1. はじめに
雲南市立病院労組では、広範な面積と高い高齢化率である雲南地域において、健康で文化的な生活を営むための基本となる医療環境の整備と医療提供体制の確立を図るために必要な施策等について行政、医療機関、住民などが一緒に考えることを目的とした「雲南地域医療を考える会」に2006年から参画し、シンポジウムの開催や署名活動、病院間の意見交換や交流など、雲南地域でのこれからの医療の在り方について考えてきました。
現在、団塊の世代が75歳を迎え、医療・介護需要の最大化が見込まれる2025年までに、急性期から回復期、慢性期まで患者の状態に見合った、住民に必要な医療サービスを安定して受けることのできる環境の確保が求められています。雲南圏域においても自治体が中心となり、住み慣れた地域での医療や介護、生活支援、介護予防を包括的にサポートする体制を整備していくことが必要とされていることから、病院・行政・住民それぞれの立場からの連携を図るべく、2017年も第13回となるシンポジウムを開催しました。
2. 第13回雲南の地域医療を考えるシンポジウム
日 時:2017年6月24日(土)13:00開場 13:30開演
会 場:雲南市木次経済文化会館チェリヴァホール 3階 大会議室
参 加 者:約250人
(1) 基調講演
演 題:「これからの雲南地域の地域医療を考える」
講 師:松田 晋哉 氏 産業医科大学公衆衛生学教室教授
座 長:櫻井 照久 氏 医療法人同仁会理事長
【松田教授による基調講演】 |
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雲南の地域医療について、データに基づく分析結果を基に、医療介護ニーズの将来予測、求められる地域包括ケア体制の確立に向けた考え方などについて講演いただきました。
また、医療介護施設が提供している「安心を保証する機能」を地域に開放していく(展開していく)という発想の必要性や、高齢者を孤立化させない「住まい」政策など、社会的インフラの整備についても提案いただき、これまで以上に多職種間の連携が重要であることを再認識しました。
(2) パネルディスカッション
テーマ:「みんなで考える雲南の地域医療」
◆パネリスト
三上 隆浩 氏 飯南町立飯南病院副院長
遠藤 健史 氏 雲南市立病院内科医長
稲田やよい 氏 奥出雲町地域包括支援センター調整監
小川 浩平 氏 雲南市健康福祉部医療介護連携室長
毛利 直人 氏 島根大学医学部医学科5年生
◆コーディネーター
大場 裕子 氏 自治労中央本部衛生医療評議会副議長・保健師
◆助言者
櫻井 照久 氏 医療法人同仁会理事長
松田 晋哉 氏 産業医科大学公衆衛生学教室教授
【パネルディスカッションの一コマ】 |
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自治体病院の先生をはじめ、自治体での地域包括ケアシステムの構築にたずさわる職員・保健師、そして地元雲南出身の医学生など様々な職種・立場の皆さんから、それぞれの視点からの意見をいただきました。
「歯科」が医療全体を支える基礎医学であり、「予防」そのものであること、ユマニチュード(人間らしい介護)という認知症介護の新技術など、視野の広がる話や、雲南地域における地域包括ケアシステム構築にむけた行政の具体的な取り組み、そして、医療の道をめざしている若者の地域医療への思いなど、これからの雲南地域の医療を考えていく上での様々なヒントを得た有意義なパネルディスカッションとなりました。
3. 現状と課題(地域包括ケア)
高齢化の進展によって、誰もが地域で安心して暮らしていける仕組みづくりが求められています。今後、地域包括ケアをどういう風に実現するかが問題で、住まいの保障や山間地域のコンパクトシティー化をどうしていくのか? できる範囲で利便性と安心を実現できれば、人口減少は止められないが、緩やかにすることに繋がると思います。
地域包括ケアを進めるには、医療機関間の連携も大事ですが、医療と介護の連携、日常生活の支援や地域包括ケアサービス全体との連携も必要になってきます。医療は医療だけでなく、様々な機関との連携が重要であると考えます。
4. まとめ
今回のシンポジウムを通じて、若い医師や看護師が働きたくなる魅力ある職場・地域づくりと、それを地域の若者に伝える教育による人材確保の重要性を再認識しました。また、高齢者への医療と介護が一体的に行き届く地域ケアを提供するには、高齢者を孤立させないコンパクトなまちづくりや地域に残って活躍する人材を確保し続ける教育も重要だということが今回のシンポジウムで浮き彫りとなりました。今後は、医療と介護だけではなくて、住まいや地域交通などのインフラ対策、さらには雲南市の地域の発展そのものがこの地域の医療を支えることだと痛感しました。
