【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 昨今学校現場において食育の重要性が高まっている中、学校給食の位置付けは、1日3食の食事の中の1食ではなく、子ども達が食べ物について考える教育の一環になっています。私たち給食調理員は、どのような関わりを持ち業務として確立していけばよいか、教育委員会や学校栄養教諭とともに協議し実践してきました。亀山市での取り組みをレポートとして提言します。



地域に根ざした学校給食の取り組み
―― 亀山の食材を後世に伝える ――

三重県本部/自治労亀山市職員組合・現業評議会・学校給食部会

1. はじめに

 亀山市は、三重県の北部に位置し五万人に満たない自治体です。市内各地で、農作物の栽培が盛んに行われている農村の地域になります。米・お茶・野菜・しいたけなどの栽培のほか、牛・豚などを飼育・販売を手掛ける畜産農家もあります。
 学校給食において、地産地消の推進はもちろんのこと、食育を進めるにあたり生きた教材が豊富にあります。私たちは、この郷土の食材を後世に伝えるために、これまで実践している学校給食の具体的な取り組みを報告します。

2. 「亀山コロッケ」が転機に

 「亀山コロッケ」は17年程前に考え出されたメニューで、現在は人気メニューのひとつです。名前の由来は、津市の「津ぎょうざ」が給食の思い出として残っているように、地域の地名を付けたメニューを作ったらどうか、とその当時の栄養士の発案で付けられました。亀山市では、たくさんの種類の農産物が地元産で手に入ります。また、豚の畜産農家もあるので、コロッケの具材に地元の畜産農家の豚ひき肉と亀山茶の茶葉を入れることにしました。調理作業は、普通のコロッケを作るのと同様でじゃがいもを蒸してつぶして、炒めた豚ひき肉・たまねぎと茶葉を混ぜ込みます。具を成形し、衣をつけて油で揚げます。その作業はとても手間がかかります。大量の蒸したじゃがいもをつぶす作業は重労働で、主に正規調理員が担当するなど工夫して、調理を行いました。その「亀山コロッケ」はたちまち人気メニューになりました。
 ところが、市町村合併により、給食メニューの統一がうまくいかず、また、正規調理員の欠員補充が非常勤調理員となり、手間のかかるメニューが敬遠されていきました。非常勤調理員を採用しても、「思っていたより重労働でえらい」とすぐに辞めてしまう人もでてきました。そのため手間のかかるメニューや調理過程が複雑なメニューは避け、確実に衛生的に提供できるメニュー中心になってしまったのです。「亀山コロッケ」もフェードアウトしていきました。そのような中、2009年に桜井よしゆき現亀山市長が、亀山市長選挙に立候補する際のマニフェストのひとつとして「亀山コロッケの復活」を掲げたのです。私たちはとてもびっくりしました。
 桜井市長は当選すると、現場の声を直接聞きたいと話し合いの場をもうけてくれました。市長の方から「ぜひ亀山コロッケを給食のメニューに復活させてください。」と言われ、私たちは、退職者の欠員には正規調理員の補充をしてもらうよう、お願いしました。また、私たちの給食に対する思いや、正規調理員の必要性、各施設の様子など、さまざまな意見を話しました。そして現在、退職者の欠員は、正規調理員を採用してもらっていますし、各給食調理場の不具合は早急に対応してもらっています。
 私たちは再び「亀山コロッケ」を作るにあたって、教育委員会・栄養教諭とどのように作業を進めるか、話し合いをしました。作業面では、実際に学校の給食室で調理作業をシミュレーションしながらの研修を行いました。人員面では、「亀山コロッケ」実施日には代替え調理員を増員してもらえることになりました。亀山市では、各小学校に1人の代替え調理員が待機していますので、「亀山コロッケ」実施日に応援に数人入ってもらいます。そのため、亀山市内一斉にメニューとして出すことはできませんが、A小学校は「亀山コロッケ」で、他校は「魚のフライ」という様に、実施日をずらして提供することにしました。そして、2010年度より、年に1回「亀山コロッケ」を給食のメニューに入れることができました。

3. 『かめやまっ子給食』の確立

 亀山市の学校給食栄養職員と学校栄養教諭が中心となり、生産者団体の「亀の市」と協議を重ね、2009年11月より『かめやまっ子給食』がスタートしました。
 農作物のサイズや納入方法など試行錯誤した結果、現在では定期的に学校に納入される体制が確立されています。年平均20回ほど実施しています。昨年2016年度の実績で実施日の納入率は、亀山産は45.9%、三重県産を含めると59.5%でした。年間平均納入率は県内産を含め29.1%でした。米飯の米は100%亀山産、牛乳は三重県産の低温殺菌牛乳を使用しており、ふんだんに地場産物を取り入れています。

