロボット」や「液晶テレビ」、「カラーレーザープリンタ」などの家電製品を含めた返礼品について、返戻割合を3割となるように見直しを行いました。そして、家電製品のうち調達額10万円以上の製品は取りやめたものの、10万円未満の製品については法人税法施行令第133条(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)の規定を根拠に取り扱いを続けるとする「市ふるさと納税運用方針」をまとめ、ふるさと納税の受付を4月18日に再開しました。 |
11. ふるさと納税の問題点 ふるさと納税が開始されて以来、これまで様々な制度改正が行われ、受入額は順調に増加していました。しかし、ふるさと納税には制度開始時からいくつかの問題も指摘されていました。 (1) 税の公平性について (2) 地方交付税との関わり (3) 本来の「寄附」という観点から |
12. まとめ
ふるさと納税は、果たして地域活性化に繋がっているのでしょうか。 |
参考資料 |