【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第4分科会 “土佐さんぽ”~若者と考える自治体の未来~ |
市長の「市民との融和と協働」の方針のもと、鯖江市では河和田アートキャンプ、体験移住事業、女子高生のまちづくり活動、次世代産業育成支援、お試しサテライトオフィスなどの取り組みにより、若者が住みたくなるまちの創造に取り組んでいる。 |
|
1. 鯖江市の人口増加の状況 鯖江市は1955年1月の誕生(市制施行)以来、今もなお人口が増え続けています。人口の増減は、自然増減(出生・死亡による増減)と社会増減(転入・転出による増減)2つの要素に分けることができますが、鯖江市では、2013年以降自然増減がマイナスになっていることから、社会増減がプラスを維持していることで、人口が増え続けていることになります。しかし、国の推計では、今後、この自然減はますます拡大し社会増を上回ることから、人口は減少に転じ、2060年には5万人程度になるとされています。自然減は死亡数の増加と出生数の減少により進んでいきますが、出生数の減少は若者の減少につながり、若者の減少が出生数の減少につながるという負の連鎖により更なる自然減を生むことになります。鯖江市も決して例外ではなく、人口減少は直ぐ目の前にあると認識しています。
|
2. 鯖江市の人口減少対策 人口推計では、今後も若干ながら社会増は続くものの、若者(特に女性)については転出超過になるとされていることから、市では、若者の社会増加を中心に取り組んでいます。(1) 若者の転出超過
(2) 社会増につながっている主な事業
2004年の7月に発生した福井豪雨災害からの復興をきっかけにスタートした河和田アートキャンプでは、これまで13年間にわたり、毎年、関西地区を中心とする100人前後の学生が夏の1ヶ月間、河和田地区の空き家となっていた古民家を拠点としてアート活動および地域住民との交流を展開してきました。そして、本市の聞き取り調査によると2008年以降参加学生のうち12人の若者が鯖江市での生活に魅力を感じ、市内に定住して本市の魅力を情報発信しています。
2015年10月から2016年3月にかけて実施した体験移住事業「ゆるい移住」に参加した15人のうち、地域住民や様々な団体との交流を通して鯖江市での生活に魅力を感じ、3人が本市に移住、1人が本市に就労してまちづくりに参加しています。
まちづくりに直接関わることのなかった女子高生たちが自ら考え、やってみたいまちづくり活動を提案し、市役所をはじめ、大学やメディア、市民団体等と連携して具現化する取り組みで、2014年度から実施しています。図書館の空席状況確認アプリSabotaの開発、オリジナルスイーツの開発・販売といった、高校生ならではの企画が生まれ、話題性から多くのメディアに取り上げられました。一期生13人が今年高校を卒業しましたが、12人が県内に留まり内11人が何らかのまちづくり活動を続けています。
近年、ファッショナブルな生活雑貨の開発を行う企業が生まれたり、機械・電子部品工業やIT産業など新たな産業も力をつけてきています。 また、市では、地場産業で培った技術やノウハウを応用した医療機器や眼鏡型のウエアラブルコンピューターなど成長分野への進出を推進し、若者に魅力のある雇用を創出しています。特に、眼鏡産業のチタン加工技術を応用した手術器具の開発は高く評価されています。成長分野における従業者数は2016年度末で205人(2014年度末比で35人の増)となっています。 このような新たな動きの中、IT関連企業や新たな分野へ進出を図る企業に就労する若者が徐々に増え、市の聞き取り調査によると2008年以降、本市に44人、県内に6人が移住しています。
サテライトオフィスの誘致と空き家問題の解消を図ろうと、2017年度の7月から9月にかけて、総務省の事業採択を受け、都市部の企業に市内の空き家をリノベーションしたオフィスでお試し勤務をしてもらいました。結果、34社が参加し既に1社がサテライトオフィスを開設し地元雇用10人をめざしており、2社が2018年1月の開設に向けて準備中。さらに、首都圏の大手IT企業が2018年1月と3月に、市内において、それぞれ約1か月間、総勢150人規模の新入社員研修を計画中です。 (3) その他の社会増 |
3. まとめ
これらの施策による人口増は決して大きくはないですが、近年、県外の若者が盛んに市内でまちづくり活動を行ったり、鯖江の魅力をSNS等で発信してくれたり、県内外の大学や大手IT企業が様々な支援やサテライトオフィスを市内に設置してくれたりしており、今後の人口増が期待されています。 |