【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 技術専門学院は、1946年に「道庁立職業補導所」として始まり、高度経済成長期とともに、名称も変更しながら重点分野を技能労働者の養成にシフトし、全道19校体制を整備した。その後ホワイトカラーの職業訓練の充実も進め、1981年には、道内唯一の「札幌女子訓」を設置し20校体制となった。時代の流れと共に統廃合を実施してきた変遷について整理した。



技術専門学院の変遷と取り巻く状況


北海道本部/全北海道庁労働組合連合会・高等技術専門学院評議会

1. はじめに

 技術専門学院は、1946年に「道庁立職業補導所」として始まり、昭和30年代以降の高度経済成長期とともに、名称も「訓練所」、「訓練校」と変更しながら重点分野を技能労働者の養成にシフトし、全道19校体制を整備した。その後ホワイトカラーの職業訓練の充実も進め、1981年には、道内唯一の「札幌女子訓」を設置し20校体制となった。
 時代の流れと共に統廃合を実施してきた変遷について整理した。

2. 訓練校→学院

 1988年には横路知事の命により「技術専門学院」と名称を変更し、1989年には「道立技術専門学院再編整備方針」を策定し、全道に20校配置していた技術専門学院について、「地域生活経済圏の発展方向を基礎に配置する」という新たな配置の考え方を明示し、「拠点校」、「地方校」、「存続が困難な校」の3つに区分された。
 「存続が困難な校」の留萌、遠軽、岩内、名寄、浦河、江差、富良野、美唄の8校は廃止され地域人材開発センター(民営化)となり、その責務を地域に委ねることとなった。



 1991年9月には、この方針に基づく10年間の実施計画として「道立技術専門学院再編整備計画」をとりまとめ、人材ニーズの高度化などへの対応をはかるため、拠点校を中心に校舎施設を整備しながら2年制課程を導入するとともに、存続が困難とした校については統廃合を進めた結果、2000年度末に、11校体制が確立した。
 2000年には法整備により「札幌女子」は廃校となり札幌に統合された。
 2001年2月には、再編整備計画の満了にともない「道立技術専門学院整備基本方針」を新たに策定し、拠点校及び地方校に関する配置体制について継続するとしたが、稚内では、入学者が急減したことから、2006年度をもって施設内訓練を廃止し2007年から旭川の分校として施設外訓練のみを実施する体制に改編され、10校1分校体制となった。

※新・北海道総合計画による6圏域
◎道南    函館
◎道央広域  札幌・室蘭・苫小牧・(滝川)
◎道北    旭川・稚内分校
◎オホーツク 北見・(網走)
◎十勝    帯広
◎釧路・根室 釧路
           ※( )は後に廃校
 

3. 高等技術専門学院の新しい推進体制に関する基本方針(中長期ビジョン)

 2008年3月に策定した「高等技術専門学院の新しい推進体制に関する基本方針」(中長期ビジョン)は、2008年度から概ね10年間における高等技術専門学院の訓練の内容、科目の設定、校舎施設の配置その他必要な事項に関する道の基本的な方針を定めたもの。
 中期構想は、中長期ビジョンの推進管理と実効性の確保を目的とした3年程度のアクションプランとし、第Ⅰ期は「新体制に向けた環境整備」、第Ⅱ期は「全道新体制のスタート」、第Ⅲ期は「次のステップへ」と位置づけられ実施された。

(1) 第Ⅰ期中期構想期間(2008年度~2010年度)
 ものづくり関連分野における「若手技能者の育成」に向け、普通課程・2年制を基本に科目を再編し、1年制訓練の廃止及び民間との役割分担による廃止・転換をはかる。また、求人開拓から就職後のフォローアップまで一貫した就職支援を推進するため、能力開発センターの機能を充実することとした。
① 再編という名の廃校、廃科
 ・道央圏の滝川技専は、2008年度末で廃校とし、オホーツク圏の網走技専は、2009年度末で廃校し、住宅サービス科を北見技専に統合し、建築デザイン科を建築技術科に転換した。
 ・「民間にできることは民間に委ねる」との考え方に基づき、事務・OA系の訓練科目を廃止したほか、電気・電子系の訓練科目の転換を行った。



