【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第9分科会 子どもと地域社会~子どもの居場所をつくるのは誰?~

 全国的に見て、給食調理の現場は民間委託が進められ、事業は縮小、新規職員の採用もないという現状です。そんななか、中学校給食の実施を決めた八幡市では、労働組合が、未来の八幡市を担う子ども達を守れるのは自分達であるという自覚と責任をもって、自校方式の小学校で中学校分を作り、中学校へ配送する親子方式で行うことを提言し、何度も協議したうえ、実施されることになりました。その経緯を紹介します。



八幡市中学校給食が始まるにあたっての取り組み


京都府本部/八幡市職員労働組合・現業評議会 小島 幹人

1. はじめに

 私たちは、八幡市役所教育部学校教育課の職員で給食調理をしており、職種は調理員で現業職員として位置付けされています。
 全国的に見て、給食調理の現場は民間委託が推し進められ、事業が縮小され、新規職員の採用もないという現状にあります。
 そんな私たちが所属している学校教育課の給食調理現場の、過去、現在、そして今後どういったことに取り組んでいくかを、自治研レポートとしてまとめてみました。

2. 過去からの取り組み

 給食調理員が、市職労、現業評議会の活動により、正規職員として15年ぶりに、八幡市で再び採用されました。
 私たちが採用される以前から現在までの取り組んでいる給食を、紹介していきたいと思います。
① 4年生を対象にしたパーティー給食
 八幡市では毎年、4年生を対象にパーティー給食をしています。
 からあげやウインナーなどを大皿に盛り付けて、子ども達が自分でお皿にとって食べます。
 一つのテーブルに6人程度のグループに分かれて、楽しんで食べています。
② 5年生を対象とした鍋給食
 毎年、5年生を対象に鍋給食をしており、班ごとに分かれて一つの鍋を分け合いながら食べます。
 みんなで一つのものを食べる楽しさを学ぶ為や、自分一人が好きなものを取って食べるのではなく、同じ班の友だちのことを考え、譲りあう気持ちや、思いあう気持ちを養うために鍋給食を行っています。
③ 6年生の卒業祝い献立の松花堂弁当
 松花堂弁当は、八幡市発祥で江戸時代のはじめ、松花堂昭乗という社僧が石清水八幡宮に住んでおり、その僧侶が農家の人が種を入れるのに使っていた、十字の仕切りのある四角い箱に、絵の具やタバコを入れてとても大事にしていたと伝えられており、昭和のはじめに大阪の料亭「吉兆」の主人がその話を聞き、この十字型に仕切られた箱に料理を盛り付けて、うまれたものです。
 八幡市では、各小学校の6年生へ、卒業のお祝いとして松花堂弁当の由来と献立が書かれたお品書きと共に、松花堂弁当を提供しています。
 松花堂弁当は一品一品が手作りで、私たち調理員は1年生から5年生への給食を作りながら、6年生の松花堂弁当の具材を作り、1つ1つ弁当箱に盛り付けています。
 完成した松花堂弁当は、1人ひとり子ども達へ、給食調理員から「卒業おめでとう。中学校へ行っても頑張ってね」と手渡しています。
 普段食べている給食と違うことで、子ども達もとてもうれしそうに松花堂弁当を食べています。それを見た他の学年の子ども達が羨ましがっている姿が、毎年のこの季節の光景になっています。
 食べ終わった子ども達からは、「今まで給食を作ってくれてありがとう 美味しかったです」と言葉もかけてもらえます。

