【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第7分科会 すべての人が共に暮らす社会づくり

人権について


青森県本部/自治研推進委員・弘前市議会議員 加藤とし子

 はじめに「人権」とは、人が生きていくために必要な権利で人種や民族、性別を超えて万人に共通した一人ひとりに備わった権利といわれている。
 日本においては、『日本国憲法』第11条・12条によって、基本的人権が保障されていて、権利の濫用や公共の福祉に反しない限り、十分に尊重されなければならないとされている。また、第13条には個人の尊重、生命・自由及び幸福追求の権利である。
 人権には、女性・子ども・高齢者・障がい者・外国人・HIV感染者・ハンセン病患者・アイヌの人々等の人権ほか、インターネットによる人権侵害などこれまで想像し得なかった人権問題が発生する可能性を秘めており、世界には、「人種差別」、「難民」の増加などの人権問題がある。
 さて、最近メディアを賑わしている「働き方改革」に大きな影響を与えた広告大手・電通の違法残業事件がある。経営トップが出廷して正式な刑事裁判が開かれた初公判は、電通のその場しのぎの対応に終始するずさんな労務管理の実態が明かされた裁判であり、罰金刑の略式命令で事件を終わらせなかったことが多くの方の知るところであった。
 中でも電通では、残業時間の上限を労使で定める「36(サブロク)協定」の上限を超える残業をした社員は、2014年度に全社で毎月1,400人前後にものぼったといわれ、常習的犯行である点でも刑事責任は軽視できないとした。
 こうした犯罪が厳しく処罰されることを社会に知らせることは、労働基準法違反の持つ重大性を企業と社会全体に知らせる効果があると指摘した事件であり、この度の電通違法残業事件は、企業の社会的責任や社会貢献が重要視されている日本社会において重要な課題である人権に関して、企業は無関心ではいられない、人権尊重意識のさらなる高揚が求められるものになったと言えよう。
 今や日本社会は非正規労働者や派遣社員という人を大事にしない長時間労働の働き方がまかり通っていること自体が異常とも言える。先般、弘前市内で働いている男性から「日曜も休みがない・女性は早く帰れるが男性は遅くまで働かされ、疲れてしまったので、別の職場を探した。」と障がいを持っている男性からの話であった。
 私は毎議会、冒頭に基本的人権を守る立場からと称して、一般質問で諸課題を取り上げている。
 2017年第3回定例会(9月議会)の内容を紹介すると、市立病院運営の今後について、子どもの教育環境の整備として小中学校教室へのエアコン設置、職員の仕事環境の整備として市の出張所と併設されている公民館等のエアコン設置について、働き方改革の取り組みとして、ワーク・ライフ・バランスの取り組みや「ふるさとテレワーク推進事業」について、市役所本庁舎の総合管理業務委託の進捗状況について一般質問で取り上げたところである。
 まず、市立病院運営については、2016年10月に国立病院機構弘前病院との統合案が示されこのことにより、患者数が減り収益も上がらず意図的に病院を潰す気なのか、現状はどうなっているのかという問いに、答弁は「再編・統合が計画段階であり、協議中であること、市立病院としては、これまで通り地域医療・救急医療の提供に努めていく」との答弁であった。
 公共施設へのエアコン設置については、子どもたちの教育環境の充実という観点から冷房設備の整備が望ましいが、文部科学省へ財政支援の要件緩和を要望していくとの事でせめて保健室だけでもとの願いを込めて質問している。
 また、職員の仕事環境や公民館等を利用する住民にとってエアコン設置については、市民サービスの充実や職員の業務能率向上を図るため、必要性は感じているし、市民からも声を頂戴しているが、施設の老朽化もあり建替え時に整備を検討するとの答弁だが、いつになるのか不透明であり、公民館等を利用する住民が熱中症という事態にでもなったら大ごとである。
 次に、働き方改革の取り組みとしてのワーク・ライフ・バランスの取り組みについては、どのような成果があるのかとの問いに、市では20年後のめざす姿を「子どもたちの笑顔あふれるまちひろさき」として、子育てをする若い世代が安心して子どもを産み、元気に育てることができる環境づくりの推進のため、「子育て応援企業」として、現在43社を認定するなど様々な施策を実施している。
 これらの認定企業において、育児休業や短時間勤務等の両立支援制度が定着するとともに制度を利用しやすい職場環境が整備されることにより、父親の育児参加が促進され、経営者と従業員が男女共に子育てしやすい環境づくりに取り組む機運が地域全体に醸成されていくと考えており、認定を受けた企業の従業員からは、「子育て応援企業の認定を受けたことにより、社内でも改めて育児休業等の規程について周知され、いざと言う時も休暇や早退の申し出がしやすくなり安心した」などの声をいただき、ワーク・ライフ・バランスの充実に繋がっているものと考えている。