② 特別職非常勤(職業訓練技術指導員)
 この時、民間活用の名の下に指導員に特別職非常勤職員を導入した。当時、科目転換により生じた欠員も合わせると14人になることが明白だったため、緊急的暫定的措置として8人工を導入したものであったが、当然人も集まらずこれにより見かけ上の欠員数は減ったものの、現場の人手不足は変わらず、職員への多大な負担が掛かることとなった。
③ 能力開発総合センターの充実
 能力開発総合センター整備基本計画により、求人開拓から就職後のフォローアップまでという目的で、訓練業務の総合調整機能を担う「能力開発サービス部門」と施設内訓練業務を専掌する「施設内訓練実施部門」に区分し事業を推進することとなっていたが、国から委託された膨大な機動訓練にセンター職員が忙殺されることとなり、本来業務である「求人開拓から就職後のフォローまで」を訓練実施部門の職員に委ねることとなりセンターは委託訓練専科と化してしまった。

(2) 第Ⅱ期中期構想期間(2011年度~2013年度)
 この期は第Ⅰ期の積み残し分の処理と第Ⅲ期に向けての準備期間となった。
 普通課程2年制に再編するということで、今まで中学卒以上を対象として実施していた短期課程の職業訓練及び民間との役割分担ということで苫小牧技専自動車整備科は2013年度末で廃止された。



(3) 第Ⅲ期中期構想(2014年度~2017年度)
 道央3校訓練体制の再編方針の着実な推進と第2期中期構想の中間点検でC評価と判定した訓練課への対応を行い、新体制の確立をはかる期間とした。
① 道央3校訓練体制の再編方針
 2017年度に新体制をスタートさせるため、新たに札幌、室蘭、苫小牧に設置する科の訓練目標、訓練カリキュラム等について検討するため、それぞれに地域に専門部会を設置し検討が行われた。その結果、方針は変更され定数復元及び科目の細分化となった。

再編方針検討後の訓練科目及び入校数

 これは、訓練定数の変更をともなうもので、指導体制にも連動していることから必然的に「新ルール」の見直しをすることとなった。
② C評価と判定した訓練科への対応
 第Ⅱ期中期構想中間点検において、施設内訓練は、中長期ビジョンの評価指標(応募倍率及び就職率)で3段階評価をしたところ、5技専の9訓練科が最も低いC評価(応募倍率0.9倍未満又は就職率80%未満)と判定され、函館、旭川、帯広、釧路(北見は科目の再編にともない定数削減)の建築技術科、北見、帯広の造形デザイン科、旭川の印刷デザイン科、北見の電気工学科、北見の電子機械科が該当した。
 北見技専は、自動車整備科を除く4訓練科の応募倍率が基準を下回っているということで、職系以外に学院としてのあり方検討を実施することとなった。
③ 「新ルール」検討の影響
 道央3校及びC評価の訓練体制の検討には、定数変更がともなうことから、すでに2016職能計画では昨年通りの訓練体制で行うとなっていたが、「高等技術専門学院の訓練定員の変更等に関する方針(「新ルール」)」の科目の見直し要件に該当するとして、2016年度から北見学院建築技術科並びに室蘭学院溶接科の訓練定員を20人から10人へと削減されてしまった。
 また、札幌の電子工学科とエクステリア技術科は道央3校再編や専各連問題、応募低迷などから2016年度をもって廃科となった。

④ 庶務業務の集約化による大量削減(2014.10提示2015.6実施)
 庶務業務で共通する事務処理等を本庁で一括処理して業務の効率化をはかることで執行体制についても見直しを進めるということで、庶務課業務のうち、一部業務を経済部人材育成課へ集約し、庶務課の職員定数を札幌、障害校を除き、2人体制(庶務課長1、主査1)とした。

 

