1. はじめに
本町は、島根半島沖合に浮かぶ隠岐諸島のうち島前地区に位置し、町名と同じ「西ノ島」一島で一町を形成しています。人口・面積ともに隠岐諸島で隠岐の島町に次ぐ2番目に大きな町です。その地形の大部分は、火山島特有の高低起伏の激しい山地丘陵によって内海側と外海側に分かれています。
内海側には、西ノ島・中ノ島(海士町)・知夫里島(知夫村)に囲まれた穏やかで広々とした内海湾を抱き、海岸は屈曲に富んだ天然の良港に恵まれています。また、集落はこれらの港に面して14地区が点在しています。
外海側は、西北岸に集落が1地区あるほかは延々37kmに及ぶ海蝕断崖の連続で、海岸には奇岩怪礁が男性的な景観を呈し、特に国賀海岸は隠岐諸島の観光の代表的景観として知られています。
人口は、1950年をピーク(7,463人)に減少を続け、現在では、2,879人となっています(2017年4月1日現在)。近年の動向をみると、およそ57人/年のペースで人口が減少しています。
2022年には、本町の人口は、2,500人台、高齢化率は54%に達することが予想され、町民の2人に1人が高齢者の状態になり担い手不足が深刻化し、行政サービスの維持、集落の存続さえも危ぶまれる状況となります。
このような状況の中、これからの西ノ島町はどうあるべきかを考え、「第5次西ノ島町総合振興計画」が2014年度から施行されています。その中で今回のテーマである「魅力・活力ある地域づくり」について記載されており、西ノ島町として取り組むべき内容について報告致します。
2. 島の魅力を活かす3つの方策について
(1) 資源を活かして働く
① 特産品開発プロジェクト
イカ・岩ガキ・サザエ等をはじめとした水産物や、山菜をはじめとする農作物などどこにも負けない豊かな資源に恵まれています。これらの資源を十分に活用できれば、産業に大きな効果をもたらし、また、地元住民、地元産業者及びUIターン者(若者主体)等、様々な目線、立場で消費者ニーズにあった特産品開発を行えば新たな雇用の創出、地域産業の活性化につながります。
西ノ島町ブランド確立に向け、多様な主体の連携による特産加工品開発に取り組んでいきます。
② 農産物地産地消プロジェクト
平地が少なく農業をする環境としては恵まれていません。このため農作物は、主に家庭菜園で生産されている程度です。新鮮だと評判である農作物を町内の様々な施設等で販売できる体制が整えば農産物に対する需要が増え「家庭菜園」から「農業」への転換が図れます。また、町内での農業をする町民(若者)が増えれば遊休地の利用も進みます。
産業としての農業再生に向け、西ノ島町産農作物の島内流通拡大に取り組みます。
(2) 助け合い健やかに暮らす
① 育てたいプロジェクト
毎年およそ20人の子どもが生まれています。一方で、毎年およそ60人の方が亡くなっています。将来的な人口の維持には、子どもの数を増やすことが不可欠です。子育ては、出産のできる病院がない、経済的負担・精神的負担等、離島ならではの悩みもあります。子どもの数を増やすため、これらの悩み解決を図り、少しでも安心して子育てができる環境を整備するプロジェクトです。
一人でも多くの「育てたい」を生むため、子育て世帯への支援拡充、保育体制の充実、地域による子育て支援体制の構築に取り組みます。
② 全町一丸、高齢者福祉充実プロジェクト
今後、高齢化率は高くなりますが、高齢者そのものは増えません。10年後には減り始めます。今後の福祉施策を考えるにあたっては、高齢者数の動向を見極めながら、在宅福祉と施設福祉をバランスよく充実させていくことが大切です。若い世代が減り続ける中、関係機関や地域、住民一人ひとりが「自分たちでできることは何か」を考え、見守り・声掛け等を行うことで、高度な専門技術が無くても、高齢者に提供できる安心感があると考えます。
高齢者の安心感を育むため、在宅福祉の充実のみならず、福祉施設の充実と、地域による福祉支援体制の構築に取り組みます。
③ ちょっと聞いてよプロジェクト
人口減少対策として子育て支援と定住政策に取り組んできました。高齢者対策として、医療・福祉サービスの充実、島独特の文化、慣れない就労環境や子育て、介護疲れ等により一人で悩み、町を離れる方もいます。話をすることがきっかけとなり地域とのつながりが生まれ気持ちが晴れることはあると考えられます。町としてもこれらの声を聞くことが重要だと考えます。
人口減少・高齢化対策を支えるために、相談体制の構築に取り組みます。
④ 地域の力結集プロジェクト
少子高齢化が進む中、各集落では、買い物弱者の増加、地域防災力の低下、独居老人の増加、地域文化の衰退等、様々な課題があります。一方地域のために奮起し「地域を良くしたい」という想いを持つ人も多くいます。一人ひとりの力は小さいものですが今住んでいる人それぞれの魅力と技を結集し行動を起こせば、地域課題のみならず、新しい「人の力」を呼び込む原動力になります。
地域の力を最大限に引き出すことができるよう、集落機能の強化を図るとともに、人と人をつなぐ人材バンクの構築に取り組みます。
(3) 自然とともに暮らす
① エネルギーの自立推進プロジェクト
今まで化石燃料に依存してきた私たちにとって、自立したエネルギー供給体制を短期のうちに構築することはできませんが、近づくための努力はできます。
太陽光・風力・波力等の自然エネルギーをはじめ、海岸漂着物・家畜排泄物・間伐材等もエネルギーとして利用できる可能性があります。
自然と共生した暮らしの実現に向け、様々な資源のエネルギー利用の可能性を検討します。
② 地域連携美化活動プロジェクト
豊かで美しい自然は、本町が持つ最大の魅力です。しかし海岸漂着物等により島の美しさが損なわれています。現在これらのごみは、町による取り組みと町民ボランティアにより回収され、美しい環境が保たれています。「エネルギーの自立支援プロジェクト」を進める中で、海岸漂着物や家畜排泄物等のエネルギー利用が可能となった際、町民の活動エネルギー源を収集する力となります。
将来的なエネルギー利用も視野に入れた、地域連携による美化運動の推進に取り組みます。
3. 最後に
西ノ島町においては、2013年度から施行された「第5次西ノ島町総合振興計画」(2013年度~2022年度 10年間)に基づき上記内容について、様々な分野等で現状と課題について取り組んできました。施行から4年が経過し、各分野において社会情勢の変化や新たな町民のニーズを踏まえたうえで再認識することも多々あり、再度認識することが多いのが現状です。2022年度までに本町のめざす姿やその施策を再度確認し、今回あげた施策の完了に向けて努力していきたいです。
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