【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体 |
神石高原町は広島県の中山間地域に存在しており、全国的にも早い時期から過疎高齢化社会を迎えてきた。2004年に4つの町村合併を行ったが、その合併による地域の現状分析と合併後に地域住民との関わり、役割分担により自治体運営や少子高齢化対策の取り組みを行っていることについての報告。 |
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1. 神石高原町の人口減少とその背景 (1) 高度成長期過程の人口縮小 |
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この間、町全域に10戸に満たない小さな集落が増加し、集落機能の低下が総体的に進んでいます。また、人口減少に伴う影響は、児童の減少により小中学校の統廃合が進み地域住民の精神的、機能的な核が失われてきました。
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(2) 3つの空洞化 |
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こうした状況は、過疎に対するあきらめムードや、地域への愛着や誇りが薄れる「誇りの空洞化」まで引き起こしています。 2. 団体自治の財政規模縮小から考える 一方、法改正により合併特例期間が延長になったものの、法が定める10年間の期間を過ぎ、段階的に地方交付税が縮小しています。本町の財政規模は一般会計予算総額が約100億円、内、地方交付税は約50%の割合を占めています。財政調整基金をはじめとする貯金が100億円程度あるものの、今後においてはすべての公共サービスを団体自治だけで担うことが困難となりつつあります。 |
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3. 神石高原町の協働によるまちづくりと住民自治 (1) 自治基本条例 (2) 合併を契機とした住民自治組織の設立
合併後10年を迎えた頃、加速的に進む過疎化や少子高齢化に伴って、集落活動や一部の自治振興会でも活動が困難化している地域もみられるようになりました。自治振興会アンケートの結果からも「役員の後継者が不足している(80.6%)」、「役員の負担が大きい(64.5%)」、「人口減少、高齢化などで活動の継続が難しい(51.6%)」 など、現行の規模や体制では活動が困難化するという厳しい結果となりました。 また、地域内に存在する様々な団体・組織も継続が困難化することも予想され、現在は課題が顕在化していない地域においても、今後、集落の維持や高齢者の生活手段の確保など大きな課題になってくると考えられ、「行政責任」としても人口減少を見据えた地域コミュニティ体制を早い段階で再構築することが求められるようになりました。 |
4. 「新たな地域コミュニティ組織」づくりに向けて 神石高原町は、合併以来、「職員数」「公共施設」「借金」の3つの過剰を抱えて、その解消を図るため、かつてのような行政サービスの拡大提供はできなくなり、住民と行政がギブアンドテイクで協働する仕組みなしに町を維持することはできなくなる一方で、協働の担い手となる自治振興会なども前述したように少子高齢化と人口減少によって、現行の規模や体制では地域コミュニティの運営が立ち行かなくなりつつあり、従来型の行政サービスにとらわれず、新しい制度や仕組みを積極的に取り入れた、「将来を見据えたまちづくり」をめざすことが喫緊の課題となっていました。 |
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新たな地域コミュニティ組織「協働支援センター」は、2017年に旧町村ごとに自治振興会を主な構成員として組織化され、その後、公民館、営農組織、PTA団体、青年会女性会、老人会、消防団、サークル団体、住民団体など、「地縁型組織」「目的型組織」「属性型組織」が一同に会する「協働体」に発展しつつあります。 |
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協働支援センターは、旧町村の住民代表的な組織とし、そこに財源や権限を委譲し、自主的な地域課題解決活動を推進していく、住民自治の組織手法です。 5. ふるさと納税制度の活用 神石高原町のファンづくりをめざしてスタートした「ふるさと納税制度」を活用し、2014年度から協働の担い手となる「自治振興会」や「町内のNPO法人」を寄附先に指定できるようにし、2016年度からは、「協働支援センター」を加え、この町で生まれ育った地域を直接的に支援できるよう制度改正しました。2017年度の寄附額は5億円を突破することになりました。寄附者から寄せられた言葉の中に、神石高原町の取り組みは「お礼産品で寄附を釣る」のではなく、「施策で寄附を募っている」とありました。 6. 皆で知恵を出し合って実現すること 神石高原町はいくつもの山や丘が織りなす静かな山村ですが、平地が少なく農業を営む上で決して恵まれた環境ではなく、ハンディともいえます。都市部と比べれば生活の利便性が良いわけでもありません。ですが、先人たちは、「互助と工夫」による住民自治でこのハンディを乗り越えて、今の時代につなげてくれました。 |
しかし、町の将来を考えたとき、日本全体は少子高齢化と人口減少社会という、ものすごい歴史の大転換期で私たちは行政活動を行っていることを認識する必要があります。 |