【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第10分科会 みんなで支えあおう! 地域包括ケアとコミュニティー |
2016年10月14日~15日、宮城自治研、チャレンジサポートに「大阪市大正区バス停を使ったウォーキングマップの作成」提案。自治労通信2017年1・2月号「県本部お国自慢」に、大阪府本部から、10年たっても元気やでプロジェクトの紹介。月刊自治研2017年9月号「労組が取り組む"地域包括ケアシステム"」として、「さぁ歩こう! バスも渡船も一緒に元気やで!」と団塊ジュニアのトリセツの取り組みを記載。 |
|
1. 10年たっても元気やでプロジェクト
(1) 「大阪発! 地域医療と介護を考える集い」 講師に櫃本真聿さん(四国医療産業研究所所長)を招いて、「地域における医療と介護の連携~現状の課題と今後の展望」の提起、「ほぼ在宅、ときどき医療、ときどき介護」「かかりつけネットワークの構築」など、目から鱗が落ちる的な講演であった。 講演終了後、「パネルディスカッション:地域で支える原点を今こそ考える」と「地域支援活動報告:100歳体操」を開催した。 参加者、約120人。アンケートの声から、男性。「人材確保の取り組み:妻がケアマネージャーですが、現場の職員の過酷な労働条件、収入が少なく、また今後上がる見込みがない。働くことが困難な現状を解決する取り組みが必要だと思います。収入増やロボットでの補助等。」 「今後の展望:今回のような勉強会や、フィールドワーク等で、医療・介護で働く方々との交流を持ち、一般の私たちでも、かかりつけネットワークに参加して、地域で役に立てればと思います。」 「労組への期待:このような勉強会に参加でき、大変良い機会になりました。今日感じたことを友人や知人、家族に伝えたいと思います。また、このような貴重な取り組みを、より多くの人々に伝えられるように、機関紙作りのお役に立てるように尽力いたします。」 「今後の展望:公共サービス従事者と、地域住民・インフォーマルなNPO・ボランティア等とのネットワークが築けるようなヒントがあれば参加したいです。仕事としている者と、自分達のこととして取り組んでいる人との思いを共有してみたいです。また、自治労後援というのはめずらしいと思うので、仕事としてモチベーションアップや労働環境改善につながることの両輪ができるのかなと思います。」 「労組への期待:人材確保の取り組みにも書いたのですが、公共サービスと民間サービスとは、役割も異なり、必要とされていることはお金とか利益が見えにくいものなので、仕事を継続して、より専門性が高まるような仕事の保障、労働環境が維持できるようささえてもらえることがありがたいです。公立は公立だから役割があると思います。 仕事についての目的を他職種で共有していくことが、モチベーションが上がると思うので、今回のセミナーはとてもありがたいです。対人援助の仕事については、仕事の安定、経済的な安心がなければ、地域住民の力も引き出しにくい、よりそえないかなと思います。」
(2) フィールドワークとして (3) 「さぁ歩こう! バスも渡船も一緒に一緒に元気やで!」 場所は、大阪市大正区。特徴は、大阪駅から南に位置し、24区の中で人口が一番少ない、沖縄からの移住者が多い、公共交通機関として路線バスが唯一の手段になっている。 大正区において、労組として地域包括ケアシステムの取り組みを3年間にわたって行った。地域での健康づくりのイベント「ミニミニヘルスジャンボリー」、地域の実態調査を把握するため「アンケート調査の実施・分析・公表」などを行った。 その取り組みをさらに活かすため、大正区をモデルにした医療機関、介護施設、スーパーなど社会資源の場所を確認し、バス停を起点としたオリジナルマップを作成する。 大正区内フィールドワークを実施し、バス路線が地域の社会資源をつなぐ役割を果たし、区民の欠かせない交通手段となっていることや、大正区は区の境を川で仕切られているため、隣の区へ移動するために渡船が日常の足として活躍している。路線バス、渡船ともに、平時では体験することも少ないので、実際にバス・渡船に乗って体験した。 大阪経済大学の森教授から「高齢者への外出支援の必要性~交通困難者・買い物困難者を中心に~」の講演から、地域包括ケアシステムの主要なテーマに団塊世代があるが、そこを支える仕組みも検討することも注目する点だと示唆された。 大正区のフィールドワークには43人が参加。 プロジェクトで作成した「元気やでマップ」を、後日、持参したところ、大阪シティバス鶴町営業所では「地域交流の時に利用したい」、渡船事務所では「渡船の待合所に置きたい」と意見交換をさせていただき、ともに、大阪市大正区の中で「誇り」を持っていることを感じ、路線バスも渡船も地域の宝なんだと改めて知ることができた。 事務局としても、「誇り」という部分を「自治再生のキーワード」に、これからも取り組めればと考えている。 大阪市大正区では、今日も、シティバスが走り、渡船が元気よく「交通手段」として活躍している。 2. 団塊ジュニアのトリセツ
