【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 2008年、特定健診・保健指導がスタート。当初から業務量の増加や人員配置などさまざまな課題の発生が懸念された。当然、保健師の勤務労働条件に係わることから保健師と労働組合が課題を共有し、住民サービスの低下を招かないための体制整備や財源の確保を求めていく協議・検討の場が必要と考え、同年「保健師部会」を設立した。労働組合とともに取り組む「保健師部会」の意義と今後の方向性について報告する。



組合とともに実施する保健師部会の
取り組みの状況について
―― 日田市の保健師で働けてよかったと
思える職場環境づくり ――

大分県本部/日田市職員労働組合 中山 裕美

1. 保健師部会設立までの経緯

(1) 2007年12月(設立会)
 2008年6月から特定健診・特定保健指導が開始されるにあたり、業務量の増加や人員確保などの課題が懸念される中、組合と保健師が集まり、意見交換を実施した。組合からは、「(高度な)専門分野と認識している。保健師の業務内容がわかりづらい」などの意見が出され、これから数回にわたって保健師の業務について他の職員にも知ってもらうための方策について話し合っていくことを確認しました。


2. 保健師部会の経過

(1) 保健師部会の取り組み状況

時 期 取り組み内容 メ モ
2008年度
3回開催
① 「保健師活動の現状」を洗い出し業務上の課題や今後の検討事項を分析する
 2003年6月保健師活動調査を基に、業務時間から保健師としての業務量が多い項目を加え「保健師活動の現状」を算出。その結果、
 ア 個別集団指導は保健師の専門性でアピールしやすいが、コーディネーターや組織活動は業務内容としてわかりづらい部分。
 イ 合併後、振興局で行っているその他の事務はどう捉えていくべきかという課題を見いだした。
② 分散配置に事務配置が多いのではないかと幹事が提案する。
 県保健師部会市町村幹事会において、各自治体との情報交換を行った結果を保健師部会で報告し、幹事が日田市は分散配置に事務配置が多いのではないかと考え、分散配置の状況を交換した。
2009年度
3回開催
① 分散配置の状況と課題の検討を行う
(意見交換の内容)
 ア 分散配置された保健師は、保健師業務と事務職分野に業務内容が分かれる。
 イ 保健師が本庁外施設にいるため、本庁との職員と連携がとりづらい事がある。
 また、市民にとってはリアルタイムの相談が受けにくい。
② 保健師の勤務状況をまとめる。各保健師が増加した業務内容、今後増加が予想される業務内容をまとめ、問題点を整理する。
 ア 連携がはかれる配置は?
 イ 保健師の専門性が活かせる配置は?
 ウ 増加する事務にどう対処するか?
 エ 振興局保健師の業務時間をまとめてみると、振興局に配置されている保健師は地区分担業務が中心であるが、職員の減少により窓口業務の割合が多くなっている現状が確認され、このことについて検討を行う。
2010年度
3回開催
① 業務分担、地区担当制および分散配置について、保健師活動の視点でどのような仕事をしているか客観的にみるため、日田市保健師業務時間を、「全市保健師活動」「担当地区活動」「その他」「付随する事務」「その他の事務」に分けて調査し、まとめる。
(調査結果のまとめ)
 ア 市町村合併時と2010年4月1日現在の保健師数の推移は23人→20人に減少している。振興局で、退職者の補充がない。
 イ 保健事業の本体である健康保険課の保健師の人数に変化はないが、業務内容に変動がある。
 ウ 振興局の場合、窓口業務が増加。
 エ 分散配置している保健師は「保健師業務以外の事務」の割合が多い。
 オ 養護老人ホームは看護師の配置でよいが、保健師が配置されている。
 カ 数年、育児休暇(業)を3~4人の保健師が取得しているが産休代替の保健師がいなく看護師を代替配置しているので、他の保健師に負担がかかっている。
(組合の動き)
① 保健師の人員要求について……2011年度10月時の(人事異動期)の要求
 ア 執行部と当局の協議において、「2012年度の人員配置については、新規採用予定の保健師を含め、今後組合と十分な協議を行う」ことを確認。
 イ 2012年度の職員採用試験の募集枠に「保健師」が組み込まれ、3人が採用予定。保健師部会においては、新規採用者の配属先について保健師部会の代表を含む組合側と当局との「事務的協議」の開催を要求し、協議に応じる姿勢が確認された。
 ウ 養護老人ホームの看護業務を保健師が担っていることについては、有料老人ホームにおける看護業務等について、理解・認識を深め、要求・改善項目を整理していくことが必要とされ、今後の保健師部会で協議していくこととなる。
2011年度
2回開催
① 自治体保健師の現状と課題を共有する
 ア 保健師活動・事務事業調査を提案
 イ 保健師部会と組合で連携し、実際に保健師活動をどれだけ行えているか、保健活動以外の事務作業がどれだけあるかを実態調査し、必要人員の要求に結び付ける。
2012年
2月
① 保健師部会における当局との協議が実現
 ア 採用職員の配置先 イ 振興局に勤務する保健師の配属
 ウ 看護師の採用と老人施設に勤務する保健師の処遇について
2012年度
1回開催
① 新任保健師3人も含めて、現状について意見交換
3人新採用
保健師集中配置
2013年度
2回開催
① 保健師活動事務事業調査の結果について、報告
② 2014年2月に日田市保健師業務時間調査の取り組みを実施することを提案
2人新採用
2014年度
2014年度
6月
① 日田市保健師業務時間調査の報告と意見交換
2015年度
12月
① 2016年度に市町村保健師部会勤務時間実態調査の実施について説明。
② 実態調査結果をまとめ、現状や課題を把握する。

