【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第5分科会 人口減少社会をどう生き抜くか!? |
地方自治体の少子化対策について、大分県中津市における人口動態統計など様々なデータをもとに人口減少社会への具体的対応策について考察する。 |
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1. はじめに 平成28年(2016年)12月22日、2016年の人口動態統計の年間推計を政府が発表しました。10月までの速報値を基にした推計で、今年生まれの赤ちゃんの数(出生数)は98万1,000人と、統計を始めた明治32年(1899年)以降初めて100万人を下回る見通しとなりました。死亡数も129万6,000人で過去最多、死亡数から出生数を差し引いた自然減は過去最大の31万5,000人で、人口減が加速しています。 2. 出生数が増えない理由は、
しかし、出生数は800人前後で推移し、ここ4年間は減少傾向にあります。 そこで、合計特殊出生率の対象となる15歳から49歳の女性人口は、平成12年(2000年)の18,321人に対して、平成22年(2010年)は15,739人、平成27年(2015年)には15,447人と減少傾向にあります。 また、子どもをたくさん産んでいる(合計特殊出生率を引き上げている)20歳から39歳の女性人口、合計特殊出生率、出生数の推移をグラフにしてみました。(下図参照) 女性人口は平成18年(2006年)10,126人に対して、平成27年(2015年)には8,700人まで減少しています。 ここ数年、合計特殊出生率は高くなっていますが、出生数が増えないのは、子どもを産むお母さんが減少してきたためと推測できます。 市では、若い女性が減少している大きな要因として、進学などで都市圏(特に福岡県)へ転出していることが原因と判断しています。 |
しかし、原因はそれだけではありません。中津市における初婚年齢は、平成17年(2005年)の男性28.8歳、女性27.8歳に対して、平成27年(2015年)では男性29.6歳、女性28.3歳と晩婚化の傾向が現れています。
市では、晩婚化対策として、「結婚したい」と願う男女に出会いの場を提供する取り組みを平成20年度(2008年度)より毎年開催していますが、不十分と言わざるを得ません。 3. 若い世代の転出超過が進む理由は 平成29年(2017年)1月31日、総務省統計局から、平成28年(2016年)の住民基本台帳人口移動報告が公表され、中津市の転入超過数(転入者と転出者の差)は、-329人の転出超過となっています。中津市における男女別転入超過数のグラフ(下図参照)を作ってみました。
さらに、このグラフの0~4歳の転出超過69人の要因を推測してみました。 隣接する吉富町、上毛町では、子育て支援の充実による人口増加を打ち出しています。吉富町の人口ビジョンにおける推計値では、平成30年(2020年)時点で7,640人(2015国勢調査比+1,083人)、上毛町の人口ビジョンにおける推計値では、平成30年(2020年)時点で8,293人(2015国勢調査比+852人)となっております。 市では、「この0~4歳の転出超過について詳細の分析は行っておらず、この傾向が一過性のものなのか、今後も注視していきたい」としています。 子育て環境の善し悪しが、子どもの人口移動にどう影響しているのか、緻密な分析が必要と考えています。 |
4. 子どもの出生数に大きく影響する女性の転出超過 総務省統計局の平成26年(2014年)から平成28年(2016年)の住民基本台帳人口移動報告のデータを基に、中津市における女性の転入超過数の推移をグラフにしてみました。(下図参照)
最大の課題は、子どもの出生数に大きく影響する女性の転出超過です。0歳から39歳の女性は、年々転出超過の割合が高くなってきており、平成28年(2016年)にはすべての年齢で転出超過となっています。このままでは中津市の人口減少が加速してしまいます。 5. 出生数の将来推計 平成28年(2016年)10月策定の中津市版まち・ひと・しごと創生の人口ビジョンにおける2060年の将来人口70,695人を達成するためには、出生数800人以上を維持しなければなりません。
6. 若い世代の転出超過を食い止めるために 若い世代の女性の転出超過の原因は、女性の働く場が少ない、保育園や放課後児童クラブに入れない等の子育て環境の不備が考えられます。 7. おわりに 政府は1億総活躍プランで平成37年(2025年)までの「希望出生率1.8」実現を掲げ、保育の受け皿確保を進めています。
少子化の流れは、旧郡部で急速に進行し、小学校の統廃合も取り沙汰されています。旧郡部では、待ったなしの人口減少対策が急がれており、若者・子育て世代の移住を最優先で取り組んでいく必要があると考えています。 |