1. はじめに
(1) 加賀市を取り巻く地域課題
加賀市は、石川県の西南端に位置する、海と自然豊かな山々に囲まれている自治体である。温泉地などで有名な観光都市であるが、昨今では都市部への人口流出や過疎化による人口減少・少子化・高齢化が顕著に進んでおり、消滅可能性都市(注1)に指定されている自治体でもある。また、観光客も年々減少しており、温泉地の活性化やインバウンド観光、北陸新幹線の敦賀駅延伸に伴う「加賀温泉駅開業」に向けた取り組みなど、観光誘客の推進も重要な課題となっている。
(2) 増加する職員の業務負荷
こうした様々な地域課題が山積する一方で、加賀市では、増加する業務量に応じた職員数が確保できていないという実態がある。
このため、行政改革における業務効率化の取り組み(注2)として、業務量に応じた適正な職員数の確保を図るために、定型業務・大量処理業務を主務とする臨時・委託職員の雇用増を進めてきたところではあるが、募集をかけても応募数が少なく、必要な人員数が確保できていない状況である。
また、正規職員の採用についても、応募数の減少や試験合格後の内定辞退などもあり、職員数の増加はなかなか見込めない状況である。加えて、団塊世代の大量退職や、中堅職員の結婚による離職などのため、業務のノウハウを知る職員数が減り続けているという状況でもある。
このことから、必然的に職員1人当たりの業務量が増加し、職員の負荷が過大化している状況となっている。
著者が所属する組織(企画課)の職員数をみても、2011年度には11人の職員が所属していたが、2018年度には8人にまで減少している。その一方で、業務量は減るどころか新規の事業が増え続けており、1人当たりが担当する業務量は増え続けている状況である。
(3) ITを活用した業務効率化の取り組み
そこで加賀市では、定型業務・大量処理業務を自動化させる技術である「RPA」に注目した。
RPAの詳細については後述するが、定型業務・大量処理業務を自動化させることで、職員の業務量を減らし、職員負荷を低減することや、業務量に応じた職員数の適正化を図ることが可能となり、前述した課題の解決につながると考えられる。また、業務のプロセス(過程)を自動化することにもなるので、「政策立案」といった高付加価値作業に職員が集中することが可能になり、「質の高い行政サービスの提供」にもつながると考えられる。
こうしたRPA導入による効果について検討し、また定量的な削減時間の裏付けをとることを目的として、加賀市では、市の実業務へ試験的にRPAを導入することで、自治体業務における導入効果の検証を行った。
本稿では、RPAの一般概論を説明した上で、効果検証の過程と結果について報告し、RPA導入の有効性について考察する。併せて、検証過程・結果から見えたRPA導入における課題を整理し、対応や改善策について考察する。
2. RPAとは
(1) RPAとは
RPAとは「Robotics Process Automation(ロボットによる手順の自動化)」の略語である。これまで人間が行ってきた、定型的なパソコン操作などの業務に対して、「ソフトウェアのロボット」により、人間と同様の処理ができるようにした「業務自動化」の技術のことをいう。欧米の企業を中心に導入が始まり、日本でも大手の金融機関や製造業で導入が進んでいる。
処理の自動実行ツールとしては、WordやExcelの「マクロ機能」が有名だが、RPAでは、一部のアプリケーションソフトに限らず、多様な業務用システムを人間のように操作することが可能である。実際のイメージとしては、パソコンの中でソフトウェアロボットが、人間の何十倍も速く、かつ正確に定型業務を自動実行している様子を想像してほしい。これまで人間のみが対応可能と思われていた作業、もしくはより高度な作業を、ソフトウェアロボットが人間の補完として実施することから、企業や自治体という組織の中に、デジタルな労働者(デジタルレイバー)が業務を行っていると捉えることができる。
【図1】RPAによる業務の自動実行イメージ |
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RPAは通常の業務システムと比較して低コストかつ短期間で導入することが可能である。また、RPAでは高度なプログラミングを行う必要はなく、普段パソコンで操作している手順をそのまま覚えさせればいいので、プログラマやエンジニアでなくても扱うことが可能である。人間に作業手順を覚えさせるのと同じであり、業務で使用するシステムを選ばないことも特徴である。また、手順の変更や修正もGUI(注3)で実施できるものが多く、業務についての知識さえあれば誰でも業務を自動化することができる。
