【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第10分科会 みんなで支えあおう! 地域包括ケアとコミュニティー |
改正介護保険法により、地域包括ケアシステムの構築が全ての市町村に課せられています。市町村毎の社会資源の状況が大きく異なること等を背景に、その取り組みは自治体裁量に委ねられています。本稿は、鶴居村での地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みのうち地域サロンの開発に係る事項をまとめ、社会資源が限られた小規模自治体での取り組み例を示すことで、他市町村での取り組みの一助となることを目的としています。 |
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1. 鶴居村の概要と地域包括ケアシステムの内容 (1) 鶴居村の概要
村内には複数の地区があり、人口、世帯数はもとより、高齢化の度合いもそれぞれに違います。図1は2014年の地区別人口及び高齢化率を示したものです。 鶴居市街地区では1,019人中高齢者が261人、高齢化率25.61%です。高齢化率は高くはありませんが、村内で最も高齢者数が多い地区です。 次いで人口の多い下幌呂地区は、分譲地への現役世代の転入者が多く、高齢化率は高くありません(24.88%)。しかし、世代の別を問わず、分譲地販売開始以前からの住民と転入者との関わりが薄く、村内では比較的住民交流が希薄な地区になっています。 高齢化率が30%を超えている地区は村内7か所、新幌呂、上幌呂、支幌呂、中幌呂市街、中幌呂、中雪裡、下雪裡の各地区です。中幌呂市街地区以外の地区は人口が100人未満の小規模地区で、地区に学校や公営住宅等もないため、若年層の自然増には限界があり、今後も高い高齢化率のまま推移する可能性が高いと言えます。 |
(2) 地域包括ケアシステム
医療、介護サービス、生活支援サービスの三つの要素について、地域(介護保険の保険者所管地域)の実情に応じて整備し、高齢者が地域で継続して生活することができる地域づくりを進めることとなります。 医療については地域の病院、診療所、調剤薬局による医療の提供が確保されていることに加え、入院治療の長期化を避け、在宅での療養が可能となるよう、介護サービス等福祉的支援の充実が必要とされます。 介護サービスについては要介護認定を受けている方が対象となり、在宅系サービスとしてのヘルパー(訪問介護)、ショートステイ(短期入所)、デイサービス(通所介護)等、施設・居住系サービスとしては、老健施設・特養等の入所施設、サービス付き高齢者住宅(居住系サービスではないが運用上類似の機能を持つ)等、地域のニーズに合わせたサービス提供量の確保が必要であり、高齢者支援体制における基盤となる要素です。 生活支援サービスについては、介護予防としての意味合いが強く、在宅での生活の中で予め提供を受けることで、重度の要介護状態になることを防ぐことが大きな目的です。ヘルパー、デイサービス等のサービス提供の他、老人クラブ、自治会、ボランティア等が、高齢者の集う場所としての地域サロンの運営、見守り・安否確認、外出・買い物・調理・掃除等の生活支援を行い、地域住民同士の支え合いによって、高齢者の在宅生活を支援します。 粗々と記しましたが、おおよそこれらの要素が、高齢者の状態に応じて適切に提供される地域体制を整備することが、地方公共団体に求められています。 ② 地域包括ケアシステムに関係する鶴居村の状況 上述の各要素についての鶴居村の状況を次に示します。 医療については、鶴居村立診療所が無床診療所として設置されており、内科診療を中心に、軽度の外科的処置は対応が可能です。つるい養生邑病院は、精神科診療が中心ではありますが、内科診療も対応可能です。また、病床数は、精神科病床106床、その内認知症治療病棟が46床あり、その他内科病棟も26床あります。その他の診療科については、村内での対応はできず近隣市町村の医療機関に受診することとなるのですが、現在は、村外医療機関への受診支援施策は取られておらず、目下の課題の一つとなっています。 介護サービスについては、内在宅サービスについては、村直営のヘルパー事業所が1ヵ所、2018年度から指定管理に移行したデイサービスセンターが1ヵ所あります。入所サービスについては、つるい養生邑病院が実施する老健施設が1ヵ所(100床)あり、そこでは空床型ショートステイ(4床)も実施しています。活用している村外のサービスとしては、特養、サ高住、訪問看護、デイサービス(機能訓練対応)等が挙げられます。 2016年度時点で、生活支援サービスについて、村内で確保されているサービスは、地域包括支援センターや村直営のヘルパー事業所による独自の生活支援以外にはありませんでした。高齢者の生活支援を行うボランティアは、個人的な取り組みを行っている少数の方を除いて村内にはおらず、またその把握も、制度的な支援もほぼ行われてはいませんでした。村は、2016年度から、生活支援体制整備事業として、村の社会福祉協議会に事業委託を行っています。内容は、生活支援コーディネーターの配置、生活支援サービスの開発、地縁組織等の多様な主体による協力体制の構築、多様な関係主体参加の協議体の設置及び運営等です。地域資源が乏しい状況下から、協力者の発掘・確保や資源開発等を行うことが事業内容だと言えます。 本村は人口規模から社会資源、人的資源にいずれも乏しく、村内の体制整備のみによっては支援体制の構築を図ることは困難で、近隣市町村の資源の活用を前提とした体制構築が現実的なものとならざるを得ません。その中で、生活支援サービスについては、その性質上、村内での資源を新たに開発する以外にはなく、これまでボランティア等の支援者確保が十分にできてこなかったこともあり、その体制の整備については村の大きな課題となりました。 2. 地区毎の高齢者サロン設置の取り組み 2016年度から開始した生活支援体制整備事業ですが、2016年度には、事業内容の整理ができておらず、地域資源開発のノウハウもない中で、配置した生活支援コーディネーターの退職も相俟って、十分な事業実施ができなかったのが実情でした。実際的に事業が展開されたのは2017年度からです。 3. まとめ 鶴居村での地域包括ケアシステム構築に係る一部として、各地域の高齢者サロンの取り組みについて紹介をしましたが、これは先進的事例として取り上げたのではなく、過去の遅れを取り戻すための試行錯誤の一例を示すことで、他市町村での取り組みの参考になればと考えたところです。 |