【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第4分科会 “土佐さんぽ”~若者と考える自治体の未来~

 "若者の市民参加、地域社会への参加を促す"ことが、若者に何をもたらし、地域社会に何をもたらすのでしょうか。本稿では、京都市下京青少年活動センターを運営するKYS協会が行う「地域交流」として、商店街をフィールドに、「若者のやってみたい」と「地域(商店街)のニーズ」をマッチングする事業を行っています。この事業を通して、見えてきた成果と課題を整理しました。



若者が地域にもたらした影響
地域が若者にもたらした影響
―― 青少年活動センターでの実践から見えたこと ――

京都府本部/公益財団法人京都市ユースサービス協会職員組合 田中 周子

1. はじめに

 京都市ユースサービス協会(以下、KYS協会)では、"若者の市民参加、地域社会への参加を促す"ことを達成することを、目標の1つに設定しています。少子化や、核家族化に伴い、地域との関わりは希薄になりつつある今日、地域社会へ参加する若者も少なくなっていると感じています。「小さい頃は親に連れられて参加していた地域行事も、年齢が上がるにつれて行かなくなってきた」「一人暮らしを始めて、地域の人と関わることがない」という若者の声を聞きいたり、学区単位の祭りやイベントに足を運ぶと、そこに若者の姿はほとんどないように見えます。"若者の市民参加、地域社会への参加を促す"ことが、若者に何をもたらし、地域社会に何をもたらすのでしょうか。本稿では、京都市下京青少年活動センターを運営するKYS協会が行う「地域交流」事業について、実践を通して見えてきた成果と課題を報告します。


2. 公益財団法人京都市ユースサービス協会とは

(1) 公益財団法人京都市ユースサービス協会概要
① 1988年(昭和63年)3月に、青少年の自主的な活動の振興を図ることにより、京都市の青少年の健全な育成に寄与することを目的に設立された。
② 青少年が社会の担い手として成長するために、社会参加と自主的な活動の機会を提供し、必要な支援を行っていくことが「ユースサービスの理念」。
③ KYS協会は、その理念に基づきながら、京都市など関係行政機関、青少年団体、青少年の育成に関わる人たち、そして何より青少年自身と協力しあいながら、活動を展開している。
④ 現在では、(ア)京都市青少年活動センター(7か所)の受託運営(指定管理者)、(イ)京都サポステの受託運営(厚生労働省及び京都市からの受託)、(ウ)子ども・若者育成支援地域協議会「指定支援機関」業務(京都市からの委託)、(エ)青少年の自主的な活動促進のための事業の実施、(オ)青少年育成・支援のための調査研究などを行っている。
⑤ 青少年に寄り添いながら、その成長を手助けする専門職=ユースワーカーを養成している。(イギリスを始めとするヨーロッパ各国で養成が取り組まれ、国家資格となっている国もある。)
⑥ 2006年から大学院レベルでの養成プログラムを始めた他、ボランティアや関連する仕事の中でユースワークを担う人材を育てる、独自のユースワーカー資格取得のプログラム(ユースワーカー養成講習会)も始めている。

(2) 青少年活動センター概要
① 勤労青少年の福祉の増進並びに青少年の健全育成及びその自主的な活動の促進を目的に、京都市が、市内に7か所(北・中京・東山・山科・下京・南・伏見)設置する青少年施設で、前身は勤労青少年ホーム。1997年よりKYS協会が運営を行い、1998年から各施設が特色ある事業(個性化事業)を展開。
② 利用対象は、(ア)市内に在住、通勤又は通学する青少年(13歳(中学生)~30歳)、(イ)市内で活動する青少年団体、(ウ)青少年育成関係者。
③ 青少年活動センターには、若者支援の専門職(ユースワーカー)を配置し、(ア)勤労青少年の教養の向上及び青少年の社会参加の促進のための講座、研修等の開催、(イ)青少年活動のための施設の提供、(ウ)青少年活動の指導者の養成、(エ)青少年活動に関する情報の収集及び提供、(オ)青少年活動に関する相談、を行っている。


