【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第9分科会 子どもと地域社会~子どもの居場所をつくるのは誰?~

 グローバル化や情報化の進展、少子高齢化など、変化が激しく予測が困難な未来に向かって、子どもたちの「生きる力」を育むには、学校だけでなく、保護者や地域住民の協力が不可欠です。
 小牧市では、文部科学省が推進するコミュニティ・スクールを2018年度から全小中学校で一斉導入し、子ども達のために"小牧らしいコミュニティ・スクール"の理想の姿を明確にし、「地域とともにある学校」へと転換していきます。
 本レポートでは、学校と地域が一体となって子どもたちの豊かな成長や学びを支援する風土づくりを進めていくことの必要性と推進方法を提言します。



コミュニティ・スクールの推進
―― 10年後をめざした「地域とともにある学校づくり」――

愛知県本部/小牧市職員組合

1. コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは

(1) 目 的
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、子どもたちのために学校と地域が目標やビジョンを共有し、地域全体で子どもたちの豊かな成長を支援していくことを目的とする国の制度です。

(2) 基本的な考え方
① 時代の変化
 グローバル化や情報通信技術の進展により企業活動の国際化が進んでいます。
 一方で核家族化、地域社会の希薄化、携帯電話の普及などにより、人と人との関わり方、コミュニケーションのとり方が変化してきています。
 こうした中、国際的視野を持ち、社会で必要な知識や技能を有し、他者とコミュニケーションをとりながら協働して課題解決できる人材の育成が求められています。
② 教育内容の変化
 学習指導要領が改訂されます。(2020年度:小学校 2021年度:中学校)
 これまでの基礎的な知識・技能の習得に加え、思考力・判断力・表現力等の育成、学びに向かう力・人間性のかん養といった新しい時代に必要となる資質・能力の育成が求められています。
③ 学校に求められるもの
 道徳の教科化、英語教育、ICT教育といった新たな取り組みにより、教員に求められる能力・担うべき役割はますます増えていきます。
 学校教育の全体的なレベルが上がっていく一方で、学習に"つまずく"児童生徒が増えていくことも予想されるため、より一層の学習支援が必要です。
 また、いじめや不登校の対応、特別支援教育の充実、外国人児童生徒の支援、アレルギー対応など、よりきめ細やかな対応が求められています。
『コミュニティ・スクール導入効果のイメージ』

2. コミュニティ・スクールの推進状況

(1) 全国及び愛知県の状況
 文部科学省は、2017年4月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部を改正し、全ての公立学校がコミュニティ・スクールをめざし、学校運営協議会を設置することを努力義務化しました。
① 全国の状況
 2017年4月1日現在、小・中・義務教育学校3,398校(11.7%)において、コミュニティ・スクールが導入されています。
② 愛知県の状況
 2017年4月1日現在、38市の内3市(一宮市、北名古屋市、江南市)において導入され、79校(小学校53校・中学校26校)でコミュニティ・スクールが導入されています。
 全国平均、約11.7%に対して、愛知県は、約5.7%と導入率が低い状況となっています。

(2) 先進地の事例
 コミュニティ・スクールを導入した学校では、保護者や地域の方々と話し合い、学校が抱える課題を共有し、地域の意見を踏まえて「あいさつ運動」や「自然体験活動」など、それぞれの課題や特色に応じた活動に取り組んでいます。また、授業のサポートや学校環境の整備、夏休みや放課後の子どもの居場所づくりなど、学校支援ボランティアの活動が活性化している事例もあります。
■活動の事例
協働活動 学習活動 体験活動
・学区防災訓練
・学校周辺環境整備
・登下校の見守り
・地域行事への参加・協力
・地域人材の発掘 など
・放課後等の学習支援
・放課後の居場所づくり
・スポーツ活動 など
・職業体験活動
・自然体験活動
・農業体験活動
・社会奉仕活動
・地域貢献活動 など

3. コミュニティ・スクールの基本的な機能

 コミュニティ・スクールは、学校と保護者、地域住民等がともに知恵を出し合い、学校運営を考え、協働しながら子どもたちの豊かな成長を支えていくための仕組みです。

(1) 学校運営協議会における協議《熟議》
 保護者や地域住民等を委員とする学校運営協議会において、子どもたちの成長や教育に関わる課題を話し合い、校長が策定する学校運営の基本方針を承認します。

■学校運営協議会の制度上の権限
・ 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する。
・ 学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる。
・ 教職員の任用に関して、教育委員会に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる。

(2) 学校と地域の協働活動《協働》
 学校運営の基本方針を話し合う中で、子どもの成長・育成に関する課題や目標を共有し、学校と地域が連携・協力して創意工夫を生かした協働活動を実施し、「特色ある学校づくり」を進めていきます。

