【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第4分科会 “土佐さんぽ”~若者と考える自治体の未来~

 今もっとも注目されているSNSである「インスタグラム」を自治体で活用することにより、どのようなプロモーション効果が期待できるのか、銚子市若手職員人口減少対策プロジェクトチームで調査及び実践してきたことを基に考察していく。



銚子市におけるインスタグラムを活用した
ビジュアルプロモーションについて
―― 若手職員プロジェクトチームによる調査・分析 ――

千葉県本部/自治労銚子市役所職員労働組合 沼田 紘章

1. はじめに

 銚子市若手職員人口減少対策検討プロジェクトチーム(以下、「若手PT」という)は、銚子市の直面する人口減少問題に対して、市の若手職員が職域にとらわれない柔軟な発想で活動、研究を行うことを目的に、2013年1月に設置された。
 若手PTは、これまで4期にわたり、事業の提案やイベントの参加・企画といった活動を行ってきたが、第4期においては、2016年11月から、2018年3月まで活動し、イベント参加への強制や既存事業の代行人としての活動ではなく、メンバーが独自で考案した「柔軟で斬新な発想」をコンセプトとした自発的な活動をめざし、今期では特に「地域に飛び出す公務員」をテーマに、多くの方々と交流したり、イベントの開催・参加協力に注力した。
 本レポートでは、それらの活動の一つである、「銚子市及び他の自治体におけるインスタグラムの活用状況に関する調査・分析」と「インスタグラムを活用したフォトコンテストの開催」の結果について、報告していく。

 
銚子市若手PT第4期メンバー 会議の様子

2. 銚子市とインスタグラムについて

(1) インスタグラムとは
 インスタグラムとは、一言でいうと、「写真の投稿・閲覧に特化したSNS」である。
 ツイッターやフェイスブックといった、他のSNSとの機能的な違いで比較すると、投稿する写真を様々なフィルターで加工できる点などが挙げられる。
 インスタグラムは、2010年10月にアメリカでサービスが開始され、2017年9月時点での全世界におけるユーザー数は8億人を突破している。
 また、日本国内でユーザーが爆発的に広まったのは2015年ごろで、2017年の流行語大賞で「インスタ映え」が選ばれるなど、今最も注目を浴びているSNSといえる。

(2) インスタグラムを銚子市で活用するメリット
 そんな国内外で注目を浴びているインスタグラムだが、このSNSを自治体、とりわけ銚子市において活用する場合には、3つのメリットが考えられる。
① 銚子市は「インスタ映え」するまちである。
 まず第1のメリットとして、銚子市には、屏風ケ浦や犬吠埼、漁港やキャベツ畑、銚子電鉄など様々な風景(観光資源)があるが、それは言い換えれば「フォトジェニック(写真映え)」な風景が多いと考えられ、インスタグラムを活用するうえで見ると、それは「インスタ映え」する素材が多いことを意味しており、従来のSNSよりも、さらに銚子の魅力を効果的にPRできるのではないかと思われる。

銚子市が持つ様々な風景(左から屏風ケ浦、犬吠埼、銚子電鉄)

② 様々な層に向けたPRが可能である
 第2のメリットとして、従来のSNSとは違ったユーザー層に対して情報発信が行える点が挙げられる。
 【図表1】より、2016年時点でのインスタグラムの男女年代別比率のグラフを見ると、20代及び30代の男女割合の合計が50%を超えており、若い世代の人たちがメインユーザーとなっていることがわかる。
 また、男女比率についてだが、インスタグラムの男女比率は、男性42.6%、女性57.4%と、女性ユーザーのほうが多いことがわかる。SNSの最大手であるフェイスブックでは、男女別比率が、男性が約55%、女性約45%となっているほか、年代別だと、30代~50代のユーザーが多くを占め、10代~20代の利用率が低いため、インスタグラムは他のSNSと比べても、女性ユーザーの比率が高いSNSであることがわかる。

図表1:インスタグラムの男女年代別比率(2016年)
出典:App Ape Lab.(https://lab.appa.pe/2017-06/Instagram-2017.html

 その後、男性の利用者が急激に増え、2017年のグラフ【図表2】では男性・女性の比率がほぼ半分になってはいるが、それでも、インスタグラムのメインユーザーは20代~30代の女性であることが見て取れる。
 よって、インスタグラムを活用することによって、プロモーション面において、今までとは違った層(若い世代、若い女性)に対してアプローチすることができるというのは、非常に大きな強みであると言える。

図表2:インスタグラムの男女年代別比率(2017年)
出典:App Ape Lab.(https://lab.appa.pe/2017-06/Instagram-2017.html