2015~

削減数

内     訳

2014まで

主 査

一般職

札 幌
函 館
旭 川
北 見
室 蘭
苫小牧
帯 広
釧 路
障害者校

 3
 2
 2
 2
 2
 2
 2
 2
  4※

 ▲3
 ▲2
 ▲2
 ▲2
 ▲1
 ▲2
 ▲1
 ▲1
 ▲2

▲1

+1
+1
+1
+1
+1
+1
▲1

 ▲2
 ▲2
 ▲3
 ▲3
 ▲2
 ▲3
 ▲2
 ▲2
 ▲1

 6
 4
 4
 4
 3
 4
 3
 3
 6

21

▲16

+4

▲22

37

※ ただし障害校は、法定選考職1人を配置し3人体制とする


⑤ 北見学院のあり方検討(2015.8案提示2017.4実施)
 北見学院の入校率は、2011年度から60%台、2014年度から50%台と低迷が続き、少子高齢化が進行する中、今後とも定員を充足する可能性が低いとの結論から、地元との協議を経て入校定員の見直しがなされた。5科のうち、入校率、就職率が比較的安定している自動車整備科は専各連問題から、学び直し枠を導入させられたが、現状の定員を維持。建築技術科は入校者数の低迷が続き、訓練定員20人で入校者数が10人以下の状態が3年続いた場合、翌年度は廃止となるルールが本来適用されるはずであったが、地域事情から特別に入校定員を10人として継続することとなった。残りの、電気工学科、造形デザイン科、電子機械科は15人へと定員を減らされた。それにともない(新)高等技術専門学院の訓練定員の変更等に関する方針に従い職員定数も減らされることとなった。
⑥ (新)高等技術専門学院の訓練定員の変更等に関する方針
 ・学年あたりの入校定員20人、1訓練科の指導員定数を4人を基本とする。
 ・入校定員の変更は、訓練生の入校状況や就職状況、地域要望、社会情勢などを踏まえ人材育成課が総合的に判断して決定することとし、別に定める「高等技術専門学院の訓練定員変更等に関する運用方針」により定める。
 ・運用方針により、入校定員が15人または、10人とする訓練科の場合、指導員定数は3人とする。



⑦ 職業訓練技術指導員制度(特別職非常勤制度)の解消
 特別職非常勤職員等については、職員適正化計画実施期間中における訓練科欠員に対する緊急的な対応策として導入してきたところ。これまで募集を行ってきたが、適性を有した人材の確保が困難なことや配置が欠員分に見合う対応となり得ていないことから、2年間で段階的に解消し定数化するとし、2016年度に札幌学院において金属加工科の特非枠を解消し定数化し、電子工学科は指導員定数の見直しにともない、特非枠を解消した。2017年度においては、函館学院の機械技術科、帯広学院の建築技術科が特非枠を解消し定数化し、函館学院の建築技術科、北見学院の造形デザイン科が指導員定数の見直しにともない、特非枠を解消した。このことにより、2018年度現在、特非枠は札幌学院の精密機械科と旭川学院の色彩デザイン科の2科となったが、多くが定数の減員とあわせた特非枠の解消であり不満の残るところであることから、指導員定数の減員によらない特非枠の解消・定数化について、当局に対し強く要求している。

4. まとめ

 2017年度で完結した中長期ビジョンは、一言で言うと業務削減なしの人員削減だった。結果的に職員は負担だけを背負わされる形となった。
 第Ⅰ期は、高卒2年制科目をめざすという名目で多くの既存の科目をスクラップし、第Ⅱ期は、第Ⅰ期でやり残した科目をスクラップし、ビルドと思っていた科目転換職種に職員が必要となったときには、今までの欠員分も併せて非正規職員の大量導入を企み、長らく正規職員採用の道が閉ざされることとなった。この期に道央3校再編についても見直しされる予定であったが、地元企業との調整が進まず頓挫してしまった。第Ⅲ期では、職員適正化計画も相まって庶務業務集約という職場における事務職員の大量削減、センター業務見直しという人員削減、北見学院のあり方検討による職員定数の削減などが行われ、職員の負担が著しく増加することとなった。
 頓挫していた道央3校再編の体制については中長期ビジョン最終年に苫小牧、室蘭を10人もしくは15人と訓練定員を下げて2年制へ移行してスタートさせた。しかし少子化、人手不足による就職率上昇から全ての科が最初から定員割れとなり、技専評側が懸念していた状況になった。定員割れについては、2年制移行にこだわり過ぎたのも一因なのではないかと考えられる。今後においては、利用する側のことを考え1年制の復活なども全道的に検討する必要があると考える。
 欠員問題に目を向けると、ここ何年もの間、欠員が慢性化していて、実際に適正とされた職員数で業務を行えていない職場もあり、職員のマンパワーで補っているのが現状である。2018年度、4月と6月に合わせて、10人の新規採用者が配置になったが、それでも、未だ13人もの欠員を抱えて業務をこなしている状況である(【各学院毎の欠員状況】参照)。2019年度も、退職者の動向を踏まえて最低でも、2桁の補充をしていかなければ、職場にとってはかなり厳しい状況が予想される。また、それと同時に大量に採用された新規職員の研修や指導をどのように行っていくのか、人を育てる人をどう育てるかが大きな課題となる。

