【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第5分科会 人口減少社会をどう生き抜くか!?

 「少子高齢化」・「過疎化」・「核家族化」・「地域におけるつながりの希薄化」等の急速な社会情勢の変化により、地域の集落機能が益々低下し、共同作業や伝統行事等も集落単位での活動が困難な状況になってきています。このような集落が抱える課題を解決するための新たなコミュニティー組織構築による「住民自らが考え行動する住民主体型」および「行政との協働型」まちづくりの取り組みを報告します。



集落の現況と地域コミュニティーの役割


大分県本部/宇佐市議会議員 大隈 尚人

1. はじめに

① 私たちの暮らす地域社会は、「少子高齢化」・「過疎化」・「核家族化」・「地域におけるつながりの希薄化」等の急速な社会情勢の変化により、「高齢者・子育て支援」「防災・防犯」等住民生活に直結する様々な課題を抱えています。また、地域の集落機能が益々低下し、草刈りをはじめとした共同作業やお祭りなどの伝統行事等も集落単位での活動が困難な状況になってきています。
② 私が暮らす宇佐市院内町高並地域においても「少子高齢化」ならびに「過疎化」が急速に進んでいます。高並地域は、院内町北部に位置し、名峰「鹿嵐(かならせ)山」の袂に優しく抱かれ、明治期の自由民権運動の指導者として活躍した「大井憲太郎」を生んだ静かで古い歴史の漂う郷です。

<宇佐市人口推移(※各年10月1日現在)>
調査年 2005 2008 2011 2014 2017 減少人数 減少率
旧院内町 4,693 4,485 4,243 3,992 3,660 1,033 22.0%
旧安心院町 7,626 7,266 7,032 6,546 5,999 1,627 21.3%
旧宇佐市 48,490 47,971 47,388 46,189 45,505 2,985 6.2%
合計 60,809 59,722 58,663 56,727 55,164 5,645 9.3%
※(減少人数・率は、2005年と2017年の比較)

※<減少率(%)は、2005年と各年を比較した割合>

2. 集落の現況について

① 院内町高並地域は、2017年(平成29年)1月現在の世帯数は約190世帯、人口は約420人、東西約3キロ・南北東西約8キロと南北に長く、面積は約16km2で、六つの集落により形成されており、院内町5地域の中では最も小さい地域です。
 地域の主産業は農業で、米・しいたけ等を栽培していますが、近年農業従事者の高齢化や後継者不足による労働力低下から「農業離れ」を招き、山際の草刈り等ができなくなり、農地荒廃も進んでいます。さらに、イノシシやシカといった有害鳥獣による被害も増加する中、駆除する方の高齢化も重なり、山間の小規模集落を取り巻く状況は、深刻なものがあります。
② また、院内町では最も早く1872年(明治5年)に創立された「高並小学校」は、この地が神功皇后の三韓征伐に際して船材を搬出したと伝えられることから、創立当初は船木小学校と呼ばれていましたが、後には「艦材小学校」と呼ばれ、約2,000人の卒業生を送り出してきた伝統ある小学校でしたが、過疎化に伴う児童数減少により、1987年(昭和62年)3月に両川(ふたがわ)小学校と統合となったため廃校となりました。
③ 高並地域の人口推移をみると、1889年(明治22年)町村制施行時「高並村」の人口は、1,351人でしたが、1965年(昭和40年)には945人に、現在は420人となり、かつての3分の1以下にまで減少しています。加えて、高齢化率は約45%となり、何を行うにも人手が足りず、一つの集落では解決できない多くの課題を抱えています。

3. 課題解決に向けての取り組み

① このような集落が抱える課題を解決するため、宇佐市では2008年度(平成20年度)から、集落よりも広域的で非常につながりの強い小学校区で支え合う新たなコミュニティー組織『まちづくり協議会』を構築し、「住民自らが考え行動する住民主体型」および「行政との協働型」によるまちづくりをめざすこととしました。
② 高並地域においても、「集落を超えて自治区や各種団体の連携による地域づくり」「住民・地域・市(行政)が連携し地域で考え実践する仕組みづくり」「地域の課題解決のため、皆で助け支え合う一体的な地域づくり」「地域の特性に応じた個性ある地域づくり」をめざして、2011年11月に【心やすらぐふれあいの里未来が見える高並郷】をスローガンに、新たな地域コミュニティー組織として『高並谷まちづくり協議会』を設立しました。
③ 生まれ育った高並をもう一度見つめ直し、豊かな文化を後世に残し「住みたくなる郷ナンバーワン」といつまでも言われるよう、また「若者達がこの郷の良さを再認識し、Uターンしてもらえるような地域づくりをしていこう」そんな願いがこのスローガンに込められています。
④ 私も設立段階から地域住民ならびに地元議員として「まちづくり」に対する認識を深め、コミュニティー組織の必要性や地域づくりの具体的手法を学ぶための研修、地域住民のまちづくりに関する意見・要望を把握するためのアンケート調査、調査結果を反映したまちづくり計画策定、計画に沿った住民主体の活動を続けてきました。
⑤ 私の印象に残る取り組みは、「高並小唄の復活」・「石橋再調査および環境整備」・「柿とキクイモの味噌漬づくり」です。特に「柿の味噌漬」は評判が良かったことから先日の石橋フェスティバルでは大絶賛を受けました。現在保健所に登録し、商品化に取り組んでいます。協議会の皆さんのご尽力には大変感謝しています。
⑥ 設立から6年余りが経過し、「皆で力を合わせできることを一歩ずつ、少しずつ輪を広げる活動」を続けてきた中で、設立当初の目的である『小さな谷でもそこに住む人々は活気に満ち、心優しく温かい、そして誰もが楽しみや生きがいを持って笑顔で集い合う』そんな郷づくりができたのではないかと感じられるようになってきました。
⑦ 現在宇佐市では、安心院町に4組織・院内町に5組織・旧宇佐市に7組織の地域コミュニティー組織『まちづくり協議会』が設立され、各組織で地域を支える様々な活動が展開されています。

4. おわりに

 地域の活性化は、地域と行政が一体となって取り組むことで、より一層進むと考えられます。今後、地域コミュニティー組織による活動を継続していくためには、「地域一体となった住民主体の取り組み」に併せて「市による財政支援」・「地域おこし協力隊等による人的支援」・「ふるさと応援寄付金の活用」等、地域住民と行政が一体となった協働のまちづくりを推進していくことが重要と考えます。私は、今後も住民・議員として尽力していきたいと思います。