RPAは大きく分けると、「定型事務作業を自動化する」ものと「AI等で高度な知的処理を自動化する」ものがある。実際に効果が実証され、実用段階となっているのは「定型事務作業を自動化する」ものであり、今回の試験導入においても、こちらのRPAを使用している。
一般的に言われている「RPAの特徴と効果」については、【図2】に示すとおりである。
【図2】RPAの特徴と見込まれる効果 |
特 徴 |
「人間と同様の作業」を実施することができるため、業務を大きく変える必要性がない |
操作の記録により、自動化設定ができるシステムを選ばない |
RPAツール内に業務の流れが記録されるので、業務の見える化が可能になる |
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効 果 |
① 品質向上 | 事務ミス激減 |
② スピード | 150倍~200倍 |
③ 効率化 | 30~75%削減 |
④ 高度化 | 人間は「高付加価値」作業に集中可能 |
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(2) RPAとAIの違い
AIとは「Artificial Intelligence(人工的な知能)」の略語であり、日本語では「人工知能」と訳される。定義は研究者によって異なるが、総務省の情報通信白書によれば、「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と説明している。筆者は、コンピュータなどを活用し、人間が行う知的作業(思考や推測、判断など)を代替する技術やシステムであると捉えている。近年では、自動車運転やネットでの画像検索、家電などの音声操作、産業ロボットの制御などに活用されている。
RPAが「ロボットにより、定型的な作業を自動実行する」技術であることに対し、AIは「コンピュータが自ら学習し、人間に代わり判断することができる」技術である。RPAとAIは混同されがちだが、両者の役割がともに「自動化」の場合でも、担う役割は異なる。(【図3】参照)
【図3】RPAとAIの違い |
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機 能 | 得意な領域 | 構築方法 |
RPA | 作業する | 単純な仕事 | RPAツールを使用し、GUIにより構築 |
AI(機械学習型) | 判断する | 大量のデータを取り扱う仕事 | データで学習、または学習済みのAIを導入する |
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その他方で、(1)でも記載したとおり、RPAとAIを組み合わせることで相乗効果を生み出し、また高度な知的処理を行うことが可能になると期待されている。例えば、天候に左右される仕入れ管理や、経済情勢を加味した経営判断など、人間の能力では不可能と思われる膨大なデータに基づく予測をする業務が可能となる。
また、すでに実用化されているRPAとAIの連携技術として、「AI活用型OCR(文字認識技術)とRPAの連携」がある。例えば、書面で提出された申請書類からOCRでテキストを読み取ってデジタルデータ化し、RPAの業務フローに流すものである。これにより、データの入力時間が削減され、注文書を扱う営業部門や請求書・納付書を扱う経理部門での業務効率化を図ることが可能とされている。
3. RPAの試験導入による効果検証
(1) 対象業務の選定
RPAが対象としやすい業務には、いくつかの特性がある。RPA化を進めることで効率化の効果が享受できる業務は、【図4】に示した要素を含む業務である。
【図4】RPA化により効率化が見込まれる業務 |
RPA化により効率化が
見込まれる業務 |
・ルール/手順が明確な定型作業
・入力/転記/照合/集計を主たる目的とする作業
・繰り返し処理(大量処理)
・実施頻度が高い作業(日次、週次、月次等)
・季節により作業量に変動がある作業
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RPAに向かない業務 |
・紙やPDFからデータ入力を行う作業
・ルールや手順、帳票のレイアウト、システム仕様が頻繁に変更となる業務
・物理的処理が必要な作業(ファイリング、モノの移動等)
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このような特性を踏まえた上で、今回は試験導入ということもあり、加賀市役所の組織のうち、「総務部」内の業務担当課へ、RPA導入に係る可能性調査を行った。
最終的には、RPA試験導入の対象業務として、【図5】に示す3業務に絞り込んだ。
【図5】RPA試験導入の対象とした業務 |
対象部門 | 対象業務 | 業務概要 | 事務の特徴 | 通常の処理時間