3. ユースワーカーとは

① ユースワーカーは若者の成長を手助けする専門スタッフで、イギリスを始めヨーロッパ各国で養成が取り組まれ、国家資格となっている国もある。
② 日本には、イギリスのユースサービス/ユースワークとともにその活動が紹介され、各地でユースワーカー養成が行われている。
 京都では2006年から大学院での養成プログラムを始めた他、ボランティアや関連する仕事の中でユースワークを担う人材を育てる、独自のユースワーカー資格取得のプログラムも始めている。


4. 若者にもたらしたもの

 京都市下京青少年活動センターでは"ユース街づくりスタッフ「チーム街スタ」"という事業を行っています。下京区内の商店街をフィールドに、「若者のやってみたい」と「地域(商店街)のニーズ」をマッチングする事業を行っています。具体的には、商店街主催の夏祭りに出店をしたり、お祭りの運営スタッフとしてボランティア活動を行ったりしています。イベントを通して地域との関わりを深めることで、これまで地域の人と関わるきっかけがなかった若者でも、徐々にその地域(商店街)に愛着を持ち始め、いつしか気軽に話し合える関係を築くことができました。
 初めは地域に訪問することに苦手意識をもっていた大学生も、イベントへの参加や、協力依頼を重ねることで、地域の方と顔を合わせる機会が増え、徐々に苦手意識もなくなっていきました。
 最終的には用がなくても、地域に顔を出すようになっていき、大学の話や、就職活動の話などをするようになっていました。その後、頻繁に訪問することができなくても、気に掛け合ったり、困った時や何かあった時に、声を掛け合う関係性を構築することができるようになりました。

 


5. 商店街にもたらしたもの

 彼ら、彼女らが考えた数々の企画の中でも、特に好評だった企画は「動画を用いた商店街広報」企画です。今から4年前「恋するフォーチュンクッキー」が一世を風靡した際、「商店街でもダンスを踊ろう」という声が、ボランティア(ワーカー)から上がりました。
 実際に商店街の方々に交渉しに行くと、「踊るのはちょっと……」と、断られるお店が多かったそうです。それでも諦めず交渉に行ったり、少しでも簡単に、楽しく踊れるように、ボランティア達が商店街の人にダンスのレクチャーを行ったり、地道な努力を重ねることで、1本の動画が出来上がりました。出来上がった作品を商店街の方に見てもらうと、皆さん笑顔で「あの店の〇〇さんも踊ってる」「いい作品だね」「楽しかった」などの感想をいただきました。
 これまで、商店街の中でも、ボックスティッシュを作って、お店で買い物をしたお客さんに配布するなどの取り組みをされていましたが、なかなか足並みが揃わなかったと聞いていました。動画作成を行ったことで、複数の店舗が、同じ活動を共にすることができ、商店街内の結束力を高めることに寄与できたのではないかと思います。
 その後、再び商店街を使って踊る企画がしたいと要望があり、「恋するフォーチュンクッキー」を商店街のアーケードで踊りました。今でも商店街と大学生の関わりは残っていますが、商店街は独自に、自分たちの商店を紹介するHPを作成したり、当時作った動画をHPに乗せ、どんどん広報していきたいと話しています。恋するフォーチュンクッキーのURLはこちら、https://www.youtube.com/watch?v=01l8-634pns
 また、昨年度は「恋」ダンスの動画作成を行い、これまで動画に出演した人や、行政、企業の関係者にも協力を要請し、一本の作品を作り上げました。完成した動画はWEB上には公開していませんが、地域内のイベントで上映したり、地域活動の成果物となっています。

 


6. まとめ

 生活を営む上で、「地域社会」は避けて通ることのできないものです。下京青少年活動センターでは、"商店街"をフィールドに、"若者の市民参加、地域社会への参加を促す"ことを模索し続けています。若者が、様々なことを学び、成長していく環境として、地域社会はとても重要なものです。地域に住まう人も、地域に入り込む人も、どちらにとってもより良い環境を作り続けていきたいと思います。