【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第6分科会 「ごめん」と「いーの」で支え合う みんなにやさしい公共交通

 これまで「ただ歩く」だけであった「歩こう会」事業にプラスアルファを求め、市としても取り組んでいる「JR利用促進事業」とコラボレーションして実施してみました……。



「歩こう会」で地域交通の利用促進を


北海道本部/稚内市労働組合連合会・書記長 葛西 哲也

1. 「歩こう会」って?

 「ウォーキング」といえば、近年の健康ブームを代表するものの1つと言っても過言ではないほどのものとなっています。1人でも仲間とでも幅広い年代で自分のペースで取り組むことができる種目であるということが要因であり、この20年でも週1回以上のウォーキング実施率が2倍になったという調査報告もあります。
 稚内市においても、ウォーキングが健康・体力づくりに有効であることから、市民がスポーツに取り組むきっかけとなるようにと、「歩こう会」という名称でウォーキング事業を実施し、これまで市内の様々なコースを設定し開催してきました(資料を確認したところ、1969年には既に実施していたという記録がありました)。
 ゆっくり歩く人でも2時間程度でゴールできるよう、長くても6km程度でコース設定し、現在は年3回開催しています。また、通常の歩こう会とは別に、市役所から宗谷岬まで約32kmを踏破する(途中地点からのスタートもあり)「大歩こう会」というウォーキング事業も年1回実施し、昨年で17回を数えています。

2. 「歩こう会」のマンネリ化?

 現在、年3回行っている歩こう会事業ですが、以前は年6回ほど開催していたこともありました。その頃は、参加者が100人近くになるということもありましたが、現在は多くても20人程度というのが実情です。
 コース設定にあたっては、スタートとゴールが同一場所となるように設定するのはもちろんですが、そのスタート・ゴールとなる地点に多数の参加者(が来るであろう)の車両が駐車することができる駐車場があるということも配慮する必要があることから、市役所や図書館などの限られた公共施設がスタート・ゴール地点となってしまい、コースについても、安全面などを考慮してしまうと限られたものとなってしまいます。
 こういった経緯や、前記した「1人で気軽に」取り組むことができることから、わざわざイベントに参加するまでもないという(あくまで推測ですが)ところが、事業規模や参加者数の減少の要因になっているのではと分析しています。(参加者が5人ほどで、運営スタッフの方が多いということもありました……。)

3. 歩く以外の「プラスアルファ」を

 参加者の減少を食い止め、普段歩いている人も歩いていない人も老若男女が参加したいと思わせるような歩こう会にするにはどうしたらいいのか? ということはこれまでも議論し、なかなか打開策が見出せずにいます(これは現在進行形かな?)が、郊外にもウォーキングに最適(魅力的)なコースがあるので、「大人の遠足」をイメージし、公共交通機関を利用しての歩こう会をこれまでも議論し、2017年3月ごろ、6月に開催する第1回歩こう会の企画として、稚内駅からJRを利用して豊富町の兜沼駅まで乗車、そこから稚内市の勇知駅まで歩き(約5km)、ゴール後、市のマイクロバスでスタート地点である稚内駅まで参加者を送って解散(帰りの稚内方面に向かう列車が夜まで無いため)というコースを設定し、実施寸前まで話が進みましたが、市外=旅行(出張)扱いという行政上の問題をクリアすることはできず、企画を諦めざるを得ませんでした。結局、1回目の歩こう会は、勇知地区でのウォーキングとはなりましたが、スタート・ゴール地点と市街との間を市のマイクロバスで送迎するという内容でした。

4. JR利用促進事業とのコラボレーション

 月日は流れて昨年6月、市の地方創生課からJR宗谷本線の利用促進事業として開催してみてはどうか? という提案を受け、問題となっていた市外での実施についてもクリアできるという確認が取れたことから、一度は諦めた企画を復活させ、「乗って 歩いて!! 食べて!!! 秋満喫 ちょい旅ウォーキング ~ローカル線で行く歩こう会~(以降、「ちょい旅ウォーキング」)」を開催することとなりました。
 内容は、考えていた企画とほぼ同じで、稚内駅に集合し、そこからJRにて兜沼駅まで乗車、兜沼駅から稚内市勇知地区まで歩き(約7km)、到着後に勇知地区のファームレストランで昼食(焼肉)をとり、市のマイクロバスにて稚内駅まで送るというものでした。当日の稚内駅出発前には、JR職員の協力で宗谷本線などに関する説明もありました。
 通常の歩こう会(大歩こう会を含む。)では参加料を無料としていますが、このちょい旅ウォーキングでは、JR運賃・昼食代として1人2,000円(JR及び昼食代として。未就学児は無料)の参加料を設定しました。参加料の設定については、これまでの歩こう会の参加者アンケートから、参加料の負担があっても参加する人はいるということが分かったので、昼食代の負担という形で設定しました。また、参加者には記念品(乗車券を模したキーホルダー)のプレゼントもしています。
 内容の性質上、事前申込制としていましたが、当日は30人を超える参加があり、終了後のアンケートでも、今後も同じような企画を続けてほしいといった声が多く挙げられていました。

5. 今後の展望

 今年度についても、JRを利用しての歩こう会を実施したいと考えています(現在調整中)が、やはり現在のJRのダイヤでは往復でJRを利用するということはほぼ不可能(特急を利用すれば話は別ですが。)なので、片道はマイクロバスを利用することとなってしまいます。マイクロバスのみならず、公共交通を利用するという時点で参加人数の上限設定をしなければなりませんし、通常開催している歩こう会のように、当日参加OKということにもならないので、気軽に参加できる環境には必ずしもなりませんし、今回実施したちょい旅ウォーキングのように、市外での実施のたびにクリアしなければいけない課題があることも事実です。参加者アンケートでも、豊富駅まで乗車し、豊富駅から豊富温泉まで歩き、その後温泉で入浴という希望も多かったり、さらに遠くへという要望もあったりしました。
 事業としては一定の成果があったものと思いますが、今後も、これまでの歩くきっかけづくりという視点から、普段できない体験をしつつ地域を歩いて魅力を再発見 という視点へとチェンジして魅力的な事業を展開し、このような事業が地域交通の利用促進の一助となることができるのであれば、実施する側としても幸いかなと思います。