【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 2005年、5町2村が合併して誕生した豊後大野市では、合併後10年間保健師の採用がなく、合併後に財政が緊迫する中で、徐々に退職者は増え業務量は増加し、保健師不足が生じてきた。2010年度より市長との意見交換会を開始するなど、直接現場の声を届けること、見える化することで、人員確保の必要性を訴え続けた結果、新規採用へとつながった保健師部会の取り組み報告。



保健師の人員確保への取り組みについて


大分県本部/豊後大野市職員連合労働組合・保健師部会

 豊後大野市では、2005年、5町2村が合併して誕生した。合併後10年間保健師の採用がなかった(合併前の旧町村時代までさかのぼると13年間)。合併後、財政は緊迫し、このような中で、徐々に退職者は増え業務量は増加し、保健師の不足が生じてきた。2010年度より市長との意見交換会を開始し、現状について現場の声を届けるとともに、組合活動では時間調査を行い、保健師確保に取り組んできた。直接現場の声を届けること、見える化することで、保健師部会として人員確保の必要性を訴え続け、2015年度、2016年度と1人ずつ保健師の採用があり、2017年には管理栄養士1人、2018年度は採用年齢を40歳まで拡大した社会人枠で保健師1人の採用に至った。

1. これまでの活動経過

平成17年度
  大分県保健師部会県幹事会が活動再開
  豊後大野市保健師部会発足(役員体制:会長、副会長、事務局長)
平成18年度
  県幹事任期2年、拡大闘争委員会に県特別執行委員として出席
平成19年度
  県幹事任期1年に変更、拡大闘争委員会に県特別執行委員として出席
平成20年度
  拡大闘争委員会に県特別執行委員として出席
平成21年度
  拡大闘争委員会に県特別執行委員として出席

2. 平成22年より本格的に保健師部会の活動開始

(1) 平成22年度
 今後の部会の活動について協議し毎月の定例部会・役員会の開催を決める(部会は年6回)
 ・今後の保健師採用、支所への保健師配置についてアンケートの実施
  10月 事業の優先度決定と他部署への保健師配置を検討のため、保健師活動領域調査を実施
  ※保健師配置についての意見集約
   集中・分散についてメリットデメリットを出して検討(統括保健師の必要性について確認)

(2) 平成23年度(年11回の部会開催)
 ・「事業見直しシート」を作成し、事業見直しの実施(2回)
  ※集中配置・支所1人配置・ブロック単位配置などメリット・デメリットについて意見集約
 ・保健師配置に関するアンケート調査実施 ⇒支所に保健師が居られる限りは支所に保健師を
  支所配置継続のためには、保健師の確保が必要。計画的な保健師採用の要求

第1回 市長との意見交換会を実施

豊後大野市の保健師年代別人数(H23年度)  

県下 保健師1人当たりの人口(平成23年度) 
 

◎3回の学習会の開催(3回)
・相談業務従事者のメンタルヘルスケア(宮崎県 工藤先生)
・乳幼児期の子どもの心の育ちとかかわり方(臨床心理士 合田先生)
・豊後大野市の現状から見えてくるもの (大分県 藤内先生)
 

(3) 平成24年度(年12回の部会開催)
★保健師部会活動目標を設定
 ① 人員確保に向けて業務時間調査を行い、人員確保闘争へ声をあげよう
 ② 保健師の配置と業務分担を見直そう
4月 保健師業務時間調査実施
6月 保健師人員確保要求書の提出(人員確保交渉)
※市長との意見交換会に向けて意見集約⇒保健師を本庁に集中配置へ
 ・市民病院保健師を健康推進室に
 保健師が今、重点として取り組む事業は何か? 課題は医療費削減(生活習慣病予防)。
  同じ場所に居ることで一致団結して皆で同じ目標に向かって取り組もう。

第2回市長との意見交換会
H24.8/20 保健師の集中配置の意向を伝える
 ・専門職の計画的な採用について
  保健師18人体制の現状維持と退職3年前の採用
  ※保健師集約について課題と解決策について意見集約(本庁2係と支所保健師で分かれて)
    本庁の業務分担、地区分担の案を作成
 ◎学習会の開催(対人援助職のメンタルヘルス/臨床心理士 塚越克也先生)

(4) 平成25年度(年7回の部会開催)
★保健師部会活動目標
 ① 人員確保に向けて業務調査を行い、人員確保闘争へ声をあげよう
 ② 集中配置に向けての準備をしよう 今までの活動が下がらないように
 ・保健師活動調査実施(大分県集約分)
  配置についてのアンケート実施
   集約することの要望:回答「する15人 しない1人」
   集約時の集中配置と分散配置について意見交換:回答「集中配置4人 分散配置8人」

 ・市民病院保健師2人の内1人を返してもらいたいと要望
 ・保健師人員確保要求書の提出(人員確保交渉)
 ・職場要求協議(専門職の計画的な採用について 総務課長)