(年間) |
総務課 | ①時間外勤務集計業務 | 時間外集計表の読み取り、集計・転記を行う。
時間外勤務未申請者への催促メールを送信する。
勤怠CSVを加工し、時間外勤務の強制修正(グループウェアへの入力)を行う。 | 定型業務
反復作業 | 100時間 |
財政課 | ②契約管理システムと電子入札システムの相互連絡事務 | 契約全体を管理する契約システム(市単体)と電子入札システム(県のクラウド)の保有データの相互連携(転記・入力)を行う。 | 定型業務 | 169時間 |
③財産貸付・使用許可事務 | 担当者の財産貸付・使用許可ファイルデータに基づき、貸付・許可事務書類(申請、契約書、認可書等)を作成(転記)するとともに、財務システムの歳入処理(転記・入力)を行う。 | 定型業務
季節変動 | 96時間 |
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(2) 効果検証と結果
実際の効果測定にあたっては、現状業務の実態を詳細に把握し、どの作業をロボット化させるか決定する必要がある。このことから、まずは各担当課へ業務のヒアリングを行い、詳細な業務手順を把握の上、業務フローを作成し、ロボット化させる範囲を決定した。
また、現状業務の分析とRPAとの適合性を検討する中で、「物理書類の電子化」や「データフォーマットの統一」など、業務改善が必要な課題があることが判明したため、課題の洗い出しを行った(課題の具体的な内容については、4.(1)にて述べる)。
その上で、作成した業務フローをもとにソフトウェアロボットを作成し、業務担当課によるレビューを経た上で、業務用パソコンでロボットによる業務試行を実施し、効果を測定した。
結果、RPA導入に伴い【図6】のとおり効果が見込めることが判明した。
【図6】RPA効果検証の測定結果 |
対象業務 | RPA化による想定削減時間 | 業務改善+RPA化による
想定削減時間 |
①時間外勤務集計業務 | 29時間/年
(100時間/年→71時間/年)
約29%の工数削減 | 77時間/年
(100時間/年→23時間/年)
約77%の工数削減 |
②契約管理システムと電子入札システムの相互連絡事務 | 115時間/年
(169時間/年→54時間/年)
約68%の工数削減 | 147時間/年
(169時間/年→22時間/年)
約87%の工数削減 |
③財産貸付・使用許可事務 | 44時間/年
(96時間/年→52時間/年)
約46%の工数削減 | 45時間/年
(96時間/年→51時間/年)
約47%の工数削減 |
【合計】
試験導入対象
3業務の効果見込み | 188時間/年
(365時間/年→177時間/年)
約52%の工数削減 | 269時間/年
(365時間/年→96時間/年)
約74%の工数削減 |
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RPAの導入のみによると「年間188時間程度(約52%)」の業務時間削減が見込めることとなり、また、RPAに適合した業務改善(フォーマットの統一、経験や知識のデータ化によるRPA適用範囲の拡大など)を含めると「年間269時間程度(約74%)」の業務時間削減が見込める結果となった。
また、実際の業務担当者から意見・感想も寄せられた(【図7】参照)。企画課のRPA担当者としては、RPAを活用した業務運用イメージや適用領域に加えて、実際の作業効率化だけでなく、異動に伴う業務引継ぎの品質改善にも効果が見込めそうだと感じたことや、総務課・財政課の担当者においては、試験導入対象範囲外の作業領域においても、積極的にRPA活用の要望が出るなど、現場のRPA導入の期待は高い結果となった。
4. RPAの試験導入により見えた課題
(1) 業務改善の必要性
【図6】の結果が示すとおり、対象3業務については、RPAの導入により大きな業務時間の削減が期待できることがわかった。
しかしながら、3.(2)でも触れたとおり、RPAによる業務自動化の効果を最大限に高めるためには、RPAへの適合性を高めるための業務改善が必要な課題がいくつかあることがわかった。
今回の試験導入を通して確認された、業務面・システム面の課題を整理したので、【図8】に示す。
また、考えられる改善策についても併せて示す。
【図8】試験導入を通して確認された課題と改善策 |
| 主要課題 | 改善策(案) |
業務面 | 入力するデータのフォーマットが統一されていないため、RPAの開発工数が膨らむ。 | RPA化を見据えたフォーマットの統一・改善を行う。 |
業務手順や判断基準が形式知(注4)化されていないため、RPA化時の開発工数が膨らむ。 | 現場担当者にRPAについて理解してもらい、形式知化を進める。 |
