(2) 受講者アンケートの結果
① 受講者の感想
各研修の最後に実施している受講者アンケートの結果では、「研修が有意義であった」や「研修時間が適当であった」、「研修資料が分りやすい」などの意見が回答の大半を占めており、これら研修が参加者にとって理解しやすいものであったと感じられていることが窺える。
② 受講者からの要望・提言
継続的な研修実施を望む声やさらなる研修内容の充実など要望や提言が受講者より出され、この研修が自己研鑽の場として受け入れられ、前向きな姿勢には業務に対するモチベーション向上が見られる。
(3) 計画(研修)に係る組合の取り組み
① 資料作成の補助
研修に使用する資料には、実際に業務を行っている職員でなければ分からない内容も多く含まれるため、その作成の際には組合側も協力した。例えば、システム操作研修においては、当局側に該当システムの操作経験が無いことから、当局からの依頼により資料作成を一から担当した。
② 研修の継続・改善の要求
この研修は、一度受講したからそれで終わりということではなく、継続していくことが重要である。また、まだ行われていない内容の研修や行った研修の検証・改善も必要である。これらのことは、研修の形骸化を防ぎ、職員の質の向上を図るうえでも重要と考えられ、給水を受ける市民へのサービス水準の維持・向上を図る観点から当局交渉の場で要求している。
4. 今後の展望
(1) 水道職場における実施効果
回を重ねるにつれ、研修の存在を知り、日々の業務を調整して研修に参加する職員が増えている。しかし、一部では参加する職員が固定化してしまった例もあり、このことは当局側に改善を要請している。
研修で得た技術や知識を現場で活用している場面が見られ、習得までのスピードも含め徐々に効果が出ていると考えられる。そして、この研修がなぜ始まったのかを一人ひとり考えるきっかけとなり、技術継承の問題を水道局全体の認識として捉えることができるようになったことは最大の効果だったと言える。
(2) PDCAサイクルマネジメントの機能強化
Plan(研修の立案)⇒Do(研修の実施)⇒Check(アンケート等による検証)⇒Action(研修内容の見直し)のサイクルマネジメントにより機能強化を行う。Plan、Doについては2、3で記載したが、Check、Actionについては以下のとおりとした。
① Check(アンケート等による検証)
・研修アンケートのとりまとめによる意見集約と課題の抽出
・市長部局等から水道局に異動してきた職員のヒアリング
・受講者が求めている知識など研修内容のニーズの把握
② Action(研修内容の見直し)
2018年度の技術継承に係る研修への反映
・熟練職員による巡回研修の実施
・基礎編、上級編などの習熟度に応じた研修の実施
・同じ研修の複数回開催(1回だと業務都合により参加できない場合があったため)
・技術継承ハンドブック(技術継承研修資料、現業職員引き継ぎ資料、関係条例等の抜粋)の作成
・高崎市水道局と連携した研修実施の検討
(3) 持続可能な水道事業をめざして
団塊の世代の大量退職により、経験豊富で熟練した技術を持つ職員が減少し、現業職員の退職者不補充方針によりその技術の継承が困難になっている現状がある。このような状況下においても、「安全」「安心」な水道を安定して継続的に供給するためには、日常の維持管理等が最も重要であり、これまで培われてきた技術を継承する重要性は更に高まると考えられる。その中で水道事業に携わる職員は専門的知識や技術の習得を図り、自身の資質向上を図ることこそが、持続可能な 水道事業を支える組織づくりに不可欠であり、その資質向上を図る枠組みとして技術継承計画は有効であると考えられる。このことは、給水を受ける市民へのサービス水準の維持・向上につながるものである。
一方でこの技術継承計画は、技能労務職員数が年々減少する中で、一般職員がこれまで技能労務職員が担ってきた業務を学ぶことで、技術継承の受け皿になるという考え方が強い。このことは、これまでの技能労務職の職域の確保や現業・非現業の職務分担の住み分けが失われる危険があり、水道事業開始から今日まで現場の第一線で活躍してきた技能労務職員の必要性が低下するような事態は避けなければならない。さらに一般職員は技能労務職員に比べ異動までの期間が5年程度と短く、スペシャリストに成り得るか疑問が残る。これからも持続可能な水道事業を構築するためには、技術継承計画に基づく研修を継続して取り組むだけではなく、真にスペシャリストと成り得る技能労務職の早期採用再開も併せて追求していく必要がある。 |