3. 現在の取り組み

① 中学校給食の開始
 2014年9月に、市職労第1回執行委員会にて、教育委員会から中学校給食の導入について、現在までの検討状況、議会答弁内容をふまえ、今後、市職労と協議したいと報告がありました。
 市職労としては、現在に至るまでの間、教育委員会が調理現場に中学校給食についての説明をしていなかったことを踏まえ、今後、市職労、現評、調理現場で協議していくことを徹底していくように約束しました。
 市職労、現評、正規調理員と教育委員会で、10月・11月に2回協議を行い、内容は現在に至るまでの経緯、予算・運営方式、民間委託案でした。
 この2回の協議のなかで、中学校給食実施においては、自校方式(学校内に調理場があり、そこで作って配食する)の小学校で中学校分を作り、中学校へ配送する親子方式で行うことを決定しました。
 それとは別の日に、市職労・現評と調理員とで、10月から翌年2月までの5回、直営実施に向けての要求内容について協議を行いました。
 さまざまな現場の意見があり、なかなか方向性が出ない状態が続きましたが、5回の協議を行った結果、人員を確保し、直営で実施するよう要求しました。
 現場との協議で決定した要求内容を元に、2015年1月に行われた執行委員会の総務部・教育部交渉で、正規調理員8人増員、監督職確立を内容とした要求書を、市職労から教育委員会へ提出しましたが、2月に行われた執行委員会の教育部交渉のなかで、少子化による児童減少から正規職員の採用について非常に困難であるということ、ただし監督職の設置については必要と考えていると、教育委員会から回答がありました。
 市職労・現評から調理現場全体へ、この間の経過報告・回答内容について説明を行い、現場の方から正規調理員に限定せずに、増員数を最優先にして再度交渉を行って欲しいとの要望が出た為、市職労・現評としては現場の意見を尊重し、直営堅持を最優先として、増員について正規調理員とする条件の見直し、妥結としての内容を含んだ要求内容の変更と現場の意見を教育委員会へ伝えました。
 後日、市職労・現評へ、人員を嘱託職員で増員した場合の再考案が、教育委員会から提出され、現場と相談をしたところ、再度人員数に対して声が上がった為に、嘱託調理員・臨時調理員の組み合わせで人員を増やす様に、再度、市職労から教育委員会へ要求し、市職労・現評へ教育委員会から最終案が出されました。
 これを受け、3月に市職労・現評と調理員で協議を行い、改めてそれぞれがそれぞれの想いを伝えあい、共有していくなかで、特にこの先を担っていく若手を中心に「先輩方が守り続けて来てくれたこの現場で、自分達はこれからも直営で子ども達に安全安心な美味しい給食を頑張って作っていきたいです」と、先輩職員に思いを伝えました。
 その為、直営堅持が重要であることを再認識し、教育部との協議において、調理員も最終案で実施していくつもりでいることを伝えました。
 その後、2015年8月、中学校給食を直営親子方式で行い、小中学校合わせて、正規調理員12人を定数とした合意書を、市職労・現評と教育長で交わしました。
 その後、更に協議を重ね、2016年9月に、学校給食調理員の配置に関する協定書を市職労・現評と教育長で交わしました。

4. これからの取り組み、今後の課題

 中学校4校への給食の配送を、八幡市内小学校全8校の中から、耐震工事や立地条件などの条件から、中央小学校・くすのき小学校・有都小学校の3校、2017年度から行うことが決まりました。
 中学校給食開始に向け、該当校3校が改修工事を行うこととなりました。
 工事中は、2校の調理員が中央小学校に集まり、実際に給食を作っていくなか、教育委員会・栄養教諭・所属している調理員全員で、衛生面や作業面の試行錯誤を行うなか、2017年度5月から中学校給食が始まることが決まり、スタートに向けて準備を進めていきました。
 2017年5月から中学校給食が開始し、最初は小中学校間の連携不足で、残食も多かったのですが、日を追う毎に連携が取れるようになり、中学生も給食に馴染んで来てよく食べる様になりました。今では「給食がおいしくてもっと食べたい」との声や、その日その日の献立を見て、給食が楽しみになっている生徒も居るくらい浸透してきました。
 そこまでの成果を出せたのも、市職労・現評が、現場と相談しながら粘り強く市当局と交渉を重ね、直営で中学校給食実施を勝ち取ったことや、「中学校給食が開始しても給食の質を落とさず、子ども達に喜んで貰える様な給食を作っていこう」をテーマに頑張ってきた、現場の調理員1人ひとりの努力の賜物だと思います。
 中学校給食を行っている小学校では、作業量が他の小学校と比べて多く、調理員1人1人の負担が大きいので、現場の負担を少しでも改善し、働きやすい現場を作れる様に市職労と連携しながら市当局と話し合いを進めていきます。
 今後の課題としては、現在、調理職場に対して監督職の設置が必要であると教育部から回答があったことから、引き続き早期の実現に向けて教育部に要求していき、市職労と連携して継続的に話し合いを進めて行きます。
 また、今後数年間の間に、ほとんどの先輩調理員が退職を迎えるので、先輩職員が作ってきた八幡市の給食を引き継ぎ、そして今後よりよい給食の発展のためにも、先輩調理員や他市町村の先輩方との意見交換や勉強会を行っていきたいと考えています。

5. さいごに

 これまで、先輩職員の方々が直営で守って来たこの学校調理職場を、これからも守り続け、発展させていくために、改めて組合の必要性を強く感じました。
 そして、未来の八幡市を担う子ども達を守れるのは自分達であるとの自覚と責任のもと、仲間とともに団結して権利を勝ち取り、よりよい給食のために頑張っていきます。