紙による運用が多く、RPA化が困難。(時間外勤務命令簿、財産貸付の申請書など) | 軽微な改善で対応できる課題は対応を進める(長期的な視点での対応が必要な課題は、将来的な電子化や業務の見直しを検討する) |
物理的な処理が多く、RPA化が困難。(契約書・申請書などの郵送、伺書の捺印など) |
システム面 | 各システムともに開発・検証環境がないため、データ登録など本番データへ影響するシステム操作の開発・テストが困難 | 業務担当者同席のもと、段階を踏んで少しずつ開発・テストを行う |
セキュリティ強靭化により、庁内パソコンからインターネットへ直接接続できないことから、RPAツールでの操作性が低いシステムがある。 | まずは親和性の高いシステムを使用する業務のRPA化を優先する。 |
システム間の情報が不一致のため、RPA化時の開発工数が膨らむ。(業者番号や契約番号がシステム毎に異なる) | 不一致情報の紐付けマスタの整備を行う |
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課題としては、3.(1)でも述べたとおり、物理的な作業を伴う業務やシステムの仕様に起因する業務が多く見受けられた。こうした課題を踏まえ、RPAの本格導入時には、業務改善も実施した上でRPA導入を進めるべきであるが、業務や環境によっては実現が困難なものもある。例えば、紙資料の電子化については、スキャナを通して電子化するための労力が必要になり、現状より業務が増加することが考えられる。また、データフォーマットの統一については、業務で使用している電子ファイルすべてを見直す必要があり、加えて、業務システムにおいて指定されたデータフォーマットを使用している場合、フォーマット変更に係るシステム改修が必要になることも考えられる。
このため、業務改善に係る労力や費用対効果も見据えた上で、RPAの導入を進めるべきかと考える。
(2) RPAに対する職員の理解の必要性
別の課題として、RPAの導入・運用を円滑に行うためには、職員のRPAへの理解が必須であることがわかった。
RPA導入の際は、業務ヒアリングやRPAのレビューといった点で業務担当職員の協力が必須であり、業務担当職員にもある程度のRPAの知識が求められることとなる。また、RPAを実際に使用・運用するのは業務担当職員である。使用方法の習得が必要なことはもちろんのこと、RPAが行う業務フローのメンテナンスは、業務の内容に依存するため、業務担当職員が中心になって行うこととなる。このため、RPAのメンテナンス方法についても業務担当職員で習得する必要がある。加えて、RPAについて職員が理解しないまま使用を促しても、職員は積極的にRPAを活用しないかと考えられる。
しかしながら、現在は「RPAって何?」という職員がほとんどかと思われる。また、新しい技術や運用に抵抗を感じることや、パソコンの利用自体に慣れていない職員も多いと考えられる。このことから、全庁的にRPAを導入していく際には、職員が抵抗なくRPAについて理解できるための体制を作っていくことが必要かと考える。
5. まとめ
(1) RPA導入により期待できる効果
今回の効果検証により得られた結果を踏まえ、RPA導入により市の業務などに期待できる効果について、【図9】のとおり整理した。
一般的に言われている「RPAの特徴と効果」については、2.(1)でも述べたとおりだが、実際の業務において効果測定を行うことで、業務削減の定量的な削減幅を算出し、数値的な裏付けをとることができた。また、実際の処理画面や結果を確認したことで、RPAによる業務処理の正確さや迅速さについても確認できた。加えて、検証過程において既存業務の改善点が判明したことや、職員へRPAの意識付けができたこと、職員のマニュアル意識や慣習的な業務の改善にもつなげることができたことなど、当初想定していなかった結果についても得ることができた。
これにより、市の業務においては、職員の負荷軽減や市民サービスの向上、また業務の洗練化にもつなげることが可能となり、1.(2)において述べた課題の解決に寄与することが可能と考えられる。さらに、職員の時間外業務を削減し、プライベートの時間を確保することが可能になることで、「ワーク・ライフ・バランス」の実現にもつながることや、業務効率化・付加価値の高いサービス提供により、「労働生産性の向上」にもつながることから、労働者・市民ともにメリットのある「働き方改革」の実現にもつながると考えられる。
また、RPAの導入により、職員の雇用が奪われるのではないかという懸念を耳にすることがあるが、RPAはあくまで「定型・大量処理業務」といった単純作業を行うツールであり、これにより職員は「市民サービス向上に向けた政策的業務」にシフトすることが可能になるものである。このことから、RPA導入により職員の業務がロボットに奪われることはなく、職員の雇用は、より政策的な業務において確保されるものであると考えられる。