③ 地域の魅力の掘り起こしと磨き上げ
 第3のメリットとして、インスタグラムを活用することにより、今まで注目されなかった観光スポット(観光素材)の掘り起こしと磨き上げにつながることが考えられる。
 この効果における千葉県内での最も有名な事例として、千葉県君津市にある「濃溝の滝・亀岩の洞窟」が挙げられる。元々、この場所は、洞窟の中に差し込む日の光がスポットライトのように岩肌と川面を照らす幻想的なスポットとして「知る人ぞ知る秘境」のような扱いであったが、2015年11月ごろにインスタグラムで投稿された1枚の写真から一気に話題となり、今では南房総や館山へ行く際に立ち寄れる絶景スポットとして、千葉県でも人気の観光スポットとなっている。
 つまり、インスタグラムの1枚の写真が話題の火付け役になるだけでなく、インスタグラムが普及することによって、今まで注目されなかった場所が、観光スポット化する可能性が高まっているといえる。
 よって、銚子市においても、インスタグラムを活用することによって、今まで注目されなかった場所やお店などが注目される可能性を秘めているといえる。

 
時期・時刻によって幻想的な姿に変化する「濃溝の滝・亀岩の洞窟」(千葉県君津市)

3. インスタグラム銚子市公式アカウントの現状及び分析

(1) 銚子市公式アカウントの現状
銚子市のアカウントページ
 銚子市のインスタグラム公式アカウントは、2016年3月7日から運用を行っており、アカウントの開始時期に関しては、千葉県内でもかなり早い段階で開設をした。
 アカウント名は「Choshi_city」で、時間・場所・ジャンルを問わず、様々な銚子の魅力を発信している。
 また、アカウントの投稿数、フォロワー数、フォロー数については、2018年7月23日時点での数字は、投稿数532件、フォロワー数5,784、フォロー数2,803となっている。
 そして、公式アカウントだけでなく、一般ユーザーからの投稿についても、銚子で撮影した画像を投稿する際には、オリジナルのハッシュタグ「#あんだこれ銚子」「#wowchoshi」を用いるよう呼び掛けている。「あんだこれ」とは、「これはなに?」という意味の銚子の方言で、銚子市ではスマートフォン用サイト「あんだこれ銚子」を運営しており、銚子市の魅力的なモノ・コト・場所などを紹介している。


(2) インスタグラム銚子市公式アカウントの分析
① 銚子市公式アカウントにおけるフォロワー属性
 銚子市のフォロワーは約6,000人いるが、一体どういった層が銚子市のアカウントをフォローしているのか、分析していく。
 【図表3】を見ると、性別(男女比率)では、女性のほうがやや比率が大きい。次に男女別の年齢層については、男女ともに20代から40代前半のユーザーの比率が大きいが、特に女性については、20代から30代の比率が一番多く、インスタグラムそのもののメイン層をほぼ反映しているような結果となった。また、フォロワーの所在地については、銚子市在住者が2割程度であるのに対し、8割近くのフォロワーは市外の方だということがわかる。

図表3:銚子市公式アカウントのフォロワー属性
② 全国の自治体におけるインスタグラム事情
全国の自治体におけるインスタグラム
アカウントのフォロワー数別順位
(7月23日時点)
 全国の市区町村におけるインスタグラムの活用状況について、独自に調べたところ、インスタグラムのアカウントを管理・運営している自治体(市区町村)は1,741ある中で、201市区町村存在した。
 あくまでこの数字は、自治体及び自治体職員そのものが運営しているアカウントの数で、観光協会や商工会、地域おこし協力隊といった団体・組織が運営しているアカウントについては、数に含めていない。
 また、各自治体のアカウントを見比べてみると、多種多様な情報発信を行っており、観光情報だけでなく、ふるさと納税や移住定住、ゆるキャラのPRなど、多岐にわたっており、2つの自治体だけだが、市の若手職員が中心となって情報発信を行っているアカウントも見られた。
 全国の自治体アカウントにおけるフォロワー数をランキング順で見てみると、銚子市は全国的に見ても8位に位置しており、非常に高い注目を受けているといえるのではないかと思われる。


