【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第10分科会 みんなで支えあおう! 地域包括ケアとコミュニティー |
超高齢化の秋田県における地域包括ケアシステムの構築について、急増する高齢者、そしてその認知症患者にスポットを当て研究。この地域包括ケアシステムの構築は、今後の地域政策の根幹となるものであると結論づけた。 |
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1. はじめに 「秋田県は(4月)21日、4月1日時点の県内総人口が前月から4,674人減り、99万9,636人になったと発表した。県人口が100万人以下の都道府県は10県目で、東北では初めて。」この報道を見たとき、真っ先に思ったことが、秋田県における少子高齢化問題である。 2. 秋田県における超高齢化の現実 厚生労働省が2016年12月5日に発表した、2015年の人口動態統計(確定数)によると、秋田県は、出生率や婚姻率、死亡率、自然増減と、死因別死亡率の悪性新生物(がん)、脳血管疾患、自殺率で、全国最悪となった。
調査結果から、特に特記すべきは、前年度比で総人口が14,398人減少しているのに対し、65歳以上の人口が3,759人増加しており、そのうち75歳以上においては2,054人増加していることである。更に、65歳以上の人口は総人口の35.5%を占め、75歳以上が占める割合は19.2%となっていることである。 3. 秋田県における地域包括ケアシステム 地域包括ケアという概念がはじめて提起されだしたのは1970年代のようだが、1997年12月に「介護保険法」という法律が制定され、2000年4月に施行。同時に、介護保険制度が開始された。そして、2003年6月に公表された老健局に設置された高齢者介護研究会が「2015年の高齢者介護」と題した報告書で、介護保険と医療及び福祉等の諸制度が連携し、さらに専門職間の多職種協働と地域住民参加を包括的に実現するために、政策理念として「地域包括ケアシステムの推進」を提起した。
秋田県内における地域包括ケアシステム構築の取り組みは、運営主体を自治体又は社会福祉法人等とする地域包括ケアセンターが全市町村に設置されており、その構築に取り組んでいる。 4. 認知症患者数の増加 厚生労働省は2015年1月に日本における認知症患者数の推移予測の推計値を発表した。そこで公表された数値は驚くべきもので、2015年の時点で302万人であり、その15年後には420万人に増加するという。 |
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2015年の日本の人口は1億2,709.5万人で、2030年の推計値は1億1,162万人に減少する見通しで、人口自体は15年で1,547万人が減少するにもかかわらず、認知症の患者数は120万人近く増加する推計。2015年の時点で約302万人の認知症及び400万人の軽度認知障害(MCI)患者の合計した人数は約700万人となり、これは65歳人口の25%となる。つまり、すでに65歳以上の4人に1人は認知症か、もしくはその前段階になっているということである。
秋田県では、地域において認知症の進行予防から地域生活の維持まで必要な医療を提供できる機能体制の構築を図るため、認知症の鑑別診断、専門医療の相談等の対応、地域保健医療・介護関係者への研修等を行う『認知症疾患医療センター』を指定している。 また、認知症疾患医療センターでは、本人や家族からの問い合わせ、かかりつけの医師や地域包括支援センターなどを通じた相談にも対応している。 検査を受けられた方の診断結果や治療方針は、本人や家族の了承を得て、かかりつけの医師に示し、認知症と診断されたとしても、適切な治療を受けながら住み慣れた地域で生活し続けることができる。また、介護サービスの利用を希望する方については、地域包括支援センターに必要な情報を伝え、早期にサービスを利用できるようにするための協力もしている。 ② 認知症サポート医 『認知症サポート医』とは、認知症の方を地域で支援する体制の中心的な存在として、地域の医療機関と地域包括支援センター等の連携を推進するとともに、認知症医療に関する助言を行う医師である。 国が指定する研修機関で、認知症医療や関連施策に関する専門的な研修を修了した医師が、認知症サポート医として登録される。 |
はじめに、介護保険で受けられるサービスは、大きく分けると下記の3つである。
また、上記の他に、地域密着型サービス(市区町村が提供するサービスで、その所在市区町村の住民のみが利用可能な「認知症高齢者グループホーム」など)がある。
5. 横手市における認知症サポート「NPO法人県南介護サポート かがやきネット」
特に、認知症の高齢者がいる家庭を題材にした寸劇「かがやき家のある日曜日の風景」では、日常生活の中で直面する認知症高齢者がいる家庭における介護の苦悩や問題点など、コミカルに演じながらその解決方法などをわかりやすく解説しており、その寸劇の講演依頼は後を絶たない。 また、介護に関する研修会、講師等の派遣を行い、介護知識の普及に努めるとともに、相談相手、話し相手、病院診療の付添などの要望にヘルパーの紹介等で応えるなど、介護サポートもしている。 |
6. まとめ 地域包括ケアの構築はそれぞれの地域性に立脚しながら、医療福祉介護および住宅政策を包含し、さらに自助と互助をふくめたインフォーマル部門に目配りをしながら、なによりも介護保険法でいう要介護高齢者の尊厳の保持という理念を実現するために、地域生活の継続のために切れ目のない支援が行われるような体制の構築をめざすことである。病院や施設はそのなかで専門サービス機能によりながら重要なバックアップ機能を果たすことが期待されていることはいうまでもない。 |