【図9】効果検証から得られたRPA導入による効果 |
効果検証により見えた効果 |
①業務の削減 | 自動化のみによる業務削減に加え、「業務改善」を行うことで更なる業務削減効果が期待できる。 →3業務で、年間約269時間の削減が可能 →業務改善の実現可能性については要検討 |
②業務品質の向上 | ヒューマンエラーの排除による「業務品質の向上」と「業務の手順書化」が図られる。 |
③高付加価値作業への集中 | 職員業務を「単純定型業務」から「市民サービス向上に向けた業務・政策的業務」にシフトすることが可能となる。 |
④マニュアル業務の見直し | 職員による「慣習的な無駄な業務」や「マニュアル業務」の見直しを行うことが可能となる。 |
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業務などに期待できる効果 |
・職員の業務負荷低減
・職員数の適正化
・時間外業務削減による、ワーク・ライフ・バランスの実現 |
・市民サービスの向上
→正確で迅速なサービスの提供 |
・市民サービスの向上
→付加価値の高いサービスの提供
・職員の政策能力の向上
・職員の雇用の確保
→RPAにより働く場所を奪われない |
・業務の洗練化
・職員の業務に対する意識改善 |
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(2) 自治体へのRPA導入に求められるもの
自治体において円滑にRPAを導入し、そして業務の効率化につなげていくためには、今回洗い出した課題も踏まえると、大きく以下の3点が重要であると考える。
① RPA導入に係る推進体制
役所全体を対象としてRPA導入を推進していく場合、RPAに係る全庁的な推進体制(連絡会議)が必要であると考える。例えば、各所属(部・課)においてRPA導入を牽引する推進員を設置し、統括部局で調整したスケジュールに従い、各所属での「業務の棚卸し」や「削減できる業務」を検討すること、所属職員への「RPAに関する教育」を行うことが望ましいと考える。
加えて、4.(1)でも示した通り、RPAの効果を最大限に高めるためには、書類の電子化やフォーマットの統一、マニュアルの整備、システムの見直し等の業務改善が必要とされる。こうした取り組みについても、推進体制の中で、労力や費用対効果を考慮の上、ルール化し、進めていくことが望ましいと考える。
② RPA導入に係る外的な補助
自治体におけるRPAの検証や導入の取り組みは、全国で見てもまだまだ少ない状況である。このため、先行事例から学ぶノウハウがほとんど無い状況であることから、例えば国の補助メニュー等において、先行導入自治体や企業等から、RPA導入の相談員等を要請できる環境を整備することが望ましいと考える。
また、国等による自治体への財政措置についても期待したい。
③ 主役は「ヒト」である意識
RPAの導入により、業務を効率化させたことが終わりではない。自治体の業務における主役は、あくまで「ロボット」ではなく「ヒト」である。RPAにより定型業務を効率化させることで、事務作業から解放されたヒトがより付加価値を高める業務に注力し、市民サービスの向上を考えていくことが重要であるかと考える。
(3) 自治体へのRPA導入に係る今後の展望
本稿では、加賀市の実業務へRPAを試験導入し、自治体業務におけるRPAの導入効果を検証してきた。その結果、RPA導入の効果は極めて高いものであることを確認することができた。
こうしたRPA導入の効果検証については、加賀市のみではなく、京都府やつくば市などの一部の自治体でも行っているところである。しかし、検証の結果から、RPAの導入により一定の効果が得られることがわかりながらも、全国の自治体や行政機関では導入が進んでいないことが実情である。これは、予算措置に係る財政面の問題や、現場職員の理解が得られないなどの課題から、現状では様子見の団体がほとんどであるからかと思われる。
しかし、クラウドコンピューティングのように、情報技術の行政への導入は年々早まってきている。RPAの導入についても、当たり前に行政で活用されるようになるのは、遠い未来の話ではなく、意外と早い時期なのかもしれないかと考える。
私達が行う業務にも、そう遠くない未来にRPAの導入が進むと思われる。その際に、円滑な業務の効率化につなげるためには、私達一人ひとりが、常に業務改善に関する意識を持ち、また少しずつでも「RPA」やITの活用について意識し、学習していくことが重要かと考える。
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