4. 新メニューの開発

 学校給食の新メニューの開発に調理職員も関わり、バラエティーに富んだメニューの提供に携わっています。いまやおなじみの「亀山みそ焼きうどん」もその中のひとつです。2011年中日本・東海B-1グランプリin豊川において、ゴールドグランプリを獲得したその当時、仲間の調理員が亀山みそ焼き本舗で活躍していました。給食のメニューに取り入れたらどうかとの提案がきっかけで、試作を行うことになりました。
 本来はピリ辛のみそだれが決め手なのですが、子ども向けにマイルドな味付けにアレンジしました。実際のメニューに取り入れる前に、小学校の給食室で大量調理の実習を行い、亀山市長・教育委員会教育長・市内学校長・各学校の給食担当教諭をお招きして、大試食会を開催しました。みなさん「おいしい」「子どもが喜ぶ味付けでとても良い」と好評でした。


 亀山はお茶の栽培も盛んで、子どもたちに伝えたい農産物のひとつです。しかし、お茶は苦いと敬遠される傾向にあります。そこで、亀山市ではお茶がいろいろなメニューに入って登場します。「亀山茶ういろう」は調理員が提案したメニューです。お茶と砂糖・小麦粉・水を合わせてかき混ぜ、ザルでこしてアルミカップに入れ10分程蒸します。その他に、手作りプリンやゼリーにも亀山茶を入れたり、かき揚げやフライドポテト・鶏の唐揚げ・フライビーンズなどにもお茶を混ぜたりかけたりと、工夫しています。亀山茶揚げパンもあります。
 また昨年は亀山東小学校が学校給食甲子園に応募しました。もち米をまぶしたシュウマイの「チンジュワンズ」を出品しました。5年生が地域の方にお世話になりながら栽培したもち米を使用しました。三重県代表にはなりましたが、残念ながら本選には進めませんでした。しかし栄養教諭とともにこのような取り組みができたことで、亀山市の給食をアピールできたと思います。


5. 食育の取り組み

 亀山市では、さまざまな食育の取り組みも積極的に行われています。春には給食で使用するスナップえんどうの筋取りや、実えんどう・そら豆のさや取りを、夏には生のとうもろこしの皮むきなど低学年が行います。高学年は地域の方にお世話になりながら田植えや稲刈りをします。食材を実際に触る体験をすることによって、食への興味を深めています。
 毎年2月にはみかんバイキングという献立があります。7種類のみかんの中から3種類選んで食べるのですが、みかんの種類を知る、自ら選ぶ楽しみ、味の違いや香りの違いなど感じる、などいろいろな側面からひと味違った献立になっています。いろいろな種類のみかんを一週間ほど展示し、手に取り匂いをかいだりと子どもたちは興味深々です。

 
 
 

6. 市民の皆さんとの関わり(組合活動)

 亀山市現業評議会の取り組みとして、亀山大市で「亀山茶蒸しケーキ」を出品しています。亀山大市とは、旧正月を祝う準備をする為、町へ買い物に出る人が自然に集まったのをきっかけとして、商人も売り出しを始めるようになり、それから130年以上も続いている市です。現在では旧東海道の通りである東町・本町・西町通りの約1kmが歩行者天国になり、農産物の販売など約180店の露店が軒を並べます。
 
 
 市民ブースでは、各種団体の出店や小学校の取り組みとして、花の苗の販売や、手品や劇の発表などがあります。私たちの出店は19年位前からです。出店当初は今の様な「亀山茶蒸しパン」ではなく、「肉団子のスープ」や「揚げパン」を出品していました。しかし、「市の現業の組合で食べ物を出品して食中毒を出してしまったら……」との心配から食べ物はやめて、バザーや花の苗を出品した年もありました。でもやはり食べ物を出して欲しいと、実行委員会の方からお話があり、何が良いかみんなで考えました。小学校の方では「亀山茶蒸しケーキ」や「チョコチップケーキ」を、保育園の方ではさつまいもを使った「鬼蒸しパン」を、それぞれ献立として出していましたので、蒸しケーキを出品することに決めました。値段は「亀山茶蒸しパン」と「チョコチップ蒸しパン」を2個入りで50円としました。
 当日は役割を分担し、グループごとに活動することにしました。テント立てなどの力仕事は、主に男性に担当してもらいました。蒸しケーキを作るグループと会場で販売をするグループに分けて、スムーズに作業が進むように工夫しました。蒸しケーキを作るグループは、市青少年研修センター内の調理室で当日の朝から蒸しケーキを作りました。10時開店に合わせて、2回に分けて大市会場に運びました。販売をするグループは、ブース内の飾りつけなども行いました。販売の際は、「手作りです。」「学校や保育園の給食にもでますよ。」と、声掛けをしました。また、蒸しケーキのレシピや現業アピールチラシも一緒に配布しました。


7. 最後に

 亀山市での取り組みを紹介しましたが、さまざまな取り組みができるのも、栄養教諭や栄養職員と調理員がお互いを信頼している環境があるからです。学校長や教育委員会も理解をしてくれていて、意見や相談も聞いて頂いています。各給食施設には正規職員が1人しか配置されていませんが、多くの非常勤の調理員も、亀山の給食をすばらしいものにしよう という思いは同じです。まさしく『チーム亀山』です。
 次世代を担う子どもたちの為に何ができるか? まだまだできることはたくさんあるはずです。それを探してよりよい給食の『亀山モデル』の確立に向け頑張りたいと思います。