【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第10分科会 みんなで支えあおう! 地域包括ケアとコミュニティー |
北海道には6つの三次医療圏が設置され、三次医療圏にある公立病院(地方センター病院)を中心に地域医療連携推進法人を設置することが、公立病院の生き残り戦略の一つとして重要なポイントと判断できる。その議論を中心的に担うのが北海道庁の役割であるが、そこを担い切れていない。このため、医師確保や医療従事者を確保するためにも、衛生医療評議会として積極的に議論するための提言とする。 |
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1. はじめに
「地域医療は崩壊する」。その危機的状況は、既に地方から始まっています。 |
2. 地域医療構想の実現に向けて (1) 北海道の地域医療と連携に向けた動き (2) 地域医療構想と「地域医療連携推進法人制度」の創設 (3) 地域医療連携推進法人とは
② 2018年4月1日現在、以下の6法人が地域医療連携推進法人として認定されています(厚労省HPから)。 【山形県】地域医療連携推進法人 日本海ヘルスケアネット(認定年月日:2018年4月1日) 【福島県】地域医療連携推進法人 医療戦略研究所(認定年月日:2018年4月1日) 【愛知県】地域医療連携推進法人 尾三会(認定年月日:2017年4月2日) 【兵庫県】地域医療連携推進法人 はりま姫路総合医療センター整備推進機構(認定年月日:2017年4月3日) 【広島県】地域医療連携推進法人 備北メディカルネットワーク(認定年月日:2017年4月2日) 【鹿児島県】地域医療連携推進法人 アンマ(認定年月日:2017年4月2日) ア 共同物品購入など価格交渉力の向上。 イ 人事を一元化することによる、医師、看護師、コ・メディカルの人事異動の円滑化。 ウ 医師、看護師、コ・メディカルだけではなく、事務職員のキャリアアップの促進。 エ 庶務業務を統一させることによる経費の節減。それによるコスト削減、診療科(病床)の再編成。 オ 医療機器等の共同利用。 カ 公立病院の経営形態変更に依らない連携。 |
3. 地域医療連携推進法人に対する評価
この間、多くの公立病院では経営形態の変更を余儀なくされ、特に地方独立行政法人(独法)に対する取り組みでは、衛生医療評議会として、単に経営形態変更反対の取り組みを進めるだけでなく、独法化後の組織作りや雇用確保・地域医療確保に対する具体的な取り組みを進めてきました。 |
4. 地域医療連携推進法人への参加は
地域医療連携推進法人に参加できる法人(社員)は、医療機関等を開設する医療法人など複数の非営利法人(医療法人、公益法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、独立行政法人、自治体など)のほか、地域包括ケア推進に資する介護事業等を行う非営利法人も可能とされているが、医療系法人が二つ以上あることが最低条件とされています。 |
5. 地域医療連携推進法人導入のメリット
北海道には6つの三次医療圏が設置され、三次医療圏ごとに公立病院を中心とした地域医療連携推進法人を設置することが、公立病院の生き残り戦略の一つとして重要なポイントとして、以下のように判断できます。 |
6. 地域医療連携推進法人導入に向けた今後の議論に向けて
実現に向けては、解決しなければならない課題も多くあります。 地域をみると、公立病院及び公的病院がその医療機能を担っているため、地域医療連携推進法人の議論は進めやすいと考えます。 公的病院については、それぞれの経営方針もあることから、公立病院が三次医療圏を担っている道南・道北・釧根における議論を先行して進めることが可能と判断します。 ② 議論の進み具合によっては、二次医療圏ごとに地域医療連携推進法人の設立を先行させることは可能です。 ③ 北海道には3つの医育大学と自治医科大学から医師派遣されている病院が多く、医師の配置はこのバランスの上に成り立っています。このため、各医育大学間の連携や理解を得られることが最も大きな課題となりますが、これまでの大学からの医師派遣では限られた病院への異動となっていましたが、三次医療圏における病院をまとめることで対象となる病院数が多くなり、昇任も含めて異動の選択肢がより広がることになります。 ④ 三次医療圏ごとに法人を設置し、その中心的な役割を担う地方センター病院の理解を得るには困難が予想されるものの、北海道が中心となって取り組むことで理解が得られやすくなります。 ⑤ 看護師の一括採用ができたとしてもその配置先での賃金や労働条件の違い、都市部への配属希望など、公平性を担保する上で克服すべき課題もあります。しかし、看護師のワークライフバランスに合わせて、病院の勤務先を選択することも可能となります。 ⑥ 最も重要なのは、北海道が自らの役割を再認識することです。道内には89の公立病院がありますが公立病院が無い自治体も多くあります。今後、二次医療圏における地域医療構想調整会議は保健所が議論を進めますが、地域によっては、民間病院しかない地域や公立病院が中心となる地域もあります。どの二次医療圏においても、道が主導権を持って議論を進めることができるよう、自治体や病院からの信頼を得ること、本気になって議論することが肝要となります。また、公立病院のあり方を自治体での政争の具としない議論が重要であり、ここでも道が主導権を持って進めることが大切です。 |
7. まとめ
北海道の地域医療を確保し、地域住民が安心して住むことができるよう、公立病院・公的病院が地域に必要な医療(インフラ)を担っていくためには、早急に「地域医療連携推進法人」の設立も視野に入れて地域医療構想の具体化に向けた議論を進める必要があります。 |