 ア 質的なものは保健師会議で検討し、組合や担当課として考えていく課題を保健師部会で検討する
 イ 協議や交流会を行い、ワークライフバランスの調整や良い関係を築き、働きやすい環境や自分のメンタルヘルスを行う。
2016年度
12月
① 市町村保健師部会勤務時間実態調査結果について報告
② 分散配置保健師の状況確認
(保健師会議開始)
2017年度
6月
① 2017年度の職場の課題について意見交換
2018年度
4月
① 2018年度の職員配置について意見交換
 健康保険課 14人、社会福祉課 4人、長寿福祉課 3人、
 こども未来課 2人
② 県本部市町村保健師部会勤務時間実態調査実施について提案(5月)
こども未来課へ
2人配置


3. 組合とともに行う保健師部会の意義

① 保健師部会を行うことで、分散配置された保健師間の意見交換を行い、課題の共有ができる。課題を共有することによって、それぞれの部署での保健師の専門性を意識しながら業務に活かしていくことができる。
② 保健師が担う保健業務の内容は多種多様となり、また、業務量も増加傾向にある中、保健師部会に組合執行部が参加することで、保健師の業務の理解と課題を客観的に見ることができる。さらに課題をタイムリーにキャッチし保健師の人員確保や適切な配置に向けての取り組みに繋がる。
③ 保健師部会の継続開催により、組合を身近に感じることができ、部会以外の時でも、困ったことや検討すべき事案ができた時に、いつでも相談ができる。


4. 今後の課題と方向性

① 2018年4月から保健師がこども未来課にも配置され、分散配置部署が増えた。それに伴い、主に保健業務を行う部署は人員が減少した状態となっている。分散配置により保健師間の連携はとりやすくなったが、本来の保健師業務がどのくらいできるか懸念される。2020年度に子育て地域包括支援センターの設立を目標に準備を開始している。子育て地域包括支援センターの設立においての保健師の配置については、保健師の専門性を活かせる配置を保健師部会で検討していきたい。
② 分散配置の保健師が増える中、部署横断的な保健師活動の連携と共働・保健師の人材育成・力量形成を目的に、日田市全保健師で保健師会議(2015年3月立ち上げ)を行っている。保健師部会と連動しながら、部署は違ってもそれぞれの業務の中で保健師として専門性を生かしていけるよう、保健師会議での課題は、保健師部会につなげていくべきものか精査し、必要があるものは、組合とともに協議していきたい。
③ 2018年5月に実施した市町村保健師部会勤務時間実態調査の時間外業務について分析し、保健師が健康で安心して働ける職場環境や関係作りを行うための取り組みを今後も保健師部会の中で検討したい。今後は、子育て地域包括支援センターの設立、国保保険事業の広域化、災害に関する保健事業などが、これまで業務に追加され業務量が増加することが見込まれる。そのような中、年齢や部署が違っても自分の思いを気軽に話せる保健師部会であるよう今後も組合とともに工夫していきたい。