4. インスタグラムを活用したイベントの開催について

(1) インスタグラムを活用したフォトコンテスト成功の秘訣
 まず、インスタグラムを活用したフォトコンテストを開催するうえで、より多くの参加者、応募数を集め、イベントを成功させるために、我々若手PTは、以下の3つの項目を重視した。
① コンテストの開催時期
 まず1つ目は、コンテストの時期(開催期間)で、より多くの参加者を集めるためには、観光客が多く訪れる時期に開催するのが望ましいと思われる。
 また、プロモーションのターゲットとなる、インスタグラムユーザーのメイン層を考えた場合に、どういった時期に開催するのが望ましいか、といった点も考慮する必要がある。
 例えば、大学生をターゲットにするのであれば、夏休みの時期であったり、卒業旅行のシーズンに照準を合わせて開催するようなかたちである。
② 参加条件の緩和
 次に2つ目は、コンテストに参加(応募)するにあたって、できるだけ参加のハードル(条件)を下げる必要があると考えられ、イメージとしては、銚子を訪れて観光し、何らかの写真を撮ったついでに、コンテストに参加していただく程度のレベルが良いのではないかと思われる。
 そのためには、コンテスト専用のハッシュタグを複数用意するのではなく1つだけに絞ったり、投稿数の制限を無くすなど、できるだけ参加基準を緩和するような仕掛けづくりが必要である。
③ 地元からの参加も必要
 そして3つ目だが、コンテストのターゲットは、観光客だけでなく、地元の人(市民)も含めるという点である。これにより、参加者数、作品投稿数の増加が見込めるだけでなく、地元の人しか知らない、隠れたスポットやお店などの情報を発信することができるということが挙げられる。
 また、その他にも、テーマの設定であったり、賞品の設定といった要素も、コンテストを開催するうえで、考慮すべき事項だと思われるが、やはりここで重要なのは、景品を豪華にし、開催期間を長期にすれば参加者や応募数が集まるというわけではなく、参加のしやすさ・参加のハードルの低さがキーポイントになってくると思われる。

(2) インスタグラムを活用したフォトコンテストの開催結果
① 開催概要
フォトコンテストのチラシ
 フォトコンテストのタイトルは「あんだこれくしょん2017」にし、開催期間については、銚子市へ訪れる人が最も多い季節であり、市外にいる若者も実家のある銚子に帰ってくる可能性の高い「夏」の時期に焦点を絞り、7月1日から9月30日まで開催した。
 主催は銚子市役所の若手職員で構成される「銚子市若手職員人口減少対策プロジェクトチーム」で、応募要項の設定やホームページの作成、審査会の開催準備、受賞者への賞品の発送などの作業を、市の若手職員が中心となって実施した。
 また入賞作品の種類は、最優秀賞が1点、優秀賞が3点、入賞(特別賞)が8点の計12点で、賞品については、最優秀賞が10,000円分、優秀賞が5,000円分、入賞が3,000円分となっており、市内の観光施設の優待券や特産品などが中心である。


② フォトコンテストへの応募方法
 市の公式アカウントをフォローし、コンテスト用のハッシュタグ「#あんだこれくしょん」をつけて応募期間内にインスタグラムへ写真を投稿するだけとなっており、できるだけコンテストに応募しやすいような形とした。

フォトコンテストへの応募方法

③ フォトコンテストの開催結果
 フォトコンテストの開催結果は、応募総数が2,662件(有効作品数2,380件)あり、目標にしていた2,000件を大きく上回る結果となった。
 また、作品の審査方法については、まず1次選考として、市の若手職員のみで、全体の10分の1の数である212点まで絞った。
 その後、最終選考で、市職員及び観光事業者を中心とした審査員による投票で12点の入賞作品を選出した。
(詳細については「銚子市インスタグラムフォトコンテスト受賞作品一覧」参照。)

 
 
 
最終選考の様子

銚子市インスタグラムフォトコンテスト受賞作品一覧

④ フォトコンテストの反省点
 結果として、一定の成果を出した形で終わった今回のフォトコンテストだが、反省点も2点ほど見られた。
 1つ目が「参加者が少なかった」という点で、応募総数(作品数)は2,600点以上あったが、参加したアカウント数でみてみると、10分の1程度しかいなかったように感じられ、同じ人が何点も作品を投稿していたのではないかと思われる。
 こうなった主な原因としてはやはり周知不足が考えられ、ホームページの公開やチラシの配布、市の広報紙の掲載など、市の若手職員のできる範囲でのPRを行ったが、もっと更にPRを行う必要があったのではないかと思われる。
 ただ、言い方を変えれば、今回のコンテストに対して熱心に参加しているユーザーが多かったという見方もできるため、今後も継続的にコンテストを開催し、更なるPRを進めていくことにより、応募数も爆発的に伸びていくのではないかという期待にもつながっていくと思われる。
 2つ目の反省点として、「入賞作品のジャンルの偏り」が挙げられる。
 受賞作品の大半が、「風景」の画像となっており、せっかくのインスタグラムを活用したフォトコンテストであるため、もっと多彩なジャンルの作品であったり、奇をてらったような作品が選ばれていても良かったのではないかという意見もあった。
 この原因としては、今回の作品選考において、明確な選考基準を設けず、審査員が「いいな」と思った写真を投票で選んだ形になっているため、どうしても銚子らしい「風景」の写真が選ばれやすかったのではないかと思われる。この点に関しては、コンテストそのもののテーマを明確に打ち出していく必要があるほか、コンテストを開催する前に、「どういう写真が欲しいか」といった基準を設ける必要がある。