地域医療は医療を提供する側だけでの努力では維持出来ません。住民もともに参加し、スクラムを組んでいかなければ、いつでも、どこでも、だれでも良い医療を受けることは出来ないと考えます。
これまでのシンポジウムを通じて、地域医療の現状を住民の皆さんに訴えてきました。11年間継続的にシンポジウムの開催を行ってきた甲斐があり、少しずつではありますが、住民の中に自分たちの身近な問題としての関心が高まり浸透してきていると感じます。また、雲南の地域医療に魅力を感じ、医療職をめざす若者も増えています。この芽を大事にしながら、今後も地域の住民の皆さんとともにこの中山間地域の医療をどうするかを考え、方向性を見出すことができる活動を続けること、そして具体的には、地域住民と行政や医療機関の連携で、雲南地域の医療を守るにはどうすれば良いかを考える場を提供していければと考えます。
●請願署名
2006年9月11日「雲南地域の医療の充実を求める請願署名」
36,227筆(雲南圏域の人口約65,000人)を島根県副知事に提出
●講演会
2006年11月24日「隠岐島前病院における地域医療の取り組み」
講 師:白石吉彦 氏(隠岐島前病院 院長)
参加者:120人
●研修会
2015年7月17日「地域医療構想について」
講 師:杉谷 亮 氏(島根県健康福祉部医療政策課 在宅医療推進スタッフ)
参加者:90人
●雲南の地域医療を考えるシンポジウム
第1回「中山間地域の医師不足と医療の現状と課題について」
日 時:2006年5月20日(土)13:30~
場 所:三刀屋文化体育館アスパル
来場者:約200人
第2回「雲南地域の医療の充実に向けて」
~医療・保健・福祉の連携と圏域内での
機能分担をどう考えるか~
日 時:2007年6月2日(土)13:30~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール
来場者:約350人
第3回「雲南医療圏域における公立雲南総合病院の役割」
~地域住民が求める医療とは何か、
それを提供する医療機関は何をすべきか~
日 時:2008年6月28日(土)14:00~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール
来場者:約350人
第4回「これからの地域医療ネットワークを目指して」
日 時:2009年7月11日(土)13:30~
場 所:雲南市古代鉄歌謡館(大東町)
来場者:約200人
第5回「雲南圏域の中核病院のあり方と連携体制の構築に向けて」
日 時:2010年11月14日(日)14:00~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール
来場者:約200人
第6回「地域医療を担う人材を地域で育てて行くためには!」
日 時:2011年7月16日(土)13:30~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール
来場者:約300人
第7回「看護師にとって魅力ある病院は地域の宝!」
日 時:2012年7月29日(日)14:00~
場 所:三刀屋文化体育館アスパル 中ホール
来場者:約200人
第8回「地域医療ってなに!」
~私が考える地域医療の魅力~
日 時:2013年6月29日(土)14:00~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール3階会議室
来場者:約180人
第9回「それぞれの地域包括ケア」
~今から実践できること~
日 時:2014年5月24日(土)13:30~
場 所:飯南町保健福祉センター
来場者:約200人
第10回 記念講演
日 時:2014年11月16日(日)13:00~
場 所:木次経済文化会館チェリヴァホール
演 題:「学び続けること」
講 師:池上 彰 氏(ジャーナリスト)
記念対談:「少子・高齢化社会における医療と教育のあり方」
・原 仁史 氏 島根県健康福祉部長
・小林 祥泰 氏 島根大学学長
・速水 雄一 氏 雲南市長
・松井 譲 氏 雲南市立病院事業管理者
・池上 彰 氏 ジャーナリスト
来 場 者:約500人
第11回「雲南圏域における地域医療」
~これからの世代が考える私たちにできること~
日 時:2015年11月14日(土)13:30~
場 所:雲南市古代鉄歌謡館(大東町)
来場者:約250人
第12回「これからの世代が考える地域医療」
日 時:2016年6月18日(土)13:30~
場 所:奥出雲町カルチャープラザ仁多
来場者:約200人
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