(3) 「熟議」と「協働」の基本原則

4. 小牧市モデルのコミュニティ・スクール

(1) めざす姿(イメージ)
 小牧市のコミュニティ・スクールは、地域住民の理解と協力を基に現在、設立を進めている小学校区単位の新しいコミュニティ組織(地域協議会)と連携・協力して「地域とともにある学校づくり」をめざしていきます。

(2) 地域協議会(イメージ)
 地域協議会は、地域と市が協働して「支え合い・助け合いの地域づくり」を進めていこうとするものです。
 区(自治会)をはじめとする地域の各種団体や地域で活躍している各種委員が地域協議会に参加し、情報を共有し、小学校区での地域連携を強化します。
 現在、6校区で設立されています。


(3) 小学校と中学校の基本姿勢(イメージ)
 地域協議会(小学校区単位)と小学校・中学校の関わり方や学校と地域の双方向の協力を考慮して、小学校は「学校支援」、中学校は「地域貢献」を基本姿勢とします。

 

5. コミュニティ・スクールの推進方法

 コミュニティ・スクールを導入するためには、学校毎に保護者をはじめとする地域住民等により構成される学校運営協議会を設置する必要があります。設置された学校運営協議会では「めざす子どもの姿」や「めざす学校の姿」などを話し合い、目標やビジョンを共有します。その上で、広く地域住民にその考えや目標を周知して、学習活動や体験活動などの協働事業の実践に繋げていきます。
 将来的には、地域協議会と連携体制を構築して「地域コミュニティの醸成」とともに「学校の支援活動」や「地域の助け合い活動」が全市的に活性化していくことをめざしていきますが、その推進については、長期的な展望を持って段階的・継続的に取り組んでいくことになります。

(1) 教育委員会の支援
 教育委員会は、コミュニティ・スクールを推進していくために各学校を支援していきます。
■支援内容
・教職員の研修(熟議の進め方を学ぶ)
・先進地視察の実施(具体的な協働事業の事例を学ぶ)
・市内小中学校の取り組み事例の共有化(好事例の拡充)
・コーディネーターの派遣(熟議の推進)
・財政支援(特色ある学校づくり事業の実施)

(2) 短期的な目標(取り組み)
① コミュニティ・スクール導入後は、学校運営協議会において、コミュニティ・スクールの趣旨や目的について理解を深めていきます。
② 学校と地域住民で構成される学校運営協議会が"子どもたちのために"を第一義に「めざす子どもの姿」や「めざす学校の姿」を話し合い、共有していきます。
③ その上で、保護者をはじめ地域住民等に対して広く学校教育の情報を発信し、地域全体の理解と協力を求め、学校教育支援に対する地域の機運醸成を図っていきます。
④ そういった中で、地域協議会の設立状況や活動状況を見ながら連携方法を模索していきます。

(3) 長期的な目標(取り組み)
① 地域協議会が設立された地域においては、その活動状況を見ながらコミュニティ・スクールの考え方を伝え、理解を深め、機運を醸成して徐々に学校教育に関する協働活動の企画・実施を進めていきます。
② 学校運営協議会等は、必要に応じて先進地視察を行うなど、具体的な教育活動の事例を学び、活動を検討していきます。
③ 地域住民への情報発信についてもシンプルで分りやすくするため、地域協議会と連携した情報発信の仕組みを検討し、構築していきます。

『コミュニティ・スクールの長期的な推進イメージ』

 

(4) 留意点
 学校は、長期的な展望を持つとともに、保護者をはじめとする地域住民の気持ちや負担を十分に理解し、考慮しながら推進していく必要があります。
① 学校運営協議会において、コミュニティ・スクールへの理解を深めるためには、制度を導入した理由(学校に対する地域の理解と協力の必要性)を明確に説明する必要があります。
② 問題を抱える子どもの事例や具体的な学校の困りごとなど、一般的に分りやすい事案を例示して話し合うことが有効です。
③ 学校運営協議会で話し合うテーマは、具体的なものにすることを心がける必要があります。

■教育課題の例
・不登校、いじめの対応         ・生徒指導の強化    ・特別支援教育の充実
・外国人児童生徒の学習・学校生活支援  ・道徳、英語、ICT教育の推進
・コミュニケーション能力の育成     ・体験教育(職業人体験、自然体験、福祉体験など)の充実

■具体的な話し合いのテーマ(例)

・子ども達がどういった大人に育ってほしいか   ・いじめを撲滅するには
・下校時の安全をどう確保するか         ・携帯電話の取扱いについて
・教育に地域の力をどう生かすか         ・地域に貢献できることは何か