 多くの企業が子育て応援企業として認定を受けることで、子育てしやすい環境づくりがさらに進むものと考えられることから、今後も認定企業の増加を図っていくとの答弁で、ワーク・ライフ・バランスの普及・啓発のためにセミナー等を開催。2017年度は、「イクボス」をテーマにフォーラムを開催し、参加者アンケートの結果から、制度の周知を図ったことで、参加者71人のうち8割を超える方に、必要性を認識していただくことができ、意識啓発は継続して行う必要があることから、2018年度もセミナーを3回実施するほか、大学生等の若い世代が早い段階から働き方や子育てを含めた自分の将来を考える機会を得るために、ライフプランの講師を大学等に派遣するなど、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、引き続き啓発活動に取り組んでいくとの事であった。
 「ディーセント・ワーク(まともな、見苦しくない、きちんとしたという意味)」で家庭と仕事の両立を可能とした、働きがいのある人間らしい仕事を皆が持てる社会となることを指す言葉について紹介した。
 その言葉は、1999年に開かれた第87回国際労働機関(ILO)総会での事務局長の報告で初めて使われた言葉で、ILO活動の主目標として掲げられたとの事。
 その実現には、労働者の育児や介護など家庭の事情が考慮され、長時間労働をなくし、ワーク・ライフ・バランスの実現など様々な取り組みが必要といわれている。
 市も一事業所として、毎週水曜日を「定時退庁日(健康を考える日)」とし、毎月19日を「ワーク・ライフ・バランスデー(育児の日)」として実施し、定時退庁に努める取り組みを行っているとの答弁で、水曜日になると庁舎内に「定時退庁日」のアナウンスが流れていたが……意識づけの一つとしては必要な事かと思っている。
 次に「ふるさとテレワーク推進事業」について取り上げ、市では、都市部から地方への人や仕事の流れが創出され、Uターンを中心とした移住の促進が期待できる内容となっていたことから、「お試しサテライトオフィス事業」や「お試し勤務」を実施することで、地方の魅力を直接感じていただき、進出候補地としての可能性を検討していただくことで、「サテライトオフィス誘致戦略」を策定し、当市も2017年11月に全国10都市の1つに選定され、2018年3月1日から弘前大学内のコラボ弘大にあります「レンタルラボ」2室にサテライトオフィスを開設し、本格的に事業を開始したとの事。
 次に、本庁舎の総合管理業務委託の進捗状況について、警備や清掃の予算について、以前質問し、入札をする度に価格が下がっていくことに、これでは、ますます働く方々の賃金にも影響するのではないかと取り上げた経過もあり、再度、2017年3月議会の予算質疑では、本庁舎完成後の総合管理について、効率化やコスト低減を図る総合管理を検討しているとの答弁であった。
 3月に実施された「弘前市役所本庁舎総合管理に向けたサウンディング調査」の結果が7月に公表されたが、どんな取り組みで、成果をどう考えているのかの問いに、現在、本庁舎の維持管理は、警備、清掃業務や設備等の法定検査、保守・点検などの44業務を個別に毎年委託契約し、実施しているが、業務内容が細分化され、委託業者間の連携ができないことやノウハウの蓄積ができないことなどが課題となっていたので、このため、2017年9月の市庁舎増改築事業の完成にあたり、維持管理水準の向上や事務の効率化、維持管理コストの低減等を目的に、これまで個別に契約していた各種業務を集約し、一体的かつ中長期的視点に立った維持管理体制を可能とする、本庁舎総合管理の導入検討に至ったもので、導入にあたっては、これまで単年度契約で対応してきた各種業務においては、複数年契約することで安定した雇用の確保及びノウハウの蓄積が可能となるなど事業者にもメリットがあるものと考えサウンディング調査を実施。
 サウンディング調査には、市内事業者2者、県外事業者3者に参加いただき、業務実施可能な範囲や実施形態等について、有意義なご意見やご提案をいただき、2018年4月からの実施に向け、委託内容の精査など具体的な検討を進めているとの事であったが、総合管理業務の委託事業者を選定する方法と地元業者への配慮についての問いに、公募型プロポーザルを予定し、選定された事業者と、プロポーザルにおいて提案を受けた内容をもとに、具体的な管理方法や詳細な仕様を協議により決定する、デザインビルド型を検討しており、今後のスケジュールについては、プロポーザルの募集要項ができ次第、公募を開始し、2017年12月中旬以降に事業者を選定、2018年4月からの業務開始となるよう検討しているとの答弁であった。
 今回のテーマにおいては、主に働き方改革について取り上げ、地球温暖化が加速していく状況下、子どもたちの教育環境整備や施設利用者の環境整備の観点からエアコン設置の必要性を「環境権」等の視点から取り上げた次第である。
 このように一般質問等で取り上げることによって、意識啓発向上や次年度の予算付けの材料となることからも、様々な視点から取り上げることの重要性を感じている。
 「人権」は、難しいものではなく、誰でも、心で理解し、感じることのできるものである。しかし、現実には保護者から虐待されて命を落とす子どもや、パートナーからの暴力によって心身に深い傷を負う女性がいる。(逆の場合もあり)社会の情報化、高齢化、少子化が進展する中で、人権といわれる権利は重要であり、『生存権』『自由権』『社会権』『選挙権』『労働権』『争議権』『日照権』『プライバシー権』『環境権』等など……。これらはすべて人権と言われ、社会で生きていくためという事を改めて心に深く刻み、今後も諸課題に視点を充てて取り組む心づもりである。