5. 銚子市における今後のインスタグラム活用方法

(1) フォトコンテストを開催することによる3つの効果
 フォトコンテストについては、市のプロモーションを考えた場合に、3つの効果が期待される。
 まず、コンテストを開催し、それを宣伝することで、参加者にとって、銚子を訪問・周遊するための動機になるという点である。
 次に、参加者が写真を撮影して作品を投稿することにより、地域の魅力の磨きや、隠れた魅力の掘り起こしにつながると考えられる。
 そして3つ目に、投稿・受賞した作品を活用することにより、市のさらなるプロモーションの展開へとつなげられるという点が挙げられる。
 そのため、銚子市としては、今後もフォトコンテストを継続して開催し、イベントの定着化を図っていくほか、インスタグラムに投稿された数多くの作品を、ハッシュタグを活用しながら情報発信していくことが望ましい。
 今回設定したオリジナルのハッシュタグで、「あんだこれくしょん」というワードを作ったが、コンテストが終わった後も、このワードを検索するだけで2,600を超える写真を表示させることができるというのは大きな強みになるため、受賞作品や投稿作品の活用を考える前に、まずはこの「あんだこれくしょん」というハッシュタグを活用していくことが重要だと思われる。
 また、受賞作品を展示するというのも一つの方法ではあるが、それだけでは広域的なプロモーションにはつながらないため、専用のハッシュタグを用いながら、応募作品すべてを使ってプロモーションを行うのが望ましいと思われる。
 そして、投稿作品や受賞作品だけに着目するのではなく、それを撮っているユーザー(フォロワー)にも注目し、優れた撮影技術を持った人や、たくさんのフォロワーを抱えている人など、様々な影響力を持った方々を銚子に呼び、周遊・交流できるような場を作ることによって、新たな観光素材の掘り起こしと磨き上げや、更なる市の魅力の発信につながる可能性がある。

フォトコンテストの開催により期待できる3つの効果


(2) 銚子市公式アカウントから見たプロモーション展開
 市の公式アカウントを通じて、市の魅力を引き続き発信していくことは非常に効果的であり、現時点でも、銚子市のアカウントは、他の自治体のアカウントと比べても、上位のパフォーマンスを見せているとは思われるが、更にフォロワー数を増やしていくことが重要である。
 ただ、さらに、より広く、より多くの人に、インスタグラムを通じて銚子市の魅力を発信していくためには、市のアカウントだけでなく、それを取り巻くユーザー(フォロワー)の方々も、銚子の情報発信の担い手になってもらう必要がある。銚子市のアカウントから発信する情報だけでは、一定数のフォロワーへのアプローチのみに留まってしまい、銚子市のアカウントをフォローしていない人や、そもそもインスタグラムをやっていない人に対しては、情報発信の範囲に限りがあるため、更なる情報発信の広がりが生まれない。
 そのため、更なるプロモーションを行うためには、市だけでなく、市民や観光客といった方々を中心とした他のインスタグラムユーザーひとりひとりが、情報発信の担い手となるような仕組みを作っていく必要があり、今回開催したフォトコンテストのような取り組みは、これらのユーザーによる自発的な情報発信を促すことができる有効な方法だと思われるため、今後は、市としても、積極的にこういったキャンペーンやイベントを開催していくことが望ましい。
 また、市内におけるインスタグラムのユーザーそのものの利用者数の増加をめざすことも、情報発信の影響力を高めるためには必要である。

銚子市におけるインスタグラムを活用したプロモーションの理想像

6. まとめ

 自治体のプロモーションにおいてインスタグラムを活用することは、様々な情報や地域の魅力を効果的に発信できるため、非常に有効であるといえる。
 また今回、若手PTによるインスタグラムフォトコンテストを開催したことにより、自治体とユーザー(撮影者・投稿者)が一体となって地域の魅力を広くアピールする体制を構築することができるほか、様々な写真を募集することで、銚子の新たな魅力や隠れた魅力を発掘することにつながるため、観光客の増加や地域の活性化において重要な手法になる可能性を感じられた。
 自治体におけるインスタグラムの活用に関しては、今後も更に拡大していくと思われるため、他の自治体の事例にも注目しながら、より効果的なプロモーションの方法について調査研究を重ねていく必要がある。
 若手PTとしても、銚子市のさらなる活性化につながるよう、自治に関わる様々なテーマについて、引き続き研究及び活動を行っていきたい。