(5) 平成26年度(年7回の部会開催)
★保健師部会活動目標 は 人員確保 (保健師・管理栄養士)
 今後の保健事業活動計画(保健師集中配置時の保健師数)を提出した
★27年度保健師採用に向けて保健事業施策を提示する
 ・事務折衝:保健師、管理栄養士の計画的採用について(6月と1月)
 ・市長ヒアリング(7月・12月)
 

(参考資料)
人員不足に関わらず、バランスのとれた保健師活動を行うための採用を

 大分県新任期保健師人材育成ガイドラインによると、保健師が一人前として保健活動ができるまでに5年の育成が必要(平成19年度厚生労働科学研究報告書「保健師指導者の人材育成プログラムの開発」より)。
 住民のために質の良い保健活動を実践するためには、中長期的な視点での採用計画を持つことが大切で、複雑化・高度化・多様化している住民ニーズや新たな健康課題に効果的に対応するためには、縦割りの弊害を解消するために新任期・中堅期・リーダー期など各段階における役割を明確にしたうえで、ある程度のバランスが必要と考える。
 大分県の市町村別年齢グラフと10年間の採用状況をまとめた。20歳代の保健師がいないのは豊後大野市のみであり、50歳代の占める割合が50%を超えている。人員不足・年齢によるバランスを考え下記の通り経年的な採用を希望する。

 以上より、27年度は保健師2人の採用を要望する。

※地域保健事業報告より、H24保健活動実施状況とH22~25訪問件数をまとめる
 「保健師の人材確保に向けた計画的・継続的採用要望書」を作成
 ① 保健師の業務内容
 ② 今後保健事業の充実をめざして施策を展開していきたい業務
   あけあじ健康21の推進(H26.3月策定)
   ・介護予防(運動)プロジェクト
   ・歯科保健プロジェクト
   ・生活習慣病重症化予防プロジェクト
   (現在保健師17人体制だが19人体制の維持を目標に採用を)
 ※7月の市長ヒアリング 保健師2、事務職1の要求は厳しい ⇒ 保健師1の採用を検討
 ※本庁集約の体制について意見集約
 ・「保健師配置代表者検討会」を開催
 重点課題とあげている3事業を推進していくためにはどの体制が必要なのか
 ⇒ 配置問題は部会だけでなく業務の一環として、毎月の事業検討会後に取り組む
 ・支所長への説明会 H26.8/27 各町支所長・課長・参事
       地区担当制の確保
 資料:H26.6月分保健師活動調査より保健師の必要数は17人
       集約配置案の8パターンの図式化
 資料:「今後の市の保健師の取組の方向性」

健康づくりの目的:笑顔と優しさにあふれた元気な豊後大野市を目指す
 保健活動の目標:健康寿命の延伸
  一次予防を重視した健康づくり⇒生活習慣病予防
  ① 親と子の健康づくり(子どもの頃からの取組み)
  ② 心の健康づくり(こころと身体はセット)
  ③ 支え合う健康づくり(1人では出来ない)
 手法① PHNAP活動の継続:地域に出て住民の生活を見る。健康課題は何か。住民のニーズは何かをつかむ。このような感じる感性を磨く
 手法② 他部署、地区組織との連携
 手法③ 可視化:住民や関係者にわかりやすい資料の提供

 H27.1/15 部会事務折衝 要求:保健師・栄養士の専門職の計画的採用
  保健師:35年度までに16人へ(計画的に採用として2年おきに1人の採用を)
  28年度に集中配置(配置案の提示)
    ⇒当局より 支所の相談窓口機能は残したい。退職保健師、嘱託看護師等の活用を。
     臨時職員の賃金の見直しについても協議(専門職の確保は大変!!

(6) 平成27年度(8回の部会開催と学習会の開催)
 保健師本庁集中配置に向けて具体的に協議を行う。
 ・保健師部会活動目標の設定
  ① 人員確保に向けて業務時間調査を行い、人員確保闘争へ声をあげよう
  ② 保健師、管理栄養士双方ともに確保しよう
 事務折衝:保健師、管理栄養士の計画的な採用について(6月と1月)

(7) 平成28年度(7回の部会の開催と学習会の開催)
※会の名称を「保健師栄養士部会」に改める
保健師が本庁集約になった
 28年4月から体制が変わっての状況まとめ
第3回市長との意見交換会 H28.8/22
 保健師と管理栄養士の計画的な採用について要求

(8) 平成29年度(5回の学習会の開催)
第4回 市長との意見交換会 H29.8/22 
 新しい市長の公約は「保健師は住民に身近な場所で配置を」と保健師の支所配置の提案
 新規保健師採用の追加試験の実施で30年度は1人採用決定
 保健師の年齢構成を考えて、社会人枠(40歳まで)での採用

★保健師部会の組合活動を通じて
 保健師の活動を市長や職員に理解していただき、人員確保を行っていくうえでは、保健師部会の役員を作り、定期的な話し合いの場をもつことが大切。活動は大変な部分もあるが、学習会を入れ、自分たちのモチベーションを高め、働き続けられる職場を作っていくためには必要な活動です

大分県保健師部会幹事会資料①

大分県保健師部会幹事会資料②