(1) 「~もし親が認知症になったら~」 参加者からのアンケートでは、「親と離れて生活しているが、介護が必要になった時にどうすればいいか不安に思う時がある」「親族との関りが全くない方の対応が難しいなと思う」「実際に自分の家族を介護し、認知症を治そうや遅らせようとばかり考えてしまった」などがあった。 パネルディスカッションでは、ごみ屋敷、施設の状況、退院支援などについて、パネラーの相互の意見交流が十分ではなかった点があった。親が認知症になったらという漠然とした課題であったが、家族関係など、新たな面を浮き彫りにさせる課題でもあり、このセミナーの「親の認知症」、「ダブルケア」、「遠距離介護」の連続セミナーの中で、参加者(組合員)の結集や自助の役割など多くの「共感」を図っていくことができればと考えている。 (2) 「ダブルケア~子育てと介護。ちょこっと癒し~」 10日「ダブルケア」参加者38人。衛生医療評議会の福井事務局長から衛生医療評議会を取り巻く情勢について報告があった。 講演は、大阪経済大学の森教授から「ダブルケアに対する支援の重要性」ダブルケアの背景、ダブルケアラーの現状、ダブルケアの定義、ダブルケアの現状、支援の現状、新しい地域包括支援体制、地域共生社会の実現と詳細に渡って提案があり、「ダブルケアに対する支援ということで伝えたいことは、取り立てて得意な人だけがダブルケアに陥っているのではなく、みんなが何かの形で陥る可能性が高い」とまとめた。 参加者からのアンケートでは、「思った以上に自分にも関係があることだとわかった。ただ、未来に対して希望が持ちにくい社会だと思った」「私は子育てしていないけど、両方の両親のことや、飼っている犬のこと、十分ダブルケアだと思った」「これからの団塊ジュニアの行く末は? 的な話を聞いてみたい」「妻の両親は宮崎県に住んでいて、妻の妹は大阪在住。年を取ってから住み慣れない土地への移住も難しいと思う。すぐに行くことができないので、将来的には大阪に移住してもらうしかないと思うが、実際、皆さんはどのようにされているのか?」などがあった。 参加者のライフスタイルにも関わるが、子育てや介護などについて、ごく身近なテーマだっただけに、ゆっくりと考える機会になったのではないかとアンケートから感じたところである。 2回のセミナーから貴重な意見や体験などをいただいていることを踏まえ、連続セミナーの最終回「遠距離介護」では、体験者からの報告や具体的なケースの検討など素材を提供しつつ、相互討論的な場を設定したセミナーにしていき、「課題と向き合う」という新たな挑戦を仕掛けることとし、地域コミュニティ的な相互に力を合わせる手法などを垣間見ることができればと考えている。 (3) 「離れて暮らす家族の介護と仕事の両立~そこそこの幸せ~」
発散した意見は、黒のマーカーで書き、収束(ゴール)に向う意見は赤のマーカーで書き、合意した意見は青のマーカーで書き、最終的な活用としてチームの動きがわかる。 ホワイトボードミーティングの参加が初めての方が多かったが、合計6チームの活発な議論を経て、ファシリテーターの皆さんの誘導で、誰が何に困っているのか、困っていることの解決策を挙げ、解決策の中から取り組めることを探すという「高い着地点」が見いだせたことは、参加者を通じて、次のステージにつなげることができた「ホワイトボードミーティング」だったと感じている。 3. 緩やかな絆がプロジェクト活動を支える
2016年11月20日に開催した「大阪発! 地域医療と介護を考える集い」では、櫃本先生の講演、医療・介護のパネリストからの報告、森先生からの問題提起など、多種多様な現状やこれからのことについて提起があった。 特に、少し前の提言になるが、「単独自治体でフルセットの行政からの脱却」というキーワードが、第31次地方制度調査会答申(2016年3月16日)の中で触れられていたことを知り、衝撃的な発想だなと感心している。 10年たっても元気やでプロジェクトでは、これまでのゆるやかな絆を糧に、磯野家のテーマのなかで議論ができていない「サザエさんは嫁として磯野家を離れた。カツオくんは長男として実家に戻った(結婚はまだみたい)。ワカメちゃんは、キャリアウーマンとして独立している」という設定から見て取れる「女と男の役割分担」みたいなところを、次のテーマにしてはどうだろうかと考えている。 磯野家を事例として「家族・女男がともに担う」というゆるやかな絆の「自助」、さらに大きなシステム変更の意図を知るため「地域をつなぐ大阪圏」の「共助」のイメージを浮かび上がらせることによって、地域包括ケアシステムの構築の持つ「公助」などにつなげて、本格的な議論展開をしていく「しつらえ」を考えてみることができればと思っている。 |