【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第3分科会 どうする? どうなる? これからの自治体 |
大分県の竹林面積は約14,000ヘクタールで全国2位となっている。竹が様々な生活用品やタケノコ食材として利用されていたころは、竹林が農林業家にとっては貴重な財産であり、よく整備されて大切に管理されていた。しかし、生活様式の変化、竹製品の代替品や安価な輸入製品が出現し、竹生産者の栽培意欲の喪失などから竹林の荒廃が進行している。多くの竹林を有する我が県では、「竹林の荒廃」が農山村地域での生活を脅かす事態が起こっている。県の進める「地方創生」の立場からこの竹問題について考察してみた。 |
|
1. 取り組みの背景 (1) 人口減少社会における地域の維持・再生 こうした問題に対して、県では「住み慣れた地域に住み続けたい」という住民の願いを叶えることをめざして、集落同士が機能を補い合うネットワークコミュニティー構築の取り組みを、市町村とともに始めている。 ネットワークコミュニティー構築の推進 ① 単独集落では立ちゆかなくなる機能を複数の集落で補い合う。 ② 小学校区単位など地元中心の協議会(=地域コミュニティ組織等)を設立。 ③ 地域コミュニティー組織等を多機能化(地域包括ケアシステムとの連携等)。 ④ 集落同士をネットワーク化しコミュニティーを形成。 (2) 竹林の現状と問題点
しかし、昭和30年代からプラスチック製品など代替え品が台頭してくると、昭和35年をピークに生産量は減少傾向となり、さらに平成5年頃からの中国産竹の輸入で激減した。 このころから、県内でも管理放棄された竹林、いわゆる放置竹林が増加傾向となり、放置竹林では、竹の本数密度が高くなり、大径化や薮化が進行し、さらには周辺に向かって拡大している。 このために、山間部の狭い道に覆いかぶさるように竹がはみ出したり、薮化や周囲の山や畑に竹が侵入するなど、社会生活や一次産業への悪影響が出ている。 大分県のたけのこ生産量の推移
竹林面積の推移
① タケノコ・竹材の価格低迷、タケノコ生産の重労働性、竹林所有者の高齢化等により放置竹林が多くなり、面積が拡大している。 ② 急傾斜地のもうそう竹林は竹の根が浅く、地表を覆い尽くすため台風などで地滑りがおこりやすく、防災上の危険性も出ている。 ③ タケノコ生産では、近年イノシシの被害が多く電気柵を設置しても経費が出ない。 ④ 竹林の管理不足から、強風などで枯れ竹が市道や水路に流れ込み、管理に大変な労力を強いられている。 ⑤ 人工林(杉やヒノキ)に侵入した竹が、人工林を枯らしてしまう。 以上のようなことから、竹が引き起こす環境問題の総称として「竹害」という言葉が出てきた。本来は貴重な資源であるはずの「竹」がいつの間にか悪者にされている。 「何とか有効活用し、農村の活性化に繋げないか」と考えている。 |
2. 取り組みを開始 (1) まず県への要望として一般質問を行った
農村部に行くとほとんどの家が、1~2ha程度の山林を所有しているが、高齢化が進む中、多くの山林で管理が行き届かず、手の付けようのない状況が見受けられる。 特に手を焼いているのが竹の被害である。山の手入れをしなくなると、竹がすぐに山を覆い尽くし、杉やヒノキを枯らす。また、台風災害の際には枯れた竹が水路や河川に流れ込み大きな被害をもたらし、市道や県道周辺部では竹による通行の妨げも見られる。このように竹の被害は農山村の住環境を悪化させる要因となっているが、高齢化や担い手不足を背景に、住民の自助だけでは対応や解決が困難になっている。 本県の竹林面積は全国2位で、それだけに竹が及ぼす里山環境への影響は大きく、森林や農山村を守るためにも、竹害の拡大防止が急務と考える。 「地域を守り、地域を活性化する」という地方創生の視点からも広く林業を考え、竹林を適正管理し、良好な里山環境を保つことが望まれる。 このことに対する現状認識と今後の取組の方向性について、知事の見解をお尋ねする。 知事答弁 竹林管理に当たっては、タケノコ等の生産林として活用する個所と、森林を守り景観を保全するため荒廃した竹林を整理する個所に分けて、対策を行うことが重要である。そこで「竹林学校」を開設して、竹材やタケノコ生産の研修を行っている。また荒廃した竹林を生産林に回復するための伐採経費の支援なども行っている。荒廃した竹林の整理では、集落や観光地の周辺、道路沿いの景観を損ねている個所の伐採を行い、広葉樹林への転換を進めている。 ② 竹を利用したバイオマス発電について(農林水産部長へ) 竹は、カリウムの含有量が多いことに加え、塩素濃度も高いため、燃焼設備や環境に悪影響を及ぼすことから、バイオマス燃料としては利用されてこなかった。ところが、昨年、日立製作所が竹をバイオマス燃料にする技術を開発したと発表し、話題を呼んでいる。 再生エネルギーとしての注目を集めているバイオマス発電は、燃料確保に課題があり、海外の燃料を使うケースが目立っていると聞く。 竹をバイオマス発電に活用できるようになれば、林業と発電事業者の双方にメリットが生まれる。また、地域の雇用創出のほか、里山環境が整備され山林や農山村の住環境が守れることも期待できる。 まさに一石三鳥くらいの効果がありそうであり、竹林面積全国1位の鹿児島県では取組が進みつつあると聞いている。そこで、竹のバイオマス発電用原料としての実用化に向けた本県の取組状況をお聞きしたい。 農林水産部長答弁 県内では、大規模な木質バイオマス発電が稼働しているが、竹は木材に比べ伐採や運搬にコストがかかるため、バイオマス発電としては割高で、採算が合わないことが課題である。 このために、30年度から2カ年の地域課題対応事業として、「竹の伐採コストを見える化」する実証実験(陽のさす里山環境事業)を行う。具体的には、竹の生育状況や伐採・運搬方法等に応じた生産コストと、発電所が買収するバイオマス燃料の価格との比較を分析する。 この結果を踏まえ、竹の燃料利用の可能性について、発電業者や竹チップ供給事業者と協議を進める。 (2) 県が少し動き出した |
3. 竹に対する新たな取り組みが始まっている (1) 放置竹林をバイオマス燃料に 日立、竹の燃料化技術
(2) セルロースナノファイバー(CNF)の製造法を開発 |
4. 今後の取り組み (1) 宝の山の有効利用
半面、竹は5年周期で利用できて資源としては枯渇せずに、半永久的に利用できる正に宝の山である。これまでは、竹の持つ特性からバイオマス発電の燃料には利用されていなかったが、前述のように、近年利用に向けた研究が進み、新たな資源として竹が注目され始めた。 竹林面積全国2位の大分県として、また、地域での竹害に対処するためにも県を挙げての取り組みが求められている。 今回県が実施する「陽のさす里山環境事業」で明らかになると思われるが竹は伐採を始め運搬など多くの労力が掛かるため、販売価格以上に費用が掛かり産業としては成り立たないところに課題がある。 (2) 地産地消としての竹利用 |
5. 夢を実現するために (1) 竹が産業として成り立たないなら国の支援(国策)が必要 (2) 竹を誰でも利用するためには竹チップ(ペレット)工場が必要 (3) 森林環境贈与税(仮称)の活用 |
6. おわりに
今回、夢を描いてみました。 |