【各学院毎の欠員状況】2018.6.1現在

学 院 名

訓練科等

欠員数

札  幌

金属加工
建築設備

1
1

函  館

自動車整備
システム制御技術
機械技術

1
1
1

旭  川

 

建築技術
システム制御技術
印刷デザイン

1
1
1

北  見

自動車整備

1

帯  広

造形デザイン

1

釧  路

電気工学
自動車整備

1
1

障害者校

総合実務

1

 

合  計

13

  <職系別の欠員状況>
①機械系:1(函館)
②金属系:1(札幌)
③電子系:2(函館、旭川)
④印刷系:1(旭川)
⑤建築系:1(旭川)
⑥自動車系:3(函館、北見、釧路)
⑦木工系:1(帯広)
⑧電力系:1(釧路)
⑨設備施工系:1(札幌)
⑩職系なし:1(砂川・総合実務科)
合計7学院10職系10科13人


○ 技専を取り巻く状況と今後のあり方
 人口減少社会を迎えている我が国の中で、北海道は、全国より少子高齢化が進展しており、生産年齢人口は年々減少している。また、人口流失が地方から札幌、北海道から本州へと起きており、その影響で特に地方では、生産年齢人口が激減し、人手不足に拍車を掛けている(
「北海道 人口ピラミッドの推移」参照)。人手不足は企業経営に大きな影を落としており、労働力不足で仕事の受注を断念したり、場合によっては廃業せざるを得ない状況が出てきている。今後も人手不足は続くことが予想され、後継人材の確保や育成、技能伝承の崩壊を危ぶむ声も後を絶たない。技術専門学院としても、北海道経済のために、ものづくり分野へ人材をいかに誘導するかを考えなければならない。また、新規高校卒就職者の3年以内の離職率が約4割を超えている現状を鑑み、この人達への再就職支援も検討していかなければならない。
 技術専門学院は、各地域のものづくり職系の職業訓練を行っており、施設内では若年者を対象に2年制訓練を、施設外では離職者向けの短期の訓練と在職者向けにスキルアップをはかるセミナーを実施している。しかし、2017年度で終了した中長期ビジョンは、10年という歳月を掛けて、全科2年制ありきで整備を推し進めたため、地域によってはニーズとかけ離れていった感は否めない。今後は地域の特徴にあった科目や期間を設定し、「誰でも、どこでも、いつでも」同じ質の訓練を受けられる環境を整備していく必要がある。
 また今後も道民のために安定したサービスを提供していくためには、早期の欠員補充が必要不可欠である。上記でも触れたが、常に2桁の欠員が常態化した状況は異常事態である。雇用のセーフティネットに携わるものとして、地域住民の職業能力開発機会を確保するためにも、指導する立場の職員が不足していては満足な訓練を実施することが出来ない。ものづくり分野は危険な作業をともなうため、このような欠員状態での訓練は職員の負担が非常に大きくなる。訓練の安全確保や、職員のワークライフバランスの観点からも欠員解消は絶対である。
 さらに新規に採用された職員の教育も非常に重要となる。他の部局でも同様な状況かと思われるが、採用を抑制してきたことで、世代間バランスが崩れ、また欠員を多く抱えている状況では、新人教育に割ける人や時間が足りない。効率良く、効果的に新人教育を行うためにはどうするべきか工夫していかなければならない。
 技術専門学院としては、今後、人手不足を補うために女性や新規高卒者以外の幅広い若年者等の訓練も検討していかなければならない。そのためにも組織体制を整えて人材育成機能をフルに発揮し、ものづくり分野における労働力確保に寄与していく責務がある。
 技専評は、これからも職場の声を当局にしっかり伝え、道庁のスリム化という施策が地方切り捨てとならないように今後も取り組んでいく。

(出典)「日本の地域別将来推計人口」(2013年3月推計、国立社会保障・人口問題研究所)