【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第7分科会 すべての人が共に暮らす社会づくり

 熊本地震で庁舎が被災し建て替えを計画中の自治体に対し、障害者や高齢者などすべての人が安全にそして快適に利用できる庁舎を建設していただけるようバリアフリーに関する申し入れを実施しました。自治体庁舎は住民の暮らしを支え防災拠点機能を担うものです。本レポートでは、建て替えが行われるこの機会に、庁舎管理担当職員と直接お会いしバリアフリーの必要性を改めて要望しましたので、その要請行動について報告します。



「庁舎建て替えの際のバリアフリー要望」要請行動
―― 2016年熊本地震の被災自治体に対して ――

熊本県本部/障害労働者連絡会

1. はじめに

 自治労熊本県本部は、2010年に障害労働者連絡会(以下「障労連」という。)を結成し、障害者が働きやすい職場環境づくり等を目的として様々な取り組みを進めています。障労連ではその取り組みの一環として、関係当事者のご理解とご協力のもと公共施設に対するバリアフリーチェックを毎年12月に実施しています。
 さらに昨年度は、熊本地震で庁舎を被災し建て替えを計画されている自治体に対し、改正バリアフリー法及び関連施策に準拠した庁舎建設を行っていただくよう申し入れを実施しました。


2. バリアフリーチェック行動の概要

 障労連活動の大きな柱であるバリアフリーチェックを実施するにあたり、その対象施設の選定においては毎回苦慮していますが、障害をもって働く仲間や住民の方たちが安全にそして快適に施設を利用することができるよう継続した活動を取り組んでいく必要があります。
 障労連は、これまでに6回(北区役所・南阿蘇村西小学校・南区役所・和水町役場・宇城市役所・美里町役場)のバリアフリーチェックを実施しました。(別紙①
 バリアフリーチェックの目的は、施設を利用されるすべての住民の方たちの視点にたち、障害のある方や高齢者の方が安心して利活用できるための環境を整備することにあり、併せてそこで働く障害労働者が働きやすい職場環境をつくることにあります。
 バリアフリーチェックの実施後は、この結果をもとに改善要望書(別紙②)を提出し、わずかではありますが施設内の改善が行われてきています。小さな成果ですが、障害当事者にとっては大きな改善につながっています。


3. 「庁舎建て替えの際のバリアフリー要望」要請行動

(1) 要請行動の取り組みと発案
 熊本地震で庁舎が被災し建て替えを計画されている自治体に対し、改正バリアフリー法及び関連施策に準拠した庁舎建設を行っていただくよう申し入れを実施しました。(別紙③
 この要請行動は峯潔県本部執行委員長の発案に基づくもので、例年のバリアフリーチェックが既設の建物を対象としていることに対し、これは、これから庁舎を新築される自治体に対する要請行動でした。今後これだけ多くの数の自治体が一度に建て替えを計画される機会はないだろうと考え、障害者や高齢者などすべての人が安全にそして快適に利用することのできる庁舎を建設していただけるよう要望事項を具体的に挙げ行動していくことに障労連幹事会も満場一致で賛同しました。

(2) 要請行動の実施
 当日は、障労連から石本前会長、古塘事務局長、井坂会長、県本部から峯委員長、野田調査部長にも参加いただき、各自治体の庁舎管理担当職員にご対応いただきました。
 要請行動の冒頭、峯委員長は「障労連という組織が自治労のなかにあることがまだ知られていない。この機会に知っていただくことも含め組合は日頃賃金労働条件だけをやっているのではなく、バリアフリーをもっと広げていこうとか、障害をもちながらも定年まで働き続けられる職場環境をつくっていこうとか、こういう活動もやっていることを知っていただくことで活動の輪も広がっていくと思う。そして、障害のある方も関心をもっていただければと思う。」とあいさつされました。
 訪問場所はプレハブの仮設庁舎や市役所別館等で、当時ほとんどの自治体で基本設計が終わられた段階で、これから具体的な執務室・部屋の配置、広さを庁舎建設推進室等で検討中、完成は2021年頃を予定されていました。

実施日 2017年10月11日 八代市
            水俣市
            人吉市
       10月25日 宇土市
       11月29日 益城町
            玉東町(老朽化による建て替えを検討)

 また、これから検討委員会を作り基本設計に入られる自治体に対しては「できれば設計検討委員会のメンバーのなかに当事者の方を入れ、仕事をするうえで難しい面への対応の要望があったときは意見をよく聞いていただき予算面の問題があり無理なことはいえないができることから可能な範囲で合理的配慮及び改善を。」ということも併せてお願いしました。
 たとえば障害者駐車場はあっても、駐車場から庁舎玄関までの動線に屋根の設置がなければ、傘をさすことのできない車椅子利用者は濡れてしまうこと、フロアーの材質についても見た目が良くても雨の日にすべる材質では危険なので注意が必要ということもお願いしました。

(3) 要請行動に対する各自治体の反応
 庁舎管理担当職員からは「改正バリアフリー法についてはしっかり対応させていただき、具体例で挙げていただいていることについても推進室へしっかりと伝えます。」ということ、また「これまで庁舎が古かったためなかなか改修が進まなかったが、今回は新庁舎建設なので具体例に記載していただいた内容に沿うよう対応します。」とバリアフリーに関する前向きな回答をいただきました。


4. まとめ

 障労連は今後も公共施設のバリアフリーチェックを継続実施し、住民の方たちが利用しやすい庁舎にすることはもちろん重要ですが、併せて職員も働きやすい庁舎にしていかなければならないと考えています。
 庁舎建て替えに関する国からの補助金が原則的にないことも自治体の庁舎改修・建て替えが困難な要因のひとつになっていると思いますが、最近の報道では熊本市も市役所本庁舎が現行の建築基準法に基づく耐震基準を満たしていないため、熊本地震に相当する震度6強の地震が起きると傾く恐れがあるとの調査結果が明らかになりました。今後、改修・建て替えということになればこのたびの要請行動の経験を生かし基本設計の段階から積極的に発言していきたいと考えています。

バリアフリーチェックに対する協力のお願いについて(自治労美里町職員組合執行委員長様 宛)
バリアフリーチェック実施による庁舎等の改善要望について(美里町長 上田泰弘様 宛)
障がい者等に配慮した庁舎建て替えのお願い(市長・町長様 宛)